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錬金術の極意

ちょい下ネタ多めです

 俺は今、未だかつてないほどの苦悩を強いられていた。俺の身に何が起きたのかを知るには、今朝の出来事を語る必要がある。



~~~~~


 2月も半ばを過ぎた頃で、今朝もまだまだ寒さが厳しく、なかなかベッドから出れずにいた。寒さは厳しいとは言え、レベルが上がり強化された俺の身体にはさほど堪えず、俺の相棒も元気一杯だ。ナオちゃんも既に自分から動き出している。俺はナオちゃんに相棒の身を任せながらも、昨夜の出来事を思い出していた。


 昨夜も魂の修練場にて、錬金術スキルの講義をスキル神のトルテさんから受けていたのが、とうとう錬金術Lv4を習得できたのだ。冒険者ギルドで売却できそうな薬品の、錬金術レシピについては目星がついている。既に素材もある程度集めてあるので、この後試しに作ってみようと思っている。

 それに、レベル3で物質が錬成可能かを何となく分かるようになっていたが、レベル4でその感覚も強化されるらしい。空いた時間で、味噌や醤油のような隠しレシピを探すのもいいかもしれない。


「うっ!……ふぅ、いつも済まないねぇ」


 俺はそう呟きながら、一仕事終えて食事を楽しんでいるナオちゃんを見ると、ある事に気付いてしまった。そう、ナオちゃんが錬成できそうなのだった。


~~~~~



 とまぁ、悩んでいる事とは、ナオちゃんを錬成すべきかどうかである。今こうして朝食を取っている今も気になってしまって味も分からない。錬成で進化するとか分っていれば、喜んで錬成するところだが、もしアイテムに変わってしまったらと思うと、怖くて実行できない。言葉は喋れないとはいえ、長い付き合いのある意味、俺の嫁なのだから。


 かといって進化の可能性を摘むのも気が引けるし、ここはダメで元々、トルテさんにでも聞いてみようかな。


 そうと決まれば、スキルを選択しておかないとならない。朝食を済ませた俺は少し考えた後に、肉体異常耐性のレベル3を選択し、スキル習得中状態にしておいた。


「なあスズ、新しい薬作りたいから、今日は魔物討伐を休みにしようと思うんだが」

「私達だけで行っちゃ駄目?」

「良いけど、あまり強い魔物がいるとこ行っちゃ駄目だぞ」

「分ってるって、じゃあ行ってくるね」


 最近ではノルンもある程度レベルが上がったこともあり、俺が図書館で調べ物をしている時や、ギルドでの用事がある時などに、別行動することも増えてきていた。別行動する場合は、アイアンランク程度の相手に絞るよう言ってあるので、さほど心配は無いはずだ。

 ちなみに、スズとマシロ、ノルンの3人は俺を後見人として、冒険者登録を済ませており、既にアイアンランクになっている。コテツとアンズを登録していないのは、今後解放した後のことを考えると、俺が責任を持てない為だ。


 宿屋でスズ達と別れた俺は、とりあえずナオちゃんのことを今は忘れて、錬成を開始する。錬金術の素材を取り出し、まずは肩慣らしに下級ポーションを作ることにした。

 蒸留水に薬草、魔力草を千切って加え、ゆっくりと混ぜたら『錬成』を掛けて出来上がりだ。出来上がった下級ポーションは、冒険者ギルドから支給されている、薬瓶につめて封をしたら1本完成だ。同じようにして5本の下級ポーションを完成させて、本番に移る。

 これから作ろうとしているのは、マナポーションと麻痺解除薬、目薬の3種類で、下級ポーションと同じ作り方で、最後に1品加えると出来るらしい。

 まずは、マナポーションを作るために、蒸留水に薬草、魔力草を混ぜ、最後に魔力茸を細切れにして加えたら『錬成』を掛ける。鑑定で調べるとどうやら上手くできたようなので、薬瓶につめて完成だ。同様にして、麻痺解除薬は麻痺茸を少量加えて作り、目薬は月見草を加えて作ることが出来た。この3種類を3本づつ作ったところでお昼時になったため、俺は錬成作業を止め、素材と錬成道具を片付けた。


 昼食がわりに干し肉を3枚齧りつつ、作った薬品をまとめ、剣を腰に下げて外出する準備を終えた。太刀と鎧は邪魔になるので、部屋に置いたままいつもの冒険者ギルドへ向かう。

 俺達が利用している宿屋は街の東側に有り、すぐ近くに冒険者ギルドも有る。俺達はこの宿屋で、1日銀貨8枚の4人部屋と、銀貨2枚の2人部屋に住んでいた。

 この街に冒険者ギルドは6ヶ所有るのだが、俺達が利用しているギルドは東門付近のギルドだ。他にも北門、西門、中央に1ヵ所づつ、南門に2ヶ所有るが、スズ達の安全のために女性冒険者の多い、東門付近の東ギルドを利用していた。


 俺は東ギルドに入ると、そそくさといつもの窓口に向かう。お昼時ということもあり、窓口は空いていて、受付嬢のおばちゃん達は皆、暇そうにしている。ちなみに東ギルドの受付嬢はおばちゃんばかりだ、美人の受付嬢は、利用者の多い南ギルドにしか居ない。


「こんにちはテレサさん、薬品の買取お願いできますか?」

「あいよ、見せとくれ。今日はスズちゃん達とは一緒じゃないんだね」

「スズ達は狩に行きましたよ、下級ポーションを5本、あと新しく作れるようになった薬を3本づつです」


 俺はそう言って、今日の成果を窓口に置くと、テレサさんはそれを1本づつ手に取り、鑑定していく。彼女は物品鑑定のスキルを持っており、薬品の真贋を見極めることが出来るのだ。


「下級ポーションが5本に、マナポーションと麻痺解除薬、目薬が3本づつかい。その若さでここまで作れるとは将来が楽しみだね」

「はは、ありがとうございます。それで買い取っていただけますか?」

「そうだね、マナポーションは月20本まで、麻痺解除薬と目薬は月6本までなら買い取るよ。買取値は3種とも1本小金貨1枚だ。下級ポーションは今まで通りで頼むよ」

「分かりました、それでお願いします」


 俺は薬品を渡す代わりに、金貨1枚を受け取ってすぐにギルドを出て、宿屋に帰った。


 冒険者ギルドで売っている回復系の薬品は、無いよりまし程度の傷薬が小銀貨1枚(1000円)、時間はかかるが効果はそれなりの回復薬が銀貨1枚(1万円)、効果は回復薬程度で瞬時に回復する下級ポーションが銀貨4枚(4万円)だ。

 傷薬と回復薬は錬金術Lv2(調剤Lv1)で作成できるため有り余っているが、下級ポーションは錬金術Lv3(調剤Lv2)が必要な上、需要も高いためいつも品薄であった。そこで俺はギルドの職員と交渉し、下級ポーションを1本銀貨2枚で、毎月40本まで引き取ってもらっていたのだ。薬品の売却を始めてから、5ヶ月が経っているので、合計200本で金貨4枚(400万円)もの売上となっていた。

 今回、錬金術Lv4(調剤Lv3)で作った、マナポーションと麻痺解除薬、目薬の3種類は各小金貨2枚(20万円)で売られているので、買取値段の小金貨1枚は妥当な線だった。


 今日売却した薬品は、銀貨2枚の下級ポーション5本で小金貨1枚、小金貨1枚の薬品3種類を3本ずつで小金貨9枚の合計金貨1枚となる。素材を集めるのに時間が掛かっているとはいえ、1日で金貨1枚の収入だ、やはり錬金術のレベルを上げてよかった。


 今月からはマナポーションが20本、麻痺解除薬、目薬が各6本、下級ポーション40本を含めれば、金貨4枚の収入となる。これですぐに防具を買ってやれるだろう。


 宿に着いた俺は、魔力回復のために昼寝をした後、スズ達が帰って来るまで薬品を作り続けた。


「ただいま……」

「おかえり、どうだった?」

「他のパーティが邪魔で、あんまり狩れなかったよ」

「それは仕方ないね、ちゃんと避けたんだろ?」


 俺が一緒じゃない場合、安全の為、森の浅い所で狩をしてもらっているが、その辺りは他のパーティもたくさん居る。東ギルドのおばちゃん達は別だが、スズ達は種族が原因で、他の冒険者達に下に見られがちだ。そのため、他のパーティとの接触は避けるように厳命していた。


「うん、そのせいで、今日はたった銀貨15枚だよ」

「そうふてくされるなって、こっちは儲かったから美味い物でも食いに行こうぜ。今日の報酬は5人で分けときな」

「うん、じゃあ準備するね」


 俺が頭を撫でて慰めると、スズは機嫌を直して、鎧を脱ぎ軽装になる。マシロとノルンも食事に出かける準備をしている。


「スズ、コテツとアンズにも伝えてきてくれ」


 スズがコテツ達の部屋に向かうのを見送って、俺も錬金術の道具を片付けて、食事に行く準備をした。


「いつでも出れるってさ」

「よし、なら行くか」


 俺はスズ達を連れ、途中でコテツ達を拾い、宿の近くの酒場に向かった。この酒場は、異種族もよく利用しており、金さえ払えば差別をされることも無い貴重な場所だ。いつもは宿で別料金を払い、大量の食事を部屋に運んでもらって食べているのだが、今日くらいは贅沢してもいいだろう。


 酒場に着いたら、銀貨3枚のワイバーンステーキを人数分頼み、追加は好きに頼むよう皆に言う。基本的にワイバーンステーキ1枚で、充分お腹いっぱいになるはずだが、スズとマシロは別格だ。

 最近分ってきたことだが、高レベルの魔物の肉は多くの栄養を含んでおり、低レベルの魔物の肉に比べて、少ない量でもお腹がいっぱいになるようだ。その上、食べると何かが満たされるような感じがして実に美味しいのだ。これは所謂、「カロリーは美味しい」という奴ではないかと、俺は考えている。

 俺が、ワイルドボア料理5人前でお腹いっぱいになる所、ワイバーン料理なら1人前で事足りる。コスト的にはワイルドボア料理が銀貨1枚、ワイバーン料理は銀貨3枚と、3倍も掛かるのでいつもは安い料理で我慢していた。


 ワイバーン料理が運ばれてくると、スズ達は嬉しそうに肉にかぶりつく。俺も一口食べると、収入の目途も立ち安心した所為か、久しぶりに酒が飲みたくなってきた。


「少し酒飲んでいいかな?」

「好きなだけ飲んでくださいな、宿まではしっかりお送りしますので」

「そうか、悪いなノルン」


 俺が店員にエールを注文すると、スズが興味を持ったようだ。


「アスラが飲むなら、私も飲みたい!」

「スズさんの見た目だと注意されかねませんので、止めといたほうが賢明かと」

「ぶぅ、ならお肉お代わりする」


 そう言って、ワイバーンシチューを頼むスズを見て、今日の支払いが本当に大丈夫か心配になる。


 流石に金貨1枚は越えないだろうし、今はそれより酒だ酒。


 久しぶりの酒は、味はともかくとして、身体に染みわたるものがあった。一息に飲み干し、お代わりを頼む。結局1時間ほどの食事の間にエール8杯を飲み干した後、銀貨32枚を支払って酒場を後にし、ほろ酔い気分で宿屋に帰る。


 自分の部屋に戻った俺達は、窓際から俺、スズ、マシロ、ノルンの順でベッドに入り、眠りに就く。ノルンが俺から離れているのは、俺が寝ぼけて怪我をさせないようにするためだ。


 ナオちゃんはいつもの如く、俺と一緒のベッドを使う。今日も一緒に布団に入り眠ろうとすると、錬成をしてほしいという思いが伝わって来た。今朝の俺の迷いが伝わっていたのだろう。ナオちゃんからは、早くもっと俺の役に立てるようになりたいという、健気な思いが伝わってくる。


 ありがとうナオちゃん、その心意気に応えるぜ!


 いつもの俺なら、ダメ元でトルテさんに聞いてから試したはずだが、この日俺は酒が入って気が大きくなっていた。俺が涙をにじませながら、ナオちゃんに『錬成』を掛けると、大量の魔力を持っていかれ、俺は気を失うように眠りに落ちてしまった。



 翌朝、目が覚めると、両膝に何かがまたがっている感触があった。そして今も、俺の下半身でもぞもぞ動いている感じがする。


 はっ? なんだいったい……。


 誰かが入っているかのように盛り上がった布団をはぎ取ると、中では全裸の幼女が俺の膝に座って、俺の下着を脱がそうとしていた。


 えっと……だれ!? たしか昨日は酒を飲んで……でも記憶はあるしな。


 酔っぱらいの記憶が信用出来ないと知っている俺が、昨日の自分の行動を思い出している内に、幼女が俺の下着を引っ張る。しかし、今日も元気な俺の相棒が引っかかって、ギリギリのところで耐え忍んでくれている。


「って、ちょっと待ってくれ!」


 俺が悲鳴をあげると、幼女は下着に手を掛けたまま、首を傾げて不思議そうな顔をする。一方で、俺の声に気付いたのか隣のベッドに寝ていたスズが、起きだしてくる。


「あすらぁ、何かあったの~?」


 あ、ヤバい、俺死んだかも。


 このとき、俺のドドメ色の脳細胞は、今までにないほどの速さで回転を始めていたが。ただの空回りであり、結局のところ何の解決策も見出すことは無かった。とりあえず、また動き出した幼女を、止めないとならないことだけは確かだろう。



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