20:剣術
「始め!」
合図と同時に、飛んで来るスラッシュの斬撃波。
大地の剣で斬る。
「ほぅ、これを斬るか」
ボッボッボッ!
縦横斜めの斬撃波が飛んで来る。
斬斬斬。ガンッ!
横縦斜めに斬り、距離を一気に詰め首を狙った突きを弾く。
斬、ギンッ! ガッ! 斬斬!
スラッシュを混じえた攻撃を斬り、弾き、受ける。
「小僧、素人ではないな」
間合いを取り聞いてくる。
「そりゃ、剣くらい扱えるさ」
「剣術スキルもあるだろう? 貴様のそれは扱えるというレベルではない」
「無いんだなあ、それが。だからこの剣も宝の持ち腐れでね」
「嘘をつくな、それほど使えれば否が応でも剣術スキルが発現するわ!」
言いつつ、五連突きを繰り出してくる。
スキルの五連突きはほぼ同時に突きが繰り出される。
カカカカカッ!
っと全てを弾く。
それを見ている観戦者は。
「あれは、遊んでるのかね?」
目にも留まらぬ攻防が理解できず、自分を護衛している近くの騎士に聞く。
「いえ、どれも当たれば致命傷を与える技です。それを悠然と受け流しているフジワラと言う冒険者の技量、尋常ではありません」
「んん? フジワラは剣術スキル持ってないよね、なぜ受けられるのかね?」
「あれは剣術を知らぬ者の動きではありません。本当は剣術スキルを持っているのではありませんか?」
「んんー? もしかしてこの展開を読んでワザと剣術スキルが無いと言ったということかね?」
「ありえます。冒険者というものは小賢しい策を弄してきます」
「ケヒィ!」
奇声と共に、剣が纏う炎の質が変化する。
「なんだ? もしかして呪いか?」
剣の禍々しさが増したのだ。
「そうだ、この炎は消えないぞ!」
炎を纏ったスラッシュ、斬撃波が飛んで来る。
斬!
切断した大地の剣に炎が纏わりついてくる。
「剣で防いだようだが、この炎が体のどこか一部にでも当たればその部位が燃え尽きるまで消えない」
「それは、怖いな」
ボッボッボッ!
斬、斬、斬!
動き回りながら、スラッシュを放っていたガロッチが宙に跳び。
「これは避けられまい。五月雨斬!」
頭上から数十の炎を纏った斬撃が降ってくる。
「フッ!」
呼気と共に剣を振るう。
キキキキキキキキキキンッ!
全ての斬撃を弾く。
「ヌゥ! まさか全て弾くとは!!! だが、抜かったな!」
観戦者たちは。
「久しぶりに呪いの炎の発動を見たね、コレで決まりかね」
「はい、あれは容易に斬れるものではありません」
斬!
「……斬られちゃったね」
「え、ええ、しかし炎が剣を燃やしています」
「おお、そうだね」
五月雨斬!
キキキキキキキキキキンッ!
「…………全部防がれちゃったね」
「いえ、見てくださいフジワラの腕に炎が!」
「おお、コレで決まったね」
ブンッ!
フジワラが炎の点いた腕で剣を一振りすると、全ての炎が掻き消える。
「…………消えちゃったね」
「そうですね」
この程度の呪いの炎など問題ない。少し魔力を通し振れば消える。
「なん、だ、と」
「この程度の呪いじゃダメージなんか受けないぜ?」
「バ、バカな...」
「貴様、やはり剣術スキルを持っているな!」
「だから、持ってないって」
「フザケルナ! 五月雨斬を防いだのは貴様も五月雨斬を撃ったからだろう!」
「ちげーよ、単純に全部の斬撃を打ち払っただけだよ」
「そんなデタラメな事、剣術スキルも無しに出来るか、アアアアアア火炎斬!!!」
剣から炎が吹き上がり、巨大な炎の剣となって振り下ろされる。
「キヒィ、シネイ!」
斬!
振り下ろされる炎の剣が掻き消える。
「…………バケモノか、」
呆然と呟くガロッチ。
「はぁ、この程度でバケモノとかほざくなよ。バカ」
観戦者たちは。
「…………」
「…………」
「ちなみに、俺、試合開始から一歩も動いてないんだよね」
「!!!」
観戦者たち。
「!!!」
「!!!」
「で、一度も攻撃してないんだよね」
「!!!!」
観戦者たち。
「!!!!」
「!!!!」
「で、今から攻撃するからね」
ドンッ!
爆発音と共に俺が急加速しガロッチの目の前に瞬時に移動する。
上段から大地の剣を振り下ろす。
ジャキンッ!
剣で受けられ、そのまま剣を振り下ろす。
体勢を崩し後方へ飛ばされるガロッチ。
ドンッ!
さらに加速し、振り下ろした剣を反さず大地の剣は諸刃なので、そのまま下段から上段へ斬り上げる。
ガツンッ!
崩れた体勢のまま受けようとした剣を大きく弾く。
完全に無防備の状態で後方へ宙を舞うガロッチ。
ドンッ!
本日三回目の加速。大地の剣を水平に胴を打つ。
刃を引かず、そのまま剣の重量と加速を加えガロッチを打ち抜く。
くの字になり吹き飛ぶガロッチ。打ち抜いた最後に剣先が浅く腹を斬り血も飛び散る。
ドガンッ!!!
盛大な音を立てて壁に激突するガロッチ。
死んだように見えるが、死んではいない、気を失っているだけ。
無益な殺生はしない。というわけではないが、
これで決着だ。




