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18:朝の一時

バラの宿に着く。


今日は色々あったな。さすがに疲れたわ。

「お帰りなさいませ」

セバスチャンが出迎えてくれる。

「ただいまセバスチャン。俺に何かある?」

使者とか、探りに来た奴とか、色々ね。


「特に御座いませんでした」

「そうなの? もしかしてセバスチャン誰かと繋がってたりするの?」

「バラの宿は中立です。お客様の情報を外に洩らしたり、なにかの策に荷担したりは致しません」

「本当に?」

「ええ、宿の信用問題ですから」

ニッコリ微笑まれる。


クッ! 最高のスマイルだぜ、セバスチャン。


セバスチャンスマイルに癒されつつ眠りに着く俺。










時は少し遡り。夕刻のバラの宿。


一人の男が訪ねてくる。

「どのようなご用件でしょうか?」

「ガロッチ殿に取り次ぎをお願いしたい」

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「ゴルジフ卿の使者と伝えてくれ」

「少々お待ちを」


酒の匂いと、汗の臭いが充満した部屋。

ベッドに転がる女の横で、男が肉にかぶりついている。


旨そうに肉を咀嚼し、酒を飲む。

意識の無い女の髪を掴み顔を上げる。

「気付けだ」

口一杯に含んだ酒を女の口に流し込む。

「グッ! ゲホッゲホッ!」

酒にむせ、咳をする女。

「気が付いたな。続きだ」

男が嗤う。


チリン!

とベルが鳴る。


鳴ったベルをひと睨みし続きを始める男。



タップリ二時間経ってから受話器を取る。

「なんだ?」

フロントの男の声がする。

「お客様がお待ちです」

「誰だ?」

「ゴルジフ卿の使者と」

「通せ」

「かしこまりました」

「オイ!」

「はい、何で御座いましょうか?」

「女を替えろ。飽きた」

「かしこまりました」


訪ねて来た男に挨拶させる隙もなく聞く。

「仕事か?」

「はい」

「久しいな、どんなヤツだ?」

「ローランの冒険者です」

「ほう、剣鬼のいたギルドか」

「はい、知り合いだそうで」

「ほう! 使い手か?」

「格闘術の使い手です」

「剣術ではないのか、つまらん」

「光魔法も使う相当の手練れという話です」

「そうか、だが格闘術など相手にならん」

「確実に心を折るか、殺してほしいとのことです」

「そうか、手段は問わないということだな?」

「はい、剣術スキル以外使用禁止というルールで試合(しあ)う事となっております」

「戦いにならんな、まあいい、なぶり殺すとしよう」


明日の事を想い激しくたぎる。


喉をひくつかせ、酒を煽り、動かない女を掴み、始める。


その光景を見ながら使者が部屋を出ていく。


「剣を極め、欲の溺れた剣士。まさにうってつけの存在」

宿の部屋を見上げながら呟き、雑踏に消える。







目が覚める。

ノックの音に返事をし、顔を洗う。


コーヒーの香りが漂う。

いいね、食欲がわく。パンが食べたい気分だな。


メイドさんからコーヒーを受け取り。朝食を頼む。


昨日の倍以上のシェフと食事が出る。

いいね、昼と夜の分も朝に出してくれと頼んでおいたのだ。


朝食として食べる分を取り分けてもらい、シェフの諸君には退場してもらう。

ふふ、同じ失敗はしないのだぜ。


メイドさんには、コーヒーのおかわりを入れてもらってから下がってもらう。

部屋を出ていくときに、ありがとうございますと礼を言われてしまった。

礼を言われるようなことはしてないが、まあいいか。


残った食事をアイテムボックスにしまう。

順調に高級料理がストックされていくぜ!


セバスチャンに朝の挨拶をして、最高の笑顔で見送られる。



なんか俺このまま死にそうな雰囲気なんだが、大丈夫か?



とか思いながら、門番の人に話しかける。

「最終試験って、昨日の試験場いけばいいのか?」

「そうだ。案内は受付でしてもらえ」

答えは堂々としているが、何やら腰が引けている。なんだ?


あ、そうか、昨日ここでやらかしてたな俺。

「脅かしちまってゴメンな、けど参考になっただろ」

「あ、ああ」

怯えながら答えられてもなあ、まあいいか。




今日こそ麗しの受付嬢とのご対面。

「お早う、ロザリーちゃん!」

「おーう」

ザケンナ!

「オッサン死ね!」

「おー? 出入り禁止にしちゃうぞ」

「ダマレ、オッサン死ね!」

「おー? いい度胸だ」

「ギルド長、どいてください。ちょっとだけって言ったじゃないですか」

「まてまてロザリー、ワシがこの害虫を追い払うまで隠れてろ」

「ガンバレロザリーちゃん、そんな薄汚いオッサンに負けるな!」

俺は断然ロザリー派!


そうだ、頑張れロザリー。

オッサンどっか行け。

ロザリーちゃん結婚して。


小声で囁かれる応援メッセージ。だが待て、変な応援が混じっていたぞ。


「ワシのロザリーに結婚して、などと言ったやつは誰だ!?」

怒りだすオッサン。しかし、お前も言ってることおかしいから!


「おい、セクハラオッサン。試験場まで案内してくれよ。別にその席にいたいならロザリーちゃんが案内してくれてもいいぜ」

「あ、はい。では私が」

「まてまて、ワシがいく」

「なんだよ、ロザリーちゃんの席に座ってハアハアしてろよ変態ギルド長」

「な、な、な、な、」

「なんだよ、図星か?」

「ナンダトオオオオオオオオ!!!」


朝の楽しい一時を過ごす。

カラカイ甲斐のあるオッサンだ。まさか本当にロザリーちゃんを狙ってたりしないよな?


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