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夢の庭付き一戸建て、4LDK

ペイントで書いた間取り図付きです。

下手で見難いのは勘弁してください。

「やっ、やめろ! やめるんだ、〇ョッカー!!」


 ハァハァ……良かった夢か。いや、夢は夢でもスキル習得の試練だったか。また今晩、同じ目に逢うかと思うと眠るのが憂鬱だなぁ。


 昨晩は酷い目にあった。肉体異常耐性Lv3が早くほしいから、スパルタでもいいと願った所為なのか、眠りに就いて魂の修練場で気が付いた時には、俺は手術台に四肢を拘束されていたのだ。

 身動きの出来ない俺の元に、白衣を着たトルテさんがゆっくりと近づいてきて、巨大な注射器を俺の腕に。その後、様々な状態異常に見舞われ朦朧とした意識の中、甲高いドリルの音も聞こえた気がする。


 いったい、俺は何をされたのだろう。まあ、考えても分からないのだから、気にしない方が良いだろうし、さっさと起きるとしよう。


 ベッドから起き上がろうとすると、身体の上に微かな重みを感じる。自分の身体を見下ろすと、シャツが膨らんでおり、何かが服の中に潜り込んでいることが見て取れる。

 確認すると案の定ナオが潜り込んでいたので、優しく引っぺがし、さっきまで寝ていたベッドに寝かし付け、俺は洗い場に向かう。いつもより早く起きた俺は、眠気覚ましに『洗浄』魔法を使い、口を濯ぎ顔を洗ってから部屋に戻った。

 スズとマシロは未だ眠っているようだが、ベッドの上にノルンが見当たらない。部屋を見渡すと、窓を開けて日光浴をしているノルンを見つけた。


「おはようノルン、こんな時間に日光浴かい?」

「おはようございます。これは日課のようなものです」


 ふむ、日課ね、朝日を浴びると健康にいいとかそんな感じなのかね?


「なら、近いうち借りる家は日当たりが良い方がいいよな」

「気を遣って頂いてありがとうございます。あの……隠さずにお話しますので、聞いていただけますか?」

「ん? 遠慮しないで何でも言ってくれよ」


 ノルンが覚悟を決めたかのように語りだした。


「母が言うには、樹人族は髪に日光を浴びることで魔力を生成しているそうで、私も定期的に浴びないと調子が良くないんです。やっぱり、変……ですよね?」

「へー、それは面白いね。少し触らせてもらっていいか?」


 ノルンが頷くのを確認した後、長い髪を一房、手に取って優しく触れる。ノルンの緑髪は植物の新芽のように、しっとりとして柔らかで、髪に顔を近づけ匂いを嗅ぐと、ハーブのような爽やかな香りがした。


 髪の毛が葉っぱ替わりって感じで、もしかして、光合成でもしてるのか? この世界のエルフは、樹人って言うくらいだからあり得なくは無いな。


「あの~、流石に恥ずかしいのですが」

「ああ、すまん。いい香りだったから、ついね」

「……やっぱりアスラさんは変な人です」


 慌ててノルンの髪から手を離したが、様子を見る限り、嫌がってはいなそうだ。いい匂いだったから、今度また嗅がせてもらおう。あー、でも依存性とか無いよな、ハーブはハーブでも脱法ハーブみたいな?


「アスラ、何話してるの?」

「おはようスズ、今日ギルドで家を借りようと思ってな、お前も何か希望とかあるか?」

「大きな台所が有るといいな。あとはアスラと同じ部屋なら他はどうでもいいよ」

「そっか……善処するよ」


 台所は良いが、一緒の部屋か……これは参ったな。俺のセルフライフの為にも、どうにかして自分の個室を確保したいところだ。大きな台所のある家にして、部屋はなんとか別にしてもらうとするかね。


「2人の希望は確認した、後のことは俺に任せてくれ」

「ん~、わかったよ。私達はまた狩にいってくるね」

「ああ頼む。家を借りるとなると、少しでも資金は必要だからな」


 よし、これで部屋の多い家を借りて、どうにか個室を手に入れよう。コテツとアンズで1部屋、スズとマシロ、ノルン、ナオで2部屋、後は俺の個室で最低4部屋は要るな。


 こうして朝食を済ませ、スズ達と別れた俺とナオは、売却用の薬品を持って東ギルドに向かった。

 

 俺はギルドに着くと、いつもの窓口に向かった。


「テレサさん、今月分の薬品の残り、買取お願いできますか?」

「あいよ、見せとくれ」


 今月買い取ってもらえる上限の残りとして、下級ポーション35本、マナポーション17本、麻痺解除薬と目薬を各3本を渡し、金貨3枚を受け取る。これで残りの所持金は、だいたい金貨7枚半(750万円)だ。


「あとは、家の件なんですが」

「それなら条件に合う家が5件ほどあったよ、これを見ておくれ」


 テレサさんから簡単な間取りが書かれた紙を受け取り、一通り目を通す。耐久性がどれもレベル50くらいまでは問題無い、シルバーランク向けの一軒家だ。これらの頑丈な家は、エルダートレントという魔物の身体を木材として使っているらしく、頑丈だがその分値段も高かった。各家の間取りは次の通りだった。


1枚目:2LDK+トイレで金貨2枚

2枚目:3LDK+トイレで金貨2枚半

3枚目:4LDK+トイレで金貨3枚

4枚目:4LDK+風呂トイレで金貨3枚半

5枚目:6LDK+風呂トイレで金貨5枚


 家賃は全て2ヵ月分の額で、この中で俺の条件に合うのは3枚目か4枚目だ。


「テレサさん、この2軒を見せてもらっていいですか?」

「あいよ、ちょっと待ってておくれ」


 俺が頼むとテレサさんが、受付を他のおばちゃんに任せて、目的の物件まで案内してくれた。


 まずは3枚目の物件に着くと、外観は少々古い感じの2階建ての洋館で、日当たりの良い大きな庭があった。中に入ると掃除は行き届いており、最低限の家具は揃っているようだった。ざっと見て回って分かったことは次の通りだ。


・1階にリビングとダイニング、キッチン、トイレ、洗い場がある

・テーブルや椅子、食器棚等の最低限の家具は設置されている

・2階には6畳ほどの部屋が4部屋あり、各部屋にベッドが2つある

・足りないのは布団や、カーペットなどの布類である

・キッチンは3人同時に使えるくらいに広い

・広い庭には、井戸が併設されており、飲用可能

・風呂は無いが、洗い場はあり、そこで身体を洗える


 とまぁ、8人まで住めるようになっており、作りもしっかりしている。ここに決めてしまってもいいのだが、日本人としては風呂がとても気になるので、もう1軒のほうも案内してもらう事にした。


 4枚目の物件に着くと、外観は比較的新しく作られた建物のようで、日当たりは悪くなさそうだが庭は狭い。中に入ると、掃除が行き届いていることと、家具が揃っていることは一緒だ。3枚目の物件との違いは次の通りだ。


・1階に洗い場の代わりに、2,3人は入れるような石造りの風呂がある

・キッチンは小ぢんまりとしている

・飲用可能な井戸はあるが、庭は狭い


 どちらの物件も東ギルドから歩いてすぐの所にあり、交通の便は悪くないし、俺は片方を借りることに決めることにした。


「テレサさん、金貨3枚のほうを借りることにします」

「最初に見たほうだね、すぐにでも住めるけど、今日から契約するかい?」

「はい、今日からでお願いします」


 正直、風呂は捨てがたかったが、他の条件を考えると、風呂無し物件のほうに軍配が上がる。スズとノルンの希望が優先で、風呂はもう少し稼いでからにしようと思う。マシロ達の希望は訊かなかったが、まあ、そのうち美味い物でも食わせてやろう。


 ギルドに戻った俺達は家の契約を行い、2ヵ月分の家賃金貨3枚を支払った代わりに家の鍵を受け取る。


 ギルドを後にした俺とナオは、足りない布団を買いに寝具店へと向かう。寝具店は街の東西に1軒づつあり、今回は東側の寝具店を訪ねた。


 寝具店に入り敷布団コーナーを見ると、商品サンプルらしい綿布団が3種類と、羽毛布団が3種類、あとは何かの植物で作ったようなボロイ布団が3種類並んでおり、各布団の横に柄付きの布が置いてある。店員に聞くと、ベースは9種類でそこに柄を付けることが可能らしい。

 余計な金が無い今は、無地のものが良いので、俺はまず、基本の9種類の値段を確認した。ボロイ布団が銀貨6枚、8枚、10枚(6万~10万円)の3種類で、綿布団は小金貨3枚、4枚、5枚(30万~50万円)の3種類で、羽毛布団は金貨3枚、4枚、5枚(300万~500万円)の3種類だ。それぞれ値段が高くなるほど分厚くなっている。

 これ以上の値段の布団は、店頭には置いてないそうだが、今の俺には無縁だ。俺の残金が金貨4枚半なことを考え、今回は綿布団の真ん中、小金貨4枚の敷布団を7枚購入することにする。ついでに銀貨6枚の枕を7人分、銀貨2枚のシーツを14枚購入し、敷布団の値段と合わせて金貨3枚半となる。

 残金が金貨1枚となってしまったので、掛布団は購入できなかったが、しばらくは野営用の物を代用すれば充分であろう。


 店員に料金を支払った後、隙を見てナオに収納してもらってから店を出、新たな我が家に向かう。


 ギルドで受け取った鍵を使って我が家に入り、直ぐに2階に上がって布団を各部屋に設置する。ナオが布団に埋もれて遊んでいるが、まぁ、後は俺1人で充分だ。

 南側の2部屋と北東側の部屋には、布団を二組づつ敷いて回り、俺が狙っている北西の部屋には一組だけ敷いておく。そして、北西の部屋に俺の荷物を置いて、縄張りを主張しておく。ちなみに太陽は南東に上って、南西に沈み、方角や日差しについては日本と一緒と考えて問題無かった。

 

 北西の部屋と、北東の部屋の間には階段があるし、北側の部屋は日当たりが良くない。俺が選んだ部屋は、日当たりが悪い上に西日が差す、最も位置の悪い部屋だった。まあ、1人で占有するわけだから、この程度の悪条件はどうということは無い。


 ちなみに我が家の間取りの脳内イメージは次のような感じだ。


挿絵(By みてみん)


 どうだろう、分って頂けただろうか。この俺の想像力の無さを。一応の予定として、部屋割りはこのように北西が俺、南西がスズとナオ、南東がマシロとノルン、北東がコテツとアンズにしようと考えていた。


 引っ越しの準備も出来たことだし、スズ達を迎えに宿屋に戻る。宿に着くと、今夜から宿を引き払うことを伝えて、スズ達が戻ってくるのを部屋で待った。


「ただいま~、今日の稼ぎは銀貨33枚だよ~」

「おかえり皆、お疲れ様」


 この会話だけ聞くと、俺がヒモ見たいだな。ちゃんと稼いでるからね俺も。


「家を借りたから、すぐに行こうか?」

「おぉ~、早く見たいな」

「よし、疲れてるだろうけど、宿屋の荷物をまとめてから付いて来てくれ」


 俺達は宿屋の荷物を全て片付けた後、宿屋で最後の食事を済ませてから、新たな我が家に向かう。家に着くと、俺はテンションあげあげで皆に言い放った。


「さあ、ここが今日から俺達の家だ! 夢の庭付き一戸建て、これで白い犬とか飼ったら完璧だよな」

「む、白い猫じゃだめ?」

「おっと、猫でも可だ。むしろ俺は猫派だからな!」

「ならいい」


 うむ、何か外した感じがする。突っ込みを入れたマシロ以外は不思議そうに俺を見ていた。


「えーっとな、各自の部屋は2階にあるから、まずは案内するよ。付いて来て」

「分ったわ。部屋はもう決まってるの?」

「一応、考えてはある、気に入らなかったら相談は可能だ」


 全員で2階に上がって、各部屋を案内する。コテツとアンズは特に文句も無く、俺の指示した部屋に入って休憩している。マシロとノルンに関しては、ノルンが少し不服そうだったが、これといって文句は言われなかった。まあ一番日当たりが良い部屋だから、当然だね。問題はスズで、説得するのに少し時間が掛かった。


「一緒の部屋って言ったのに……」

「ほら、誰かはナオと一緒にいてあげないと」

「なら、3人で一緒でいいじゃない」

「それだと部屋余っちゃうし、それに錬金術の都合で、1人で占有したいってのもあってさ」


 錬金術云々は嘘ではないが、完全にこじつけの言い訳だ。本当の理由は言うまでもない。


「俺も1人で居たほうが都合が良いこともあってな、どうか察してほしい。いつでも部屋に来て良いからさ」

「……そう言う事、うん、分った。待っててね」


 必死に俺が弁明すると、少し考えたスズが、何かに気付いたのか承諾してくれた。


「分ってくれてありがとう。じゃあ、今日の所は各自、部屋で休もうか」

「「「「はーい」」」」


 俺以外の皆が自分達の部屋に帰っていくと、俺は軽装になって、今日こそは賢者になるための準備をする。賢者への転職に向けて、1人努力を重ねていると、俺の部屋のドアがノックされる。


「入っていいかな、アスラ?」

「ちょっ! ちょっと待ってくれ、スズ」


 俺は慌てて作業を停止し、身支度を整える。


「いいぞ、入ってくれ」

「お邪魔しま~す」


 スズを布団が敷いてある方のベッドに座らせ、向かいのベッドに俺が座った。


「いつも一緒にいたのに、アスラの部屋って考えると、なんか少し緊張するね」

「そういうもんか、それでどうかしたのか?」

「えーっと、その、あの」


 スズが恥ずかしそうにモジモジしてて、なかなか本題に入ってくれない。中途半端で作業を止めた所為で、俺の相棒が暴動を起こしそうだ。


「引っ越してすぐってのも、どうかなって思ったんだけど、もう出会って3年以上経つし、そろそろ……」

「アスラさ~ん、入っていいですか?」


 スズの話を遮るように、ノックする音と共にノルンの声が聞こえてきた。


「おっと、いいかスズ?」

「……勝手にすれば」

「ありがとな、いいぞ、入ってくれ」

「お邪魔しますね~……あら、お邪魔でしたかしら」


 ノルンが部屋に入って来ると、途端にスズの機嫌が悪くなり、ノルンは口だけは笑みの形のままで、俺の隣に座る。


「えっと、ノルンも何か用か?」

「そうですねぇ、強いて言えばスズさんと同じ用事ですよ」

「!?」


 俺の質問に、ノルンが意味不明な回答を返すと、スズの目が険しくなる。同じ用事ってことは、目を険しくするほどヤバい内容なのか?

 それ以降、スズとノルンの睨み合いが長時間続き、何も言わないまま時間切れとなって、2人とも自分の部屋に帰っていった。



 結局何しに来たんだ、あの2人は?


 いつの間にか深夜時間帯だ、このまま起きていると明日の朝がキツイので、結局今日も消化不良のまま眠る羽目になってしまった。明日こそ念願を成就してみせる!



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