一年B組の学園祭 ~暗躍する地味な没個性~ First Chapter(1) 『ドタバタ?』
天城学園の学園祭。
十月半ばに行われるこの催しは、なんと五日間も開催される。
一々やること成すことのスケールが大きい天城学園の例に漏れず、準備費用は湯水のように巨額の資金が投じられるし、生徒たちも大いに調子に乗る。
そもそもが現在においては、一万人もの生徒を抱える巨大な学園だ。
いい感じに頭のイカれた連中(←褒め言葉です♡)もいるために、学園内だけではなく、外部からの期待も高まっている。
名家の子息令嬢もいるために、財界の大物といったVIPもやってくる。
お近づきになりたい者たちもやってくるので、大人の生臭い思惑がそこかしこで火花を散らしたりもする。
最早、ただの学園(?)の学園祭などと呼べるような代物でさえなくなり、どこぞで行われる夏と冬のイベントに比肩するようになったとかなんとか。
……マジで?
他にも学園と提携している大手旅行会社(多分、天城系列)がツアーまでも組んでいるらしく、天城系列や近隣の宿泊施設なんかはフル稼働で、笑いが止まらなくなるような大黒字を叩き出す。
そうした諸々が年々の拡大に拍車をかけた結果、外部から訪れる来場者が五日をフルに使っても全てのイベントを回り切れるような規模では収まらなくなっているほどだ。
正しく、お祭り騒ぎという表現の相応しい央都のビッグイベントである。
前提条件だけでもこんな有り様であり、それに加えて今年はさらなる注目種が存在している。
一年B組。
天城学園の誇る(?)筆頭問題児が集うクラス。
こいつらは絶対に〝何か〟をヤル!
常日頃、普段からほぼ毎日、某かのトラブルを発生させては、周囲を驚嘆させるとともにため息を吐かせている。
そんな連中が馬鹿騒ぎ(←個人の意見です♡)を合法的に許されている祭典で大人しくしていると思えるだろうか?
否! 断じて否であるっ!!
巻き込まれる可能性を度外視しているだけで、本当に巻き込まれないという保障が全くないという過酷な現実に目を瞑っている傍観者気分の一般生徒たちは興奮の眼差しを向けながら、度肝を抜かれるのを期待し。
爆弾解体の最後の二本の線のどちらを選べばいいのかに頭を悩ますような心境で緊張と不安に胃を痛める大人たちは固唾を飲んで、彼らの動向に注目する。
大舞台の時は一ヵ月後に迫り、様々な準備が水面下から表面化してくるこの時期。
徐々に浮き足立ってきた空気に、学園は包まれていた。
そんなある日。
ある意味においては、そんな空気の中心に近い位置に据えられている一年B組では、学園祭での出しものを何にするかの話し合いがされていた。
そして――
HR開始からたったの数分後。
「うるっさいっ! やっかましいのよ、このボンクラどもがぁぁぁぁぁぁっ!! たかが話し合いで教室を半壊させるような騒ぎを起こすなぁぁぁぁぁぁっ!!」
「「「うぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!」」」
キレた副担任の放つ何がしかの一撃で、既にズタボロの一言でしか表現できない惨状になっていた教室は止めを刺され、完全に崩壊の憂き目に遭った。
隣接するクラスに怪我人多数。
隣接するクラスに意識不明者続出。
後に蘇生するものの死んだと表現するのがよさそうな問題児連中多数。
――という目を覆うような大惨事になったのだった。
ただし、巻き込まれただけの被害者は即座に『神の手』が治療し、放課後までには全員が全快した。
問題児ども? 普通に放置プレイですよ。
まあ、言うまでもない話ではあるが、超個性的な問題児が揃ったクラスが、一つの目標に向かって一致団結するような光景を思い描く困難さが衆目に晒された形である。
前途多難。
最悪の場合、学園崩壊の危機。
それならいっそ参加するな――等々、この時点で多数の反響が拡がった。
が。
そんな周囲の声を気にする連中でもない。
周囲の期待と不安はロシアンルーレットじみた緊張感とともに膨れ上がりながらも、台風の目のような中心地帯は平常運転(?)で日々を過ごしていた。
そんなわけで、例の学園祭の話の始まりです。
とりあえずは長編三部作の予定で、第一部は『地味な没個性』が暗躍し始めるところまで書く予定です。
そこからは今後に必要なクラスメートの話をいくらかやって、第二部に行く予定で今のところは考えていますが、予定ばっかで定かではありません。
はい。わりといつも通りの平常運転ですね。本当に申し訳ございません。
気長にお待ちいただけたら幸いです。




