12:試験
パンパンとゴルジフ卿が手を叩く。
「一人減ってしまったけど、始めようかね。準備はいいかい?」
始めの合図と共に攻撃が始まる。
「スラッシュ!」
「オオオオ! ロッククラッシュ!」
「トリプルアロー!」
「三連突き!」
剣使い、鎚使い、弓使いに槍使いそれぞれがスキルを発動し必殺技を撃っている。
魔法使いは居ないのか、まあそれもそうか。
呪文破棄とか短縮詠唱とか出来る魔法使いの冒険者はDランクに留まっていたりしない。俺も物理系のなにかで攻撃するかな、うーむ、武器とか出すの面倒だし格闘術でいいか。
「スラッシュ! ダブルスラッシュ!」
「パワークラッシュ!」
「ダブルアロー! ピアッシングアロー!」
「二連突き! 二連突き! 二連突き!」
相当固いのか、鎚使いが頭の部分を半分潰している以外、ほとんどの人型は原型を留めている。
「冒険者の諸君、時間は残り半分を切ったよ。五番の君は頭部を完全に潰せば合格だね。他の人達は胴を切り裂くか頭部を切断したまえ。槍使いの君は心臓部分か頭部を槍で貫通すれば合格だよ。頑張りたまえよ」
楽しそうに冒険者を応援するゴルジフ卿。
第二試験まで到達して欲しそうな感じだな。嫌な予感しかしないぜ。
「はい、終了。五番と七番と十番が合格だね。他の番号はもう少し強くなってから再挑戦してくれたまえ、帰りはあっちだよ」
そう言って、入ってきた扉を指差す。
「ああ、ここでの事は口外無用だよ。喋ったら殺すからね。冒険者カードで名前も所属も分かっているからね。解るよね」
そう言って、楽しそうに笑う。
「人型も新しくしたし、次は十一番から二十番だね。始めようか」
………………
…………
……
「十一番と十二番、十五番から十九番まで合格だね。じゃあ次」
ポールの番だ。二十二番のポール。
短剣の二刀流か、え、まさか二刀流スキル持ってるの? 凄くね?
ゴルジフ卿も興味津々だ。
「……始め」
人型に向かって走り出すポール。
「サイクロン!」
短剣スキルの必殺技。回転しながら連続で斬りつける技だ。
だが違う、技を繰り出しているのは右手の短剣でだけだ。
二刀流なら両方の短剣から技が発動し二倍以上のダメージをたたき出すはず。
回転しながら宙を舞ったポールが着地すると同時に左手で技を繰り出す。
「ポイズンバイト!」
毒噛みの名前の通り毒を付加する短剣技。
これは、二刀流ではないが連続技だ。追加ダメージが発生する。
悪くない、つまりポールは両利きということか。
「ダブルエッジ! トリプルエッジ!」
毒で腐蝕した部分を狙って技を繰り出すポール。
上手いな。Dランクにしては卓越した技の持ち主だ。残った自信も頷ける。
三十秒たたずに人型の首が落ちる。最速の記録だな。ナイスポール。
ゴルジフ卿は、興味を失ったようだ。
まあ、凄いといってもDランクにしてはだからな。稀少な二刀流スキルを持ってない時点で興味の対象外か。
「二十二番、二十六番のみか、二十番台は不作だね。ところで二十二番の君、君のあれは二刀流と言うわけではないのだよね?」
ポール。喧嘩売る気がないなら言葉使いには気を付けろよ。
「はい、自分は両利きですのでそれを活かし、片手で技を連続で撃つよりも速い間隔で撃てるように鍛練しました」
おぅ。さすがに王都で暮らしていれば貴族に対する接し方も学ぶよな。素晴らしいぞポール。
「ほう、そうか、そういうやり方もあるのだね。うんうん、君イイネ!」
イイネ出た! やったなポール。誘われるかもしれないぜ。
「君はどこのギルドだい?」
「はい、ローラン王都の市民街です」
「ああ、王都なんだね。うんうん、王都出は良いのが揃っているね。そういえば今回の試験にはもう一人王都出の人がいたね、誰だったかね。もう受かっているのかな?」
「ゴルジフ様、私です」
手を挙げる。
「ああ、さっきの君か。うんうん、試験頑張ってくれたまえよ」
「はい。頑張ります」
「うんうん、イイネ! 王都出は口の聞き方を心得てるね」
「有り難うございます」
ちょっとこの茶番を楽しんでいる俺がいる。
隣の奴が俺の耳元で囁く。
「ケッ! おべっかで受かるつもりかよ。王都のギルドはゴミの溜まり場か?」
うるせーなあ。文句があるなら皆に聞こえる声で喋れよ。
相手をするのも面倒なので黙殺する。
「人型の準備も出来たようだ。一次試験もこれで最後だね。皆頑張りたまえ」
俺の番だ。そうだな、一撃で決めるか。
「始め!」
合図と共に人型に向かい歩き出す。




