37:邂逅
宵の口。
昼の店が閉まり。夜の店が開きだす頃。
飲食店の注文は、酒が主流となり始める頃。
大通りにある屋台は仕事を終えた一般人や迷宮から戻った冒険者達に占領される。
なかでもひときわ大きい、屋台と呼ぶには立派過ぎるその店に、団体客が訪れる。
「よー、オッチャン。席あるかい?」
「ん、オォ! ニイチャンか今日は随分と大所帯だな」
「ああ、なんか知らないうちに増えた」
「セザールさんまで居るのか、しょうがねえ奥の宴会場に入りな」
「サンキュ、ちなみに割り勘だからな」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
スタスタと奥に移動する団体さん。
「おい、返事しろよ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
おい!
帰ろうかな。
ギルド長の部屋から出て帰ろうとした所、仕事を交替し帰宅しようとしていた門番と鉢合わせし、丁度いいからドランツのオッチャンの屋台に今から行こうとなった。そしてなぜか人数が増えた。
ギルドの職員も数名居る。遅くならないならという事で受付嬢の方達も参加の運びとなったようだ。
「冒険者の方と食事に行くなんて初めてです」
「そうなの、ロザリーちゃん可愛いからよく誘われたんじゃない」
ドンッ!
「ワシも初めてなの」
「なに戻ってきてんだよ、キモイわオッサン!」
「ウルサイ、ロザリーはこっちの席にお座り。ほら、これがメニューだ、好きなのを頼んでいいぞ。今日は全てフジワラの奢りだ」
「フザケンナ! オッサン、さっき割り勘って言っただろ。ロザリーちゃんと他の受付嬢さん達の分は俺が払うがおっさん達のは絶対払わねーからな!」
「ロザリー、これとこれとこれを十人前頼んでくれ」
「ザケンナ!」
勝手に酒がすすんでいく。大丈夫なのかこいつ等。肉料理をつつきながら、それを眺める。
「フジワラ様」
「ん?」
ゴルジフの手の者か、違和感無く溶け込んでるな。バカな貴族ほど裏方が優秀の法則、といったら可哀相か。
「ネズミが増えております。間引きますか?」
確かに、俺を監視する人数が増えているし、監視以外の荒事専門のようなのも混じっている。
「騒ぎが起きても面倒だからこのままでいい、ただ解散後、女性陣の護衛だけはしっかりしてくれ。特にロザリーちゃん。狙うならおそらく彼女だから」
「わかりました」
「何かあったらすぐ知らせてくれ」
「はい」
自然に輪から外れていく男を気配察知で見送りながら思う。
監視している奴等に、何か仕掛けてくる前に一言忠告しておいた方がいいかな。
「フジワラー、アンタスゲーな。ほんとーに最下層攻略したんだってな」
俺の軽口を受け流していた門番だ。こいつとの話の流れで今に至ったんだよな。遭った場所が不味かったな、セザールのオッサンが居た事でこんな流れに変化しちまった。
「飲み過ぎじゃねーか? 明日に響くぞ」
「ヘーキヘーキ、光魔法で治して貰うからよー」
ほんと便利だな、光魔法は。
少し気配を薄めて、喧騒を眺める。
皆、楽しそうだな。
セザールのオッサンは本当にロザリーちゃんが可愛いんだな。過保護過ぎな気もするがな。
たまに絡んで来る奴を軽くいなす。
酒の席で出る特殊な情報みたいのを少し期待したんだが、何も無さそうだな。
ま、こういうのも悪くないな。
場の雰囲気を楽しむ。
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「ユウキさん。ここの料理が絶品なんでさあ」
「へえ、それは楽しみだなあ、」
――!?
目が合う。
あー、油断した。
そういえば、アイツの気配知らなかったわ。初対面は死体だったし。
いきなり鑑定される。
ワーオ、鑑定持ちかよ勇者ユウキさんよ。当然レジストして適当な情報を鑑せる。
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名前:フジワラ
種族:人族 性別:男
スキル:(特殊)言語翻訳
(武技)剣術3、槍術1、格闘術1、弓術1
(技) 隠密1、罠解除5
(魔法)火魔法1、水魔法1、風魔法1、土魔法1
光魔法3
(自動)気配察知2
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鑑定される事にはこちらに一日の長がある。てか、鑑定雑だなこいつ。
本当はこうだ。
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スキル:(特殊)言語翻訳、アイテムボックス、スキル強奪
(武技)刀術、槍術5、格闘術5、弓術5
(技) 隠密5、罠解除5
(魔法)炎魔法4、氷魔法3、雷魔法3、鉄魔法4
光魔法5、闇魔法5、忍術4
(自動)気配察知5、HP回復5、統率5、クリティカル
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魔法は全て上位魔法に変化しているしほかにも忍術とか色々ある。この辺は見せない、今後こいつが敵として立ちはだかる事を想定した情報戦だ。
「こんにちは、フジワラ君」
いきなり話しかけてくんなよ、[何で名前わかったんですか]とか聞いて欲しいのか?
大体今はこんばんはだぞ、まさか今までこんな感じで、いきなり知らないはずの名前を出して会話の主導権握ってきてたのか。
「はい、こんばんは、ユウキ君」
「!? まさか君も?」
鑑定持ってるのかって? さっきお前の名前をお仲間が呼んでただろ。
コクリと頷く俺。
フフ、勝手に誤解してくれたんだからそのまま通すぜ!
「仲間に会うのは久しぶりだよ」
そーですか、俺はずっと仲間と一緒だけどね。久しぶりというのはどういう意味なのかね。
「俺も久しぶりだ」
「そうなんだ、仲良くしようね」
屈託無く笑い、手を差し伸べてくる。
?
あれ、もしかしてこいつ天然か?
言外に前会った仲間は殺したから久しぶりと言ったのではなく、自分の言った言葉の意味を認識していない?
もしかして、既に壊れてる?




