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異世界のオッサンはおっかない

2/4  ステータス表示の性別は削除しました。

   ステータス表示の文字色表示を削除し、モラルを追加しました。

 翌朝、相変わらずまずい黒パンとシチューを食べつつ、昨晩習得した錬金術スキルについて思い出していた。うん、昨日のトルテさんはステキだったな。



~~~~~


「さぁ、今日も授業をはじめましょうか!」

「えーっと、トルテさん?」


 あ……ありのまま今起こった事を話すぜ。俺はスキル習得のために眠りについたと思ったら、いつのまにか教室の机に座っていて、トルテさんが女教師の恰好をしていたんだ。


「のんのん、今日はトルテ先生よ。ちゃんとした錬金術の授業だから安心しなさい」

「トルテ先生……ですか? いったいどうしちゃったんです?」


 ホワイトボード前に立つトルテさんの胸元は大胆に空いていて、スカートのスリットから覗く太股も実にエロい。これってほんとに、俺の淫夢ってわけじゃねーんだよな?

 トルテ先生は赤いアンダーリムの眼鏡をくいっと指で直し、疑問に答えてくれた。


「錬金術っていうのは、他の製作系スキルと違って、魔力は多く使うけど、レシピを覚えるだけで簡単に使えるのよ。だから座学が中心になるの、ここまではいいかしら?」

「はい、ですが、なんでその恰好に繋がるのかがさっぱりでして」

「ここ魂の修練場では、できる限り効率良く技術を習得させるために、いろいろな手法を取っているのよ。そこで今回は、あなたの元の世界での手法に合わせてあげたってわけなのよ!」


 勉強するのに慣れた環境でってことか、それで教室と女教師の恰好ってわけだね、逆効果な気が……いや、やっぱ素晴らしいねやる気でてきたよー、きっとこれならすぐ覚えられるはず。


「でしょでしょ、じゃーこれから授業を始めるわ!」

「はいっ、トルテ先生!」


~~~~~



 とまぁ、こんな感じであった。肝心な錬金術についてだが、一応は製作系スキルに分類されているものの魔法スキルの一種とも言えるそうだ。実際に素材アイテムを混ぜ合わせる程度で、後は【錬成】の魔法を掛けることでアイテムを作成するため、ほとんど手間はかからないが、魔力を多く使用する。

 逆に、他の製作スキルでは通常の手順でアイテムを作成するため、手間はかかるが魔力は使わない。

 このような特徴があるため、レベルと魔力が低くなりがちな生産を生業とするものに、錬金術スキルを持つものは稀であるとのことだ。


 錬金術レベル1だと1種類の素材からアイテムを作ることができるらしく、いくつかレシピを教えてもらっている。そのなかで使えそうなものが3つほどあり、1つ目が除虫草からの虫除け薬、2つ目が薬草からの傷薬、3つ目が水からの蒸留水である。


 これらのことは、本来、たいした時間を掛けずに覚えられる内容なんだそうだが、修練場の使用時間ぎりぎりまで掛けて覚えることができた。時間が掛かった理由は察してほしい。


 とりあえず、虫除け薬を作ってみようかと思い、部屋に戻って、除虫草を取り出す。

 先日使った虫除け薬の容器に、除虫草を入れて、【錬成】をかけた。


『魔力よ、万物を組み換えよ! 【錬成】』


 魔法をかけると除虫草は、微かな光を放って粘性の液体に変化する。この現実感の薄い光景に、今さらながら、ファンタジー世界に来たんだなぁと実感できた。


 錬金術を使った俺は、案の定、魔力切れとなってしまったため、しばらく休憩しつつ、この後のことを考える。


 ギルドは明日にしといて、今日は薬の容器と、着替えでも買ってこようかな。


 宿の女将に服屋の場所を聞いたところ、高価な服で無ければ無料で洗濯してくれるとのことなので、後日お願いすることにして宿を出た。

 まずは昨日行った道具屋で、木でできた薬の容器5個を小銀貨1枚で購入する。次に服屋に行って、中古の布の服上下と下着を2組、それと頑丈な背負い袋を合計銀貨11枚で購入した。これで残金は銀貨15枚と小銀貨7枚である。着々と所持金が減ってきている、明日こそはギルドに行かないとヤバい。


 服が結構荷物になって重いので、そのまま宿に帰って夕飯を食べ、部屋で身体を拭き、服を着替えた。

 次に覚えるスキルは小剣術レベル2を選択した。近接戦闘について教えてくれる伝も無かったし、魂の修練場で教えてもらったほうが確実だと思ったからだ。


 最後に、昼間作った虫除け薬を身体に塗り、翌日分の虫除け薬作成で魔力切れにしてから眠りに就いた。



~~~~~


「いいか、よーく聞け、これから貴様はこのサージェスの指揮下に入ることになった。わかったら返事の前と後ろに『サー』をつけろ! いいな!?」

「さっ、サーイエッサー」

「ふざけるな! 大声出せ! タマでも落としたのか!?」

「サーイエッサー!」


~~~~~



 翌日目が覚めた後、異様なほど精神が疲労しており、しばらく立ち上がることすら出来なかった。スキル習得で何かあったんだろうけど、なんか思い出しちゃいけないような気がする。しばらく休憩した後、ロビーで女将さんに昨日着替えた服の洗濯をお願いしてから、食堂に向かう。


 朝食を食べつつ昨晩の事を思い出す。武術系・偵察系の担当スキル神はサージェスという、どっからどう見ても鬼軍曹なおっさんであった。正直、思い出したくも無いので詳細は省くが、小剣術についての技術は、文字通り魂に染みついている。たしか、スパルタ特訓により1回目でスキル習得までこぎつけたはずで、もう1回行かなくて済んで良かったよほんとに……。


----------------

名前:アスラ

種族:異世界人

モラル:245

レベル:2

筋力:25 ( 53) ↓1down

耐久:23 ( 48)

敏捷:24 ( 50)

器用:51 (107)

精神:30 ( 63) ↑1up

魔力: 4 ( 8) ↑1up

通常スキル:体術Lv1 小剣術Lv2 射撃術Lv1 隠密Lv2 気配察知Lv1 異次元収納Lv1 生活魔法Lv1 錬金術Lv1

固有スキル:エアマスター

ギフトスキル:異世界人セット(中) 加護付与 万物鑑定

スキルポイント:2pt

----------------


 ステータスを見てみると、小剣術がたしかにLv2になっていた。筋力が落ちてるのはここのところ魔力切れでろくに動いてないせいだろう。魔力が上がってるのは生活魔法と錬金術を使ってるおかげだろうし、精神は鬼軍曹……いや思い出したくないし、考えないでおこう。


 せっかく小剣術の技術を学んだのだから、今日こそはギルドに行ってみようかな。腕が鈍ろうもんなら鬼軍曹に殺されかねない。

 食事が終わったら一旦部屋に戻り、剣と防具を装備し冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドの中に入ると、前回と違って朝早いためか美人受付嬢の前がすごい列になっている。俺は美人受付嬢を早々にあきらめて、登録の時に世話になったマーサさんの受付に向かった。


「おはようございます。マーサさん」

「おや、あんたはたしかこないだの……アスラだったっけね?」

「はい、先日はお世話になりました」

「しばらく見ないから、怖気づいたのかと思ったよ」


 なんだかんだ理由つけて来てなかったから、悔しいけど否定できないな。


「ははっ、なんとか勇気を出してきました。訓練所を使いたいのですが、今、大丈夫ですか?」

「あいよ、いってきな。怪我に気を付けるんだよ」



 受付横の通路を通って訓練所に入ると、周りを壁で囲まれた、屋根の無い中庭みたいな場所だった。

 中では数人の冒険者が、剣や槍を熱心に振っている。俺は隅のほうの空いている場所に陣取って、訓練を始める。

 昨晩叩き込まれた小剣の型を、一通り満足が行く振りができるまで練習していると、後ろから野太い声をかけられた。


「素人くせぇが癖の無い、いい素振りだな」


 俺は声のほうに振り向き、周囲に自分以外そのオッサンしかいないことを確認し、自分のことを指さし首を傾げた。


「そうだよ、お前さんのことだ。見ねぇ顔だが最近ここに来たのかい?」

「はい、先日登録したばかりの新人です」

「ほう、新人でそれだけ振れるのか、なかなか面白い新人じゃねーか。名前は何ていうんだ?」


 なんか厄介事の予感がするから、できれば名前教えたくないけど、どうしようかと迷っていると向こうから、自己紹介された。


「そういや俺も名乗ってなかったな、ここのギルドマスターのゲオルグってんだ、よろしくな!」


 ほう、ギルドマスターか鑑定してみようか。


----------------

名前:ゲオルグ

種族:普人族

モラル:226

レベル:53

筋力:69 (872)

耐久:65 (822)

敏捷:45 (569)

器用:48 (607)

精神:41 (518)

魔力:13 (134)

通常スキル:体術Lv4 大剣術Lv5 格闘術Lv4 気配察知Lv3 異次元収納Lv2 生活魔法Lv2

固有スキル:怪力

ギフトスキル:なし

----------------


「ひぃぃぃ!」

「そんなに怯えなくてもいいじゃねぇか。取って喰やぁしねぇよ」

「すっ、すみませんでした、私はアスラと申します。それでギルドマスターがどうしてこんな所に?」

「いつもは西のギルドに居るんだが、たまに東にも面白いやつがいないか見にきてんのさ」


 面白いやつ……ね、モラルが高めだから見た目の割りにいい人そうではあるけど、これ以上関わりたくないなぁ。


「西にもギルドあるんですね? 東と西で何か違うんですか?」

「西側には黒龍山脈があるから魔物がつえーのよ、ブロンズランクになると西のギルドに行くことになるから覚えておけよ」

「なるほど、心しておきます」

「じゃぁ、俺は西に戻るな、いつまでも留守にしてっとお嬢にぶっとばされっからな」


 このオッサンがぶっ飛ばされるって、どんな化け物だ……関わるな関わるな、知らないほうがいいこともある。何はともあれ、しばらくは東側で狩りだな、西側には近づくまい。

 訓練所で一通りの型を終えた俺は、受付のマーサさんに一声かけて、宿に戻った。



 夕食後、部屋に戻った俺は、【洗浄】を併用して汗で汚れた身体を念入りに清めた後、ベッドに横になる。今夜習得するスキルとして体術Lv2を選択し、虫除け薬を塗ってすぐに、力尽きて眠りに落ちた。


 こうして今夜も俺は、軍曹殿からスキルとトラウマを魂に刻まれるのであった。



お読みいただきありがとうございました。

前半部分は当初予定に無かったのですが、キャラが暴走を・・・話がなかなか進まず申し訳ありません。

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