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人質救出?

今回、内容がいろんな意味でヒドイです。

前もって謝罪を……申し訳ありません。


「総員、戦闘再開! 野盗共を殲滅するぞ!」


 そう言って俺が駆けだすと、身内の7人もすぐさま反応し、野盗に襲い掛かった。クレアのほうも、重戦士のオルガはいち早く反応しているようだ。


「なっ!? てめーら、こいつらの命がどーなっても良いってのか?」


「知るかそんなん、俺達はお前ら野盗を退治に来ただけだからな。それに、お前らどうせ、約束なんて守らないだろ?」


 これは半分本音で、半分ハッタリだ。俺は、野盗に人質をとっても無駄だと伝えると同時に、仲間達にも戦うより他に選択肢が無い事を伝える。

 人質を助けようと手をこまねいていても、余程の幸運が無い限り、状況は悪くなる一方だろうし、それだとユーリくんの二の舞だ。

 それに俺達の場合、たとえ人質が傷つけられようとも、敵対勢力を迅速に無力化するのが最善手だと思うのだ。


「くっ、仕方ねー迎撃すっぞ!!」


「この人質はどうしやしょう、親分?」


「構ってる暇もねぇ、死なねー程度に切り刻んで、その辺に転がしとけ!」


「へい、親分! へへっ、悪く思うなよ。恨むんなら、お前らを見捨てたあいつらをグギャァ!」


 悠長にも人質を脅していた野盗の腕に、マシロが放った矢が突き刺さる。さらには、いつの間に野盗の背後に回っていたスズが、駄目押しとばかりに切りかかり、人質を回収して戻ってくる。

 ちなみに、もう一人の人質のほうは、クレアの仲間のオルガさんとナタリアさんが助けに向かってくれている。


 残る人質は一番奥にいるディアナさんだけだが、野盗の頭目らしき男が傍にいて、すぐには救出できそうにない。こいつが中々に強く、レベルは41だ。オルガさんと同じレベルだが、パラメータやスキルを見るに、実力は一枚落ちる程度か。その前にも4人の野盗が守りを固めているし、俺以外だとちと厳しいか。


「ここより先に進みたくば、我ら四天王をグハァ!」


「けっ! 1人倒したからって調子に乗るなよ、そいつは我ら四天王の中でも最弱なウギャッ!」


「ちょっ、おまっ!? こっちの話も聞けってゲギョァ!」


 目の前を遮る野盗を切って捨て、俺は先へと進んでいく。

 この3人は、強さ的にレベル30後半ってところだろう。このくらいの実力差があれば、殺さないように加減して倒すことも出来るだろうが、それだと余計な時間がかかってしまう。


 サクッと殺っていくとしようか。あっ、四天王の最後の1人が逃げやがった。

 

「あってめー、逃げんじゃねぇ! くそっ、どうせ死ぬなら、こいつだけでも道連れにしてやる!」


 野盗の頭目が、ディアナさんの腹部に剣を突き立てようとしているが、彼女が抵抗している気配は無い。俺も全力で走ったものの、さすがに間に合わず、頭目の凶行を許してしまった。


「へへ、この怪我じゃ、こいつはもう助からねーぜ。せいぜい、悔やむんだなぁ!」


 そう言って俺のほうへと、彼女を押し出した頭目は、巨大な手斧を握り追撃の構えだ。俺は彼女を抱きとめ、バックステップでその一撃を回避しつつ、5メートルほど後方に跳ぶ。

 着地したすぐ後方には、俺が今、一番必要としている仲間が待機してくれていた。

 

「ノルン、治療!」


「はい、お任せください!」


 人質をあっさり手放してくれてホント良かったよ。前世であれば、助かりようもない傷だが、この世界には回復魔法がある。それを考慮してこそ、こんな強引な手段に打って出たのだから。


 俺は、後ろ手にディアナさんをノルンに渡し、頭目に向かって駆けだした。後方からノルンが『エクスヒール』を唱えるのを聞きながら、頭目へと肉薄して剣を袈裟懸けに振り下ろす。


「ぐうっ、なんて力だ……てめーみてえな奴が、なんで野盗退治になんぞに出張ってくんだ? おい、なんとか言ったらどうなんだ、この野郎!?」


 敵もだてに野盗の頭目などやってるわけも無く、俺の一撃はギリギリで受け止められてしまった。

 頭目が何やら言ってきたようだが、俺に殺し合いの相手と、会話をする趣味は無い。話をするとしても、まずは相手を無力化してからだ。


「まずは死ね、話はそれからだ」 


「なっ!? このド外道がっ、ギィァ!」


 まずは、動揺する相手の右手首を切り飛ばし、武器を落とさせる。次に左手首、右足首と切り落として、転ばし。最後に、地面をのたうち回る頭目の、左足首を切り飛ばせば、さすがにもう反撃は出来ないだろう。



 俺は、周囲を警戒しつつ、後方のノルンを呼び寄せた。


「治療のほうは終わったか?」


「はい、身体の傷は完治させました。ですが……心の傷のほうは……」


「やはりそうか……彼女については、今は置いておこう。まずはこいつの治療も頼む、死なないように傷をふさぐだけでいい」


 死なない程度に、頭目の行動力を物理的に奪ったのは、詳しい事情を聞くためだ。残党が居ないかを確認するためにも、幹部の1人くらいは生捕りにしておくべきだろうからな。

 それに、被害者の怒りの矛先を残しといてやらないとな、ってのもある。復讐は何も生まないって言うけれど、何もせずに怒りを収められるような、できた人は少ないと思う。行き場のない怒りは、自分や他人を不幸しかねないし、俺はそんな逆恨みで面倒を掛けられたくはない。


「治療が終わりました。血を失って衰弱していますが、当分の間は大丈夫だと思います」


「ご苦労様。あとは、戦闘もほぼほぼ終わったようだし、皆を集めといてくれ」


 ノルンに指示を出した後、痛みで気を失った頭目を縄で縛りあげ、さるぐつわ代わりに布を噛ませておく。


 皆が集まるまでの間に、周囲の様子を確認しつつ、心を落ち着ける。

 冷静に自分の行動を思い返すと、我ながらドン引きである。人質を無視しての強硬突撃の上、倒した野盗の両手両足を切り落とすとか、狂気の沙汰だな。


 とはいえ、合理性を考えればこの行動も、間違いでは無いはずだ。俺にとって何よりも大切なのは身内の命であり、人質に気を取られて身内を疎かにしたのでは本末転倒だ。

 そして物理的に行動力を奪っておけば、万が一拘束を解かれても、脅威にはならない。まあ、彼ほどモラル値が低ければ、どっちにしろ街に着けば処刑されるのだ。手足が無くて不自由なのは、少しの間だけの辛抱だ。


 俺がどっちが悪人だと思われるような事を考えている間にも、皆が集まってくれていた。


「ちょっと、お兄さん! さっきの無謀な行動はなんなの!? 人質が居たんだから、交渉してからでも遅くは無かったじゃない。野盗だって同じ人、話せばわかり合えたかもしれないじゃない……」


「話せばわかり合えるか……お前が普通の人だったら良い考えだと思うよ。でもな、戦いに身を置く以上、その考え方は危険だぞ。同じ人だって、価値観は千差万別。それを忘れて、相手が自分と同じように考えるなんて錯覚したら、必ず痛い目を見るぞ」

 

 人はとかく、自分の考え方を基準に、相手の行動を予想してしまいがちだ。

 こちらが約束を守れば、相手も守るはずだ。こちらが譲歩すれば、相手も譲歩するはずだ。そう考えて、弱気に出て損をする善人が多いような気がする。日本人は特にそういう傾向が強い。

 相手が同じ人間であろうと、自分とは違う個である事を忘れてはいけない。人には天使のように清らかな心を持つ者もいれば、悪魔のように残忍な者もいるのだから。


「その辺で勘弁してやっておくれよ、この甘ちゃんには、あたいらが後で良く言って聞かせておくからさ」


「むぅ……悪かったわね甘ちゃんでさ」


 頭を乱暴に撫でまわすオルガに、子供っぽくぶーたれるクレア。そして、そこにスズの追撃が加わる。


「クレアは相変わらず子供ね、いい加減、現実を見たほうが良いわ。私達は、人々を守る騎士でも無ければ、物語に出てくる英雄でも無いの。まったく何年、冒険者をやってるのよ」


「そういうスズこそ、全然成長してないじゃないのよ。そんな子供体型で、子供扱いされてもな~」


「ふふふ、見た目で判断するなんて、やっぱり子供ね。私はもう結婚だってしてる、立派な大人の女性よ!」


 腰に両手をあて薄い胸をそらして、自慢げにスズが言う。 


「ななっ!? それじゃ、もしかしてあっちのほうも済ませちゃったの……?」


「ふっふー、とうぜんだよ。もう毎晩「あー、そういう話は後にして、まずは街に帰ろうか」」


 俺はそうかぶせて、スズとクレアの話を打ち切った。クレアの仲間達からの視線が痛い、スズはこう見えてもう成人だからな……。


 この場に居るのは今、俺達8人、クレア達4人、捕らえた野盗が6人に、人質だった女性が3人。人質だったのは、学問都市へと道中に出会ったユーリくんの仲間の2人と、行商人であるブルーノさんの奥さんである。

 他に人が居ないのと、彼女達の目が暗く淀んでいるのを見る限り、ユーリくん達がどうなったかは察するに余りあるものがある。


「一応、確認しておくが、ユーリくんとブルーノさんは?」


「…………二人とも、あたし達の目の前で殺されたわ」


「そうか……辛いことを思い出させてしまって済まない」


 ユーリくんにブルーノさん、惜しい人を亡くしたものだ。憎まれっ子世に憚るとよく言うが、逆に言えば、善人は早死にするってことなのかもしれないな。

 俺の問いに答えてくれたのは、ユーリくんの仲間の斥候、たしかアウラさんだ。ディアナさんとブルーノ夫人の瞳からは既に生気が失われており、彼女達から生きる気力を感じられない。

 何て言って声を掛ければいいのやら、これは完全に俺の手に余る。やはり、こういう時は同じ女性に任せるべきだな……うん。


「あーすまないけど、帰り道の彼女達の面倒は任せたよ、皆」


「うまいこと逃げたわね、アスラ……。でも確かにそのほうが良さそうね、クレアも手伝ってちょうだい」


「了解だよ。なら早速、出発しよっか?」



 話がまとまりかけた瞬間、目の前の茂みがガサリと音をたてる。野盗の残党か? と皆が警戒する中、1人の男が現れた。


「待ってくださいっす! おいらを置いて行かないでほしいっすよー!」


「なんか忘れてると思ったら、クルト、お前が居たっけな……」


「忘れるなんてヒドイっす! 隠れて見てろって言われたすから、見つからないように必死で隠れてたんすよ~」


「悪かったってば。ほら、お前が望むとおりに、3人は助けたぞ。ユーリくんは残念ながら間に合わなかったみたいだけどな」


 そう伝えると元野盗のクルトは、無事を確認するように彼女達に近づいて行った。


「ディアナさん、ごめんなさいっす。おいらにもう少しだけ勇気が有れば、こんな事にはならなかったかもしれないっすのに」


「…………なんで……」


「申し訳ないっす。おいらに出来る償いは何でもするっすから、どうか元気になってくださいっす!」


「……なんで……ユーリが死んで、あんたが生きてるのっ! 償い? なら死になさい! 今すぐ死ぬのよ、死ね死ねしねしねシネシネ!」


「ひっ!? ディアナさん、正気に戻ってくださいっす! 痛っ!」


 ディアナさんはクルトを突き飛ばすと、そのまま馬乗りになり、近くに落ちていたナイフを拾う。それをクルトに向けてって、そんな悠長に解説している場合じゃない、早くどうにかしないと。


 俺は彼女の正面に回り込むと、その振り上げた腕を掴んで、凶刃を止める。目の前で見ると、顔、マジで怖っ。これ、完全にホラーだよ、人ってここまで変わるものなのか。

 俺が彼女ともみ合っている間に、アウラさんが彼女の後ろから抱きしめる様に止めに入った。


「ダメだよディアナねえ、あんただけは人殺しなんてしちゃ。これからはあたしが付いてるから、あたしが頑張るから、だから…………お願い、どうか……どうか、ディアナねえを止めてください!」


「……分かった、『スリープクラウド』……って、効きゃしねえ『スリープクラウド』、『スリープクラウド』!」


 眠りの魔法を何度か重ね掛けして、どうにか無事にディアナさんを無力化する。


「これで、一時しのぎにはなるだろうが、根本的な解決にはなってないぞ」


「わかってる、後はあたしが何とかするから。あの……迷惑かけてごめんなさい、あと、助けてくれてありがと、です」


「まあ、無理はするなよ。何か手伝えることが有れば、言ってくれ。実際に助けてやれるかは別だが、言うだけならタダだからな」


「うん、お世話になる、ます」


 そう言って頭を下げる、アウラさんの顔は憔悴していながらも、自分がしっかりしないとという使命感に満ちていた。

 野盗に捕まり地獄を見ただろうに、1人でもまともに精神を保てている事を喜ぶべきか、それとも、地獄の中でさえ、まともで居られた彼女を憐れむべきなのか、俺には分からなかった。


 ただ一つ言えることは、この世界は誰もが傷付かない優しい世界などではなく、前世同様、悲しみと隣り合わせの厳しい世界だということだ。

 俺は改めて心に誓おう。例え罪なき人を犠牲にしようと、自分の手が紅く染まろうとも、スズ達を必ず守り通そうと。他の何を譲ろうと、これだけは譲れない俺の願いだ。



 今回、ちょっと難産でした。

 ユーリくん達の境遇が余りにもアレになってしまいましたが、主人公が恐れている事のわかり易い犠牲者として、どうしても今回のようなエピソードを書かざるを得ませんでした。

 主人公がリスクを避けるあまりに、小市民からかけ離れて来てしまっているような気もしますが、このまま突き進ませて頂こうと思ってます。

 大きな力を得ても、それに溺れずにベストの答えを探せるのは、正直、小市民とは言えないかなぁなんて。うちの主人公ちゃんは力を得ると共に徐々に、短絡的解決を求めるようになっています(作者の言い訳かも?)


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