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洗脳を打ち破れ……ない

 ニコラスさんに教えてもらった内容は大きく分けて3つだ。

 

 まずは、俺達が脱出してからの約2年半で起こった、エスト教国の情勢変化についてである。


 これについては、俺達が商都連合について間も無く、ノルンの叔父でありニコラスさんの息子でもあるテオドールさんが教国へ抗議したそうだ。

 当初、教国は知らぬ存ぜぬを決め込んでいたが、証人が複数いた事で強気な交渉の結果、最終的に教国は張本人の豚司教ディミトリスを財産没収の上、追放処分としたらしい。


 追放処分ってのが気に入らないが、財力を失ったあの豚がまともに生活できるとも思えんし、精々苦労すればいいと思う。


 ちなみに教国との交渉中に、証人の少女達に対するちょっかいが度々あったらしく、その際はニコラスさんや、騎士キュロスとその部下達が大活躍したとのこと。

 この時、同時進行で複数のラブロマンスも展開していて、ニコラスさんの現状もその結果の一つなのだそうな。


 なんだろな、この疎外感。例えるなら、学園祭の後とかにクラスメイトが知らない間に打ち上げしてて、翌日、カップルが量産されてたみたいな……。

 ちょっと違うか……実際その場にいたなら命の危険も有ったのだろうし、良しとしておこう。

 一声掛けてくれれば協力したのに、と思わなくは無いけどね。


 

 次に聞いたのは、周辺国の情勢についてだ。


 教国に関しては「教国内での回復魔法の効果が薄くなっている」という噂を最近良く聞くそうだ。これは、白龍さんを解放した事で、教国に満ちていた魔力が薄くなっている所為だろう。

 教国の力が弱体化するのは、俺達にとっては喜ばしい事である。しかし、治療を受ける者にとって回復魔法の効果が薄くなるって事は大問題のはずだ、素直に喜んで良い事では無い。

 確かに白龍さんを解放する事は俺にとって正しい行為ではあったが、その裏で苦しむ人々が居る事を忘れてしまってはいけないよな……。


 あと、王国の戦争に関する噂は既に公然の秘密と言えるレベルで、来年の春に獣国へと侵攻するのはほぼ確実だろうとのこと。

 工房都市の職人達は王国への納品もほぼほぼ終わったそうで、真昼間から酒場が大盛況なのだそうな。


 帝国に関しての良からぬ噂はたくさんあるが、これはいつもの事らしい。相変わらず治安も悪いらしいし、困った国だとニコラスさんも苦笑いだ。

 迷宮都市へ行くつもりの俺としては笑ってもいられない。帝国を通るときが心配になってくるよほんと。



 最後に、豚司教から助けた少女達の事を聞いたが、皆、欠損部位の再生も終わって元気に過ごせているそうだ。


 先にも述べたが、商都連合と教国間の交渉でのごたごたで、カップルが増産されたらしい。キュロスの部下達は遅い春を満喫しているらしく、キュロスに至ってはハーレム状態とのこと。

 今のところはパラメータ差のせいで、プラトニックな関係を続けているそうだが、結婚も時間の問題だそうな。

 ニコラスさんくらいの歳になれば、筋力値も衰えて問題無くなるが、キュロス達は現役だ。何気ない行動で、少女達を傷つけかねない。そのため少女達は、キュロス達の指導の下でパラメータ差を埋めるために、急成長中らしいのだ。

 ちなみにノルンの妹、正確には従妹のシンシアちゃんは、学問都市にある全寮制の学校に行っているらしい。時たま送ってくる手紙を見る限り、友達も出来たみたいで元気に過ごせているとのことだった。


 正直ホッとしている。身内を最優先する俺でも、自分が関わった人間くらいは幸せであってほしいからな。



 話を聞き終えた俺達は、ニコラスさんに礼拝を申し出る。

 ニコラスさんは快く受け入れ、礼拝堂へと案内してくれた。


 確か教国では、これで太陽さんと話せたんだよな。


 そう思いつつ、ノルンと並んで跪いて祈る。

 しばらく祈り続けると、脳裏で何かが繋がったような感覚を覚える。


(太陽さーん、アスラです。聞こえてますかー?)


(ザザー……おう、アスラか? ザザザーー……聞こえてはいるが、何か電波が悪いな)


 繋がったのは良いが、どうにも太陽さんの声が聞き取りずらい。


(こちらもです、こんな事ってあるんですか?)


(ザーザザー……まあな、そっちにいる爺さんの信仰を目当てにして、パスを繋いでっからな)


 ってことは、ニコラスさんの信仰が足りないってことか。

 幼気な少女と結婚するような変態とはいえ、ニコラスさんに限ってそんな事があるのだろうか?


 そう訝しみつつ、ニコラスさんのほうを見ると、隣に控えているシスターちゃんに目がいく。


 そう言えば、初めてニコラスさんと会った時、胸の大きさがどうとか話したなぁ。まさか、ニコラスさんがおっぱい聖人では無くなったからとか!?


 そう気づいてシスターちゃんの胸を見たが、普通に巨乳だなと感じた。ぱっと見だが、Bカップはあるだろう。

 そうバカな考えを打ち消そうとした俺だが、


(ちょっと待った俺! 何時からBカップを巨乳だと錯覚していた!?)

 

 と自分の思考に愕然とする。スズ達と触れ合ううちに、いつの間にか変質してしまった自分の感覚に戦慄を覚えた。


(ほんとそれな、爺さんにも気を付けるよう言っておいてよ……ザザザー)


(はっ、はい、気を付けるよう言っておきます……俺も気を付けないとですね。所で以前話してた、合コンはどうでしたか?)


(ザザー……そりゃ大成功だぜ! 相手はバツイチみたいだったけど、ちょっと前から付き合ってんだよ。いつも厚着で素肌を隠してんだがな、ありゃ絶対に着痩せするタイプだ。服の上からでも胸のデカさが分かるくらいだからな、今から楽しみだぜ!)


 よっぽど大きいのが良いんだなこの人は、今一わからんなぁ。大きいのより小さいほうが……いや待て、俺はどんな胸でも愛する博愛主義者だったはずだろ!?

 これは、本格的に矯正が必要なようだな……。この後、スズと別行動をすることだし、その時にでも何とかしようか。

 いや、浮気するってわけじゃない、胸の大きな女の人がいる店で、ちょっとお酒を飲むだけの予定さ。……あくまで予定は予定だからな。


(はっはー、お前もがんばれよ。俺はこれからデートだから、じゃあな! ナミすわぁぁ~~ん、今すぐ行くから待っててね~~……ザザザーープツッ)


 太陽さんの声が遠ざかっていくと、繋がりが途切れるのを感じた。


 太陽さんの合コンが成功して良かったけど、どうにも腑に落ちない点がある。

 バツイチで素肌を隠してるナミさんか……地雷臭がするのは何故だろうか? 知ってる神様でもあるまいにね。

 まあ本人が幸せそうなんだから、俺が口を出すことではないよな。



 太陽さんとの邂逅を終えた俺が立ち上がると、ノルンもそれに合わせるように礼拝をやめる。 


「神様とはどんなお話をされていたのですか?」


「大した話ではないよ、ただの世間話さ」


 ほんとに大した話じゃないんだよな……神様とするんじゃなくて、男友達とするような話だよなこれって。よく考えると、こっちに男友達なんて居なかったわ……太陽さん相手してもらっちゃって、ほんとすんません。


「神様と世間話だなんて、アスラさんは本当に凄いですね!」


「いやほんと大した事じゃないんだ。他に用が無ければもう帰ろっか」


 いやほんと、その尊敬の眼差しは勘弁してくれ、実態を考えると悲しくなってくるから。


「それではニコラスさん、私達はこれにて失礼しますが、内密の話を一つ宜しいですか?」


「良いがの、この場で済む話じゃろうか?」


「はい、少々お耳を拝借。(ニコラスさんは以前、胸は大きいほうが良いって言ってませんでしたか?)」


「(何を言うておるじゃ、この娘の胸は十分大きいじゃろうに……大きいじゃろ……オオキイノジャヨ)」


 すんません太陽さん、残念ながらニコラスさんは手遅れでしたよ。

 自分へ言い聞かせるように繰り返す、ニコラスさんの瞳からは光が失われている。

 シスターちゃん……ニコラスさんに何してくれちゃってんのよ。


 俺は逃げるように、ニコラスさんとシスターちゃんに挨拶をして教会を辞した。

 その後は、寄り道もせずに宿へと帰る。なんか知らんが、疲れたよもう……。




 俺達が宿に戻って夕食を取っていると、間もなくスズ達も戻ってきた。


「ただいまー。あっ、私達も夕食いいかな」


「おかえり。もちろん、こっちで夕食がてら、報告会といこうか」


 宿の店員にスズ達の分の夕食を頼み、スズ達が席に着くのを待ってから、今日の出来事を話した。


「そっかー、あの娘達はみんな相手が出来たんだ、良かった……(ライバルが増えなくて)」


「だよな、結局ニコラスさんに丸投げしちまったからな、幸せになってくれると良いよな。ちと気がかりだったけど、これで心置きなく旅に出れる」


「そっ、そうよね! ノルンのお爺さんもついてるんだし、きっと幸せになれるわよね!」


 スズが気不味げに答えると、ノルンが茶々を入れる。


「ふふ、スズがほんとに言いたい事は、そういう事じゃなくてですねぇ」


「こらー! 言わなくて良いじゃないそんな事、ノルンは一言多いんだから」


 ほんと仲良くなったよな、この二人。

 

 うちのパーティメンバーは8人居るが、俺以外で考えて動けるのはスズとノルンの2人だけだ。

 コテツとアンズは基本出しゃばらないし、マシロとナオは今一何を考えているか分からない。イリスは何というか……いろいろポンコツだしな。

 そういうわけで、スズとノルンが2人で俺のサポートをしてくれているから、何だかんだで仲良くなったのだろう。


「ところでスズ、そっちの首尾はどんな感じだ?」


「えっとね、槍と弓、あとは矢を買ったよ。だいたい予定の7割くらいかな? あとはおいおい買い足していくつもり。あっ、買った物はナオちゃんの収納の中だからね」


「了解、ひとまずご苦労様。ナオは、現状アンズの収納に入るだけ渡してやってくれ。残りはまた後でな」


 ナオとアンズが頷くのを確認して、俺は話を続ける。


「それでだな、今後の話をしようと思うんだが」


「そだね、明日にはもう工房都市を発つんでしょ? 話っていうと別行動の件かな?」


「ああ、まずは明日の朝から全員で学問都市へと向かう。その後に別行動にしようと考えてるんだが、ここまでは良いか?」


 俺の言葉に皆、頷いてくれた。まあ、夕食中ってこともあって何人かは、口をもごもごさせながら頷いてて、ほんとに理解してくれてるのかは怪しいんだけどね。


「良いと思うよ。後はどう分かれるか、だよね?」


「ああそれなんだが、学問都市には俺1人が残ろうと思ってるんだ」


「そんなのダメだよ! アスラ1人だなんて絶対にダメ!」


 スズにここまで強く反対されるのは想定外だ。

 それでも、スズ達の方に多く戦力を回したいし、何より俺の矯正計画も進める必要があるのだ。


「いやでも……ほら、街中なら1人でも安全だしさ」


「とにかく1人はダメなの。もしかして……私達が一緒だと都合が悪い事でもあるのかな?」


 スズの瞳が怪しい輝きを放ち始める。

 これ、久しぶりに見るけど、相変わらず超怖い。

 

「そっ、そんな事有るわけないじゃないか! なあノルン、嘘ついてないよな俺?」


 そう言ってノルンに目で合図を送ると、笑顔で頷いてくれた。


「どうなのノルン? 正直に答えるのよ」


「はい、黒ですね。アスラさんは何かやましい事を考えていそうです」


 ノルンはニコニコ笑いながらそう答えた。

 スズもニコニコ笑いながらこっちを向く。


「嫌だなぁ、そんな事は…………ちょっとしか考えてないよ。その、なんだ、ごめんなさい」


「わかればいいの。お願いねノルン、アスラの事しっかり視てるのよ」


「勿論です。元からそのつもりでしたしね」


 駄目だ、2人に組まれたら俺に勝ち目は無い。

 ノルンが満足気に頷いているのを見ていると、最初から手の平の上だったような気すらしてくる。


 やっぱり女は怖い……うちの娘たちも段々、手強くなってきてるしな。

 一夫多妻って傍から見れば、羨ましいだけだったけど、女性陣が手を組むと途端に変わってくる。

 なんて言うか、逃げ場無しって感じか?


 まあそれでも、女性陣がギスギスしてるよりかは何倍もマシだからな。

 素直に嫁の言う事を聞いておくのが吉だよな、うん。



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