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17:逆恨み

ギルド長の部屋:

ソファーに座っているポールが質問をする。

「なあ、セザールさんだっけ」

「なんだ?」

「俺、ローランしか知らないんだけど、冒険者ギルドってこんなに貴族に侵食されるものか?」

「色々だ。ブオトの町は利権が大きいからな、ワシが来たときには既にどうにもならない状態だった」

「そうなのか、大変だな」

「フジワラとお前の話を聞いてるとローランのギルドは完全に貴族達から自立しているみたいだな」

羨ましそうに言うセザール。


「そうだな、気にしていなかったけど、ギルバートさんとウィリアムさんは凄い人達だったんだな。冒険者ギルドと敵対した貴族がギルバートさんに力尽くで排除されていったって言うのは本当だったんだと、フジワラを見ていると理解できる」

「剣鬼か、会ったこと無いがフジワラみたいな性格だったのか?」

「いや、ギルバートさんはもっと過激だったな、有無を言わさず殺してたからなあ」

「殺してたのか。己の強さに絶対の自信があったのだろうな」

「だなあ」

貴族やゴロツキを殺したりしたら確実に倍以上の暴力で仕返しが来る。

それを意に介さないほどの強さを持っていたと言うことだ。


「緊張感の無い会話してんなよ」

「ウオッ!」

「フジワラ、何時の間に!」

隠密して音消して入ってきたんだよ、お前等油断しすぎだバカ。


「そんなのどうでも良いだろ。取り合えずポールは今すぐ発ってもらうけどいいか? 何かお土産でも買っていくか?」

「オ、オウ。飯でも食っていかね?」

「ポールー、マジかお前、何かあっても助けないぞ?」

「分かってるさ、冒険者の行動の責任は自分持ちだろ」

「ああ、一応裏からの手出しは出来ないように布石を打っといたけど、この町で俺に関わりあるのって今のところお前だけなんだぞ、俺がゴルジフ卿なら取り合えずお前の身柄を押さえるぞ」

「分かってるよ、けど、飯くらい奢らせてくれ。今回は色々と学ばせて貰った、その礼をしたい」

「あー、そうか。金貨百枚は高い授業料だったな」

「なに、安いものさ。死の体験をして元通りに生き返れたんだしな」

実際、蘇生で金貨百枚は格安価格だしな。


「それもそうか、俺は絶対体験できないモノを体験したんだったな。ちょっと羨ましいかもな」

俺は仲間がいない場所で死ぬ事は出来ない。死んだ時点で俺は終わりだろう。

ま、死ぬつもりはないから、そのために最大限の努力をしているがな。


俺以上に絶対に死ねない奴もいるし、とっとと目的の物を手に入れて、また傍についててやらないとな。





酒場:

ポール。酒飲むなよ、お前この後、馬に乗ってローランに旅立つんだぞ、殴っちゃうぞこの野郎。

「フジワラも飲もうぜ!」

ペシッ! デコピンをおみまいする。

「アウチッ!」


「いてーな、何すんだ、アウチッ!」

ペシッ! ペシッ! ペシッ! ペシッ!

ポールが気を失った。


「フジワラ、やりすぎだ」

隣のセザールさんがなにか言いやがる。

「てか、なんでオッサンまでいるの?」

「別にいいだろ」

「暇なの?」

「ひ、暇じゃないわい」

「死ぬの?」

「なんで死ななくちゃいけないんだ!」



―――― ったく。面倒くさいな。



夜半の町外れ:

状態回復(キュア)

ポールの酒を抜く。

「オッ! 酔いが醒めた。何してくれるんだフジワラ」

「おー、マジで言ってるの? また殴っちゃうよ」

「ヤメテ!」


ポールがオッサンの手配で手に入れた馬に乗る。オッサンとは酒場で別れた。

「夜は魔物も出るからな、気を付けろよ」

「ああ、わかってる」

さっき、明日の俺の最終試験を見ていくとか言い出したので、グーで殴ったところだ。



ポールが闇へと続く街道を見ながら呟く。

「世話になったな」

「ああ」

「俺は何をすればいい?」

「あ?」

「正規の蘇生の料金は俺も知っている。それに俺のせいで秘密にしていた情報が色々バレたんだろ」

俺の光魔法とか諸々の事だな。

「気にするな」

「これでも人の親だ。受けた恩は返さないとな」

「金を貰っている」

「けどよ」

「じゃあ、手が空いた時でいいからローランの市民街ギルドを手伝ってやってくれ、じじいが消えてからサラさん達も大変そうだしな」

「ああ、わかった。そうだ、冒険者を辞めてギルド職員ってのも悪くないな」

「おいおい、変なフラグ立てんなよ」

「フラグ?」

「なんでもねーよ、ほら、さっさと行け」

シッシと手を振る。


ヒデーなあと言いながら馬が駆け出す。


しばらくそれを見ている。気配察知でな。


ポールの向かう先に待ち伏せは無し。町から追う者も無し。


問題ないな。

ポールを人質に取る必要はないと言うことか。

何か必勝の策があるってところかな?

まあいい、明日になればわかる。








んじゃ。

「出てきていいぞ」

物陰に潜む奴等に声を掛ける。


………………

…………

……


待つ。

俺の帰り道の物陰に、剣を抜いて待ち伏せしてるが解ってるから声を掛けたんだがな。


………………

…………

……


こちらから動く気が無いのを理解したのか、物陰から出てくる。


五人か。


「今日はよくもやってくれたな」

とリーダーらしき男が喋る。

「俺、なんかした?」

なんか見覚えがあるような無いような。

「フザケルナ! お前の邪魔のせいで試験に落ちただろうが!」

「ん、試験にいた奴か、けど、俺誰かの邪魔とかしてないぞ?」

「フザケルナ! ワザと俺に人型の頭をぶつけただろうが!」


あ!


「俺の隣でボソボソと文句いってた奴か、三十七番だっけ?」

「そうだ! お前のせいで無駄になった金貨五枚と慰謝料を出せ!」

「いやいや、あれは先にお前がスラッシュを俺に撃ってきたからだろ」

「関係無い。有り金全部出せ!」

おいおい。本音が出てるぜ。


「お前が金貨百枚以上持っていることは知っている。それを全部寄越せ!」

なんで知ってるの?っと。

「あんた、俺の前、最後に棄権した奴か」

そうだったな、冒険者の目撃者が一人だけいたな。

「ヘッ! ワリーなニイチャン。大金持ってこんなところに一人でいるあんたが悪いんだぜ」

そうなのか、知らなかった。


ジリジリと俺を囲む男達。


「ヘッ! 殺した後、あんたの死体をあの貴族様に持っていけば、高く買ってくれそうだ」

「俺、殺されちゃうの?」

「ヘヘッ!」

「ヒヒッ!」

暗く笑う嗤う男達。


「こいつは格闘術を使うぞ、タイミングを合わせろ、拳の間合いの外から攻撃するんだ」

「オウ!」

「オー!」

「ヒャヘ!」

「ホヒ!」

「月下...」



「「「「「いくぞ!」」」」」


「満月!」

地に美しい満月が描かれる。


チンッ!

と、(つば)が澄んだ音を立てる。



十個になった五つの骸をアイテムボックスにしまう。

「んー、スキルの迷宮行けるようになったらそこに捨てるか」

迷宮は生命無きモノを吸収する。



何事もなかったかのように歩き出すフジワラ。


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