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白龍の住処で

 地竜が居座っていた部屋の先は、高さ3メートル、横幅5メートルほどの通路になっていた。人にとっては充分な広さの通路であるが、竜にとってこれで出入りできるのかって思える程度の広さだ。俺達が通路を先に進むと、すぐに行き止まりに突き当たった。


「イリス、本当にここで合ってるのか?」

「言い伝えによると確かにここでござるよ。注意深く見ると岩肌に切れ目が見えませぬか?」

「ああ、ほんとだな。中はどうなっているのか分かるか?」

「否、拙者達も何度かここを調査し、扉らしきものがある所までは分かったのでござるが、結局誰も開けられず仕舞いで……」

「なるほどな、まあ、入ってみるしかないか」


 イリスとのやり取りで、入ってみるしかないと結論付けた俺は、白龍さんから住居のカギと言って渡された、竜の鱗を収納から取り出す。

 取り出しては見たものの、これどうやって使うんだ? と思っている間に、目の前を塞ぐ岩肌と手元の鱗が淡く発光し始める。想像より静かな音を立て左右に開く岩戸を見て、誰からともなく感嘆の溜息が漏れた。


 岩戸の先はかなりの広さの空間となっており、天井は10メートルを軽く超える高さだ。部屋の中は優しい光に照らされており、どうやら、部屋のそこかしこに生えている水晶が光を発しているようだった。


「マシロ、部屋の中に何か居るか?」

「……居ない、たぶん安全」

「そうか、まずは治療と休憩だ。その後、二人一組で部屋の中を探索しよう、何か見つけたら俺とナオを呼んでくれ」



 俺は背負っていたコテツを降ろし、ノルンに治療を任せ、スズ達と共に野営の準備を行う。食事の準備をしていると、気が付いたコテツが近づいて来た。


「戦闘中に気を失うなど、とんだ醜態をさらしてしまい面目無い」

「あまり気に病むなよ、コテツが前線で奮闘してくれてたのは知っているから。敵の目を引いてくれただけでも充分さ」

「だが、女子供に後れを取るなど、マシロ達の強さには如何なる秘密が……」


 そこまで言ったコテツを、アンズが肩に手を掛け、無言で首を振って制止する。


「そうだな、それを知ったら解放してやれなくなる。今までの努力が無駄になるぞ」

「それでも拙者は、もっとお役に立ちたく」

「駄目だよ、お前達を拘束している俺が言うのもなんだが、帰れる場所があるなら帰るべきだ」


 俺も他人の事は言えないが、どうやらコテツも、自分より年下でしかも女性のマシロ達が戦っていた中、大人の男の自分が気絶していたというのには堪えたらしい。

 コテツ達のことは時期を見て解放するつもりであったが、そろそろ限界なのかもしれない。俺に秘密を話すつもりが無い以上、今後一緒に居続けるのはお互い、良い事では無いだろう。


「そうです、私達には帰って為すべきことをしなければならないでしょ!」

「……そうだったな、申し訳ない主殿、今のは忘れて下され」


 アンズに強く止められては、コテツも折れるしかなく、考え直したようだ。俺は、コテツ達が解放された後に何をするのかは分からないが、お詫びも兼ねて出来るだけ支援はしてやろうと思った



 食事と休憩を終えた俺達は、俺&ナオ、スズ&マシロ、ノルン&イリス、コテツ&アンズのペアに別れて、部屋の中を探索し始める。


 俺&ナオは、まずパッと目に付いた、部屋の隅に積み重なっている物を収納していく。これらは、鑑定するかぎりでは、真龍種の牙、爪、鱗といったもののようだ。たぶん、白龍様の生え変わりのの結果だろう。

 それなりの量はあるのだが、サイズは思ったよりも大きくは無い。牙のサイズは大きくても40cmに届かないほどで、正直、竜の素材を使って剣や太刀を作りたいとか思ってた手前、物足りなさを感じてしまった。

 冷静に考えれば、太刀を作れるサイズの1mを超えるような牙を持つ生物が、どんだけデカいのかを想像すれば、そんな生物が居るわけないと分かりそうなものだ。まあ、ファンタジー世界ではあり得ないと言い切れない所が怖い処ではあるのだが。


 スズ&マシロは、機動力を生かして部屋中を廻り、部屋中に落ちているものを拾い集めてくれているし、ノルン&イリスは、ノルンが部屋を観察した後に何やらイリスに指示を与えて、部屋の1ヵ所を重点的に調べている。

 何と言っていいのか分からないのがコテツ&アンズで、地面に顔を近づけて嗅ぎまわり、何やら見つけたのか地面を掘り返している。「犬か!」と突っ込みたいところではあるが、どう見ても顔は秋田犬の2人であるから、突っ込むに突っ込めない。




 結構な時間を掛けて、仲間たちが三者三様の探索方法を取ってくれたわけだが、その成果は次のようなものだった。


・真龍種の牙、爪、鱗が多数

・ボロボロになった布らしきもの

・古い金貨と銀貨が多数

・宝石類が33個

・竜種の牙、爪、鱗、骨が4か5体分

・古竜種の牙、爪、鱗、骨が1体分

・ボロボロになった皮らしきもの


 まずは、真龍種の素材とボロボロの布らしきものだが、真龍種の素材の7割は部屋の隅に有ったもので、残りの3割とボロボロの布はスズ&マシロが集めてくれたものだ。真龍種の素材は真龍の強さを考えるに、あまり他人に見せて良い物では無さそうだし、ボロボロの布は時間の経過によりゴミ同然と言っていい。


 古い硬貨と宝石類を探したのは、ノルン&イリスだ。どうやら部屋の構造を見て怪しい箇所を探したら、隠し部屋が有ったようでその中に有ったらしい。さすがはノルンといった処で、もうパーティの指揮をノルンに任せたほうが、良い結果になるんじゃねってくらいだ。

 

 で、肝心の竜種と古竜種の素材を探し出したのが、何を隠そうコテツ&アンズだ、お手柄である。ここ掘れワンワン的探索術により、地面に埋まっていた物が出てきたのだ。


 これも俺が日頃、正直爺さんの如く、真面目に生きて来た結果と言ってもいいかもしれない……ごめん、今の嘘です。正直に嘘だと告白したので今のはノーカンと言う事にしておいてくれ。


 それはともかく、見つかった素材に骨が含まれている事を考えるに、十中八九は白龍様が狩った獲物の残骸であろう。竜種と古竜種の素材がどの程度、希少な物かは不明だが、白龍様に狩られているくらいだから、真龍種の素材に比べれば、表に出しても影響は少ない物の筈である。

 ちなみに、皮も一応形は残っていたのだが、未加工であったことが祟ったのか、ボロボロになって使い物にならない状態であった。


 ここで少し不思議に思ったのが、古竜素材が真龍素材よりも大きかった事だ。牙を例に挙げると、真龍の牙は40cm未満なのに対し、古竜の牙は70cmに届きそうなほどに巨大だ。

 この古竜がたまたま巨大なのか、それとも古竜種自体が巨大なのかは不明だが、進化の過程でサイズが小さくなるというのもあり得ない事では無い。だいたい進化の最終段階というのは、無駄を取り払った洗練された物になるというのは、お約束という物だろう。


 ともあれ、これで竜素材を使って小剣くらいなら作成可能だろう。当然、作成するのはこれらの素材が、どの程度の価値があるのか調べてからにはなる。どの世界にも、金の匂いに敏感な人間というのは多いだろう。前世で噂に聞く、宝くじの1等を当てて不幸になった人のように、俺はなりたく無いのだ。




 部屋の探索に結構な時間を費やしてしまったため、たぶん今頃、外は闇に包まれている事だろう。俺達はここで、夜を明かしてから外に出る事にした。


 俺は薄い毛布に包まり、なかなか眠れずにいると、ふと天井の岩肌を一直線に走る亀裂に気付く。


 よくよく考えると、この部屋に至るまでの通路は、人にとっては充分に広いものであったが、人以外にとっては話が別だ。白龍様の大きさは部屋に転がっている素材のサイズを見るに、全長20メートル近いだろうから、あの出入り口から出れる訳が無い。きっとあの天井も開くようになっており、そこから出入りしていたのだろう。

 

 冷静に考えれば余りに迂闊な行動だとは思うが、その時は、天井が開くかどうか無性に試したくて仕方なくなってしまった。たぶん、コテツの件もあって眠れなかった俺は、ムシャクシャして何でも良いからしていたかったのだと思う。


 収納から部屋のカギとなった鱗を手に取ると、背伸びをして高く掲げる。そのまま俺は、まるで携帯の電波を探るかの如く、反応が有る場所を探して歩いた。


「皆寝てるのに、何してるの?」

「ああ、スズか。ちょっとこの天井も開くかなってね」

「ふふ、なんか今のアスラって子供みたいね……いいよ、手伝ってあげる」


 俺がバツの悪さを感じつつ応えると、スズが笑いながら俺からカギを奪うように受け取り、ひょいと俺の肩に飛び乗る。肩車では無く、曲芸師のようにそのまま立ち上がる。


「おいこら、いきなりはビックリするだろ。言ってから乗りなよ」

「いいじゃない、よっと」


 カギを掲げたスズはそう言うと、俺の肩から天井近くまでジャンプしてから、そのまま華麗に着地を決める。ちなみにこの時俺は、スズがジャンプした反動に押され、無様に地面に転がっていた。


「まったく、無茶するなよな……」

「無茶じゃないよこれくらい、それにほら」

「ほらじゃない、こうしてやる!」


 薄っすら発光するカギを渡そうとするスズの手を引っ張り、グラウンドに引き込み俺はそのまま……。


「わーわー、ごめんなさいっ! あっ、ほら、天井が開くって!」



 おっと危ない、理性がちょっと飛んでいたようだ。


 仰向けに寝かされているスズの横に寝転び、俺も天井を眺める。今まで天を塞いでいた岩肌が静かに開いて行き、満天の星空が現れる。

 この部屋の上部が開いただけの為、実際の星空は僅かな部分のみだろう。それでも満天の星空に見えるのは、岩壁に生えた発光水晶が上部に行くに連れて小さく見え、星のように瞬いて見えるからだ。

 ぼんやり見ているだけだと、どこまでが水晶の光で、どこからが星空なのか分からないくらいだ。まるで、天然のプラネタリウムだ。

 

「……綺麗だな」

「うん、でもなんだか不思議……」


 俺の月並みな台詞に、スズがうっとりと答える。


「なにが不思議なんだい?」

「だって、10年前は夜空を見ても綺麗だなんて思わなかったのに」


 そうだな、たしかに不思議だ。10年前の俺は、前世で仕事に追われ、星空なんて見ようとも思わなかった。例え今の光景を見たとしても、今と同じ感動を覚えたとは思えない。


「俺だってそうさ……綺麗な物を見て素直に綺麗だと思える、今の俺達は幸せなんだってことだろうな」

「そうね、ずっとこのまま幸せで居たいね……」


 俺は「ああ」と頷き、スズの肩を抱き寄せる。


 俺にはもう、前世で感じていたような、言いようの無い焦燥感は無い。その代りに生まれたのは恐怖だ、彼女を失う事を想像するだけで、どうしようもないほどの恐怖を感じる。1人じゃない幸せを知ってしまった俺は、もう1人には戻れないのだろう。



 俺とスズはそのまま2人で、星空に包まれながら眠りに落ちた。これが一番の宝だったとか臭いことは言わないが、それでも最高のオマケを貰ってしまったものだ。


 正直、報酬にしては貰い過ぎですよ白龍様、まあ、貰えるものは貰っておきますがね。守りたい人が居る今の俺は遠慮なんてしてやらない、そう決めたよ。



申し訳ありません、一週間に少々遅れて更新です、ギリギリセーフってとこですかね。

後半のシーンは完全に思いつきで突っ込んだもので、ちょっと苦戦しましたが、まあ、悪くは無いんじゃないかとは思います。

後で読み返したら、恥ずかしさでのたうち回るかも知れませんが……。

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