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43:招待

今日は、少し遅くに起こしに来るよう頼んでおいたメイドさんが来る気配で起きた。

極まった気配察知スキルは便利でいいよな。滅多な事で不意を衝かれる事が無い


「お早うございます。フジワラ様」

「おはよう、セバスチャン」


執事っていいよな。

セバスチャンは執事じゃないんだけど。こうキチンとしてる人に挨拶されるとこっちも気が引き締まる。


「フジワラ様、今朝方からお客様がお待ちです」

「ん?」


セバスチャンに紹介されて会釈してくるこちらも執事っぽい男。こっちはメガネをかけたインテリ系だ。

今朝からって、俺が起きてくるのを待ってたって事か。


「どちら様?」

「私、マルガリータ商会の秘書をしております」


チャキッとメガネを上げ、インテリっぽい名前を名乗る秘書さん。うん、メガネ君と呼んでやろう。

それにしても、昨日忠告した事伝わらなかったのかな?

いや、伝わったから堂々と来たのかな?


「えーと、忠告は伝わってる?」

「はい、ですからマルガリータ様が一度、直接お会いしたいと」

「俺は用無いんだけど」

「そうおっしゃらずに、来て頂けるだけで金貨百枚を進呈いたします。他にも何かご入用でしたら言っていただければ全てご用意いたしますので、ぜひ、今からマルガリータ商会にお越しいただけませんでしょうか?」


金貨百枚が入っているのだろう豪華なポーチを俺に渡そうとしてくる。魔法の鞄系の魔道具だよな、おそらくそれのほうが金貨百枚よりも価値があるだろう。

嫌な感じだ、金貨百枚などと言いつつその倍以上の物を渡してくる。金持ってまっせと言っているようなものだ。

これはあれか、ゴルジフよりうちに就いた方が金やそれ以外の物も沢山出しまっせということか?

俺がゴルジフの下についてるって認識なんだよなおそらく。ま、普通に考えればそうなるよな。


「忙しいんで、また今度で!」

「そうおっしゃらずに!」


チャキッとメガネを上げながら、豪華なポーチを三つ出してくる。

いや、金とか積まれてもな。おそらくそのマルガリータ商会ってとこより俺の総資産のほうが遥かに上だし。


「いかがでしょうか?」

と、ちょっと上から目線で聞いてくるメガネ君。

財力至上主義かー、まあ、商人だしそうだよな。だからといってこの程度で勝ったみたいな態度取られても困っちまうな。


どうも金を積めば簡単に転ぶ程度の相手と見ているらしい。まあ、大抵の冒険者は稼げるほうにつくのが常道だが、だからといってこの程度でいきなり上から目線とか冒険者を舐めてるよな。


「いやー、俺が昨日最下層で稼いだ額の十分の一以下の金出されて、ドヤッて言われてもなー、困っちゃうなー」

「エッ!?」

「取り合えずさ、用があるって言うならそのマルガリータさんだっけ、その人がここに直接来なよ。俺にチョッカイかけたら潰すって宣言した相手の懐にワザワザ行くバカはいないだろ?」

どんな罠が仕掛けてあるかもしれない敵地にワザワザいく冒険者などいない。迷宮で生死に直結する選択をしているのだ、金を積まれた程度で正常な判断を見失うような者では、迷宮の最下層まで辿り着くことなど不可能。

「エッ、潰す?」

「なに? 詳しいこと聞いてないの?」


スッとメガネの耳元に顔を近づけ囁く。


「こういうことしたらミナゴロシにするって言ったんだよ」

「ナッ!?」


元の位置に戻り、ニッコリ笑いながら言う。


「ウソさ。ちょっとあんたの態度が気に入らなかったから脅しただけだ。今回は正攻法で来たから大目に見てやるよ」

「――――」


恐怖の目でこちらを見ているメガネ君。


「けどさ、ゴルジフ家からも忠告いってるだろ、貴族を(ないがし)ろにすると後が怖いぞ。それに、俺は金で転んだりしないから諦めろって言っておいてくれ」

「――――」

「あとさ、俺の関係者に危害を加えたら、本当にヤルからってもう一度伝えといてね」

素人にもわかる殺気をメガネ君だけに限定して放つ。

「――!!!」


「返事は?」


固まっているメガネ君のメガネをチャキッと上げてやる。


「ハイイイッ!!!」


メガネ君を乗せて馬車が帰っていく。


それを見送り、フロントのセバスチャンに肩をすくめて見せる。

ニッコリ微笑み、行ってらっしゃいませと言うセバスチャンに手を挙げ答え、大通りを歩き出す。



「…………」



「…………」



「…………」



「…………はぁ」



なんなんだ一体よ。

さっきからあからさまに殺気を放ってきている奴がいる。

どうやら俺を裏路地に誘い込みたいらしいが、どこの勢力なのやら。取り合えず無視してきたが、あまりにもしつこい。



「…………」



「…………」



「…………はあああぁ」



わかったよ、行けばいいんだろ。めんどくせー。

望みどおりに裏路地に入ってしばらく進むと、足音が聞こえてくる。それは、集団が誰か一人を追っている足音だ。


しばらくすると曲がり角から、一人の、いや、一匹のケモノが、


「タスケテ!」


と叫んでこちらに駆けて来る。


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