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38:親交

俺の隣に座り、甘い果物の果汁に炭酸を足した飲み物を飲みながら話しかけてくる。


俺より年上だと思うんだが、話し方や表情を見る限り年下の雰囲気を醸し出している。


これでユウキ君が女なら文句も無いんだが。どう見ても男だし、話してくる内容が嫁自慢と来た。何番目の嫁がー、とか自慢されても面白くもなんともない。大体、周りの女性陣はドン引きしている。


空気を読むとかそういう問題ではなく、もう完全にダメな人間だ。一緒にいるだけで周りにまで被害を及ぼしてくる人種だ。こいつと同類かと思われるだけで完全なる営業妨害、何の営業だといわれそうだが、こんな人を番号で区別する奴にまともな者はいない。


「フジワラ君は今までどこにいたのかな?」

「ん、あっちこっちをフラフラだな、俺のことはフジワラでいいぜ。ユウキは沢山嫁がいるみたいだが、どこかに拠点があるのか?」

「うん、――地方は知ってる?」

「いや、知らないな」

「そこの村を一つ治めているんだ」

「え、村長なの?」

「うん、だけど村長っていうのはやめて欲しいな、なんか呼び名が恰好悪いからね」

村長がこんなところでフラフラしてていいのかよ。とツッコミを入れたいが我慢。

「そうか?」

「そうだよ、それにもうすぐ僕は男爵になる予定なんだ」

「おー、貴族になるのか、凄いな」

確か男爵は位的に一番下の称号、それこそ小さな村の長に与えられるようなもの。村長と変わらないと思うが、まあ呼び名が恰好良いから嬉しいのだろう。

「六番目の嫁がある貴族の令嬢でね、その縁で称号を貰える事になったんだ」

言ってる番号が適当な気がするが、そこは突っ込まないほうがいいのだろう。というか、嫁って実在するのかね?

「じゃあ、ユウキ様って呼ばないとダメになっちまうな」

「そんなあ、フジワラは友達だから僕の事はユウキのままでいいよ」


他愛のない会話を続けながら情報を得ていく。

俺の情報は適当に誤魔化し、ユウキが話したそうな会話に導いて行くと得々と語り出す。

現在の話しになるとさり気無く付き添いの奴等が別の話しにすり替え誘導していく。

どうやら俺もこいつ等に探られているようだな、ユウキ自身にはそういう気が無いようだから俺の情報は全てデタラメで軽く流せているが。


「このフジワラはよー、最下層攻略しちまったんだぜー」

ベロベロの門番が会話に割り込んでくる。ナイスだ酔っ払い、待ってたぜ。

「おいおい、やめてくれよ恥かしいぜ。あ、そういえばユウキも最下層攻略したの?」

おっけー、さすが俺、超自然に最下層の話しに誘導できたぜ!!!

「うん、僕も攻略したよ、何十回もね」

「おー、すげえな。俺なんかまだ数回だから、攻略に関してはユウキの方が先輩だな、アドバイスして欲しいなあ、チラ、チラ」

超自然にアドバイス要求を決めてやったぜ!!! しかも教えて目線つき!!!

「ユウキさん、そろそろ、、」

「オレも聞きテーナー! ミンナもそうだろ?」


オー、キキテー!

オシエテ!

ステキ!


と、さり気無く会話を切ろうとした同行者を押しのけて酔っ払いによる意味不明な同調の声が上がる。

最後のロザリーちゃんのステキ発言、セザールのオッサンが言わせてたな。おだてればタダで話し出すと踏んでの指示だろうが姑息だな冒険者ギルドよ!


「えー、マイッタナア。じゃあ、ここだけの話しにしておいてね」

ちょろいなユウキ! 聞いてるのは冒険者ギルドの職員だぞ、明日から確実に金貨百枚以上の情報として売られるぞ。

「ああ、ここに集まってるミンナは口が硬いことで有名な奴等ばかりさ!」

俺の最高のアシストパスが決まる。これでイチコロダゼ!

「しょうがないなあ!」

えー、マジで話すの?


ユウキ先生による。最下層攻略講座が始まる。


敵に関しては、俺の伝えた情報と同じ。特に目に付く点も無く話しは進む。

しかし、門番達には初耳な情報が多いのか、派手に頷き賞賛する事で、ユウキ先生の機嫌も良くなる一方だ。


セザールのオッサンに目配せして、ユウキ先生の飲み物にアルコールを混ぜる。

「ユウキさん、喉渇いたでしょう、飲み物をどうぞ」

ロザリーちゃんに渡させている。オッサンのバカ、話し聞いてただろう、こいつは女を番号で数えるような奴だぞ、目を付けられたらどうするつもりだよアホが。

「ありがとう。キミ可愛いね」

ほら、言わんこっちゃない。

オッサンが、あっという顔をしてこっちを見る。

バカ、アホ、マヌケ! と目で伝える。

タスケテ! とウルウルした目で訴えてくるオッサン。

キモイワ!!!


「じゃあ、あれか、噂で囁かれているレアボスに会ったりしたの?」

俺の知りたい情報を直球で投げ込む。話したくなければ帰るだろう。


真っ赤な顔でユウキが答える。ユウキ先生酒弱いな!!!

「うん、僕に会ったよ」

よし、いいぞ。あの死んでた時の事だよな。


ここからが核心だ。


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