国境までの道程
3/22) 食材の代金を修正、違和感あった細かな箇所を修正
街を出ることを決めた翌日、俺達5人は朝市に向かっていた。スズとマシロには久しぶりにゴスロリ服を着てもらっている。可憐な2人にフリフリの衣装は似合っており、道行く人々の視線を集めてはいるが、服に合わせて大き目の帽子も被せているので、マシロの耳を隠れており、悪目立ちはしていないはずだ。
「コテツも、オシャレしてくればよかったのに」
「某に、本気でその服を着せたいとお思いか?」
「すまん、言ってみただけだ」
コテツとアンズはいつもの鎧姿で、俺は革のパンツとジャケットと無難な恰好をしている。先頭を歩いている俺だが、顔も恰好も平凡なためまったく目立っていない。
「さて、旅に必要なものといったら、食料に水、食器、調理器具、薬品類、外套、着替え、手拭いってところか。ああ、生理用品とかもいるか?」
「うーん、生理用品は最低限で大丈夫だよ。最近は血もほとんど出ないし、痛みもほとんど無いから。マシロちゃんは生理自体無いみたいだし」
「そうですね、獣人族に生理はありません。血を流したりすると野生では生きていけませんからね」
俺が訊くと、スズとアンズが答えてくれた。獣人族は恋の季節があるのだから、定期的に排卵する必要が無いのだろうし、マシロも同じなようだ。あとはスズの話を聞く限り、レベルが上がることで、こういった点でも弱点が緩和されていくのかもしれない。
「それなら、まずは食材を調達しようか。そういや、この中で料理出来るやつっていたっけ?」
「私出来るよ、昔作ってたの思い出したから」
「じゃ、料理も食材選びもスズに任せた。肉は現地調達できるから、それ以外を頼む」
「うん、私の料理楽しみにしててね!」
スズが料理を出来るらしいので任せることにした。スズは市場に着くと、食材が並んでる一角に直行し、新鮮そうな青物野菜を少量と、日保ちしそうな根菜類や芋類を多めにして、野菜を30kgほど選び出す。野菜の他には、料理酒を1kg、砂糖を3kg、塩を5kg、乾パンを30kg、一応安い干し肉も20kgほど買っておく。味噌や醤油の材料も忘れずに仕入れて、合計小金貨3枚(30万円)で購入した。
購入したものは、服の袖からナオちゃんを少し出して、こっそり収納してもらった。ナオちゃんの収納スキルはレベルが上がっているので、まだまだ入る。ちなみにナオちゃんのステータスは次の通りだ。
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名前:ナオ
種族:スライム(アスラの眷属)
レベル:23 ↑6up
筋力:22 ( 97)
耐久:66 (290) ↑1up
敏捷:21 ( 92) ↑1up
器用:24 (105) ↑3up
精神: 8 ( 35) ↑1up
魔力: 4 ( 18)
通常スキル:異次元収納Lv5(2up) 隠密Lv4 気配察知Lv5
固有スキル:物理耐性Lv2
ギフトスキル:アスラの加護
スキルポイント:3pt
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異次元収納はレベル5で、50000kg程度を収納できるらしい、実に5トントラック10台分である。
食料品が買い終わったので朝市を後にし、道具屋、服屋、薬屋を回って必要な物を集めていく。まず道具屋で、木製の食器と調理道具に、水を入れる革袋を複数、合せて小金貨2枚を購入する。次に服屋で、外套、着替え、手拭い兼生理用品の布類多数を、合計小金貨4枚で購入する。薬屋では効果が高い薬はバカ高いし、効果の低い薬は錬金術で作れるので、各種材料を小金貨1枚で購入して店を出た。
ここ3ヶ月は納品依頼も受けていたため所持金は持ち直しており、これだけ買っても残金は金貨9枚(900万円)ほどある。余裕もあるし、歩き以外の移動手段を確認しておくのもいいだろう。
「こんなもんかな、あとは移動用に馬車でも見にいくか」
街の入り口近くにある馬屋に入ると、中には貧相な駄馬から、世紀末の覇王でも乗せてそうな巨大な馬まで、様々な馬が居た。試しに鑑定してみると、レベルが高いほど強そうな見た目の傾向があり、レベル1~30くらいまでの馬が居た。
馬の世話をしている人に聞いたところ、馬の値段は金貨1枚~20枚とピンからキリまで居るらしく、出せる速度がだいぶ違うらしい。ちなみに車体も金貨1枚~20枚程度でこちらは材質の違いで、高い馬を買うなら車体も良いものにしないと、車体が耐えられないとのことだ。
参考に予算金貨6枚での馬車の速さを訊くと、歩いて旅をするのより少し早い程度であった。俺が買うかどうか迷っていると、店の人に一つの提案をされる。
「予算が足りないなら、車体だけ買って、ペットに引かせるって手もありますぜ」
「ボクが引く?」
小さな少女に馬車を引かせる……か、ムチも買わないとな。というのはさすがに冗談で、マシロだと絵的にアウトだし、コテツに引かせるのも哀れだ。
「いや、今回はやめておこう。色々聞かせて貰えて助かった、ありがとう」
馬車を買うのを諦めて馬屋の外に出ると、日も傾いてきていたので、行きつけの飯屋で夕食を済ませて宿屋に戻る。翌日街を発つことを、宿屋の主人に伝えて、その日は早いうちに眠りに就いた。
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明けて翌日、俺達5人は朝も早いうちから、ヘイローの街の北門から外に出て、街道に沿って北に向かっていた。右手側には、いつも狩をしている北の森が広がっているので、街道に居るとはいえ油断はできない。
鈍重なトロールであれば無視して先に進めばいいが、空から襲い来るハーピーや、俊敏なグレイウルフの奇襲は注意しなければならない。
初日は何事も無く過ぎて、順調に先に進むことが出来た。夜になる前に野営の準備を整え、スズに夕食を作ってもらう。
「スズは何を作るんだ?」
「母さんに教えてもらった料理よ、口に会えば良いんだけど」
そう言うと、味噌を水に溶かして、根菜と芋、肉を切って入れ、煮始めた。しばらく煮ている間に、匂いに釣られて寄ってきたグレイウルフを3匹ほど倒した後に食事にする。ちなみにグレイウルフのステータスはこんな感じ。
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名称:グレイウルフ
種別:魔獣
レベル:30
筋力:41 (169)
耐久:44 (181)
敏捷:61 (251)
器用:21 (86)
精神: 9 (37)
魔力: 4 (16)
スキル:体術Lv2 気配察知Lv2
固有スキル:嗅覚感知Lv3 噛付きLv3
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スズが作った食事はパッと見は味噌汁だった。乾パンに味噌汁ってのも微妙な感じだが、久しぶりの味噌汁を堪能しようとゆっくりと啜ったが、何かが一味足りない感じだ。
「あれ? 母さんの味と違うかも、なんでかな」
スズも訝し気に首を傾けている。ちなみにマシロは猫舌なのか、必死で息を吹きかけて味噌汁もどきを冷ましていた。マシロのピクピク動き猫耳を見ていると、猫から魚介系の連想される。
「この料理って、ダシ取らないとならないんじゃ?」
「あっ、そうだった、よく知ってるね。ごめんなさい、味噌汁は材料足りないから、次は違うの作るね」
異世界にも味噌汁はあったんや。そのうちスズに調理スキル取ってもらって、いろいろ作ってもらうとかもありだな。
「故郷の料理でね、久しぶりに飲みたいから、材料見つかったら頼むよ」
「もちろん、期待しててね」
微笑むスズをおかずに、一味足らない味噌汁と乾パンを食べる。やはり温かい食事は良いものだ、以前のように水と干し肉だけだった時と比べて、心も体も癒してくれる。
食事を終わらせたら、俺とコテツがまず見張りに立ち、他の皆には休んでもらった。5時間ほどで皆と交代して俺も休む。その日は、完全に疲れが癒えたとは言えないが、充分に休むことが出来た。
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翌日も変わらず、街道を北に進んでいた俺達だが、途中でマシロが何かに気付き立ち止まった。
「ご主人、街道で何か戦ってる」
「何が戦ってるかわかるか?」
「うーん、この距離だと無理」
ふぅむ、森で戦ってるとかなら無視するんだが、街道でってのがな。迂回するにも時間掛かるし、とりあえず状況がわからんことにはな。
「とりあえず、このまま進んで、何が居るかわかったら教えてくれ」
「ん、わかった」
マシロが先頭に立ち、しばらく進んでから足を止め、何が戦っているのか教えてくれる。
「ハーピーと人が戦ってる」
「そうか、様子を見てくるから、皆はここで待機していてくれ」
「わかったわ、気を付けてね」
スズに見送られて、俺は隠密を発動し、街道脇の草むらに隠れつつ先に進む。しばらく進むと確かに、6匹ほどのハーピーが馬車を囲んで襲っていた。馬車の周りには、4匹のハーピーと2人の冒険者らしき人物が倒れており、残り2人が商人らしき人物を庇いながら、防戦を続けている。まずはハーピーの強さを確認だ。
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名称:ハーピー
種別:魔物
レベル:28
筋力:34 (127)
耐久:36 (134)
敏捷:52 (194)
器用:33 (123)
精神:13 (49)
魔力:26 (97)
スキル:体術Lv3 風魔法Lv2
固有スキル:視覚感知Lv3 引掻きLv2
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ハーピーは鳥に近い女性型の魔物だ。空を飛ぶのが厄介だが、パラメータは低く、遠距離攻撃で撃ち落としてしまえば簡単に倒すことが出来る。俺はスズ達が見える位置まで戻り、皆に手を振って呼び寄せた。
「ハーピーが6体だ、倒せる相手だから助けよう」
「うん、早く助けてあげましょ」
俺はスズの回答を聞いてすぐに駆け出す、マシロ達は嫌かもしれないが、俺とスズが助けに行く時点で拒否することは無いはずだ。
「助太刀するが、いいか!?」
「助かる、頼んだ!」
遠くから一声かけ、了承を得てから戦闘に参加する。
『ウィンドカッター!』
俺は駆け寄りながら、まずは1匹に遠くから魔法で狙い撃ち、即座に鋼の投剣を抜いて、別の1匹に投擲する。魔法を受けたほうは翼が切り裂かれ、墜落して動かないので後回しだ。投剣の刺さったほうは、力を失いゆっくりと降りてくるので、着陸地点に回り込んで、右手の剣を一閃して倒す。
周囲を確認すると、アンズが1匹弓で射落とし、コテツがそれに止めを刺すところだった。
「スズ、コテツ、止めは任せるぞ!」
地面に落ちた敵は2人に任せて、魔法と投擲で残りの敵を撃ち落とすことに専念する。残りの3匹は、俺とマシロとアンズで1匹ずつ撃ち落とし、スズとコテツが堕ちた敵の止めを刺して回り、戦闘は完了だ。
「お陰様で助かりました、皆さんお強いですねぇ」
一通り魔物を倒して、他に魔物が居ないか警戒していると、商人らしき人物が親し気に話しかけてくる。商人の目は細く、仕立ての良い服で、そのふくよかな腹を覆っていた。
なんか私腹を肥やしてそうだな、立派な腹だけでなく。それに、いきなり親し気に話しかけてくる奴なんて、詐欺師か怪しい宗教かって感じだ。これは、関わらない方がよかったか?
俺はそのとき、我ながらひどい偏見だと思いつつも、嫌な予感を感じていた。




