迷宮ってこんななの?
翌朝、俺は食事の場で早速、イリスのステータスを確認してみた。
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名前:イリス
種族:混血種(竜人/普人)
モラル:114
レベル:34
筋力:57 (428) ↑2up
耐久:63 (473) ↑5up
敏捷:66 (495) ↑1up
器用:35 (270)
精神:30 (225)
魔力:14 (105)
通常スキル:体術Lv3 槍術Lv3 盾術Lv3 隠密Lv3 気配察知Lv3 生活魔法Lv1 光魔法Lv2
固有スキル:全異常耐性Lv3 竜鱗Lv2
ギフトスキル:アスラの加護
スキルポイント:3pt
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加護はちゃんと付いており、補正後の能力値も1.5倍くらいになっている。これなら、昨日戦ったロックリザードくらいなら、1人で抑えることが出来るだろう。
固有スキルの全異常耐性は、精神異常耐性と肉体異常耐性を統合したようなもので、正直びみょーな気はするが、竜鱗が一定以下の攻撃を弾くといったものであり、盾役としては活躍が期待できる。
また、スキルポイントが3ptしか余っていないことと、レベル34で加護を得たことを考えると、スズ達と比べるとスキルレベルが低めだ。加護で1レベル当りの取得ポイントが2増えるため、66ポイント近い差があるので仕方が無いだろう。
そう考えると、レベル1から加護を与えて育成した方が、スキル的には強くはなるのだが、いかんせん育成には結構な時間を要する。生活に余裕があるのなら、育成に時間を費やしても良いが、今は自分達が強くなることを優先したいところだから、イリスという即戦力を得ることが出来て、良かったと思っておくべきだろう。
ちなみに、筋力値と耐久値がこの短期間で上がっているのを見ると、着々と、食事改善の効果が表れているのが見て取れる。今も上機嫌に、朝食の焼いたドレッドベアの肉の塊に齧り付いているところだ。
俺としては、いい加減、肉ばかりの食事に飽きて来たところだが、他の皆はいつも通りの食欲で、焼けた側から肉を消費していく。朝食用に切り分けてあった肉が無くなったところで、イリスが意気揚々と立ち上がる。
「主殿、早く迷宮に参りましょう! 主殿のおかげで、拙者、驚くほどに身体が軽いのでござるよ!」
「調子に乗ると痛い目を見ることになるぞ、まずは落ち着け。あと、分かってるとは思うが昨日の事は内密にな」
「はっ! それは、承知の上でござるが、こう……身体がうずうずして仕方ないのでござる」
「ふう、それなら食休みついでに、迷宮内部の事を聞いていいかな?」
このまま浮足立ったまま、行動を起こしても良い事は無いと思い、イリスを落ち着かせる為に、話を聞くことにする。
「魔物ならロックリザードや、稀にメタルリザードが出るでござる。他には、既に迷宮では無くなってしまっておる故、罠の心配はござらんが、落盤の恐れが少ないながら有るそうでござる」
「へー、良く知ってるな。イリスは入ったことが有るのか?」
「いえ、拙者も入ったことはござらん。全て御爺様に聞いた話でござる。内部の構造についても聞いておる故、安心して任せて下され」
「そっか、頼りにしているよ」
イリスの言う事を信じるなら、迷宮というのは迷宮独自の特殊性のような物を持っているのかもしれない。きっと、迷宮跡地と言う事で、既にその特殊性が失われ、ただの洞窟のような物になってしまっているのだろう。
落盤は怖いが、可能性も低いというし、ここで引き返すという選択肢を選ぶほどではない。俺は、その場に立ち上がり、出発の号令を発した。
迷宮跡地の中に入ると、中には木々が生い茂っているとか、天井に空が広がっているといったようなファンタジー展開は一切無く、ただのだだっ広い洞窟であった。闇魔法『ダークサイト』を俺とスズで手分けして使用し、暗闇の中を先に進む。
「迷宮ってどこもこんななの? ただの洞窟にしか見えないが」
「私も入ったことはありませんが、聞いた話では迷宮毎に全く違うそうです。本当かどうかは分かりませんが、森や砂漠のある迷宮もあるそうですよ」
「なるほど、それはなんだか楽しみではあるね」
ああ、ここが元迷宮だからただの洞窟なだけで、ファンタジー展開自体はあるのね。正直、そう言うの勘弁してほしいわ……。
迷宮の話をするノルンに、俺は辟易しつつも強がりで答える。迷宮毎にその環境に慣れないとならないなんてのは、本当のところ面倒の一言なのだ。
「この先居るよ、たぶん5匹」
「さすがマシロだな、皆このまま進むぞ」
俺達は武器に手を掛けつつ、いつでも戦えるようにしながら先に進む。ちなみに俺の武器は、ダマスクソードに持ち替えてある。洞窟は広いとはいえ、さすがにあの長大な太刀は邪魔になる。
しばらく慎重に進み、マシロの合図で全員が止まる。マシロが指さす方向を見ると、ただの洞窟の岩肌のように見えても、確かに違和感のようなものを感じる。
鑑定してみると、やはりロックリザードが4匹、索敵に引っかかっる。1匹足らないなと見回すと、少し離れたヶ所に1ヵ所だけ金属の地肌を見せている箇所があり、違和感バリバリであった。
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名称:メタルリザード
種別:魔物
レベル:45
筋力:71 (608)
耐久:97 (830)
敏捷:51 (436)
器用:25 (214)
精神:21 (180)
魔力: 3 ( 26)
スキル: 体術Lv3 槍術Lv4 隠密Lv3 気配察知Lv3
固有スキル:剛体Lv4 擬態Lv3
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こいつがメタルリザードか、擬態スキルが有るのに、あまり周囲に溶け込めていない。スキルが有っても、さすがに周囲が岩盤じゃ、溶け込むのも難しいのだろう。擬態は微妙だが、パラメータ的にはかなり強い相手だ、油断せずに行こう。
「(俺がメタルリザードをやる、コテツ&アンズで1体、スズ、ナオ、イリスで各自1体を受け持ち、マシロとノルンで止めを刺して回ってくれ、先制の魔法攻撃を掛けたら突っ込むぞ)」
俺は全員が頷くのを確認して、攻撃開始の合図を送る。
「『サンダーボルト』!」
ノルンの手から雷撃が迸り、それに合わせるように俺達も走り出す。走りながらも、各自が自分の武器にエンチャントを施す声が聴こえてくる、俺もまた『エンチャントダーク』で右手の剣に闇を纏わせた。
俺はメタルリザードに近づくと、剣で軽く一閃するが、やはりと言うか何と言うか、甲高い音を立てて弾かれてしまう。ここまでは想定通りだ、次にロックリザードの時と同じように、『ウィンドプレス』を掛けるが相手はびくともしなかった。
そうする間にも、体勢を立て直したメタルリザードは、金属製の槍のような物で攻撃を仕掛けて来た。想像以上に攻撃が鋭い、俺は普通に受け流せるが、俺以外でまともに凌げそうなのはスズくらいだろう。
巧みに繰り出される槍を掻い潜りながら、比較的柔らかい敵の腹側に攻撃を行い、少しづつ出血を強いて行く。
10分ほどの間、この神経を削られる作業を続けると、左方からノルンの声が聴こえてくる。
「アスラさん援護します! 『マグネティック』!」
魔法を受けたメタルリザードの動きが鈍る。雷魔法Lv3『マグネティック』は対象に磁力を与える魔法だ、メタルリザードの鋼のような鱗が磁石となり、四肢が引っ張られ阻害されているようだ。
俺はこのチャンスを逃さないよう、闇を纏った剣を、敵の肉体に何度となく深く突き込む。深い刺し傷が二桁を数える頃には、メタルリザードは動きを止め、赤く染まった地面に崩れ落ちた。
念のため、止めの一撃をメタルリザードに入れた後に周囲を見ると、残った1体のロックリザードを、全員で囲んでボコっているところだった。ナオは既に獲物の回収作業に移っていたので、倒したメタルリザードを持って行ってやる。
重っ!? どうりで風魔法ではビクともしないわけだよ。
ナオの方に引き摺って行き、スキルで収納してもらう頃には、戦闘も終了しスズ達と合流する。
「さっきは助かったよノルン、上手い魔法の使い方だったな」
「ふぁぁ……おっ、お役に立てて何よりです」
ノルンの頭を軽く撫でてあげると、今まで見たことないような表情を見せた後、恥じらうように顔を俯けた。
慣れないことをしてみたが、たまにはこういう不意打ちを掛けるのも悪くないな。今のは可愛かったしさ!
「さて、さっさと先に進もうか」
スズの視線が物理的威力を持つ前に、俺は皆を促して先に進む。その後も何度か魔物と遭遇したが、メタルリザードは居らず、ロックリザードばかりだった。
それでも、同レベルの相手を何体も倒したおかげか、俺のレベルが上がっていた。まあ、レベルが上がったといっても、レベルアップ準備中状態でパラメータは変わらないんだがな。
「もう間もなくで、目的地に着くでござるよ」
「そうなんだ、思ったより早く着いたね」
スズが言う通り、確かにあっさりしすぎているというか……でもな、余計なこと言うとフラグ立っちゃいそうだしなぁ。
「待って……この先、怖いの居る」
そう言ったマシロの声は心なしか震えている。何かから隠れるように身体を丸め、いつもは気まぐれに動く尻尾も、足の間に巻き込んで隠していた。
「強敵か……相手は1体か?」
「たぶんそう」
こんなマシロの反応は初めてだ、無策で突っ込むのも拙そうか。
「そうか……マシロには悪いけど案内を頼むよ、俺が偵察に出る。他の皆はここで待機だ」
「……ん、付いて来て」
「無理はしないでねアスラ」
「ああ敵を見たらすぐに戻ってくるよ、留守は任せるよスズ」
スズ達を残し、俺はマシロと共に強敵の下に向かう。念のため、風魔法で防音と防臭、闇魔法で姿を隠して向かった。
しばらく歩いた後、マシロが立ち止まったのを見て、前方に目を凝らすと巨大な影が視界をよぎる。かなりの距離あるにもかかわらず、その迫力はかなりのものだ。
高さは4メートルを超えてはいないだろうが、全長は10メートルを超えているのではないだろうか? 見た目は完全に肉食恐竜のそれだ。
どう見ても迷宮の主って感じである。こういうとこだけ、迷宮っぽくなくていいのに……。
どうせ、あの後ろに白龍の住処があるんだろうなぁと、ファンタジーのお約束に、諦観に近い感情を覚える俺であった。




