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竜人からの貢ぎ物

 窓の外からは、森に棲む小鳥達の鳴き声が聴こえてくる、これぞ朝チュンだ。

 季節はもう春とはいえ、森の朝は肌寒い。俺は身近に感じる体温を逃すまいと、スズの矮躯をギュッと抱きしめた。

 

「ん……おはよ、アスラ」

「おはよう、スズ。悪い、起こしちゃったな」

「ううん、もうちょっとこのままで……あったか、幸せ」


 スズは俺の腕の中で、幸せそうに「むにゃむにゃ」言っている。今日からまた、山に入らなければならない、今朝くらいはゆっくりしても良いだろう。



 俺は幸せの体温を身体一杯に感じながら、昨夜の事を思い返す。


 昨夜は3日ぶりと言うこともあり、少々激しくしてしまったのだが、スズはそれに応えてくれた。心地よい疲労感に包まれて、そのまま眠りに落ちたのだが、寝る前にナオが部屋に入って来るのを見たような気がする。たぶん、いつもの体液補給だろうから、気にする必要は無いだろう。

 そう言えば、カーミラも来たようだったが、何の用だったんだろうか? 正直、竜人族に深入りするつもりは無いから、聞かなくて済むなら聞きたくはない。


 何か言われても、出来るだけスルーすることにしようかね。


 だらだらと朝を過ごしていると、ノルンが部屋に入って来る。


「おはようございます、もうすぐ朝食だそうです」

「あっ、ああ、おはよう。着替えたら行くから、先に行っててくれ」


 俺はノルンから視線を逸らしつつ、そう答えた。視線を逸らしたのは、ノルンの眼から言い知れぬプレッシャーを感じたからだ。

 スズももぞもぞと動き、ノルンに挨拶を返す。


「おはよーノルンさん、良い朝だね~」

「おはようございますスズさん。随分と気の抜けたお顔ですね、早く起きて顔を洗うことをお勧めします」

「えへへ、やっぱり~? でも、もうちょっとこのままいるよ~」

「くっ、そうですか……まあ、ほどほどにしてくださいね。それでは先に行ってお待ちしておりますので」


 悔しそうにノルンはそう言うと、部屋から出て行く。


 どこがどうとは言わないが、今日はスズの勝利のようだ。こういった軽いやり取りは、しょっちゅう有るのだが、本格的な対立に発展することは無い。まあ、俺は気が気ではないのだがね。


 さて、このままスズとだらだら過ごしたいところだが、さっさと食事に向かうとしようか。


 むずがるスズをどうにか起こし、着替えて食堂に向かう。食堂に入ると、既に俺達以外の身内と、族長オイゲン戦士長エルヴィン、カーミラが食卓についている。


「よく眠れたかの、アスラ殿」

「お陰様で、ゆっくり過ごせましたよ」

「よく言うわね、随分お楽しみだったみたいじゃないの」

「はは、ところでカーミラさん、昨日は何か御用でも?」


 オイゲンさんに俺が答えると、カーミラさんの突っ込みが入る。俺はそれをスルーして、昨日の用件を尋ねた。


「それはもういいんだ……私はお呼びじゃないようだしな」

「何の話だ? まあいいけどね。それよりオイゲンさん、案内人の件はどうですか?」

「ちゃんと昨日のうちに話をつけ、道のほうも教えてありますぞ。食後に紹介致します」

「それは良かった。それでは食事を頂くとしますかね」


 朝食は、肉肉野菜肉穀物って感じの、肉中心のものだった。森で獲った肉類と、付近に自生している山菜類、少量の穀物はもう少し浅い森にある集落で作られた物らしい。


 食事中の雑談で軽く聞いた話では、この集落の含めて、6つの竜人集落が存在するらしい。森の浅い層に3ヵ所、森の奥深くに3ヶ所だ。

 戦いが苦手な者は、森の浅い層で麦や野菜を育て、戦いが得意な者は森の奥で魔物を狩る。この村は後者であるため、子供や老人は少なく、働き盛りの成人が多いとのことだ。

 他にも集落と呼べないくらいに小さい規模だが、白龍山の中腹に竜人のキャンプが存在するらしく、そこでは選ばれたエリート達が日夜、鍛錬に明け暮れているらしい。


 ここの戦士長ですらレベル50を超える強者だ、鍛錬に明け暮れる竜人などには逢いたくは無い。俺は絶対に関わらないことを心に誓った。



 朝食が終わると、オイゲンさんが案内人を連れてくると、席を立つ。しばらく待つと、オイゲンさんが1人の小柄な少女を連れて来た。いや、小柄に見えるのは周りの竜人達がデカい所為で、実際には背の高い、痩せた少女と言った方が正しいだろう。


 俺が少女と言ったのには、他の竜人に比べて小柄な他に理由がある。顔が普人族に近いのである。


「この娘はイリスと言ってな、儂の孫で、カーミラの腹違いの妹じゃ」

「拙者は、いえ、私はイリスと申します。どうかよろしく」

「俺はアスラと言います。いつも通りに、喋って貰って構いませんよ」

「そうか、かたじけない、お言葉に甘えさせて頂くでござる」


 オイゲンさんが紹介してくれたのは、イリスさんという娘だ。容姿を見るに普通の竜人族とは思えないし、喋り方も何かおかしな感じだ。


 それにしても、拙者って、どこの侍だよ……。 


「申し訳ないアスラ殿、この娘は、母親の口調がなかなか抜けなくてな」

「ほう、珍しい口調ですが、母親はこの辺りの人では無いのですか?」

「ああ、詳しくは知らんが、ヴェスター皇国の南から来たらしい。10年ほど前にまた、旅に出てしまってな、今は何処で何をしているのやら」

「そうなんですか……」


 ふむ、ヴェスター皇国の南か、そこに侍っぽいのが居るなら、一度行ってみたいものだな。


 エルヴィンさんの話では、イリスさんの母は旅人のようだ。この辺りは普人族以外が行動しずらい事を考えると、普人族だったのかもしれない。まあ、鑑定してみれば分かる事だ、少し覗かせてもらうとしよう。


----------------

名前:イリス

種族:混血種(竜人/普人)

モラル:114

レベル:34

筋力:55 (275)

耐久:58 (290)

敏捷:65 (330)

器用:35 (175)

精神:30 (150)

魔力:14 ( 70)

通常スキル:体術Lv3 槍術Lv3 盾術Lv3 隠密Lv3 気配察知Lv3 生活魔法Lv1 光魔法Lv1

固有スキル:全異常耐性Lv3 竜鱗Lv2

----------------


 やはり、普人族と竜人族の混血種だったか。


 イリスさんは、身長は170cmを超えるくらいで、痩せているが、骨格は意外にがっしりしている。精神値を見る限り、20歳以上だとは思うが、顔つきは凛とした整ったもので、歳の割に若く見え、高校生くらいにも見えた。

 彼女は燃えるような赤い髪を後ろで束ね、瞳は金色だ。浅黒い皮膚には、所々に濃緑色の竜の鱗が見えている。胸はやはり小さいが、混血種に掛けられた呪いか何かなのだろうか? ある意味、こういった戦闘において邪魔な部分を削ぎ落した結果、混血種の戦闘能力が高くなっているのかもしれないな。


 種族の詳細については次の通りだ。


----------------

種族:混血種(竜人/普人)

基礎寿命上限:70

基礎パラメータ上限:筋力(130) 耐久(130) 敏捷(120) 器用(95) 精神(105) 魔力(80)

説明:竜人族と普人族から生まれた混血種。混血種の特徴として基礎パラメータが高い代わりに、成長が遅く、成長には多量の栄養を要する。また、繁殖力が低く、滅多に子供ができることは無い。

----------------


 混血種の基礎パラメータ上限については、だいぶ分かって来た。2つの種族の上限の平均+αって感じで、特に敏捷と魔力が高くなるようだ。

 竜人に比べて魔力が高いといっても、力が全ての竜人族には評価されないだろう。それに、栄養不足のせいで、筋力と耐久が充分に育っていないということもある。

 まあ、立場の悪さから、面倒事を押し付けられたってとこだろうな。


「どうじゃ、この娘を連れて行ってもらえんかの?」

「はい、道を知っているのなら、こちらに否やはありませんよ」


 俺はオイゲンさんの質問に即答する。どうせ、数日の付き合いだ、道さえ知っているなら誰でも良い。混血種ってことで食事の量は増えるだろうが、3人も4人もたいして変わらないだろうしな。


「ありがとうございます。アスラ殿、どうか我が娘を頼みます」

「ええ、出来る限り、お守りしますよ」


 エルヴィンさんが神妙な顔で頼むので、俺も出来る限りの事はすると答えた。まあ、案内人を守るのは当然の事だ。


「ではイリスさん、準備が出来次第、出発したいので、出かける準備をお願いしますね」

「承知したでござる」


 俺達は部屋に戻り、出発の準備をする。


「ねえアスラ、さっきの族長さん達、なんか変じゃなかった?」

「ん、何がだ? 案内人を紹介してくれただけだろ」

「う~ん、ただ案内人を紹介するにしては、何かを覚悟したような感じ?」

「ふむ、なるほどな。まあ、注意だけはしとくか」


 覚悟か……どんな覚悟かは知らんが、いつ何をされても対応できるように、心構えだけはしとくかね。



 俺とスズが出発の準備を整え家の外に出ると、カーミラさんと、既に準備を整えたイリスさんが待っていた。


 イリスさんの装備は俺達の装備と遜色の無い物で、こげ茶色の革鎧(たぶんワイバーンの革鎧)を着て、背中には黒鋼の槍と、大きな盾を背負っている。大きなズタ袋を肩に掛けており、その中には旅に必要な荷物が入っているのだろう。


 何を話して良いかわからず、俺が気まずそうにしていると、気を利かせたカーミラさんが話しかけてくる。


「本当は私が一緒に行きたかったんだけどね。イリスは弱くても気の利く良い子よ、愚妹をよろしく頼むわね」

「姉上……拙者などの為に、そのようなお言葉を……お世話になりました姉上」


 まったく家族で送り出すとか大袈裟な、今生の別れでもあるまいしね。まあ、それだけ山のほうは危険ってことなのかもな。よし、それなら、気を引き締めて行こうじゃないか。


「ああ、任せてくれ。ちゃんと無傷で返せるように努めるさ」

「えっ、返すって?」

「どうやら、準備が出来たようじゃな。明るい内に、白龍様の住処に行きたいなら早く行った方が良いぞい」

「そうですね、それでは皆準備出来たようだし、出発しよう」


 俺がカーミラさんに応えると同時に、オイゲンさんがノルン達を連れてやって来る。オイゲンさんの言う通り、出来るだけ明るい内に先に進んでおきたい。これで全員集合と言う事もあり、イリスさんを含めた俺達8人は、オイゲンさん達に別れを言って、村の外に向かう。



 この時俺は、それまでの会話の内容を深く考えずに、竜人族の村を後にした。そのことを、後になって後悔する羽目になる事を、俺は予想だにしていなかった。

6/23) イリスの母親の設定修正「イリスを産んで直ぐにまた、旅に出てしまったんだ」⇒「10年ほど前にまた、旅に出てしまってな」


生まれて直ぐに旅立ってるのに、何で喋り方移ってるんだろう? ってふと気づきまして…。

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