戦闘民族竜人
お話の都合上、前話登場のカーミラのパラメータを上方修正しています。
俺は一旦、竜人の集落から離れ、少し後方のスズ達の元に向かう。どう話し掛けるか決めるにしても、まずはスズ達と合流してからだ。
「この先に竜人族の集落が有ったよ」
「思ったより早く見つかったね」
スズの言葉に俺は頷きながら、自身の迷いを明かす。
「ああ、これで日程的に余裕が出来たな。それでな、これからどうやって接触すべきか迷っている」
「普通に正面から行けばいいんじゃないの?」
「それもどうでしょう、竜人族は戦闘好きの種族と聞きます。いきなり戦いを仕掛けられないとも限りません」
スズが言うように正面から堂々と行くのが普通なんだろうが、ノルンが代弁してくれた懸念がある。
竜人族はこの世界での少数種族だ、イメージ的には地球で言う処の、アマゾンの奥地に隠れ住む少数部族だ。情報が少なすぎて、友好的な種族なのか、はたまた首狩り族的な種族なのか判別がつかないのだ。
「そうだな、いざという時の準備をしつつ、正面から接触する。これでいいかな?」
「うん、それでいいと思うよ」
「はい、問題無いと思います」
俺は2人の折衷案で行こうと決め、まずはこちらの戦力確認から始めていく。
戦力は俺、スズ、マシロ、ノルン、コテツ、アンズ、ナオの7人だ。ナオも最近では戦闘に参加できるようになっており、ステータスはこんな感じだ。
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名前:ナオ
種族:ホムンクルス【幼】(アスラの眷属)
レベル:35 ↑6up
筋力:40 (315) ↑7up
耐久:51 (402) ↑4up
敏捷:51 (402) ↑9up
器用:41 (323) ↑4up
精神:12 ( 95) ↑1up
魔力: 8 ( 63) ↑2up
通常スキル:体術Lv3 大剣術Lv3(new) 異次元収納Lv5 隠密Lv5 気配察知Lv5 生活魔法Lv1(new) 肉体異常耐性Lv2(new) 精神異常耐性Lv2(new)
固有スキル:空気嫁
ギフトスキル:アスラの加護
スキルポイント:8pt
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まず、生活魔法は魔力値の育成用、肉体異常耐性と精神異常耐性は必須スキルとして取得させている。高レベルの状態異常は、命に関わる物が多く、耐性スキルで症状を緩和させることで、すぐに命がどうこうと言うことが無いようにしている。
あとは、適正スキルの大剣術を習得してもらった。ナオが身体全体を使って大剣を振り回す姿は、幼女が大剣に振り回されているようにしか見えないのだが、これが中々に強い。耐久値だけならバカ高いトロールでさえ、一刀両断にできるほどだ。
そんなナオは今、黒鋼の大剣を異次元収納から取り出して、いつでも戦えるよう軽く素振りをしている。
幼女が自分よりも大きな大剣を振り回す姿には、愛らしさと危なっかしさという相反する感情を覚え、目が離せない。
おっと、今はそんな場合じゃないな。まずはこの7人をどう分けるかだな。
俺は2チームに分かれて、竜人族に接触しようと考えている。それは、正面から接触するAチームと、いざという時の為に近くに潜んでいるBチームだ。
まずは俺はAチーム確定として、コテツとアンズも隠密レベルが低いからAチームだ。スズ、マシロ、ナオは隠密レベルも高いし、敏捷値も高いからBチームが良いだろう。俊敏値が高ければ、隠れた場所から直ぐに接敵できるからな。
あとは、ノルンをどっちチームにするかは迷うので、ステータスを見て判断しようか。
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名前:ノルン
種族:混血種(樹人/普人)
モラル:104 ↑13up
レベル:31 ↑10up
筋力:37 (240) ↑5up
耐久:41 (266) ↑6up
敏捷:51 (331) ↑8up
器用:47 (305) ↑4up
精神:28 (182) ↑1up
魔力:54 (350) ↑12up
通常スキル:体術Lv4(1up) 杖術Lv2 隠密Lv4(1up) 生活魔法Lv2 光魔法Lv4 風魔法Lv4(1up) 雷魔法Lv4(1up) 詠唱省略Lv4(1up) 肉体異常耐性Lv2 精神異常耐性Lv2 裁縫Lv2 異次元収納Lv2(new)
固有スキル:真偽判定
ギフトスキル:アスラの加護
スキルポイント:2pt
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まずは体術と隠密は俺のパーティでは、必須スキルと言っていい。パーティ単位で行動する場合、移動速度は一番遅い者に合わせる必要があるし、隠密行動では誰か1人でも見つかってしまえばアウトだからだ。
次に、異次元収納Lv2も必須だ。スリやひったくりの多いこの世界では、盗られない貴重品入れとして使え、容量は20kgまでとはいえ重宝する。
最後に、風魔法、雷魔法、詠唱省略だ。とうとう詠唱省略Lv4で、魔法名のみでの発動を可能にした。これで、魔法での不意打ちがだいぶやり易くなったはずだ。風魔法Lv4は俺が覚えてる魔法と同じだが、雷魔法で次のような、新たな魔法を覚えている。
・雷魔法Lv4『エンチャントサンダー』:武器に雷の力を付与する
・雷魔法Lv4『パライズウェーブ』:放射状に雷の波を放ち、複数の相手を麻痺させる
今回もし戦闘になったら、殺さずに無力化する必要があるだろうから、『パライズウェーブ』は凄く使えそうだ。他に使えそうな魔法と言えば、闇魔法の『スリープクラウド』と『シャドウバインド』、雷魔法の『スタンショック』くらいだろう。
よし、ノルンもBチームにしておこうか。
「スズ、マシロ、ノルン、ナオはもしもに備えて、近場に潜んでいてくれ。ノルンは俺が合図をしたら、『パライズウェーブ』での奇襲を頼む。他の皆はその後、相手を無力化していってくれ。そっちは任せたぞ、スズ」
「了解だよ、こっちは任せておいて」
「承知しました、直ぐに援護できるようにしておきます」
さて、作戦って言うにはテキトウ過ぎるが、まあ何も無いよりはマシだろう。そろそろ行くとするか。
「コテツ、アンズ、俺に付いて来てくれ。これから竜人集落に接触する」
「承知!」
「わかったわ」
スズ達と別れて先に進むと、後方から気配が消える。かろうじてノルンの気配だけは感じられたが、他の気配は感じられない、やはりスキルレベルは一緒でも、使い慣れているかどうかで多少違うようだ。
まあ、気配察知Lv4の俺がギリギリ察知できるレベルだから、近づき過ぎなければ見つかる事も無いだろうな。
少し歩くと森を抜け、竜人集落の目の前に出た。どうやらノルンは、集落に最も近い木の陰に潜んでいるようだ、たぶん他の皆もその付近に居るのだろう。
「そこのお前達、止まれ!」
俺達3人が集落に近づくと、衛兵らしき竜人に止められた。
「私はアスラと申します、竜人族の皆様に伺いたい事があり参りました。昔の話に詳しい方はいらっしゃいませんか?」
「ふむ、貴様は普人族だな? ならばここを通すわけにはいかん、大人しく帰るがいい」
「そこを何とかなりませんかね、紹介状もあるのですが」
「ふむ紹介状とな、まずは見せて見ろ」
俺は衛兵に、白龍さんから貰った紹介状を渡す。
「……こんな落書き、貴様、俺達竜人をバカにしているのか!?」
衛兵は紹介状を叩きつけるように、俺に投げ返してくる。
マジかこれ……白龍さん勘弁してくれよ。
「いやぁ、そんなつもりは無いんですがね。白龍様は竜人族なら分かるようなこと言ってましたし」
「言うに事を欠いて、白龍様の紹介状だと! ふざけるのも大概にしろよ!」
やべっ、余計な事言っちまったよ。一旦撤退かなこれは?
「まあ待て、ここは私に任せてはくれまいか」
「カーミラ様!? ですが……」
衛兵を止めるように、俺がさっき後を付けた竜人族の女性?が近づいて来る。どうやら、話の分かる竜人もちゃんと居るらしい。
「アスラとか言ったか、そのような大言を吐くのだ、余程強いのだろう。私の家は代々、族長をやっていてな、どうだ、私と戦って勝てば、御爺様を紹介してやるぞ」
駄目だこいつ、戦う気満々じゃねーか。「ウフフフッ」とか怪しい笑みを浮かべてるし、なんか戦闘狂っぽい感じだよ。
「私には戦う理由は無いのですが、他の選択肢は無いのですか?」
「無いね、それに戦うのに理由なんて要らないだろ? さっさとやろうじゃないか」
ふう、やるしか無いのか。カーミラのレベル43、何とかなりそうな相手だし、受けてもいいかな。
「分かりました、お相手致します」
「そうこなくっちゃな!」
カーミラはそう言うと、背中の槍を手に取り、俺に飛びかかってくる。
「お前たちは手を出すな!」
俺は一旦、飛び退って距離を取り、スズ達にも聞こえるようにそう言って、剣を抜く。
「良い身のこなしじゃないかい、これは楽しみだねぇ」
そう言いながらも、槍の穂先を俺に向けたまま突っ込んで来るカーミラ。その力の入れようからは、寸止めをする気配は無い。
本気かこいつ、当たったら怪我じゃすまないぞこれ!?
俺も必死で応戦するが、本気としか思えない槍の攻撃は重く、防ぐのが精いっぱいだ。
しばらく打ち合っていると、流石に慣れてくる。というか、カーミラの攻撃は一発一発が重くスピードも速いが、単調で読み易い。
しかも速いと言っても、いつも相手をしているコテツに比べれば速いという程度だ。これなら俺のが速い、やはりパラメータ差は大きいな。
「くっ、この、ちょこまかと!」
「そうだそうだ、何時までも逃げ回りやがって、それでも戦士か貴様!!」
いつの間にやら、カーミラの後方には彼女の仲間らしき5人と、衛兵4人が集まっている。
しょうがない、そろそろ反撃といこうか。
俺は剣を横にし、カーミラの脇腹に峰打ちをしてから距離を取った。
「なんだその攻撃は、戦う気が無いのか貴様!」
「えーっと、どうやったら決着がつくのですか?」
「どちらかが戦えなくなるまでに、決まっておろう!」
失敗した、勝利条件を最初に設定しとくべきだったよ……。この調子じゃ、首に剣を突き付けても、気にせず戦いを続けそうだよな。どうすっかなこれ?
気絶させるしか無いと思った俺は、その後、何度も峰打ちを行ったが、カーミラの硬い鱗に阻まれ、大したダメージを与える事が出来ない。
「はぁはぁ、いい加減、本気を出せ……」
俺も伊達に、体術と小剣術のレベルが5なわけでは無い。カーミラの攻撃は完全に見切っており、一発として掠らせてはいないが、こちらの攻撃も効いていない。
こうなったら、切るか突くかしないと切りが無いと思い、俺は突きを放つ事にする。
まずは、わざと隙を見せ大振りの攻撃を誘って、攻撃を躱しつつ懐に入る。
「貰った!! ……なっ!」
懐に入ったら、みぞおちに渾身の力で剣の柄を突きいれた。
「ぐふっ!」
俺は直ぐに、距離を取ってカーミラの様子を覗う。
「これでどうでしょう、まだ戦えますか?」
カーミラからの答えは無く、地面に崩れ落ち、そのまま立ち上がることは無かった。どうやら気絶しているらしく、一応、呼吸はしているようなので死んではいないだろう。
「気絶してしまいましたか、さて起きるまで待つしかないのかな? それとも、他のかたが案内してくれるのでしょうか?」
俺の言葉に、カーミラの後ろで呆然と立ち尽くしていた、彼女の仲間が反応する。
「よっ、よくもカーミラ様を! 貴様ら、生きて帰れると思うな!」
「そっ、そうだな。よしっ、全員で掛かるぞ!」
うへ、早くも第2ラウンドかよ、これは備えをしておいて良かったな。
直ぐに動いたのは、彼女の仲間らしき5人だ。衛兵の4人は様子見に回っている。
「一旦撤退するぞ、素直に負けを認められないバカ共の相手をするだけ時間の無駄だ」
「はい、もっと理性的な種族かと思いましたが、とんだ蛮族でしたね」
「確かに、これじゃトカゲと揶揄されるのも頷ける」
俺が挑発しつつ、森のほうに後退すると、アンズとコテツも話を合わせ付いて来る。
その後ろを竜人達が、何か喚きながら付いて来るが、同時に5人で喚かれると何を言っているのかわからない。
まあ、どうせ大した事じゃない、どうでも良いか。それよりも、もうちょっとだ。
俺はコテツとアンズを先に行かせ、相手に怪しまれないように、逃げる速度を少しづつ落とす。
さて、最後の仕上げと行くか。
俺は5人に追いつかれ、観念したかのように振り返り、防御の姿勢を取ってこう言った。
「ノルン今だ、俺ごとやれ!」
「はっ、はい『パライズウェーブ』!」
直後、周囲を電撃が襲い、追手の5人が動きを止める。
うひぃ、なんかピリピリするぜ、これは何つうかアレだな。腰に巻いて電気を流す、腹筋ベルトの刺激に近いな。
俺はそんなどうでも良い事を考えながらも、痙攣して膝をつく竜人達を眺めていた。




