迷宮跡地へと至る道
昨夜は魔物の襲撃も無く、おかげで充分な休息を取ることが出来た。俺は毛布から外に出て、冷たく湿った朝の空気を一杯に吸い込み、眠気を覚ます。
「ますたー、さむい」
「おっと済まん。まだ寝てていいぞ、ナオ」
俺が毛布から外に出たはずみで、敏感な素肌が外気に晒され、ナオは朝の肌寒さに震えていた。俺はナオが寒くないよう、毛布を掛け直してあげる。
なんでこんな状態になっているかと言うと、端的に言えばナオを抱き枕代わりにしたからである。前世の俺であれば、1人寝を苦とも思わなかったが、スズと一緒に寝ることに慣れてしまうと、1人で寝ることにひどく寂しさを感じてしまうのだ。
かといって、スズに添い寝を頼むというのも、夜番のチームは別であるし、一緒に寝て何もせずに休める自信も無い。そんなわけで、ナオを抱き枕に熟睡したのであった。
言い訳をさせてもらうと、俺は抱き枕にしただけであって、決してナオに手は出していない。いくら俺が紳士であっても、幼女は守備範囲外であり、越えてはいけない一線というものがあるのだ。
「もうすぐ朝食にしますので、顔洗って来てくださいね」
「分かった、直ぐに行く」
俺が自分に言い訳をしていると、ノルンが起こしに来てくれた。
「起きろナオ、飯食いに行くぞ!」
「……あい、ますたー」
返事は有れど、動きは無い。どうもナオは低血圧のようで、寝起きが悪い。睡眠が短時間でも行動に支障は無いのだが、一度眠ってしまうとちょっとやそっとじゃ起きない。俺が抱えたまま寝返りを打っても、起きた気配は無いので、抱き枕に最適だろう。
少し時間は掛かったが、なんとかナオを起こし、『洗浄』魔法で顔を洗い、食事に向かう。
「おはよう皆、よく眠れたかな?」
「うん、良く眠れたよ。イリスも、さっきまでグースカ寝こけてたしね」
「かっ、からかうのは止めてくだされ、奥方殿!」
奥方殿て……昨日何が有ったんだろうな。まあ、仲は悪く無さそうだし、良しとしとこうか。
「良いじゃないほんとなんだし、それにそんな事で、誰も文句言わないよ」
「そうだな睡眠は重要だからな。一杯食べて一杯寝る、これが強くなる秘訣だ」
自分で言っといてフォローを入れるスズに合わせて、俺もイリスをフォローする。
「強くなる秘訣……でござるか?」
「そうですね、いくら修練をしても、充分な栄養と休息を取らないと強い肉体は作れません。ですから、朝食もしっかり取ってくださいね、イリスさん」
「分かり申した。それとアスラ殿、拙者のことはイリスと呼び捨てにしてくだされ、言葉遣いも皆と同じにして頂きたい」
「そうか……わかったよ、イリス」
昨日同様、ドレッドベアの肉を使った料理で、しっかりとした朝食を取る。朝から焼肉ってのも重い気がするが、いい加減、この世界に来て慣れて来た。
冒険者は身体が資本なのだ、食事はしっかり取っておかねばならない。その証拠に、昨日栄養と休息を充分に取ったイリスは、体調も良さそうだし、パラメータの耐久値が少し増えていた。この調子で育てて行けば、良い肉壁……いや盾役になってくれることだろう。
食事を済ませ、野営を片付けた俺達は、イリスを先頭に山を登り始める。
黙々と登っていくと、徐々に木がまばらになっていく。途中、レベル41のドレッドベアと、レベル42のオーガと遭遇したが、奇襲を掛けて危なげなく倒すことが出来た。
更に先に進んで行き、岩場に出てしばらく歩いた頃に、マシロが警告の声を発した。
「あそこに何か居る、かも?」
マシロが指さす方向を見るが、見たところ岩しか無いように見える。
ううむ、敵は見つからないが、マシロが言う事だしな。
俺がマシロを信じ、片っ端から鑑定を掛けて行くと、何体かの魔物を発見することができた。
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名称:ロックリザード
種別:魔物
レベル:39
筋力:64 (409)
耐久:81 (517)
敏捷:45 (287)
器用:24 (153)
精神:17 (109)
魔力: 3 ( 19)
スキル: 体術Lv3 槍術Lv3 隠密Lv3 気配察知Lv3
固有スキル:剛体Lv3 擬態Lv4
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岩に擬態した魔物、ロックリザードだ。その擬態は見事の一言であり、そこに居ると判ったうえ見なければ、本当の岩と見分けるのは不可能だろう。見た目は、体長2メートルには届かない程度の、大型のトカゲだ。
「ロックリザードが4体だな、俺が1体やるから、コテツとアンズで1体、スズとナオで1体、イリスとマシロで1体を相手にしてくれ。敵は硬そうだから無理な攻撃はするなよ。ノルンは魔法での援護を頼む」
各自の相手にする魔物を指示し、武器に魔法を纏わせたら戦闘開始だ。
「『エンチャントウィンド』、『ウィンドカッター』!」
走り寄りつつ魔法を仕掛けるが、『ウィンドカッター』は全く効いた様子は無い。そのまま敵に近づき、ノロノロと起き上がり構えを取る魔物の背に切り付けた。鈍い手応えがあり、切るには切れたが致命傷には程遠い。
やはり、背中側はダメか。こういう魔物はたしか、腹側が弱かったりするんだよな。
「『ウィンドプレス』!」
俺は風魔法で、圧縮した風をトカゲにぶつて体勢をぐらつかせると、ダメ押しの蹴りで仰向けに倒す。そのまま腹に剣を刺し込むと、今度はサクッと突き刺さった。
一旦離れて様子を見ると、魔物はしばらくもがいた後、動かなくなった。きっと上手く倒せたのだろう。
「伏せてください、『サンダーボルト』!」
他の面々を見ようと振り返ると、イリスとマシロが離れた一瞬の隙を突いて、ノルンが魔法を放ったところであった。
雷を食らったロックリザードは表面上は何ともなさそうに見えても、内部が破壊されたのか、しばらく痙攣したあと動かなくなる。雷魔法はなかなか使えるもんだな。
残り2匹については、スズとナオはもうすぐ勝負がつきそうだし、コテツとアンズは堅実に魔物を抑えている。ノルンがコテツ達の方に向かっているので、あっちもすぐに終わるだろう。
戦ってみての正直な感想は、ただ硬いだけで動作も遅いし、攻撃さえ通れば簡単に倒せる魔物だ。厄介な擬態は、マシロの感知と俺の鑑定が有れば問題無いし、今度、レベル上げのために乱獲してもいいかもしれない。
しばらくするとロックリザード4体との戦闘が終わり、ナオに死体を回収してもらった。
肉は硬そうだし、体表の岩も防具として使うのに微妙だろうしさ。これって、何の素材になるんだろうな?
この頃には、日も傾き始めていたので、取りあえず疑問は置いといて、ここらで野営の準備を始める。岩場と言う事で、虫は少なく快適だ。まあ、その代わりに岩の地面が固いのだが、虫の鬱陶しさに比べればいくらかマシである。
今夜の食事もドレッドベアの肉を使った料理だが、スズが違う味になるよう料理してくれたため、飽きると言う事はなかった。流石は俺の嫁である、伊達に料理スキルは持っていないといった処か。
夜番は昨日と同じ順番であり、ナオには悪いが今日も抱き枕になって貰うとしよう。
これと言って何もないまま、翌日の朝を迎えることができた。日常ってのは大概は何も起きないものだ、毎日何か起きてたら、それこそ身体が保たん。
日にち的にそろそろかと、朝食の場でイリスを鑑定して見ると、ちゃんと光魔法スキルがレベル2に上がっていた。
「お、光魔法のレベル上げてくれたんだな、イリス」
「分かるのでござるか? 本当に不思議な御仁でござるな……」
「まあな、その辺は後で説明する。それより、例の魔法は……夜にしておくか、それまでに考えておいてくれ」
「拙者は今すぐでも良いのでござるが……承知したでござる」
戦いぶりを見る限り、これと言って問題は無さそうだし、受け入れても大丈夫だろう。まあ、ギリギリまで見極めさせてもらうとしよう。
野営を片付けた俺達は、今日も今日とて山を登っていく。
「イリス、目的地まであとどのくらいだ?」
「この調子であれば、白龍様の迷宮跡に、今日中に着けるでござろう」
「迷宮か……迷宮って言うくらいだから、奥までたどり着くのは時間が掛かりそうだな」
「いえ、今はあくまで普通の洞窟でござるからな、1日もあれば奥に着けるそうでござる」
「ん、迷宮って普通の洞窟と何か違うのか?」
「詳しくは存じておらぬが、違うらしいでござるよ」
知らないのかよ……まあいいか、今は早く着けるということで喜んでおこう。
「もう少しで着くでござるよ」
「ご主人、上!!」
もう少しで目的地に到着というところで、マシロの焦った声が響く。珍しくマシロが焦っていることからも、余裕の無さが覗える。
急ぎ反応して上空を見ると、巨大な爬虫類が俺達に向かって、滑空してくるのが見える。速度はかなりのもので、遠距離からの不意打ちを掛けようとしているようだ。
俺は取りあえず、反応が遅れたノルンを抱え、その場を飛び退ってから迎撃を試みる。
「『ウィンドカッター』!」
狙い違わず、命中したはずだが、全く効いていない。と言うよりは直撃の瞬間に、風を散らされたような感じだった。
あれはワイバーンか? 風魔法が効かないのは厄介だな。
まずは鑑定して、作戦を立てることにする。
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名称:ワイバーン
種別:亜竜
レベル:47
筋力:84 (792)
耐久:78 (736)
敏捷:67 (632)
器用:28 (264)
精神:24 (226)
魔力:31 (292)
スキル: 体術Lv4 隠密Lv2 気配察知Lv3
固有スキル:竜爪Lv3 竜息Lv2 風操作Lv4 嗅覚感知Lv3
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基礎パラメータ的には勝てない相手では無い、だが空を飛べる敵というのは思った以上に手強いものだ。たぶん、風操作スキルの所為で風魔法は効かないだろうし、半端な攻撃は体術スキルの高さから、躱されそうな気もする。竜息スキルってのはたぶん、ブレスか何かだろう、レベルは低いが注意だけはしておこうか。
「ワイバーンだ、風魔法は効かないし、動きも素早い。皆、無理せず回避重視で戦っていくぞ。あと、ブレスが有るかも知れないから、気には止めといてくれ」
「了解、ご主人、ボクが射落とす」
「頼む、アンズとノルンも攻撃頼むぞ、残りは3人の護衛に回ってくれ」
「「「「了解!」」」」
さあ、ワイバーン戦だ。こいつを倒せれば、晴れてシルバーランクだ。油断は出来ないが倒せない相手では無い。ここは確実に仕留めて行こうじゃないか。
投稿遅れて申し訳ありません。
ダークソ〇ル3買ったわけでもないのに、遅れてしまった^^;
これ、ペル〇ナ5が発売されたら、ヤバいんじゃなかろうか。
気合いの入れ直しが必要だな。




