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騎士と魔物が争っている今の内だ

前話から3ヶ月後、物語では6月の初夏になります。

ヘイローの街についてから約6ヶ月後です。

ここからしばらくは続きの話になります。

 前日の雨が止み晴れ渡ったその日、西の森は様々な匂いで溢れていた。6月という初夏特有の草木の香りや、土と雨の混じった匂い、動植物の死骸が発酵した臭い。そして今、ホブゴブリンの血の臭いが追加され、何とも言えない悪臭に変わる。


 丁度コテツと俺が1匹ずつ片付けたところで、スズとマシロは未だに、それぞれがホブゴブリンと1対1で対峙している。ヘイローの街に来てから6ヶ月経ち、最近では北の森で狩をすることが多くなった俺達だが、スズとマシロはまだまだ力不足であり、後ろからの援護中心になってしまう。そのため、たまにこうして西の森に行き、近接戦の経験を積ませていた。


 残る相手は戦闘中の2匹と、後方に控えている2匹である。こちらも、もしもの時のためアンズを後方で待機させている。コテツが後方左側の一匹に向かったので、俺は右側を狙って走る。


「ギィギギィ、ギギギィギィ、ギギーギギィ、『フレイムランス』」


 うぉ、喋った! というか魔法を使ってきやがったぞ。


 ホブゴムリンの掲げた手の前に、炎が槍の形に収束していき、俺に向かって放たれる。相手の魔力が低いせいか、たいした速度は出ていない。俺は軽く回避して、鑑定してみることにした。


----------------

名称:ゴブリンメイジ

種別:魔物

レベル:31

筋力:38 (164)

耐久:41 (177)

敏捷:38 (164)

器用:37 (160)

精神:19 (82)

魔力:31 (134)

スキル:棒術Lv2 体術Lv2 弓術Lv2 気配察知Lv2 火魔法Lv3 水魔法Lv2

固有スキル:精力強化

----------------


 見た目はほとんどホブゴブリンと一緒なのに、ゴブリンメイジなんだな。ちなみにホブゴブリンはレベル20~25程度の相手が多く、基礎の魔力値は10も無い。鑑定情報を見てる間に、魔法の詠唱を開始したので、魔法が完成する前に近づいて牽制し、詠唱を止めさせる。


 警戒する相手を、周囲の木々を使った人間離れした動きで翻弄し、相手の頭上から一刀のもと切り伏せる。体術のレベルを上げてから、より変態的な動きが可能となった俺は、壁走りや連続での三角飛びなど、立体的な動きも可能となっている。ちなみにステータスは次の通りである。


----------------

名前:アスラ

種族:異世界人

モラル:225 ↑6up

レベル:30 ↑3up

筋力:48 (395) ↑3up

耐久:49 (403) ↑4up

敏捷:51 (420) ↑3up

器用:57 (469)

精神:36 (296)

魔力:33 (272) ↑3up

通常スキル:体術Lv5(1up) 小剣術Lv4 投擲術Lv4 射撃術Lv1 隠密Lv6 気配察知Lv4 異次元収納Lv2 生活魔法Lv2 錬金術Lv3 闇魔法Lv4 風魔法Lv4 詠唱省略Lv4 精神異常耐性Lv2 肉体異常耐性Lv2

固有スキル:エアマスター

ギフトスキル:異世界人セット(中) 加護付与 万物鑑定

スキルポイント:2pt

眷属:ナオ (1/2)

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 俺もだいぶ人間離れしてきたものだ。それに、こないだふと気づいたのだが、身体能力だけではなく身体内部も人間離れしてきたように思う。レベルが上がるにつれ、食事の量が増えていっているのに、排泄の回数が逆に減っていることに気付いたのだ。


 以前ギルドで、高レベルの冒険者はいつまでも若々しく、う〇こをしないという噂を聞いことがあった。そのときは昭和のアイドルかよって思ったものだが、どうやらあながち嘘でもないらしい。後で聞いた話では、消化能力の向上や、睡眠時や排泄時の隙を少なくするよう身体の作りを変えているだとか、いろいろな説があるらしかった。


「主様、各自戦闘完了しました」

「そうか、少し森の奥の方に来すぎたから、今日はこの辺で帰るか」


 余計な事を考えていると、戦闘が完了しアンズに声をかけられた。久しぶりに西の森に来たので、調子に乗って狩り過ぎて、奥の方に来てしまっていた。ゴブリンメイジに遭遇したのはそのせいかもしれない。


 みんなを促し、森の外に向かう。いつもであればこの後、戦闘訓練をするところだ。ステータスに差があるから自慢にはならないが、今ではコテツとアンズを同時に相手にしている。ちなみにコテツ達のステータスは次の通りだ。


----------------

名前:コテツ

種族:獣人族

モラル:136 ↑12up

レベル:30 ↑3up

筋力:59 (243) ↑14up

耐久:56 (231) ↑13up

敏捷:58 (239) ↑13up

器用:33 (136) ↑3up

精神:29 (119) ↑1up

魔力: 9 ( 37) ↑1up

通常スキル:槍術Lv4 隠密Lv3(1up) 気配察知Lv3 異次元収納Lv2 生活魔法Lv1

固有スキル:嗅覚感知Lv3 聴覚感知Lv3

ギフトスキル:なし

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名前:アンズ

種族:獣人族

モラル:148 ↑12up

レベル:30 ↑3up

筋力:52 (214) ↑13up

耐久:53 (218) ↑15up

敏捷:61 (251) ↑12up

器用:38 (156) ↑4up

精神:30 (123) ↑1up

魔力:15 ( 62) ↑1up

通常スキル:小剣術Lv3 弓術Lv3 隠密Lv3 気配察知Lv3(1up) 生活魔法Lv2

固有スキル:嗅覚感知Lv3 聴覚感知Lv3

ギフトスキル:なし

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 コテツ達は共に28歳で、15年の戦闘経験があるとのことで、本人たちの談では、ペットとして捕まる以前よりも強くなっているらしい。しかし、たった3年で互角以上になってしまえる、自分のギフトスキルはやはりチートであり、他人に知られるのはまずいことを自覚させられた。俺が逆の立場だったら、嫉妬の炎を燃やして危害を加えかねないからな。


 森の外に出ると、今日のところは訓練を中止し、ヘイローの街に帰ることにする。ゴブリンメイジに遭遇したのは初めてだから、一応ギルドへ報告しておいたほうがいいと考えたからだ。



 ヘイローの街に入ると、スズ達4人を置いて冒険者ギルドに入る。今日は討伐のみだったため、受付のハーゲンのもとで報酬を受け取り、世間話のついでに報告を行う。


「そういえば、西の森の奥でゴブリンに、魔法を使われたんですよ」

「マジか!? やっぱそうなのか、魔法はなんだった?」

「『フレイムランス』でしたね」

「そうか、下手するとゴブリンプリンスになってるかもな」


 ふむ、ゴブリンプリンスか関わりたくないけど、聞ける情報は聞いとこう。


「どうして、ゴブリンプリンスが居るってわかるんです?」

「ゴブリンプリンスはゴブリンの支配種だ。人型の魔物はな、多くの経験を得ると『支配種』に進化することが有る。この支配種の子供として、ゴブリンメイジみてーな『職付き』っていう魔物が生まれんだよ」

「ふむ、支配種ってのも進化するんですかね?」

「察しが良いな、支配種ってのはロード、プリンス、キングの順に進化していくんだ。火魔法レベル3の『フレイムランス』を使えるゴブリンメイジが居るっつーと、プリンスになってる可能性は低くない」


 なるほどな、『支配種』と『職付き』か、メイジが居るんだから、前衛職や斥候職もあるんだろうな。支配種が生まれることで、ただの群が、軍隊になると考えたほうがいいだろう。やはり関わりたくない、どうやって逃げようかね。


「君たち、何を騒いでいるのだね?」

「これはこれは、ギルドマスター、西の森のゴブリンの話ですよ」


 厭味ったらしい男の声に、目の前のハーゲンが答えた。ギルドの2階から、ギルドマスターと呼ばれた、眼鏡をかけた細面の男が下りてくる。


「ふんっ! そんな男に話す必要は無いよ、あの件なら我々だけで充分だ」

「ですが、彼はブロンズランクの中でも実力が高く」

「今回の作戦には王国十剣のバロール卿も参加される、戦力は充分だよ。それに実力が有ろうと、獣が一緒なら邪魔なだけだ」


 頑張れ眼鏡くん、そのほうが俺には都合がいい。そしてバロール卿ってどっかで聞いたことがあるんだが、誰だったか?


「バロール卿といえば、あのバロール卿ですか?」

「そうだ、王国十剣の第九席、レオン・バロール殿だよ、マッケイブの街が落ち着いたとのことで、参加していただけるのだ。貴様など足元にも及ばぬ方だよ」


 知ったかぶった俺の質問に、律儀に答えてくれる眼鏡くん、以外にいい人かもしれない。マッケイブの街は落ち着いたか、良かったなどと考えるのは欺瞞なのだろうな。

 マッケイブの街でレオン・バロールと言えば、領主と一緒にいた強いオッサン騎士だったと思う。これはもう逃げの一手しかない。あのオッサンが第九席ってことは、あれより強いのが少なくとも8人いるのか……ファンタジーって怖いね。


「仰る通りですね。丁度この街を出ようと思っていたところですし、武運を祈っていますよ」

「ふんっ、臆病者め! 尻尾を巻いて出ていくがいいさ」


 眼鏡くんが言うだけ言って2階へ戻っていくと、ハーゲンが申し訳なさそうに


「うちのマスターがすまんな、悪い人じゃないんだが、ペット嫌いな人でね」

「いえ、気にしてませんので(好都合だったしな)」

「支配種討伐は国軍が出張って来るから、騎士や宮廷魔術師になるチャンスだぞ。あと2、3日で依頼が出ると思うんだが、本当に街を出るのか?」


 獣人に手柄取られたくなかったから、あんなに喚いてたのか、少し納得。依頼が出る前に去りたいから、明後日出発だな。明日はしっかり旅の準備をしよう。


「はい、元々その予定でしたので」

「お前が居たら心強かったんだが、それなら仕方ないか、達者でな」

「今までお世話になりました、そちらこそお元気で」



 固有スキルの所為で目立たず、他に知り合いもいない(俺の性格の所為ではないよ、たぶん)ので、ハーゲンだけに挨拶を済ませてギルドを後にし、スズ達と合流する。

 

「明後日この街を出ることにした。今日はゆっくり休んでくれ」

「ずいぶん急ね。何かあったの? もしかして……」


 街を出ることを皆に話すと、スズが心配気に訊いてくる。街を出なきゃならないのが自分の所為かもしれないと思っているのかもしれない。


「大したことじゃないさ、もう6月だからな、夏の内に教国を越えて、商都連合に行きたいってだけさ。明日はそのつもりで準備するから、必要なものを考えておいてくれ」


 軽くスズの頭を撫でて、てきとうな言い訳を言うと。納得してくれたのか表情を戻し、笑みを見せてくれた。スズにはずっと、笑顔でいてほしいものだね。



 宿屋に戻った俺は、翌日買い集める物を、頭の中でリストアップしながら床に就く。ナオちゃんの異次元収納のレベルも上がったことだし、やりすぎなくらい準備していくとしよう。やっと王国の外に出るのだ、不安はあるが、新たな出会いが楽しみでならない。



 まだ見ぬファンタジー種族に、ぶっちゃけ色んな種族の美少女達に出会うことを夢見て、その日は眠りに落ちた。



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