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26:虚ろな影

地下四階。

ここのボスは戦士。二階の戦士より倍強いと言う。


さすがにここは待っている列も少ない。

それもそのはず、ここで戦うなら二階で戦うほうが二倍安全なのだから。

それにおそらく、ここで勝てる実力があるなら六階の僧侶と戦ったほうが実入りが良いし安全なはずだ。


ここは待つまでも無く、既に下への階段が出ているのでそのまま降りる。

ここでやっている奴等は回転重視のつわものどもというところか。



地下五階。

虚ろな影の階層だ。

俺の推測だと、ここで戦わないで行くと十階の当たりである、俺本人との遭遇が発生しないんじゃないかと思うのだが。


どうなんだろうな。困っちゃうな。


ここは待ちの列も無く、扉が開いていて、下へ降りる階段が無い。

つまり誰かがボスと戦って下への階段を出現させなくてはならない。


「誰がやる?」

誰とも無くその質問が出る。


何人かが俺を見るが、無視する。取り合えず今は戦わない。

戦う事より、戦わない事の方が色々検証する余地があるからだ。


「あんた、やらないか? ここのボスは攻撃してこないから安全だぞ」


もっともらしい事を言っているが、これは完全にフェイクだ。事前に全ての情報を掴んでなければ何の疑問も無くこの誘いに乗っただろうが、一度戦ったら戦わない事で最下層に挑戦する可能性が無くなる。今言ったやつは既にその可能性が無いから俺も同じ条件にはめ込もうとして甘い言葉を吐いたのだ。


「いやあ、ここで戦わなければ最下層でレアボスに遭遇しない、安全な戦闘が出来る可能性があるんだろ?」

はっきりと言う。俺の推測だが、これは死ぬ可能性を限りなく少なくする裏技みたいなものだ。

まあ、俺はそのレアボスと戦うために来てるから、そのうちここのボスとも戦う予定だけど、情報を持ってない奴を平気で騙そうという奴の言葉には乗らない。


見る限り今ここにいるこいつ等は、最下層に挑戦できるほどの強さを持ってはいないみたいだが。


「なんだそれは!?」

「どういう意味だ?」

何人かから質問とも詰問とも取れる声が上がる。

「俺に聞くなよ、大金を出して買った情報なんだからよ。聞くんならわざわざ戦ったことが無い奴に戦わせようとした奴に聞け」

視線が俺からそいつに変わる。

「――――チッ!」

舌打ちをしてそっぽを向き。扉の中へ入っていく。


問い詰められることより、ボスを倒して一足先に下へ行く事を選んだようだ。


ソロは怖いよな。相談できる仲間が居ないから自分一人で決めなくてはならない、さっきのような甘言を見抜けないと取り返しのつかないことになるかも知れない。逆に、口の上手いやつは狙った奴を上手く誘導して利用する事も容易い。



仕組みは大体わかってきたし、そろそろ消えたほうがいいかな。



六階に降りるタイミングで隠密を発動する。

これで俺は脱出用転移魔法陣で帰ったと思われるだろう。後は黙ってこの集団について行く。


六階は予想通りまた列が出来ている。

僧侶からは光魔法が手に入る可能性がある。

おそらく最高値で売れるスキルだし、自分で習得しても将来が困らなくなるスキルだ。


集団のほとんど全てが列の後部に着く。一気に減ったな。

まあ、次の七階は戦士と盗賊がポップし、二対一の戦闘になる。一気に難易度が上がるからな。



七階に降りたのは五人だけ。しかも会話を聞いてると五人とも仲間らしい。さっきまで知らない人の振りとかやはり冒険者関係は抜け目が無いというか裏がありすぎる。こいつ等が悪人だった場合いきなり俺を殺そうと五対一の戦闘が始まってたかもしれないのか、あー、やだやだ。

「さっきの男は五階で帰ったのか?」

俺のことかな。

「そうみたいだな、気付いたら消えていた」

「ふざけた奴だったな」

「ああ、所で先に行った奴は町長に雇われてる奴だろ?」

「そうだな、あの男も分の悪い相手に喧嘩を売ったな」

そうなのか、まあいいけど。

「だがそうすると、あの男はゴルジフ卿の手駒という事になるな」

「そうだな、それならあの態度も頷けるか」


んんん?

つまりこいつ等は、豪商のマルゲリータだったか、とかいう奴に雇われてるという事か?

勢力は実質、町長、貴族、商人の三つしかないという話だから、そういうことになるよな。


「今日はどうする?」

「九階に挑戦したいが、まずは八階を何回かやろう」

「そうだな、では、強化を始めるぞ。時間を計れ」

「はい」


先行者が居ないため、通路に魔物が徘徊しているのを五人で狩りながら一人だけに強化魔法を掛けつつ進んでいく。

ボス部屋の前で効果時間の短い比較的強力な魔法をその一人に皆が掛けはじめる。


「次が最後です。効果時間一分」

「わかった」


走るスピードが一時的にアップする魔法が掛かったと同時にボス部屋に突入する。

そういうことか、五人で一人というチームなんだな。実際に戦闘するのは今入った一人だけで他は突入前に掛けれるだけの強化魔法をかける。

いい方法だが、ボス部屋に入った一人が失敗したら全員死亡確定という結構リスキーな方法でもある。


ほどなく扉が開く。短期決戦の戦法だから当然だな。


「どうだった?」

「ああ、スピードアップがあると一気に接敵出来ていいな」

「そうか、ならば今後も防御力アップではなくスピードアップに切り替えるか」

「そうだな、次のボスは魔法使いが増えて三人だしな、一気に魔法使いを殺せれば戦闘が楽になる」


会話を聞きながら、一緒に八階に降りる。

そうか、最下層での俺自身との戦闘を視野に入れると、入る直前に強化の魔法を掛けておけば、強化してないコピーの俺と戦闘という有利な状況で進めることも可能かもしれないな。


こいつ等の会話を聞くためしばらく一緒に行動しておくか。当然隠密したままだがな。


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