21:悪辣な罠
陥没した壁を背に気を失っている狂剣士ガロッチ。
それをただ呆然と見つめるゴルジフ卿。
「なあ、合格でいいか?」
「…………」
返事が無いので、セザールのオッサンに聞く。
「なんか許可証みたいなものは、冒険者ギルドの窓口で発行してくれるのか?」
「…………」
こちらも返事が無い。
「おーい」
誰にとも無く呼びかける。
「…………ハッ!」
我に返ったゴルジフ卿が、騎士に指示を与えている。
ガロッチの生死確認、その結果を聞きこちらに来る。
「一体何をしたんだい?」
「ん?」
「格闘術を使っただろう?」
「ん? いや、あいつの状態確認したんだろ。胴を斬っただけだぞ」
「信じられん」
「いやいや、騎士に聞けよ。流石に分かるだろ」
「僕が解らない方法は駄目だ。この試験は無効にする」
おいおい、どんな言いがかりだよ。
セザールのオッサンが弁護してくれる。
「ゴルジフ卿、今の試験でフジワラに不正は無かった。ワシが証人になる。無効というのは許されんぞ」
まあ、実際の所。ダッシュする時に足元で爆発を起こし驚異的な加速を行う爆裂歩法というオリジナル技を使っていたんだけどな。爆発自体は火魔法を使っているから不正と言えば不正なんだけどな。
「駄目だ。僕がルールだ!」
うほっ。出た。子供か!
「それにガロッチは死んでいないから試合は引き分けだ。つまり無効だ!」
どういう二段階活用法だよ!
ま、いいけどね。
「そっか、残念だなー。オッサン帰ろっかー」
「なに!? フジワラ何を言っている?」
「え、だってしょうがないじゃん。いいからオッサン早くあっち行けよ」
「ム、ムム、押すな。なんだ一体」
オッサン足手纏いなんだから早く安全なところに行けよ。
「フジワラ、最終試験に落ちたものは二度と試験を受けることは出来ないのだよ」
「え、マジで? そんなルールいつ出来たの?」
「フフ、秘密さ」
「それは困ったなあ」
「ウフフ、スキルの迷宮に潜りたいなら僕が相談に乗るよ」
「え、そうなの?」
「アア、僕と契約を結べば全て解決さ」
「へー、けどさ」
「ん、なんだい?」
「それは、あんたが生きてたらの話だよな」
「んん?」
ゴゥ、
それを見たセザールが驚愕の表情で聞いてくる。
「フジワラ、お前、何をしたんだ?」
「ん、何もして無いぜ」
振り向いた俺の顔を見たオッサンが黙る。
「……全て織り込み済みということか」
ニッコリ嗤う。おっと字を間違えたぜ!
ゴオオオオオオ!
背後の異常に気付き振り向くゴルジフ卿。
そこには炎が立っている。
違う。
胸から剣を生やし炎に包まれる騎士がその剣に持ち上げられぶら下がっている。
後ろには、燃え尽き鎧が溶け炭となった騎士だった残骸が転がっている。
「な、なん、だ...」
ドロリ、と鎧が溶け出し、カサッと燃え尽きた灰が宙を舞い、それが姿を現す。
それは、炎に包まれた人間。
しかし、それは原形を留め元の人の姿を保っている。
「ガロッチ、か?」
騎士の一人が斬りかかる。
その剣を造作も無く手で受け止める。ジュッという音と共に溶ける剣。
剣を失った騎士に炎の剣が突き出される。
盾で受けるが、ジュッという音と共に盾を溶かし貫通し騎士に刺さる。
「ギャアアアア!」
一瞬の断末魔の悲鳴を残し炎に包まれる騎士。
「よー、ゴルジフさんよ。それ呪いの暴走だぜ」
「な、なに」
「ガロッチは呪いに飲み込まれたってことだよ、大変だな、そんなの生み出しちまってよ。この町滅ぶぜ」
「…………オオオオママママエエエエエ!!!!!!!」
凄い形相になるゴルジフ。
理解したのだ。
怒りと後悔と号泣と、後は何だろうな。面白い顔だ。
「こうする為にわざとガロッチを殺さなかったんだなアアアアアア!!!」
「え、違うよ。平和主義な俺は無闇に人を殺さないんだよ」
「フウザアケエルウナアアアアアア!!!」
「貴重なスキルの迷宮ごと街を滅亡させたゴルジフ家。語り継がれるな、やったね!」
「アアアアアアアアアアアア!!!」
騎士が次々と炎にされていく。
セザールが俺の前に来て睨む。
「おいフジワラ、これは冗談で済む問題ではないぞ!」
「え、そりゃそうだろ。使っていた者の危険さも認識してないバカと、それを野放しにしているアホによる将来起こるべき結果が今起きただけだろ」
「…………」
黙り込むオッサン。簡単に論破され過ぎだぞ。
「ワシ等冒険者ギルドは、アホか」
「違うのか?」
腰に下げていた魔法の鞄から戦斧を取り出すセザール。
「オッサン、何する気?」
「アホなりに責任を取らんといかんだろう」
…………まったく。
ピシッ!
「アウッ」
「可愛い声出して気絶すんなよ」
オッサンを気絶させる。
けど、まあ、性根は腐ってないんだよな、オッサン。




