『元日の地味な没個性とその周辺』(15)
一悶着(?)あったけれど、なんやかんやで滝沢くんは正気に戻った。
表面上は。
内面まではわからないけれど、詮索する必要性を感じないので問題ない。
ないったらないのだ。
ともあれ。
僕の貧相な語彙ではとても言い表せない豪華な料理の数々を、綺麗なメイドさんに給仕されながらご馳走になることしばし。
僕は幸せな気分に浸っていた。
そもそもあんまり空腹というわけでもなかったんだけど、これからの人生でこんな盛大な料理を食べる機会が早々巡ってくるはずもないのだと思えば、自然とお腹の中に詰め込みたくなるというもの。
根が庶民なのだ。
カニとか鯛とか海老とか肉とか肉とか肉とかなんか意味不明の横文字料理とか………。
やば――――――い。
超ウマ~~~~~~~~~い。
あ~もうこれ家族にも食べさせてあげた~~~~い。
タッパーウェアはないのか。タッパーウェアァァ―――――――っ!!
でも絶対にそんな庶民的なお願いとかしちゃダメだよねー。言えな~~~~い。絶対に言えな~~~~~~~~~い。
でも、超美味しいのぉぉ~~~~~~~~~~~っ! うぇいうぇい☆
もう少し芸風が豊かならマンガみたいにど派手なリアクションでもしてしまいそうになるぐらいの無闇な多幸感と全能感に頭を犯されながらも、ようやく飢えにも似た庶民の浅ましい欲望が落ち着いてきた。
お見苦しいところをお見せして、大変申しわかりませんでした。
その間もなんやかんやで話の種は尽きなかったのだけれど、ただ談笑してばかりというのも味気ないと言い出したのは誰だったか。
少なくても僕ではないはずだ……というのは、さておき。
「では、簡単なゲームに興じられてはどうでしょう?」
心得た様子のメイドさんが取り出したトランプが、地獄の底にあるという釜の蓋を開くことになるのだと、誰に想像できただろうか?
ともあれ。
僕と日下部くんと滝沢くんと殺伐とした空気を纏いながらのチェスが落ち着いた皇くんと姫野さんの五人でトランプゲームの大富豪を始めた。
大富豪が『大富豪』をするというのも、なかなかシュールだよね。
そして今――僕たちを取り巻く空気は氷結地獄の如し。
「「「………………………。」」」
誰も言葉を発さずに、淡々とゲームが進行されている。
十六回目のゲームが。
地味な没個性は平民にしかなれず。
天才医師は貧民にしかなれず。
お金持ちは、大富豪と富豪と大貧民をローテーションする。
天より恵まれた〝金運〟と優れた頭脳を駆使した権謀術数と生来の負けず嫌いが魔的な融合をした結果、生まれたのはトランプを使った戦争だった。
お金持ちって、ホントに怖いよね。勝負事になるとマジでヤバい。
頂点か次点か最下位にしかならないって、もう何か作為的なものすら感じてしまう。
実際のところ、大富豪という頂点に立った者を、落とされた二人が全力で引き摺り下ろしているのだけど。
僕と日下部くんの存在は無きものとして扱われていて、もうお互いしか見ていない。
隙あらば殺す。
そんな思惑を隠そうともせず――勝敗の話ですよ♡――表面上は無表情のままに手元のカードを出し続ける三人の大富豪。
緊張感と緊迫感が半端なく、冷や汗が止まらない。
ババ抜きにしとけばよかったと後悔しても後の祭り。
負けず嫌いが三人もいる時点で似たような結果にしかならないよーな気もするけれど……。
「「………………。」」
僕と日下部くんは刺激しないように、下手に気を引かないように細心の注意を払いながら、カードを出し続け――
十六回目のゲームの結果。
大富豪・皇くん。特典・玉座みたいな無駄に豪奢な椅子に座る権利が与えられる。
富豪・姫野さん。特典・マッサージチェア。
平民・僕。特典・普通の椅子。
貧民・日下部くん。特典・粗末なパイプ椅子。
大貧民・滝沢くん。特典(笑)・床に正座。勝者から嘲笑のおまけ付き。
「次だ」
暗く澱んだ瞳で、床に正座した滝沢くんが言った。
白石くんたちが絡まなかったら、マトモな部類だと思ってたんだけど、とんだ勘違いだったみたいだ。
むしろ、勝負事に熱くなれないとお金持ちにはなれないんだろうか。
業が深そうだよね。
「いいだろう」
勝者の愉悦を隠そうともしていない皇くん。
「いいわよ」
次で勝者になるべく虎視眈々と知略を練っている姫野さんは、今の地位に到底満足していない様子だ。
「「もう勘弁して下さい」」
僕と日下部くんは目の幅涙を流しながら懇願した。
普通に無視されました。
「え~、では~、第十七回目のゲームを~、開始しまぁす」
満面に汗を浮かべ、小刻みに震えながら、引きつった笑顔になってるメイドさんが、オドオドとトランプをシャッフルする。
彼女も涙目だ。
後悔の二文字が背景を埋め尽くしている。
「そ~いえば、ユッキーは来てないの?」
そんな僕らを哀れんだのか、それともなんらかの気紛れか、ちょっと離れたテーブルの烏丸先輩がひょっこりと問いを投げてきた。
「「え? なんですか?」」
甘粕先輩や緋衣先輩とちょっとわざとらしいくらい難しい顔で話しこんでいたのをこれ幸いと、瞬間移動の如く日下部くんと一緒に駆け寄っていく。
「人数が減ってしまったが、まあいい。敗者のままでは終われない。続けるぞ」
そんな僕らに構わず、お金持ちのみなさんはゲームを再開しようとする。
ゲームとはいえ、平民という称号を背負わなくてはならないという事実に目を瞑っているのか、些事と捨て置いているのかは定かじゃないけど。
「あぁ、いや、少し待て。三人では少しバランスが悪いので、雛森君。室井君が落ち着くまで待っているのも退屈だろう。参加したまえ」
「………えっ!? いや、その、その、ちょっ……待っ………」
皇くんに誘われて、雛森さんがキョドる。
気持ちはよくわかる。
「嫌かね?」
「は、はぃ、喜んでぇ」
「夜宵。あなたもよ?」
「畏まりました、お嬢様………………くっ……」
幸せそう〝だった〟雛森さんと元凶と言えなくもないメイドさんが、僕らの代わりにゲームに巻き込まれたような気がするけど、きっと気のせいだから後ろを振り返ってはいけない。
戦場では気を散らした人間から死んでいくのが常識だ。
自分の身も守れない者が、他人を気にかけていては犠牲者が増えるばかり。時には冷徹かつ非情に心を凍らせなければいけない時もある。
さっきまで余裕の余所見で見捨てられてたんだから、ちょっとぐらいいいよね?
え? ダメ?
ごめんなさい。許してプリーズ。
「相変わらず、あなたたちのクラスは楽しそうね。対岸の火事として見る分には……」
悲喜交々な光景を胡乱な眼差しで見やり、烏丸先輩が苦笑を浮かべる。
「参加してくださっても、全然構いませんが? 結果にわりと興味があるので」
「やぁよ」
すっと前髪を掻き上げながら、着物姿の烏丸先輩は艶然と微笑む。
「さいですか……」
烏丸先輩は、三年の生徒会長をしている先輩だ。
学園祭の時に何度か接点を持つことがあったけれど、才媛という言葉が相応しい綺麗な人だった。
あと、胸がおっきい。
多様な才能に恵まれて、敵も圧倒的に少なく慕われていて、教師の中にもファンが多いとか。
天城財閥麾下十二企業やそれに連なる名家、由緒正しい家の出というわけではなく、ただただ純粋な才能だけで、あの学園の『生徒会長』になったのは素直に凄いと思う。
ちなみに。
ウチの学園は生徒数がアホみたいに多いので、学年ごとに生徒会が設けられていたりする。
一年の生徒会の生徒会長に選ばれるのは、新入生代表に選ばれた人というのが慣例だ。
勿論、拒否権はある。
滅多に使われることはないけれど。
天城学園の生徒会長の座は、将来的に有利に働くステータスでもあるからだ。
烏丸先輩は新入生代表に選ばれたのに、生徒会長の座は辞退したという変わり者である。なんでも、中学から続けていたテニスに集中したいからという理由で。
わりと前代未聞で、当時はちょっとした騒ぎにもなったらしい。
少なくないやっかみとかを招いたらしいけれど、その年の大会で見事な結果を出して、強制的に黙らせたとか。
なお、二年になると同時に、新たな生徒会長を決める生徒会選挙が行われたりもする。前年度の実績なんかも考慮されたり、やっぱり生徒会長というステータスが欲しい人が多かったりで、学園でもかなり盛り上がるイベントだったりするんだけど、烏丸先輩が立候補して、見事に生徒会長の座を奪い取った。
元・生徒会長を副会長にするというおまけ付きで。
これもまた前代未聞だったそうな。
なにかと話題が豊富で、生まれるのがもっと遅かったら、間違いなくウチのクラスの一員だっただろうと名誉なんだか不名誉なんだかよくわからないことを言われているのが、烏丸先輩なのである。
行動の原動力となっている心の内側まではまだ見えていこないけれど、〝上〟を目指し続けるのが是とされる世の中なので、遥かな高みで『伝説』となり、将来的に後輩として可愛がられましたとかインタビューを受けてみたいと思ったり思わなかったり。
「……あ、お邪魔しますね。甘粕先輩、緋衣先輩」
なんて、プロフィールみたいなことを思い浮かべながら、烏丸先輩たちのテーブルにお邪魔させてもらう。
ケーキスタンドに色とりどりのデザートが並び、年代もののカップに紅茶とかが注がれている。
なんかこうお嬢様のお茶会みたいな雰囲気のテーブルだ。
あっちのお金持ちの戦場じみたテーブルよりも、よっぽどハイソな雰囲気である。
依頼を受けて対象を護衛する職業で実家が有名な甘粕先輩以外は、広義的には一般庶民なんだけどね。
「どうぞ」
「お疲れさま」
甘粕先輩と緋衣先輩は労うように、僕と日下部くんを歓迎してくれた。
遠慮せずに座らせてもらう。
先輩相手なんだから少し萎縮してしまいそうになるけれど、さっきまでいたところに比べると春の草原のように穏やかな空気にも感じられて、逆に馴れ馴れしくなり過ぎないように注意しないといけないとか思ってしまうのだから、人の心は本当に不思議だ。
「ところで、ユッキーというのはどちら様でしょうか?」
極限の窮地から救ってくれた烏丸先輩に、恭しく問いかける。
「柊さん家の雪菜ちゃん。あなたたちのクラスの四大お金持ちの一角が欠けてるのが、ちょっと気になってたのよね」
そんなに畏まらないでいいという風に手をヒラヒラさせてから、烏丸先輩は言った。
「あぁ……」
名前に含まれている雪のように真っ白な髪のお嬢様の姿が脳裏に浮かぶ。
この面子ならいるのが自然なぐらいだし、見かけなかったとしても挨拶回りなんだろうぐらいにしか思っていなかったけれど、かれこれ僕がここに来てから二時間ぐらい経ってるのに姿を見ないのも変だ。
どっかで誰かに長時間捕まっているのでなければ、そもそもパーティー会場に来ていないとも考えられる。
答えを持たない僕は、柊さんと親しい……というか、接点の多い日下部くんにちらりと視線を向ける。
「彼女も招待はされていたのだが、今回は個人的な都合で出席を見送っている」
傍に控えて給仕をしてくれているメイドさんが用意してくれた紅茶を一口飲んでから、日下部くんがスラスラと教えてくれた。
「ふ~ん。それはどんな都合なの?」
興味を引かれたように烏丸さん。
「あ~」
日下部くんは少しばかり、考えるような間を挟んだ。
なんだか選ぶ言葉に困っているようにも見えて、
「幸せの絶頂とブチ切れの極致という相反する感情の狭間を揺れ動いており、とても人前に出せるような状態ではない」
実際に口にした言葉はなかなかに奇矯なものだった。
理解するのに少しばかりの時間を要するほどに。
「「どんな状態っ!?」」
僕と烏丸先輩の声が裏返ったのも仕方がないだろう。
「個人のプライベートに関わることなので詳細は明かせない。先ほどの言葉の内容が彼女の状態を端的に示しているので、それで納得をしてもらえるとありがたい」
「とても納得できないけれど、なんだか大変そうなのはわかったわ」
「……代理というのもおかしな話だが、天城財閥の重鎮でもある〝時〟に連なる者――天城時正……彼女の兄でもある柊正雪氏がパーティーに出席しているので、いろんな意味で柊家としては大した問題にはならない。彼女も精神的に不安定にはなっているが、生命に別状があったりするわけでもないので、あまり心配する必要もない」
「なら、いいんだけど……」
心配しないのが無理な言いようではあったけれど、日下部くんの口の堅そうな様子に烏丸先輩は追求はしないようにしたみたいだった。
「烏丸先輩は、柊さんとは親しいんですか?」
個人的には意外な接点だ。
三年の生徒会長ともなれば、お金持ちともなんやかんやで接点があるのは学園祭の時のアレコレで理解させられたけれど、柊さんに関してはもう少し深い関係のように感じた。
「う~ん。前にちょっとした縁が生じたぐらいなんだけど……。あなたのクラスの他の三人と違って、ちょっと気になってるのよね。直感的に」
「直感的に、ですか?」
最後に付け加えられた言葉に、僕は首を傾げる。
「そ~ゆ~意味では、海棠さんとこのお嬢さんの姿が見えないのも、気になってるわね」
「あ、海棠さんなら――」
「何か知ってるの?」
「想い人である水城くんを拉致して、姫納めだの姫初めだのと宣いながら、どこぞの温泉宿かストレートなホテルで、その……なんといいますか、昨夜から熱烈にしっぽりしているかと思われます」
忘れてたわけじゃないんだけど、思い出したくもなかった。
どう転んでいたとしても、今頃はもう運命は決しており、水城くんの童貞か生命が失われてしまっているのだろう。
輝かしい新年を迎えた元日が、水城くんにとっては忘れられない一日となる。
合掌。
僕は悟りを開いたような表情で、両手を合わせた。
「無茶しやがって……」
同情満載の表情で、日下部くんも冥福を祈るように両手を合わせた。
「水城くんは被害者だけどね。拉致られる直前に、古都乃先生に頭から床に叩きつけられてたし……」
「何故だろうな? 一連の事情はさっぱりわからないのに、物事の流れが妙に明確に思い描けてしまう。……ここで言っても詮無いことだが、死んでさえいなければ、必ず生命を繋いでやる。だから、なんとか生き延びろ。生命を失うのに比べれば、海棠にヤられるぐらい安いものだろう」
「……普通なら、土下座して頼み込んでも叶わないぐらいなのに、水城くんは何が不満なんだろうね?」
「あまりに好き好きオーラ全開で迫られては、逆に反応に困るのでは?」
「ラブコメパートは省略する勢いで、速攻ベッドシーンに突入するだけなら、あんまり迷う余地とかないんじゃないかなぁ……?」
「自分に置き換えて考えてみたらどうだ?」
「………………………。相手が海棠さんという時点で、自分が迫られているという構図がまるで想像できない」
「これも日頃の行いか」
「ちょっと違うような気もするけど、そうかもね」
「かなり脱線してしまったが、水城は哀れだという結論でいいか」
「そうだね」
しみじみとした同情で、夜空に『キラン☆』と浮かぶ水城くんの顔を幻視する僕たち。
まだ夕方にもなってないけどね。
一方で――
「それは素敵ね♡」
烏丸先輩は、目をキラキラさせていた。
彼女は心情的に、海棠さん寄りであるようだった。
………というよりも、恋する乙女の……味方、みたいな?
柊さんと海棠さんの共通する点は、お金持ちであることと一途に〝誰か〟を想い続けている恋する女の子というところだ。
そんなところが琴線に触れたりしたんだろうか?
もしや、烏丸先輩も?
「そうですかぁ……? 海棠さんの手段には、個人的にはドン引きなんですけど?」
「そこまで想われてることを光栄に思うべきよ♡」
「………私には、理解できないな」
日下部くんは、やれやれとばかりに頭を振る。
「恋に対する見解は女の子と男の子だと全くの別物だものね。それを踏まえた上で、男の子にちょっとだけ忠告するなら、自分の理想を押し付けるような発言は慎むべきよ。外見ばっかりを褒めるのもNGね。外面しか見てませんって言ってるようなものだから。自分の容姿を自覚している女の子は、それ以外を見てもらいたいって傾向が案外と強いから、これはとっても大事よ」
「今後の参考にさせてもらいます」
謹んで頭を下げる僕。
「さすがは、才媛として有名な烏丸先輩ですね。恋する乙女の気持ちに、とっても精通してるんですね」
近くで皆喜さんが、パチパチと拍手をしていた。
なんか感銘を受けてるみたいだ。
グラビアアイドルとして、自分の容姿が商品みたいになっている皆喜さんにとっては、綺麗とか可愛いとかエロいなんて言葉は聞き飽きていて、やっぱりそれ以外の言葉が欲しかったりするんだろうか。
「わたしも恋する乙女だもの」
烏丸先輩が、魅力的なウインクを飛ばす。
わりと重要な情報が開陳されたような気がするけれど、追求はしない方針でいた方がよさそうなので、ご了承ください。
「応援させてもらいます♪」
「こちらこそ♪」
なんだか互いに理解を宿した瞳で見つめ合い、烏丸先輩と皆喜さんが微笑みを交わしている。
新たな友情が生まれたのかも知れない。
「ちょっといいですか?」
僕は手を上げた。
「なに?」
「烏丸先輩をアドバイスを参考に、ちょっとした褒め言葉を言ってみようと思うんですけど、お付き合い願ってもいいでしょうか? 当たり前だけど口説くつもりじゃないです」
せっかく勉強をさせてもらったので、今後のためにもちょっと練習してみたくなった。
機会があるかどうかはさておき。
「へえ?」
烏丸先輩が目を細める。
「それじゃあ、わたしを褒めてよ。褒められ慣れてるから、わりと難攻不落な自信があるわよ。気に入ったら、おっぱい揉ませてあげる♡」
雑誌の情報によるとGカップであるらしい胸を、両手でポヨポヨと弾ませながら挑発的に笑う皆喜さん。
「その特典は断固としていらないけれど、それじゃあ……」
僕は軽い咳払いを挟んでから、
「……皆喜さんって、イイ性格してるよね」
しれっと言った。
日下部くんが「正気かっ!?」みたいな顔になってた。
自分でもどうかと思うポイントを狙い撃ちにしたという自覚はある。
果たして、結果は――
「あははははははははは♪ さっすがは夕凪くん。その褒め言葉はポイント高いわ」
「さっきの今で、そんな言葉が言えるあなたは、なかなかの曲者ね」
キョトンとしたのも束の間、皆喜さんと烏丸先輩がお腹を抱えて笑い出した。
こんな風に笑うのは珍しいであろう二人なので、悪い意味ではなくウケたみたいだ。
でも、これって、あんまり参考にはならないよなぁ……。
――なんて思いながら、僕は湯気の立つ紅茶を飲んだ。
「ご褒美に、おっぱい揉む?」
その瞬間を狙ったような皆喜さんの悪戯っぽい言葉に、
「ぶひっ!?」
僕は豚の鳴き声のような奇怪な声とともに、紅茶を噴き出していた。
勿論、肯定の返事じゃないですよ。




