白い訪問者
6/3) 「耐魔法防御」⇒「耐魔法性能」に修正、耐魔法性能は水・火を含む、全魔法への耐性のイメージです
昨日とうとう俺にも春が来た、今日から3月、季節の上でも春だ。この季節になると、白龍山のワイバーンが冬眠から目覚め、それを狙うシルバーランク以上の冒険者が、狩猟都市に集まって来るらしい。
ワイバーンはシルバーランクの冒険者が、6人パーティで相手をする魔物だ。今の俺達が討伐するわけでは無いが、行きつけの食堂のワイバーン料理が少し安くなるのは有り難い。あと1ヶ月もすれば、新鮮な肉が入って来るだろうから、その頃にまた食事に行くのもいいかもしれない。
それはともかく、今日は冒険者ギルドで、俺を尋ねて来たというハクさんとやらに会わねばならない。俺は朝食を済ませ、庭で軽い戦闘訓練をした後、1人で冒険者ギルドへと向かった。スズ達は家事や訓練をするとのことだ。
冒険者ギルドに着いたら、受付のテレサさんに到着を告げる。
「テレサさん、約束通りに来ましたが、ハクさんは来てますか?」
「おはよう、今呼ぶからそこに座って、待ってておくれ」
冒険者ギルドに併設されている、飲食スペースで座って待つ。暫くするとテレサさんが、背が高い細身の男性を連れて来てくれた。髪も肌も真っ白で、来ている服も白を基調としており、名前の通り白い人だ。彼はその繊細な見た目に反して、俺の向かいの椅子に無遠慮に座った。
「ようアスラ、来てやったぞ!」
「えーっとハクさんですよね、以前、会ったことありましたっけ?」
「俺だよ俺、こないだ会ったばっかじゃねーか」
俺って言われても分からんな、もしかして新手のオレオレ詐欺か? さすがにそれは無いか、鑑定してみれば誰か分かるだろう。
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名前:ハク
種族:普人族(白龍の化身)
レベル:92
筋力:40 (3391)
耐久:40 (3391)
敏捷:40 (3391)
器用:40 (3391)
精神:40 (3391)
魔力:40 (3391)
通常スキル:気配察知Lv5 隠蔽Lv5 光魔法Lv6
固有スキル:竜鱗Lv4 竜爪Lv4 竜息Lv4
ギフトスキル:不老
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おぉう、白龍さんだったのか、こないだ会ったばっかって、あれから半年以上過ぎてるぞ。まあ、不老なんてスキルがあるくらいだから、半年なんてあっと言う間なのかもな。
あと、人の姿をしてるんだが、化身ってのが関係あるんかね。それにしても基礎パラメータは低いのに、レベルの所為でとんでもない強さになってるな。
「もしかして、白龍様ですか? それに、その姿はいったい?」
「おうよ、この姿は俺が魔力で作り上げた化身だ。本体の身体は故郷に着いたから、今はこっちに意識を宿して、こうして礼を死に来たってわけよ!」
「なるほど、ですが普人族じゃないとバレたら、大変では無いですか?」
「隠蔽スキルで隠してっから大丈夫だぞ、500年前もこの姿でエストレアと旅をしたもんだ」
あぁほんとだ、隠蔽がレベル5だよ。それにしても隠蔽スキルとは……もしかしてエストレアって人と旅するためだけに取ったのかなこれ?
正直、隠蔽スキルってスキルポイント使ってまで、覚えようとは思えないんだよな。人物鑑定ってスキルレベル低いと、大した情報見れないから防ぐ必要性低いし、レベルの高い鑑定を持ってる人は少ないからな。
それに隠蔽自体が、鑑定に対抗するための限定された代物だから、限られたスキルポイントを使うほどでもないんだよな。まあ、見られると本当に拙い情報が有ったら、覚えざるをえないんだけどさ。
「それなら安心ですね、ところで礼というのは?」
「ああそれなんだがな、今は大したものも持ってねーし、何を上げりゃいいのかわかんねーから、お前に決めてもらおうかとな」
「と言いますと?」
「白龍山の頂上に、昔俺が管理してた迷宮があんだよ。今はエストレアに封印されて迷宮としての力は無くしてっけど、俺の寝床は残ってるはずだから、そっから好きに持ってってくれ」
白龍山の頂上に迷宮かぁ、力を失っていると言っても、万全の準備が必要だろうな。直ぐには無理だ、せめて防具くらいは、新調しないとな。
「なるほど、有り難く頂きます」
「で、これだ。こいつが寝床に入るカギになる。まあ、寝床に何も残って無かったとしても、こいつを売ればそれなりの値段になるだろ」
白龍さんはそう言うと、大きな袋をテーブルの上に置く。中身を除くと、大きな龍の鱗のようだった。
「それには俺の魔力が込められている。そいつを持っていれば、俺の寝床への扉が開くはずだ」
「ありがとうございます、白龍様。ところで、迷宮の詳細な場所についてなんですが」
「あーすまん、忘れちまったぜ」
はっ? そうすると、ワイバーンとか出る山を探し回らんとならんのか……流石にキツイぞ。
「えーっとだな、たしか竜人族がいっから、そいつらが知ってるはずだ」
「それって500年前とかの話ですよね?」
「まーなんとかなるんじゃね? 今、紹介状書いてやっからよ……ほらよ!」
白龍さんが何やら、紙にサラサラって書いて渡してくれる。異世界言語のスキルでも、何が書いてあるかは分からない。
これほんとに文字なんだろうな? いざ竜人族とやらに渡して、逆に怒らせたりしないといいんだけど。
「あっ、ありがとうございます。あとこのカギなんですが、どのくらいの期間使えますかね?」
「そうだなぁ、3年は保つんじゃねーかな。他に聞きたいことはあるか?」
準備が整うまで3年は掛からんだろうけど、よかったよ。まあ行くなら、最低1年はレベル上げしてからだな。ワイバーンとか大量に来たら怖いしさ。
「いえ大丈夫です、準備が出来たら行ってみますね。ところで御礼に食事でもどうです? 奢りますよ」
「おうおう、いいねぇ。久しぶりの人が作る飯だ、遠慮なくご馳走になるぜ」
貰った龍の鱗と紹介状を異次元収納に仕舞った俺は、白龍さんを連れて行きつけの食事処に向かった。
結果だけ言うと、白龍さんはホントに遠慮なく食べてくれやがった。3時間近くかけて、金貨1枚(100万円)分の料理を食べた後、満足気に帰っていった。
正直、レベル92の食欲を甘く見ていた、食事に誘ったことを少しだけ後悔している。まあ、その分いろいろな事を聞けたので、少しは元を取れたとは思うけれど。
ただ500年前の知識が殆どだろうから、今の時代で通用するか分からない。それにほとんどは、雑談レベルの話が多かったから、今日聞いたことは頭の片隅にでも置いておこうと思う。
家に帰ったら、庭で訓練しているスズ達を眺めながら、今後の予定について考える。
当初はこの後、帝国を通って迷宮都市に向かおうと考えていた。しかし、ここでの生活も慣れてきた今では、このまま商都連合に住んでもいいかなと考えている。
この街を出るにしても、まずは装備を整えて、白龍さんの寝床に行く必要もある。そうすると、まずは装備の新調を考えないとならない。
まず、新調したいのは防具だ。たしか工房都市で見た防具で良さそうなのは、金貨8枚の黒虎の防具セット、金貨25枚の飛竜の防具セット、金貨15枚の飛竜の軽防具セット、金貨80枚の地竜の防具セットあたりだ。
黒虎の防具セットは俺が装備しているものと同じで、軽い上に黒色の見た目は夜間の隠密行動には便利だし、シルバーランク冒険者として最低限の防御性能と、耐水・耐火性能もある。
飛竜の防具セットと軽防具セットは、ワイバーンの革を使った革装備だ。防具セットはほぼ全身を覆う近距離戦向きのもので、軽防具セットは身体の要所々々を覆うだけの遠距離戦向きのものだ。
どちらもシルバーランクとして、標準的な防御性能と耐魔法性能(全属性耐性)があるらしい。当然、肌が露出している箇所を攻撃されると弱いが、軽防具セットでも防御の厚い箇所で上手く受ければ、充分な防御力を発揮するとの事だ。
地竜の防具セットは、ランドドラゴンの革と鱗を使った、ほぼ全身を覆う装備だ。金属鎧よりは軽いが、防御性能と耐魔法性能はかなりのもので、ゴールドランクの近接戦担当ご用達の装備だそうだ。
今のところの収入は、薬品類の売却益とクエスト報酬を足して、そこから生活費を引くと、月金貨15枚といったところだろう。
飛龍の防具で揃えたとしたら、ノルンとマシロに軽防具セットを、他の5人に防具セットとすれば、合計金貨140枚かかることになり、揃えるのに10ヶ月近くかかってしまう計算だ。
ここで重要なのが、装備は一度買えばずっと使えるわけでは無いということだ。ゲームの世界じゃないんだから、装備は消耗品である。今の防具は修理しながら騙し騙し使っているが、流石にそろそろガタが来ていた。
やはり、まずは黒虎の防具セットを揃えるべきだろう。ナオを入れて7人分で、金貨56枚(5600万円)必要だ。飛龍の防具には、黒虎の防具が古くなったら買い換えればいいだろう。
次に、武器については今の装備、ダマスカス製の武器と、黒鋼製の武器が精一杯だ。これ以上となると、金額の桁が1つ2つ違ってくる。
一応、折れた時のために予備も欲しいし、弓矢も新調したい。他には、太刀もダマスカス製は無かったが、黒鋼製のものは有ったので欲しいところだ。
・ダマスクソードを3本:金貨15枚
・黒鋼の武器(剣×1、槍×1):金貨10枚
・黒鋼の太刀:金貨13枚
・コンポジットボウx2:金貨8枚
・黒鋼の矢200本:金貨4枚
合計:金貨50枚(5000万円)
とまあ武器は、こんなところだ。
ほんとに金がいくらあっても足りない、早くシルバーランクになって高額な依頼を受けれるようになりたいよ。たしかワイバーン納品を受けれれば、1匹で金貨8枚にはなったはずだからな。
いくらシルバーランク以上の人材が、全体の3%もいないからといって、報酬に差がありすぎるだろうと思ったが。
よくよく考えると前世の会社でも、平社員と役員の報酬には天と地ほどの差があった。ちゃんと仕事してるとは思えない役員ばかりだったのにさ……。
そう考えると、ちゃんと仕事した分の報酬を貰えるだけ、冒険者のがマシというものだろう。明日からもガンガン依頼をこなして、さっさとシルバーランクになってやる!




