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34:悩み

試行錯誤しながら五回ボス部屋に挑戦した。

出てくる魔物は毎回同じで、殲滅の効率が毎回上がる。


「こんなところかな」


今日の成果は順番に、一回目:光魔法、二回目:無し、三回目:火魔法、四回目:風魔法、五回目:火魔法。本当にスキルの巻物しか出なかったのだが、八割のドロップ率、これは少し異常だな。

ある程度の強さ、といってもおそらくSランク以上になるが、それだけの実力があれば安定してスキルの巻物が取得できる。光魔法の巻物など売れば一生遊んでとはいかないが、暮らせるだけの金額が手に入る。


これはまだ何か裏があると思われるが、今の状態ではその裏にぶち当たるまで確認の仕様が無い状態だ。


取り合えず、明日はもう少し情報を集めて、目新しいものが無ければ虚ろな影を倒してレアボスを登場させてしまおう。必要以上に慎重になって時間だけが過ぎていくのはもったいない。俺は早く帰りたいんだからな。


脱出用魔法陣に乗りスキルの迷宮入り口に転移する。


転移先は本当に迷宮入り口の隣だ。

視線を感じる。いわずもがなの町長と商人の手の者達、それに俺を嵌めようとした冒険者もいる。待ってたのか、いじらしい奴だ。しかし、俺に係わると死ぬぜ。


入り口を守る門番が声を掛けてくる。

「よう、あんた今日が初めてだったんだろ。どこまで行ったんだ?」

「ん、ああ。最下層まで行っちまったぜ」

「ハハハッ! そいつはスゲーな。戻ってこれたという事は最下層を攻略しちまったのかい?」

「おうよ! 五回も攻略しちまったぜ、スゲーだろ?」

「そいつは凄いな、どんな敵が出たか教えてくれよ」

「おー? ダメだダメだ。最下層の敵の情報は最高機密なんだぜ」

「ハハハッ! 上手いなあんた。今度酒でも飲もうぜ」

「おー、酒は飲まないが、メシなら付き合うぜー」

「いいな、美味い屋台を知ってるからそこで喰おうか」

「もしかして、宿屋もやってるって言うオッチャンのとこか?」

「オオ、ドランツさんを知ってるのか、あそこの肉料理は美味いだろ」

「だな、非番の時にでも声を掛けてくれ、俺はバラの宿にいるからよ」

「バラの宿だって! あんた金持ちなんだな」

「おーう、最下層を周回しちまうような実力者だからなー」

「ハハハッ!」

会話を切り上げる。


情報というのは虚実織り交ぜるのがいいのだが、今回はすべて本当のことで固めた。一概には信用出来ないだろうから勝手に憶測して誤解してくれるだろう。


ギルドの受付で声を掛けられる。

「フジワラさん、お帰りですか?」

ロザリーちゃんだ。まさかデートのお誘い?

「イエス。お帰りです」

「でしたら、ギルド長の部屋に寄って頂けますか」

「ヤデス。急用が出来ました」

「そう言わずに寄ってけ、フジワラ」

セザールが現れた!

「今からロザリーちゃんとデートなので無理です。お爺様」

「カッチーン! ワシのロザリーとデートなどゆるさーん! それとお爺様などと呼ぶなー!」

「ワシのとかキモーイ。ロザリーちゃんはモノじゃありませーん」

「ムッキー!」

ワッシと手を捕まれギルド長室に連行される。


ドンッ! とボトルとグラスを置かれ、勝手に酒を注いで来る。

「だから俺、酒飲まないって」

「一杯くらい付き合え」

「ったく」

カチンとグラスを合わせ一気にあおる。

一体何の乾杯なんだか、光魔法の状態回復でアルコールを分解というか酔いを回復する。

酔いなど、正常な判断や正確な動作の妨げでしかない。本当にくつろげる場でなら良いが、俺にその様な場所は存在しない。


「で、どこまで行ったのだ?」

「またそれか、最下層まで行って五回ほどボス部屋を回ってきた」

「ブッ!」

「汚ねーなあ、事前情報も全てあったんだから当然だろ」

「いやしかし、五回だと?」

「消耗するような戦い方しなければ何回だって同じだろ、大体出てくる敵が同じなんだから回数こなすだけ楽になっていくだろ」

「……フジワラ、お前はどれだけの場数を踏んできたのだ? 相手との実力に差があったとしても対多の戦闘はそう簡単に運べるものではない、僅かな機微で戦況が一変する」

「そんなの臨機応変に対応すればいい」

「その様な戦闘が可能なのはSランク以上の冒険者だけだ」

「ランクとか飾りだろ」

「……冒険者のランク制を全否定するような発言をするな、まったく」

「あ、そういえば、出てくる魔物、戦士が二人だったぞ。あんなの普通の冒険者の初見だったら死んでるぞ」

「なぬ! すると魔物が五体出てきたのか?」

「ああ、これ以上は情報料もらうぞ」

「わかっておる。言える所まででよい、教えてくれ」

「別に俺はここで稼ぐつもり無いからな、重戦士(アーマー)狂戦士(バーサーカー)暗殺者(アサシン)大司祭(ハイプリースト)大魔法使(ハイウィザード)の五体だ。これは他の階と同じで固定だな」

「おおお、待て待て。記録係を」

セザールが部屋を出て、おそらく情報関係を管理する職員を呼びに行こうとする。

「あ、待った!」

「なんじゃ?」

「んー、いいや」

ここの情報駄々漏れなんだよな。これじゃあ、俺が本当に最下層を攻略したのが町長、商人に伝わってしまう。

と思ったけど、後はレアボスを攻略するだけだし、いいかと結論した。


フジワラは、情報量として金貨五百枚を手に入れた。


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