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虚構世界の弓使い  作者: 釜飯より生まれし男
16/17

ぼっちと友達

サキと再会して次の日のことだった。


「あ、あの!瀬奈さん!よければちょっとお話ししませんか⁉︎」


学校が終わり、瀬奈が帰ろうとしていたところに彼女は声をかけてきた。


「え、あの、な、その」


いつも通り瀬奈が何も言えずにテンパっているとその生徒は瀬奈の返事を聞かずに瀬奈の前に座ってきた。


「私、瀬奈さんとずっと仲良くしたいと思ってて……迷惑……でしたか?」


「い、いや!そんなこと無いよ!」


「本当ですか⁉︎よかった〜以前も何回か話しかけたことがあるんですけど瀬奈さんすぐにどこかへ行ってしまうから嫌われてるんじゃ無いかと思ってたんです。」


「別にそういうわけじゃないよ」


そこで瀬奈はようやく思いました。彼女は何回か自分に声をかけてくれた子だったのだ。

その度に自分は緊張のあまり逃げ出してしまい、彼女を傷つけていたと思うと、瀬奈は申し訳なくなった。


「瀬奈さんはいつもの1人だったので……1人の方が好きなんじゃないかって思ってました。」


「そういうわけじゃないの、だだ……人付き合いが苦手というか何というか……」


「じゃあどうしてですか?」


「……………………笑わない?」


「笑うわけないじゃないですか‼︎」


「私……極度のあがり症で……知らないい人の前だとすごく緊張して……相手の顔も見れないの」


「………………………………」


「………………………………」


「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \‼︎」


「おい」


「は、すいません!うっかり!あれ?なんか前もこんな会話をしたような……」


「奇遇ね。私もよ」











「瀬奈さんは何かゲームとかはしないんですか?」


「やってるよ?一応」


「そうなんですか?何をやってるんですか?」


「えっとアナディンっていうやつ「瀬奈さん!アナディンをやってるんですか⁉︎」


彼女が身を乗り出してくる。


「う、うん」


「実は私もやってるんですよ〜。あ、そうだ!よかったら今日一緒にやりませんか?」


「え、私が?」


「はい!ダメですかね?」


「そそそそんなことないよ!うん!」


「よかった!じゃあ5時にアルーニマの噴水広場で集合でどうですか?」


「あ、うん」


「分かりました!ではこれで!待ってますよ〜」


そう言って彼女は帰ろうとする。慌てて瀬奈は彼女を呼び止めた。


「ちょっと待って!あなたの名前は⁉︎ 」


「はっ!しまった!そういえばまだ自己紹介してませんでしたね。私の名前は藤沢 咲です!では!」


そう言って彼女は行ってしまった。

瀬奈は呆然と立ち尽くしていた。


「アナディンの中の名前を聞きたかったんだけど……」







5時になる少し前にセーラはログインする。相手の名前はわからないがはっきりと聞かなかったこっちにも落ち度がある。


(待ち合わせしてるしきっとわかるよね)


そう考え瀬奈は噴水広場へ向かうそこには


「あ、セーラさん!こんにちわ!」


「あ、サキ」


サキがいた。彼女はセーラの姿を見るとすぐに近くに来て嬉しそうに話しかけてきた。


「聞いてくださいセーラさん!昨日セーラさんに相談した子のことなんですけど、上手く話ができたんです!」


「そうなの?よかったね」


「はい!それで今日は一緒に遊ぶ約束をして待ち合わせしてるんです」


「そう、頑張ってね」


「はい!」


サキと別れセーラはサキとは少し離れた位置で彼女……藤沢 咲を待った。


(そういえばサキと名前が一緒だな〜、まぁよくあることか)


セーラは特に気にすることなく彼女を待った。名前こそわからないが探せば見つかるだろうと思ったのだ。





「来ない」


あれから2時間が経つが一向に彼女はあらわれない。


(ひょっとして私をからかうために嘘をついたとか?いやそんなことは……)


セーラの思考もそれに伴いネガティブになっていく。


(もういいや。今日は帰って明日もう一度名前を聞こう)


そう思ってログアウトしようとするとふとサキに目がとまった。




「サキ」


「あ、セーラさん」


「その待ち合わせした子は来ないの?」


「はい……」


サキは残念そうに肩を落とす。


「いいんです。私にも責任がありますから。私がアナディンやってる名前をちゃんと教えなかったから……」


「そう……実は私もなのよ」


「セーラさんも? 」


「学校のクラスメートと遊ぶ約束をしたんだけどその子がアナディンでやってる名前を聞きそびれてね。探したんだけどやっぱり見つからなかったの」


「アナディンはプレイヤーの顔を多少はカスタマイズできますから……顔で判断するのは難しいんですよ」


「そうなの……」


その時ふとセーラはサキの顔に目がとまった。


(サキってよく見るとあの子に似てなくわないのよね……名前も一緒だし……そういえば彼女も待ち合わせをして名前を教えてそびれたって言ってた。ひょっとして?いやでもそんなことは……)


一度そう考えるとサキが彼女にしか見えなくなる。今までサキが彼女なわけないと思っていたので全く気づかなかったがよくよく見ればサキの顔も声もどこかしら彼女に似ている。


「ねぇサキ……あなたの名前って藤沢 咲だったりしない?」


「え⁉︎どうしてセーラさんが私の名前を知ってるんですか⁉︎」


「私……小日向 瀬奈よ」


「え、えええええええええええ⁉︎」






「いや〜まさかセーラさんが瀬奈さんだったなんて!全く気付きませんでした」


「大丈夫。私も気付かなかったから」


「ふふ、おあいこですね。いや〜瀬奈さんと仲良くしようと思っていたら、実はもう友達だったんですね!」



瞬間、時間がとまったかの様な感触にセーラは襲われた。



「……………………え?」


「ど、どうしたんですか⁉︎」


「友達?」


「はい」


「私が?」


「はい」


「あなたと?」


「はい……どうしたんですか?もしかしていやだっ……セーラさん⁉︎なんで泣いてるんですか⁉︎」


言われて自分の顔に手を当てる。自分は確かに泣いていた。


「セーラさん?もしかしてそんなに私と友達に……」


「ううん……違うの……」


「じゃあ……」


「今まで……友達なんか……1人もいなかったから……そう言ってくれて……すごく……嬉しくて……」


泣きながらなんとか答える。


「もう!大袈裟ですよ!そのくらいで泣かないでください!」


そう言ってサキは困った様に笑いながら涙を拭いてくれた。






拝啓 お母さん


私 小日向 瀬奈は今日、生まれて初めて友達が出来ました。

次回で最終回です。


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