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装備の作成って意外に時間掛かるもんだね

 工房都市に着いた翌日、俺達は約束通りに革公房マリアンヌへと来ていた。


「おう、来やがったな! ん? なんかおめぇ、昨日よりやつれてねえか?」


「ははは……よくある事なので気にしないでください」


 俺の身にナニが有ったのかは言うまでもないだろう。パラメータ値的には俺のほうがスズ達より上とは言え、3対1では多勢に無勢というものだった。


「そうかい? まあいいや、取りあえずこっち来て素材を出してくれや」


 マリアンヌに案内された奥の部屋には職人らしき人が1人待っていた。


「こいつは骨細工の職人でジョセフィーヌってんだ、腕のほうは保証するぜ!」


 ちなみにジョセフィーヌさんは、浅黒い肌をした女性で、如何にも姐さんと呼ばれていそうだ。

 マリアンヌみたいなおっさんが二人も居たらたまらないから、正直ホッとしている。


「こんな子達が地竜ランドドラゴンの素材を持ち込んで来たってのかい? 冒険者の見た目は当てにならないってことかねぇ」


「そうさ、さすがに解ってんじゃねぇか」


 得意げに頷くマリアンヌを見て、そういやこいつに最初追い返されそうになったなと思いはしたが、黙っておいてあげることにする。


「よろしくお願いしますジョセフィーヌさん、えーっと、素材はここにてきとーに出してけば良いですか?」


「あたいのとこには骨と鱗を出しとくれ、皮と血はそっちの変な名前のオッサンに渡してやりな」


「変な名前て、おまえなぁ」


 二人が仲良く言い争いを始めるのをよそに、俺達はテーブルの上に、各自収納していた素材を並べていく。

 ちなみに昨日、ナオが収納していた素材を各自の収納に分けて移し替えていた。

 これは、高レベルの異次元収納スキルを持っているのがバレないようにする為である。


 俺達が素材を出していくと、次第に言い争いも終息していった

 二人とも並べられた素材を夢中で見ている。


「ほほう、こりゃー良い素材だな、状態も申し分無えな」


飛竜ワイバーンの素材はまだありますが地竜はこれで全部です、それで、何人分くらいの防具が作れますか?」


「そうだな、地竜の素材だけで作るなら3人分ってとこだ」


 素材を出し終わった俺の問いに、マリアンヌが答えてくれた。

 

 それにしても3人分か、前に出て戦うのは俺とスズ、あとはイリスにナオと……コテツもだな。


「うーん、3人分ですか……」


「なんだったら、飛竜の革をベースにして地竜の素材で補強するって手もあるぜ。それなら、倍は作れる」


 さすがはプロ、俺が迷っていると別の装備を提案してくれた。


「なるほどな……うぅむ、少し考えて見るから、皆は店の商品を見せてもらっているといい」


 折角なのでそのまま、今回装備をどうするかマリアンヌに相談に乗ってもらって決めることにする。

 その間、時間も掛かるだろうし、コテツやイリスが店内に飾られた革鎧などを横目にソワソワしてるのが見えたので、解散の指示を出しておいた。



 その後、小一時間ほど相談した上、今回作成してもらう装備が次のように決まったわけだが……、


 ・盾役のイリスには地竜ランドドラゴンの革と鱗を使った防具(地竜の防具セット:金貨15枚)

 ・俺とスズ、ナオ、コテツには、飛竜ワイバーンベースで、要所を地竜の鱗で補強した軽鎧を(飛竜の強化防具セット:金貨10枚×4)

 ・後衛のマシロ、アンズには飛竜革の防具(飛竜の防具セット:金貨5枚×2)

 ・ノルンには要所のみを覆う飛竜革の軽鎧と、裏地に飛竜革を張り付けたローブ(飛竜の軽防具セット:金貨5枚)


 以上、工賃の合計が金貨80枚となった。工賃だけで金貨80枚……日本円にして8千万って高過ぎだ。


 なんて思いはしたが、よくよく考えてみると俺は、転生したての貧しい頃を基準にして日本円に換算していた。

 裕福になった今で考えるなら、銅貨1枚は10円くらいなようにも感じられる。

 どういう事かと言うと、こっちの世界は日本よりも貧富の差が激しいという事だ。

 


 余談ではあるのだが、それをある日の夕食の値段を例に挙げて説明してみよう。


 まず日本で、生活の厳しい人が食材代が100円程度の節約料理を食べ、独身貴族がファミレスで1000円分の食事をし、勝ち組たちは一万円分の回らないお寿司を楽しんだとする。

 こっちの世界では、貧民層が銅貨1枚の黒パンのみで済ますところを、一般層は小銀貨2枚(銅貨20枚)で肉を使った料理とエールで疲れを癒し、富裕層は銀貨10枚(銅貨1000枚)でワイバーンなどの高級肉を使った料理をお腹一杯になるまで食べているのだ。


 これらは各自が、無理のない金額で食事をした場合の話である。

 これを見るに銅貨1枚の価値が、貧民層では100円、一般曹では50円、富裕層では10円というようになってしまい、一概に日本円に換算できないことが解るだろう。


 とはいえ、いちいち変えてもややこしくなるので、脳内では銅貨1枚を100円換算のままで行くつもりだ。まあ、日本円換算がおかしなことになるかもしれんがご容赦ください。

 誰に言ってんだ俺……まあいいか。

 


 なお、防具の内訳については、各自の戦闘スタイルを考慮して決めている。

 どうも、地竜の素材は頑丈さこそ優れているが、柔軟性に乏しく動きを阻害してしまう可能性があるそうだ。その為、防御重視のイリスと、前衛だが機動性重視のメンバーで防具を分けているのだ。

 また、地竜の素材を使う分、どうしても重量は増してしまうという多少のデメリットと、何よりも素材が足りないため、後衛の面々には飛竜の素材のみで我慢してもらうことにした。


 ちなみに俺がマリアンヌに相談にのってもらっている間に、ジョセフィーヌさんとうちの女性陣は別室で身体のサイズを測定をしていたらしい。

 マリアンヌ曰く、俺やコテツのサイズは男性の一般的なサイズだから見ればだいたいわかるが、スズ達向けの小さいサイズの防具はめったに作らないから、サイズを測る必要があったらしい。

 オッサンにスズ達のサイズを知られるってのも、いい気分では無いが、ともあれ、これですぐに装備を作り始められるらしい。



 あと、気になっていた亜竜の血の使い道についても聞いたのだが、これは皮をなめすのに使うのだと言うのだが……。


「使い道、ほんとにそれだけなんですか?」


 と聞くと、マリアンヌはニヤニヤと笑ってやがった。

 ふぅ、まったく、しょうがないオッサンだよ。


「工房都市で随一の革職人であるマリアンヌさんだからこそ、出来る何かがあるんですよね?」


「ふっふっふ、実はな、何を隠そう俺の紋様術でスキルを付けられるんだぜ!」


 うん、知ってた……おもっきし鑑定に出てたしな。


 というようなマリアンヌとのどうでもいいやり取りは置いといて、紋様術について聞いたことをまとめておこう。


 紋様術を用いることで、魔素を多量に含んだ血液などの触媒を用いて、模様を描くことによりスキルの付与が可能なそうだ。

 ただし、亜竜の血だと半年ほどで効果は切れてしまうとのことで、注意が必要とのことだった。


 ちなみにマリアンヌが付与可能なのは、基本的なスキルのみらしい。

 鎧の場合だと、一般的なのは、基本の【硬化】、【状態保持】や【火耐性】、【水耐性】といった各種耐性強化くらい。

 アクセサリ類なら、状態異常に関する耐性強化や、【退魔】や【抗魔】といった特殊な物も付与できるらしかった。


 今回付与するスキルは結局、一番人気らしい【状態保持】にしておいた。

 【硬化】は頑丈さが1割増しになるという、無いよりはマシといった程度だし、耐性強化は汎用性が無い。【状態保持】なら、各部の消耗を抑えたり、汚れや臭いを抑える効果もあるらしい。


 やっぱり日常的に着るものだからこそ、快適性を重視したいからね。



 マリアンヌ曰く防具の作成と、紋様術の施術に3週間は欲しいらしい。

 思ったよりも時間が掛かる……「ドワーフだったら3日で済ますんじゃね?」と一瞬思ってしまったが、冷静に考えて流石にそれは無いなと思い直す。


「他には何か無えのか? 作りたいもんが有んなら相談に乗るぜ」


 最後にそう声を掛けてくれたマリアンヌに、俺は手の平に収まるくらいのサイズの、鋭利な白い塊を取り出して見せる。


「こいつを使って、何か装飾品は出来ませんかね?」


「こいつぁ、亜竜の牙か? いや…………ジョセフィーヌちょっと見てくれ」


「あいよ……ってこりゃあ亜竜なんかじゃねぇ、本物の竜の牙じゃないかい! いったい何処でこんな物手に入れたんだい!?」


 そう、俺が見せたのは竜の牙であった。

 白龍さんの住処で手に入れた物の中から、小さめな物を選んで見せたのだが、反応を見るに結構な価値が有りそうな感じだ。


「これは以前立ち寄った洞窟の奥で拾ったものです」


「そいつぁ運がよかったね。でもさ、厄介事に巻き込まれたくなけりゃ、大っぴらに見せないほうが良いね」


「はい、お二人を一流の職人と見込んでお話させて頂きました。ですので、内緒にして頂けると助かります」


「客の秘密を守るのは当然の事さね、こいつの加工を任せてくれるんだろう?」

 

 俺が頷くと、ジョセフィーヌさんのやる気が明らかに増したのが見て取れた。

 

「こりゃ腕が鳴るね、竜の素材を触れるなんて3年ぶりさね。でっ、あたしゃ何を作りゃ良いんだい?」


「それでは、これも使って作ってほしい物が有るんですが……」


 俺はコテツ達が店内の商品に釘付けなのを横目で確認し、追加の竜の牙を7本こっそり取り出し、ある物の作成を依頼した。

 もちろんスキルの付与もお願いしておく。


「そん位の加工なら出来そうだ、あたいに任せておくれよ!」


 そう言って、ジョセフィーヌさんは快く請け負ってくれた。



 まあ、工賃は当然取られたわけだが……金貨22枚を20枚に負けてくれたので良しとしておく。

 

 それにしても、たった一日で金貨100枚も使うとか、前世では考えられないくらいの散財である。

 冒険者にとって装備は命綱だから、改める気も必要もさらさら無いが、冷静に考えると自分の感覚を疑いそうになる。


 大丈夫だよな俺の金銭感覚……おかしくなってないよな?




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