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ロマンチックじゃいられない

 一瞬のうちに俺は、自室のベッドに大の字に拘束されていた。その上、両腕はそれぞれマシロの足で抑え付けられ、頭は抱え込むように固定されており、起き上がることは出来そうにない。


 なんだこの状態、ご褒美か、ご褒美なのか!?


「こ、こりは、どうゆうことら?」

「それはこっちの台詞!」


 痺れの所為で、上手く回らない舌でスズに尋ねると、逆に怒られてしまった。


「今までどこ行ってたのよ!? ギルドと違う方に向かってたって、マシロちゃんに聞いたよ!」

「そりはなぁ……酒を飲みに行ってたんだよ」


 やっと痺れもとれてきて、まともに喋れるようになった。


 それにしても迂闊だったな、常春通りに向かう前に、ギルド方面に向かっておけばこんなことには……俺もまだまだ詰めが甘い。


「嘘ですね、向かった方向からすると……常春通りですね」

「ぐぅ……ノルンは俺の味方じゃなかったのか?」

「味方ですよ~、これも全て貴方の為です。それより、否定しないということは図星と言う事ですか」


 これはアレだな、俺が出掛けた時に、既に積んでいたってことだな。


「やっぱり行ってたんだ、私というものがありながら……」

「まっ、待ってくれ、未遂だったんだよ! 直ぐに帰って来たじゃないか」

「……でも行ったんでしょ?」


 スズは瞬き一つもせずにこちらを見つめながら、徐々に詰め寄ってくる。


 ひぃ、ヤバいよヤバいよ、今日のスズめっちゃ怖いよ。でもさ、何でここまで言われないとならないんだ? 今回のだって、スズ達を襲ってしまわないように、考えたうえでの行動だっていうのにさ。よく考えると、なんかムカムカしてきた。


「ああ行ったさ、行ったとも! 俺だって男だから色々と溜まるんだ、これは必要な事、グエッ!」


 話してる途中で、お腹の上に勢いよく乗られたせいで、俺の開き直りの熱弁が中断される。完全にマウントポジションだ、ここでパンチの雨を降らされたら、俺には抗いようが無い。


「反省が見えないわね、どうしてくれよう」

「スズさん、ここは最後の手段に出る必要がありそうです」

「さっ、最後の手段ってなんなんだ?」


 ノルンが参戦してくると、嫌な予感しかしない。この子、まともに見えて、意外にぶっ飛んでるからな。


「子作りをしましょう、子供が出来れば自覚も生まれるのではないでしょうか」

「おい待て、スズに変なこと吹き込むな」


 やっぱりだよこの女、子供に何てこと言いやがる。 


「なんで、結婚の約束したよね?」

「大人になってからだって言ったじゃないか!」

「私はもう18歳、充分大人だよ」


 ああうん、そうだった……見た目が幼いから、つい忘れちゃうんだよな。スズは18歳だったな、ちなみにマシロは17歳で、ノルンは21歳と聞いている。マシロ以外なら手を出したとしても、見た目的にはアウトだが、年齢的に問題無いのだ。それでも俺は、スズ達をただの性愛の対象にしたくは無い、もっと大切にしたいと思っている。


「……俺はスズを好きだ、でも愛しているかと言われれば、分らないとしか答えられない。だから、もう少しだけ時間が欲しい、俺がお前を愛してるって自信を持って言えるまで」


 金で割り切った関係なら話は別だが、愛の無い行為は不誠実だと思うし、出来るだけしたくは無い。だから俺は、確かな愛を感じられるまでは、自信の性欲を我慢しようと考えている。


「愛ってそんなに大切? じゃあ、私のあなたへの感謝の気持ちは? あなたを好きって気持ちや、あなたを欲しい気持ちも、私はどうすればいいの? 私にいつまで待てって言うの!?」

「それは……」


 あっ、我慢してるのは俺だけじゃなかったのか? それなら、後は俺の気持ちの問題ってことか。


 愛か……よくよく考えると、愛ってなんだ?

 どうなったら愛してるっていえるんだ?

 相手のために命を張れるかってことか?

 それなら、いつになるかも分らない、俺はそれを保証することができない。俺の意志は脆弱で、俺がこうしたいと思っても、いざその時になったら出来ないことは、よくあることなのだから。


「愛とはお互いを受け入れ合うことだと、御爺様は言っていました。ですので、触れ合ってお互いを知ることも必要だと思うんです。アスラさんは傷つき傷つけるのが怖くて、1歩が踏み出せないだけなんじゃないですか?」


 ノルンは痛いところを付いてくれる、もしかして俺は適当な理由を付けて、近づきすぎるのを避けているだけなのか?

 俺が初めて人を殺した時の感覚は覚えている。あの時でさえ、我を失い身体が動いたのだ、これ以上好きになってしまったら、俺は何をしてしまうかもわからない……違う、これも言い訳に過ぎないな。


「難しく考えるから分らなくなるの。アスラは私のこと、どのくらい好きなの?」

「そうだな……この世界で一番好きだな」

「私も同じ、だから信じて。私はアスラに貰ったものなら、痛みや傷だって愛しいと思うよ」


 ああそうか、愛を語るというのは保証を与える事では無い、俺が謳うべきは覚悟だ。


 俺は自分でいうのもなんだが、ヘタレの臆病者だ。いざという時に逃げださないという保証はできない。それでも、俺はスズのためなら命を掛ける、俺はスズを愛していると伝えることで覚悟を決める。


「ああ、俺がバカだったみたいだ。俺はお前を愛している、だからもっと話がしたい。まずは俺の拘束を解いてくれないか?」

「……それは嫌」

「へっ、何で、ンンッ!?」


 スズの顔が覆いかぶさるようにして近づいて来て、その小さな唇でもって俺の言葉は止められた。


「ぷはっ……女の子だってね……その……したいのよ。言わせないでよ、ばかぁ」


 女の子にここまで言わせるって、男として最低だよな俺。これはもう受け入れるより選択肢は無いし、これ以上、恥を掻くのも掻かせるのも駄目だな。


「あっ、うん、すまなかった。……スズ、俺もお前が欲しい」

「うん、アスラ……愛してる」


 スズが俺の服を脱がせながら、身体中にキスの雨を降らせて来る。ノルンは一仕事終えたと言うように、1歩下がって様子見に回っており、マシロも俺の身体を固定したまま、興味津々にスズの行為を見つめていた。


「(まったく、世話が焼けますね。3年も一緒にいて何もしてないんですから……でもそんな真面目なところも良いなんて思ってしまうのは、私も相当参ってるってことでしょうか)」


 ノルンが何か呟いているようだが、俺はもうそれどころではない。頭の片隅で、初めてがこのシチュエーションは無いんじゃないかと思いつつも、性衝動が暴走しないよう、自分を抑えるので精一杯だった。


 俺が漫画の主人公だったら、このくらいのタイミングで邪魔が入ったりするんだろうが、どうやら俺は主人公では無かったらしい。



~~~~~



 明けて翌日、俺の腕の中で安心して眠るスズを見ながら、昨夜のことを思い出す。


 昨夜のスズはまるで、自分の気持ちを叩きつけるかのように激しく苛烈であった。どうも、自身の気持ちを持て余しているようにも見受けられた。


 こんなになるまで、俺は気づかぬふりをして放置していたのだ、これからはもっと愛してやりたい。


 それに昨日の行為は、お世辞にも上手とは言えなかった。男の俺でも痛みを感じたほどで、スズの感じていた痛みは想像すらできない。必死に思いをぶつけてくるスズを俺は止めることが出来なかったし、痛みを我慢して動くスズを見て、仄暗い欲情を感じたのを否定はできない。

 それでもやはり、お互い幸せを感じられるほうが良いはずだ。俺も前世での経験こそ無かったものの、知識だけはそれなりにあるのだから、今後は俺がリードしていこうと思っている。


 愛については正直のところ、まだ分っていない。たぶん、こんなことに拘っていたから、前世で経験が無かったんだろうなとも思う。それでも、無駄ではなかったはずだから、これからも考え続けて行こうとは思っている。そして例え、答えが出なくても、好きな人を想い続けて行こう。


「きっと、俺に足りなかったのは覚悟だったんだな。俺はお前を一生離さないよ」


 俺はスズの艶やかな黒髪に触れながら、愛しい寝顔にそう誓った。


 

 と、ふと自分の足のほうを見ると、布団がもり上がっているのが見えた。確かに昨夜は長時間頑張った割に、1回のみでスズが力尽きてしまい、今朝の俺の相棒は天を突くほどの勢いだが、さすがにここまでではない。

 

 って、最後までかっこつけさせろよ。また、ナオが潜り込んできたのか? さすがに幼女はまずいぞ、止めないと。


 そう思って布団を剥がすと、俺のベッドに潜り込んでいたのはノルンであった。


「ちょっと待った、何してるんだノルン」

「はい、楽にして差し上げようかと」


 ノルンの気持ちは有り難いんだが、急にこんなことされても怖いだけなんだが。


「急になんだ、心境の変化でもあったのか?」

「私はアスラさんの従者ですから、主人に奉仕するのは当然のことです」


 昨日まではこんなこと一度も無かったのに、昨夜のアレを見て、影響されたとかなのかね? 別に俺は関係の有無で、差別とかせんぞ。


「何が従者だ、昨日は言うこと聞いてくれなかったのに……まぁ、結果的には良かったから感謝してる。だから、いつも通りでいいんだぞ」

「私達の気持ちも言わないと分かりませんか? それとも私の事がお嫌いですか?」


 これはもう言わせてしまったようなもんだな、やっぱり俺って男として最低だな。確かに好意のようなものは感じていた。それでも応えることは出来ないから、気づかないようにしていたんだ。

 今の関係が心地良くて壊したくなかったから、うやむやなままにしていた。まったくこれじゃ、ラノベの鈍感主人公を悪く言えないじゃないか。


「嫌いではないさ、むしろ好きといっても良い。でもな俺にはスズがいる、だからその気持ちは受け入れられない」

「スズさんとの話は付いてます。もし、アスラさんが受け入れてくださらないなら、私とマシロちゃんは一生、独身のままということになりますが……ほんとに酷いお人ですね」


 えっと待ってくれ、スズと話が付いているって、そんなのありなの? 確かに俺も男で、ハーレムは男の夢と言っていいだろう。でも流石に、いきなりハーレムってのもどうよ。

 たぶん、俺の恋愛レベルじゃスズ1人でも持て余すぞ。それに、せっかく両想いになったわけで、しばらくは2人きりの甘い時間とか過ごしたいじゃない。


「いやきっと、他に良い人が……これじゃ昨日と一緒か……、少し時間をくれないか、まずはよく話し合おう」

「分かりました、今日は勘弁してあげます、ちゃんと私達のことも考えてくださいね」


 前世だったら他の人を選べって突き放すのが正解なんだろう。途中まで言いかけて、ふと『でもこの世界ではどうなんだ』そう考えたら、訳分らなくなってきた。

 1人で考えて分らなければ、パーティ内のことはパーティで決めよう、下手の考え休むに似たりだ。取りあえず話し合って、後はなるようになれだ。



 まったく、ハーレム主人公みたいに『来るもの拒まず全員俺が面倒見てやる』みたいな、男の甲斐性が俺にもあったらよかったのにな。ハァ……なんでこうヘタレかなぁ俺。



今回は特にしんどかった、砂吐きそうです。

会話が多くて疲れましたので、ハーレムに関する話し合いは、サラッと流して、次話でその結果だけ書くと思います。


余談ですが、後半のノルンのターンは、最初かなり違う感じでした。


>「はい、楽にして差し上げようかと」

 ↓

>「ふぁい、らふにひてさひあげひょうかと」

> 口の中に物を入れて喋らないよう、躾けられなかったのだろうか?


からの攻め展開でしたw R-15をはみ出しそうだし、ノルンも流石にここまでしないなとボツにし、後半の殆ど全てを書き直す羽目に。


以上、どうでもいい話でした。

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