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クレアとその仲間達

 野盗共と戦っていたのは、王国の孤児院で別れたクレアであった。

 確かクレアは17歳になるはずで、以前と比べて女性的な丸みを持った肢体は、一人前の女性と言ってもいいほどに成長している。

 

 本人であることを確認するのに鑑定してみたが、見た目だけでなくステータス的にも随分と成長していた。


----------------

名前:クレア

種族:普人族

モラル:59 ↑40up

レベル:35 ↑24up

筋力:43 (226) ↑13up

耐久:47 (247) ↑16up

敏捷:71 (373) ↑35up

器用:50 (263) ↑16up

精神:21 (110) ↑4up

魔力:33 (173) ↑17up

通常スキル:解体Lv3 小剣術Lv5(2up) 生活魔法Lv2 水魔法Lv3(1up) 盾術Lv3(new) 体術Lv4(new) 気配察知Lv2(new)

固有スキル:天才

ギフトスキル:小剣の才

----------------


 別れてから3年以上たっているため、かなり強くなっている。倍近く伸びている敏捷や、ギフトスキルの補正込みとはいえLv5にまでなっている小剣術スキルを見るに、速さと手数で勝負の軽戦士なのだろう。

 ここまで強くなっているのは、取得経験値2倍の効果がある固有スキルの影響もあるだろうが、冒険者として精力的に活動しているだろうことは疑う余地もなかった。


「さっきはありがとね、スズ。でも、あなたって今、学問都市の学校に通ってるはずじゃ? なんでそんな冒険者みたいな格好してるの?」


「詳しい話は後よ。私も手伝うから、こいつらさっさと片しちゃいましょ」


「何言ってるのよ、危ないからあなたは早く逃げて!」


「うふふ、大丈夫だってば、私はもう昔の私じゃないの。クレア、今はたぶんあなたより強いわ」


「相変わらずそんな無茶ばかり言って、全然変わって無いじゃない! もうっ、お兄さんはスズをほおって何やってるのよ……?」


 すまん……茂みから2人の様子を覗いてたわ。少し予定とは違うが、合流するしかないかなこれは……。



 ノルン達には周囲の野盗を殲滅するよう指示を出し、俺は茂みから出てクレア達と合流する。


「久しぶりだなクレア、悪いけど少し様子見させてもらっていたよ。こっちはスズを含めて8人、野盗退治に協力させてもらうぞ」


「えっ、お兄さん!? 見てたんなら、早くこの子をなんとかしてよ!」


「悪いなクレア。でも俺達だって、ある人に君らへ協力するよう依頼されてな。どうやら野盗共は、皆の想定より数が多いらしい」


「そうだったんだ…………うん、お兄さんが協力してくれるのは分かったよ。でもやっぱり、スズはまだ小さいんだから危なくない?」 


「心配しないで。論より証拠、ちょっと待っててね!」


 スズはそう言うと、茂みへと入って行った。間もなくして野太い男の悲鳴が聞こえた後に、スズが茂みの中から姿を現す。


「ざっとこんなものね。どう? クレア」


「ひっ!? わっ、わかったわよ。お兄さん……これが終わったら詳しい話を聞かせてもらうからね」


 引き摺って来た何かをクレアの前に放り出し、スズがドヤ顔で言う。その行動にちょっと引いたクレアはしぶしぶ納得したものの、俺にジト目を向けた。


 クレア……言いたい事は分かる。こう、何でもないように瀕死の野盗を引き摺って来て、放り投げたけど、俺の嫁、マジ鬼嫁。あれ、でも瀕死ってことは、殺してないだけまだ優しいのかね。


 クレアの目の前でぴくぴく言ってる野盗を鑑定すると、モラル表示は真っ赤の重犯罪者だった。放置しても大丈夫だとは思うが、万が一、ポーションや魔法で回復されても面倒だ。

 

 こないだのリベンジがてら、いっちょ殺っとこうか。


 一瞬だけ躊躇したものの、ゴクリと唾を飲み込んだ俺は、腰のダマスクソードを引き抜き、瀕死で横たわる野盗の心臓に突き刺した。


「ちょっと何してるのお兄さん!?」


「何って、野盗に止めを刺してるんだが」


 俺の行為を見咎めるクレアを尻目に、二度と起き上がってこないようしっかりと止めを刺す。

 肉を刺しつらぬく手応えが気持ち悪い。ゴブリンやオークを散々殺して慣れた感覚のはずが、まるで違く感じるのは、たぶん気のせいなんだろうな。


「動けない相手に、何もそこまでしなくても……」


「あんたこそ、何甘っちょろいこと言ってんのさクレア! 行く前にちゃんと言ってあっただろ、野盗は全滅させるつもりで行けってさ」 


「えーっと、あなたはクレアの仲間かな? 俺はアスラって言うんだけどさ」


「ああ、あたいはオルガだ。悪かったねうちの子が、余計な口出ししちまって」


 クレアを止めたのは筋骨隆々の女性?だった。身長は俺と同じくらい、たぶん180cmは超えているはずだ。褐色の肌と、短い赤毛、彫の深い顔は不思議と愛嬌がある。

 ちなみにクレアは、オルガさんに首根っこを掴まれてばつの悪い表情で大人しくなる。


「いや、気にしないでくれ。実際、殺す必要性が薄かったのは確かだし」


「まあね、でもあんたがしなくたって、あたいがしたはずさ。野盗なんてのは、ゴブリンやオークと大差ない。殺せるときに殺しちまうのが一番なのさ」


 オルガさんの言は身も蓋も無いが、一面の真実ではある。ゴブリンやオークと言った魔物は、人を襲って物を奪い、男は殺して女は犯す。野盗がやることもそれと変わらない。

 違うのは、魔物には理性など無いだろうが、野盗は人だから最低限の理性も有れば、善悪の判断も出来るということくらいだ。

 もちろん野盗にだって例外はいるだろう。やむを得ず野盗になり、最低限必要な物だけ奪い、人は殺さずに解放する。そんな野盗だっているかもしれない。だが、そんなのは少数派中の少数派だろう。

 人々にとって、魔物は有害な存在だが、野盗共も害悪以外の何物でもない。本能で人を襲う魔物と、悪い事だとわかっていながら人を襲う野盗共、はたしてどちらが罪深いのだろうな。

 

「……そう言ってもらえると気は楽だよ。それより、こんなとこでのんきに話をしてて良いのか?」


「ああそれなら、外の野盗共は粗方、片付いちまったみたいだぜ。これも、あんたらのおかげさ」


 あたりを見回すと確かに、立っている野盗は見当たらない。野盗達のほとんどは身体を朱に染めて地面に横たわっており、数名だけがロープで縛られて転がされていた。



 数少ない生き残りのうち2人を、マシロが引き摺ってやってきた。


「外の野盗は21人。4人は生存、残り17人の沈黙を確認したよ」


「ご苦労様、それでその2人はどうしたんだ?」


「弱っちそうだから捕まえた。これどうしよ、ご主人?」


 よくよく見ると、その2人には見覚えがあった。ユーリくんに解放され、結局裏切ったというのがこいつらだろう。鑑定で見る限り、以前見た時よりモラル値が下がっているものの、表示は黄色で軽犯罪レベルに留まっている。レベルも低いし、放置でもさほど問題は無いはずだ。


「縛ったまま、その辺に転がしておいてくれ。残り2人の生存者はどこだ?」


 マシロが指さす方を見ると、クレアの仲間らしき弓使いがロープで木に括り付けているのが見えた。


「なるほどな、てことは残る野盗はアジトの中ってことか……」


「ん。あの中、たぶん15人くらい?」


 目の前には、野盗のアジトらしきぽっかりと空いた洞穴。内部の構造がどうなっているか分からないが、一本道ということは無いだろう。

 数の不利は覆せたものの、地の利は向こうにある。下手に突入すると痛い目に合うかもしれない。


「こりゃ驚いた、そんなことまで分かるのかい……。もしかしてあんたら、有名な冒険者なのかい? それなら態度を改めなきゃねぇ」


「別に今のままで構わないよ。一応、俺はシルバーランクだけど、名前は売れてないはずだからね」


 シルバーランクといっても、こつこつ依頼をこなして上げただけで、冒険者として目立った功績を上げたわけでもない。知られていないのも当然ではある、もしかしたら固有スキルの目立たない効果のせいもあるかもしれんがね。

 オルガさんと言葉を交わしつつ、クレアの仲間を鑑定して戦力の把握に努める。


「なら良かったぜ。それで、これからアジトに突入するかい?」


「戦力的には問題無いとは思うんだが、無策で相手の懐に飛び込むのは、やはり危険が大きいよな。普通こういう時、どうするものなんだ? これまで魔物専門で相手にしてたから、どうも勝手が分からなくてさ」


「普通だったら催涙袋っていう、相手を無力化する煙が噴き出すアイテムを、大量に使うんだけどね……このバカが先走ったせいで、準備が出来てないのさ」


「だって、早く助けないとって思ったんだもん!」


 催涙袋ね、要は催涙ガスを充満させて無力化してから叩くって事だな。そして、その準備をせずに討伐に来てしまったと。

 それにしても、この4人が準備もそこそこに予定より早く討伐に出たのは、クレアのせいだったか。その向こう見ずな正義感は17歳という若さを考えると、しょうがない面はあるが危うく感じてしまう。


「クレア……お前の人を助けたいって気持ちは否定しない。けどな、仲間の意見を蔑ろにするようなら、冒険者は止めたほうが良い。お前が無茶をする時、自分の命だけでなく、仲間の命も危険に晒すってことを自覚して行動しろ」


「うっ…………ごめんなさい。お兄さんの言う通り、私、自分の事しか考えて無かった……」


「謝るのは、俺に対してじゃないだろう?」


 柄にもなく説教みたいな事を言ってしまったが、見知らぬ相手ならまだしも、クレアには不幸になってほしくない。俺の言葉なんかで、少しでも危険を減らせるなら言っておいて損は無いはずだ。


「そだね……オルガ、ナタリア、ジーナ、本当ににごめんなさい! もう無茶しないように気をつけるから、これからも一緒にいさせてくれるかな?」


「馬鹿だねぇ、あんたみたいな危なっかしい子、ほっとけるわけないじゃないか!」


「今回みたいのは控えてほしいが、多少の無茶なら気にするな。これからも今まで通り、私達がついててやる」


「若者をフォローするのが年長者の役目じゃて、見捨てるなんてことは絶対にせんよ。じゃが、言いにくい事を言わせちまって、すまんかったの。本来はあたしがこの子に言って聞かせるべきなんじゃが、どうにも甘やかしてしまってのう」


 オルガさん、ナタリアさん、ジーナさんは、全員女性でクレアの今の仲間のようだ。

 クレアは以前、王国にいた時には、孤児院の子達とパーティを組んでいたはず。それが今はこの3人が仲間というのは、きっと経験値2倍の固有スキルのせいだろう。きっと、レベルが離れすぎてしまい、前のパーティに居ずらくなったのだろうな……。

 でも、良かったなクレア、今はこんな良い仲間達が出来て。


 ちなみに、見た目的にはオルガさんが20代後半、ナタリアさんが20代前半、ジーナさんは50代ってところだろう。これまでにざっと鑑定で見た限りでは、オルガはレベル41の重戦士、ナタリアがレベル40の狩人、ジーナがレベル43の魔術師だろう。レベル35のクレアが軽戦士だから、なかなかバランスのとれたパーティである。

 

「皆さんのような方がクレアの仲間で安心しました。これからもどうか一緒にいてやってください」


「言われなくてもそうするさ。あたいらに、どーんと任しておきな!」


 そう言って、オルガさんがその豊かな胸筋をドンと叩いた瞬間だった。


「良い雰囲気のとこ悪いんだがよう、てめーら全員そこから動くな!」 


 だみ声と共に、洞穴の中から湧いきたのは1人の野盗と、それに羽交い絞めにされた女性。その2人に続いて、わらわらと野盗共が湧いてくる。その中には人質にされた女性が、更にもう2人いるのが見える。

 3人の女性には見覚えがあった。きっとユーリくんと一緒にいた女性二人と、あのときの行商人の奥さんだろう。


「こいつらの命が惜しくば、絶対に動くんじゃねーぞ! おい、てめーら、こいつらもふん縛っちまえ!」


「くっ、この卑怯者! その人達を放しなさいよ!」


「放せと言われて放すバカはいねーだろ。良いから大人しくしてな、そうすりゃ殺しゃしねーし、お前たちも素直に捕まってくれりゃあ、優しくしてやるぜ~」


 クレアの要求を突っぱねた野盗は、げひた笑いを浮かべて答える。それを聞いたクレアの仲間3人も、人質に取られた女性に気を取られ、動けないでいる。


 失敗したな。捕まっている人を人質にされるのは、想定していたはずなのに、つい話し込んで時間を無駄にしてしまった。


 俺が動きを止めたことで、スズとマシロもどう行動すべきか迷っているし、ノルン達4人は遠巻きに武器を構え、野盗達を警戒しているだけだ。


 そんな緊迫した状況を破るように、「てーーーい」という気の抜けた掛け声があがる。


 木の上から、野盗の1人に飛びかかったのはナオであった。


 まったく、この子はほんとに空気読まないよな…………『空気嫁』なんちゅう固有スキルあるってーのにね、まあ関係ないけどさ。

 

 だが今回はグッジョブだぞ! これで俺の腹も決まった、これはもうやるしかない。




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