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ナオちゃんの超進化

 俺は怪我をさせないよう、腕を優しく掴んで幼女を止める。


「待った、何のつもりかは知らないが、それはいけない」


 幼女の紅い目を見つめて諭すと、小さくうなずいてくれた。幼女の腰まで伸びた長い銀髪も、幼女の動きに合わせて揺れ、俺の脚に触れてくすぐったい。幼女の肌は限りなく白に近い肌色で、病的といってもいいほどなのに、触れた指に帰って来る感触は思った以上に力強い。


 おかしいな、子供の腕はもっと脆くて、触れているのが怖くなるくらいなのに……。


「アスラ……その子はなに……かな?」


 あ、そうだよ、そんなこと考えてる場合じゃなかったよ!


「待ってくれスズ、これは違うんだ!」

「その手はなに、何が違うっていうのかなぁ?」


 スズの背中に修羅が見える。俺は慌てて、幼女の腕から手を離し、スズのほうに向きなおる。


「そっ、それが、俺も何が何だか分らなくてさ。頼む、少しだけ待ってくれ!」

「どうやらその言葉に嘘は無さそうですね、申し開きの時間を差し上げてはどうです?」

「そうね、1分だけあげるから、納得のいく説明をお願い」


 ノルンが起きて来てとりなしてくれ、なんとか時間を稼げたが、スズが武器を取り出して準備を始める。何の準備かは考えちゃいけない……あれ? ノルンも杖を取り出してる、あれも結構痛そうなんだよな。ちなみに、マシロは布団に包まって我関せずの体勢だ、ってそんな場合ではないな。


 どうする、どうする俺? あと1分、いやもう30秒くらいか。30秒で何が出来るって言うんだ、う~む……そうだ鑑定だ! 


 困った時の鑑定頼みだ、俺は急いで目の前の幼女に鑑定を掛ける。


----------------

名前:ナオ

種族:ホムンクルス【幼】(アスラの眷属)

レベル:29

筋力:33 (194) ↑10up

耐久:47 (276) ↑20down

敏捷:42 (247) ↑20up

器用:37 (218) ↑10up

精神:11 ( 65) ↑2up

魔力: 6 ( 35) ↑1up

通常スキル:体術Lv3 異次元収納Lv5 隠密Lv5 気配察知Lv5

固有スキル:空気嫁

ギフトスキル:アスラの加護

スキルポイント:4pt

----------------


「ナオちゃん……ナオちゃんなのか?」

「あい、ますたー」


 おぉう、ナオちゃんが喋った! マジかこれ、夢じゃないんだよな?


「ナオちゃん? その子がアスラの眷属だったナオちゃんだっていうの!?」

「どうやら、そうみたいだ。昨日寝る前に『錬成』掛けたのを思い出したから、たぶんそのせいだ」

「信じがたい事ですが、嘘では無さそうですね」

「むぅ、そんなのってあるの? この子がナオちゃんって……」


 俺の言葉に、ノルンがお墨付きをくれる。俺の能力とスズ達3人の能力については、お互いに情報共有してあるため、ノルンが嘘じゃないと言えばその通りなのだ。こうして、パーティ内の誤解をすぐに解けるのは、稀有な能力だと思う。ちょっとした誤解で人間関係がギクシャクして、パーティ崩壊とかありそうな話だしね。


 それにしても何度見ても、この幼女はナオちゃんだ。てっきり出会った当初に回復薬を上げまくったから、スライムからヒールスライムとかになるのかと思ってたけど、種族はホムンクルスか。魔法生物つながりとかなのか、鑑定してみれば何かわかるかもしれない。


----------------

種族:ホムンクルス【幼】

基礎寿命上限:50

基礎パラメータ上限:筋力(90) 耐久(100) 敏捷(120) 器用(100) 精神(50) 魔力(20)

説明:スライムに人の血液、精液、卵子を加えて錬成した、ホムンクルスの幼生体。食事は何でも食べるが、定期的に人の体液を必要とする。

進化素材:竜の血、精霊の欠片

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 幼生体なのか、たしかに幼女にしか見えないしな。パラメータ上限の合計は普人族より2割減といったところか、きっと進化するとこの辺りもマシになるのだろう。ホムンクルスになって耐久は減ったが、それ以外が増えているから、一応プラスと思ってもいいんだろうね。


 それにしてもホムンクルスとは……たしかに前世の眉唾な作り方も、人の血液とか精液が必要だったと思うけど、卵子もいるのね。あれ、卵子ってどこで調達したんだ?


 俺がホムンクルスについて考え込んでいると、俺の腹の上でもぞもぞと動く気配がする。見下ろすと、ナオちゃんが俺のシャツの中に入ろうとしていた。幼女の姿だからアウトなだけで、いつものナオちゃんの行動を考えると、これはいつも通りの行動だ。

 そう考えると、朝の行動に関しても納得できる。ナオちゃんはいつも通りに、俺の相棒と戯れようとしてただけなのである。うん、これは駄目だな、完全にアウトだ。


「待ちなさい、ナオちゃん! 離れるのよ!」


 俺のシャツに頭を突っ込んでいるナオちゃんの腰を、スズが掴んで引っこ抜きにかかっている。


「はなして、まま」

「駄目ったら駄目、それにママってなに!? 私、子供を産んだ覚えも、そういう行為をした覚えも……って、何言わせるのよ」

「言われてみれば、少しスズさんに似てますわね」

 

 確かに髪の色は違うが、顔立ちと目の色は似ている。スズが母親というなら……そうか、以前オムツ兼生理用品になって貰っていた時に、スズの血液と卵子を摂取していたのか。それにしても、スズは初めてか、


「あー、錬成に必要な材料を考えると、どうも俺が父親で、スズが母親みたいだぞ」

「えっと、それって……」

「スズが麻痺で寝たきりだった時に吸収してたみたいだ。まあ、そういうわけだから、これから頼むぞ母さんや」

「!? あの、私ちゃんと育てるわ! ナオちゃん、仲良くしましょうね~」

「まま、くるしい」


 スズが俺から引っぺがしたナオちゃんを抱きしめて微笑んでいる。どう見ても、親子って言うより姉妹にしか見えないな。ナオちゃんも少し苦しそうにしているが、嫌そうな感じではないので大丈夫だろう。その微笑ましい光景を見ていると、ノルンが俺にこう尋ねて来た。


「あの~アスラさん、スライムをもう一体眷属にする気はありませんか?」

「この辺りにスライムは居ないしなぁ、しばらくは無理かな」

「そうですか……残念です」


 そうなのだ、残念なのだ。俺の性活にスライムは欠かせない、新しくスライムの眷属を手に入れるのは難しいし、かと言って今のナオちゃんに頼むのは……流石にアカンな。これからホントにどうしよう。


 仕方が無いから今日は我慢するとして、早いとこ部屋数が多い家を借りよう。自室が有れば、久しぶりに右手の恋人に頼むのもいいだろう。


 そんなことはどうでもいいから、他に説明すべきことがあるだろうって? 分ってる、進化素材のことだな。竜の血と精霊の欠片か、竜とかさ、もっと強くならないと無理だよね。

 それじゃないって? あれかー、固有スキルはね……見なかったことにしておきたいんだけどな。まあ、明らかにおかしいスキルだから、ちゃんと見とかないとだよね。


----------------

空気嫁:主人以外に対して、なんでかちょっと目立たなくなる

----------------


 固有スキルの鑑定結果はこれだった。存在感が無い嫁って事だろう、決して俺の扱い方が原因ではないと信じたい。ナオちゃんをよくよく見ると、左右対称な顔や、シミ一つない身体は作り物めいていて……いやこれ以上考えるのは止めておこう。

 このスキルに関して真面目な話をすると、俺の固有スキルの劣化版が受け継がれたのだろうと思う。もしそれが正しければ、俺は鑑定出来ていても、他の人が鑑定した時には、種族が普人族に見えるのではなかろうか? スキル名を考えた奴には小一時間説教したい所だが、目立ちたくない俺にとっては有り難いスキルである。


「ご主人おはよう、その子だれ?」

「おはようマシロ、説明するからコテツとアンズを呼んできてくれ」

「ん、行ってくる」

「スズ、ナオちゃんに何か着せてやってくれ」

「うん、大きさは合わないけど無いよりましね」


 マシロがコテツ達を連れてくる間に、スズが自分の服をナオちゃんに着せる。ぶかぶかの服から覗く鎖骨、袖から見え隠れする指先にきゅんきゅんする。


 駄目だ、そっちに行ったら戻れないぞ俺!


 顔を振って正気を取り戻した俺は、戻って来たマシロとコテツ達を呼び寄せて、改めてナオちゃんを皆に紹介する。


「色々と疑問はあると思うが、この子は俺の眷属のナオだ。錬金術での錬成の結果こうなったわけだが、これからもよろしく頼む」

「よろしくわんにゃー」

「あっ、主殿がそういうのであれば信じよう。よろしくお願いいたす」

「主様ならあり得なくは無いですわね。よろしくお願いしますねナオさん」

「よろしく、でもプルプルなほうが良かった」

 

 コテツはびっくりしていたが、皆、概ね受け入れてくれたようだ。マシロは少し残念そうにしているが、放っておいていいだろう。あと見た目が人型になり、ナオちゃん呼びも恥ずかしくなってきたので、これからはナオと呼ぶことにしようと思う。


「でだ、今日はナオの冒険者登録と、家を借りる相談にギルドに行こうと思うんだ」

「それなら私達は狩に行ってくるね、早くアスラに追いつきたいし」

「わかった、家は今日すぐに借りるわけでは無いし、希望が無いか考えておいてくれ」

「うん、それじゃ行ってくるね」


 スズ達と別れると、俺はナオを連れてギルドに向かう。途中、宿の女将に不審な目を向けられたが、スズの妹だと話すと、渋々ながら納得してくれた。部屋の料金については、今日の分から銀貨1枚上乗せされてしまったが、まあこれは仕方が無い。


 東ギルドに着き中に入るが、子供連れだというのに、周囲から注目を受けることは無い。まあ、俺とナオしかいないから、スキルが発動して目立っていないのだろう。いつも通り、テレサさんの窓口に行って話しかけた。


「こんにちはテレサさん、この子を俺の同行者として登録できますか?」

「あいよ、冒険者カードを出しておくれ、あと登録料は銀貨1枚ね」


 冒険者カードと銀貨1枚をテレサさんに渡し、ナオの名前を伝えて同行者の登録をしてもらう。登録の際にナオの血を使ったのだが、幸い、血は赤色で登録も問題無くできた。テレサさんから採血用に針を渡されたときは、かなり焦ったし、自分の迂闊さを少し反省しもした。


「これで登録は完了だよ」

「ありがとうございます。あと家を借りたいのですが、ここで物件を紹介してもらったりできますか?」

「冒険者用の頑丈なだけの家なら紹介できるけど、派手な屋敷とかは期待しちゃだめよ」


 よし思った通りだ、高レベル向けの頑丈な家は、一般人には無用の長物だ。そのため、そういう家は一般的な不動産屋だけでなく、需要のある冒険者ギルドでも紹介してくれると思ったのだ。


「頑丈な家が良いですね、できればレベル50の人でも壊れないような」

「そのくらい頑丈な家だと、2ヶ月で金貨3枚前後はするよ」


 宿屋が半年で金貨18枚だったことを考えると、家を借りれば半年で金貨9枚か、これならもっと早く借りとけばよかったな。まあ、それでも1ヶ月の家賃が、日本円に換算すると150万円前後ってんだから、金銭感覚がおかしくなってきてる気がする。


「結構しますね、とりあえずいくつか見せてもらえませんか?」

「あいよ、見繕っておくから明日また来な」

「わかりました、ではよろしくお願いします」


 俺はテレサさんに物件の件をお願いし、直ぐに宿屋に戻って、錬金術で今月買い取ってもらえる分の残りの薬品を作り始めた。当初、俺の膝の上で暇そうにしていたナオは、今は俺の服の中に潜り込んで静かにしている。


 これはかなりの精神修練になるな。この状況下で集中を乱さずに、薬品を作り続けるのはなかなかにキツイ。


 無心で薬品を作り続けていると、スズ達が帰って来る頃には今月分の薬品がすべて完成していた。


「ただいまアスラ、ナオちゃんは良い子にしてた?」

「おかえりスズ、静かにしてくれてたよ。食事を頼んで来るからナオのことはお願いな」


 俺の服の中で眠りこけていたナオをスズに渡してから、俺は食事を頼みに宿の食堂に向かう。食堂で、ナオちゃんを含めて7人分の食事を頼み、30人前の追加料金を銀貨3枚支払って部屋に戻る。

 本当はナオちゃんの進化祝いとして外食したいところだったが、つい先日、外食したばかりのため、次の機会にすることにした。家を借りるのにも金は必要だしね。


 部屋に順次運ばれてくる、味はそれなりだが量だけは多い食事を終えると、身体を洗ってあとは眠るだけだ。スズがナオを連れて洗い場に行き、いつも通り、マシロとノルンも洗い場を使い終わったら、最後に俺も身体の汚れを落とす。

 ついでに、溜まっていたものを吐き出してこようかと思ったが、思うように上手くいかない。どうやら俺はもう、1人では満足できないようになってしまったようだ。


 ぐっ、だが俺には最後の手段がある。そのために昨日、肉体異常耐性Lv3を選択したのだから。これが習得できさえすれば何とかなるはず、それまでは我慢だ。


 俺は消化不良のまま、自分のベッドに戻ると、ナオを説得してスズと一緒に寝てもらうことにした。流石にこの状態で一緒の布団に入ると、相手が幼女とはいえ、我慢が出来なくなる可能性が無いとは言えない。


 いや、一緒に寝ても全然問題無いよ、たぶん、きっと……やっぱり駄目そうだなぁ。



 俺はその日、悶々としてなかなか寝付くことが出来なかった。早く眠って、魂の修練場に行かないとならんのになぁ。神様、スキル神様、トルテ様、少しくらいスパルタでもいいですから、早く肉体異常耐性Lv3を習得できるようお願いしますよ。




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