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パワーレベリングには物理的なパワーが必要

 翌朝目覚めると、スズの麻痺が再発していた。焦ったマシロが俺を揺り起こそうとしたが、無意識に払いのける手で、危うくマシロに怪我をさせるところだったよ。


 麻痺解除薬の効果は1日程度のようで、値段を考慮すると毎日使うわけにはいかない。やはり耐性スキルを上げさせて、治療ができるまで誤魔化すしかないだろう。そのためにスキルポイントは必須だから、今日からしばらく、レベル上げをしようと思う。


 まずは、ナオちゃんをマシロに紹介し、スズに装着してから朝食を取りに行く。隣の部屋のコテツとアンズを連れて、朝食を貰って部屋に戻ると、マシロが興味深そうにナオちゃんをツンツンしていた。突かれたナオちゃんが震えるたびに、スズの悩ましい声が聞こえてくる。


「そのくらいにしとけマシロ、さっさと飯にするぞ」

「……わかった」


 マシロが渋々ながら朝食を食べ始めたので、俺はスズにご飯を食べさせてやる。食べ終わったマシロが、ナオちゃんを弄り始めるのをやんわり止めながら、スズの食事と自分の食事を終えた。


「コテツ達と話してくるから、あんまりスズを虐めるなよ」


 そう言って部屋の外に出て、隣の部屋の扉をノックする。扉を開けたアンズが快く出迎えてくれたが、中に入るのに躊躇してしまった。


 よく考えると、この部屋はある意味夫婦の居室といってもいい。昨日は久しぶりに2人きりの夜だったのかと思うと、部屋に入ってから中を見回したり匂いを嗅いだりして、昨夜の痕跡を探してしまった。


「ゆうべはお楽しみでしたかね?」

「主様、私達にその自由はありませんので、そのようなことはありませんわ」


 うっかり思っていることを声に出してしまったら、アンズが生真面目に答えてくれた。俺はナオちゃんに世話してもらっているのに、夫婦で何もできないのは流石につらいだろうと思い、ほどほどなら許してあげる事にした。


「そうか、今後は子供ができない範囲であれば許可しよう。俺だけすっきりするのも悪いしな」

「主殿!? さすがにマシロは、痛っ」

「主様、ご配慮ありがとうございます。(あなたは黙ってて)」


 何かを言おうとしたコテツを止め、アンズが答えた。何故か二人に引かれた気もするが、きっと気のせいだろう。「なんで子供」とか「そういう性癖」とかも聞こえてくるが、きっと今夜のプレイについて相談しているんだろうと思う。二人の性癖に興味が無いといえば嘘になるが、まずは今日からの事について相談することにした。


「今日から、金とレベル上げのために魔物を狩るんだけど、お前達も冒険者になったほうがいいよな?」

「この国の冒険者ギルドでは、普人族しか登録できません」

「ふむ、他の国なら登録できるのか?」

「迷宮都市と皇国では可能ですし、商国や帝国でも保証人が居れば登録できますね」


 ギルドの規則も国によって違うようだ。迷宮都市とか皇国とか良さそうに聞こえるけど、どの辺にあるのだろうか?


「迷宮都市と皇国というのは?」

「迷宮都市というのは5つの迷宮の上に出来た都市で、帝国の西にある山岳地帯にあります。皇国というのはヴェスター皇国のことです。多くの種族が済む国で、この国の西にあります。そういえばこの国では魔王国って呼んでるんでしたね」


 魔王国は聞いたことが有るな、普人族以外を人と認めないこの国にとって、多数の種族で構成された国なんて認められないんだろうな。だから皇国ではなく、魔王国と呼ぶのだろう。


 俺は、魔王国と呼ぶこの国の人達を非難するつもりはない、自分と違うものを怖がる気持ちは解るつもりだ。前世の俺も道端で外国の人に道を聞かれるだけで、びびってまともに返事が出来なかったのを覚えている。ただ肌の色や髪の色が違うだけで、恐れ排斥してしまうのが人間だ。ましてや全く違う種族の相手を恐れるのは致し方ないことだろう。もちろんそれを乗り越えられるのも人間だが、簡単なことではないだろう。


 むしろ、多数の種族で構成されている皇国を褒めるべきだろうな。この国から皇国への道はたしか閉ざされていたはずだ、最終的には皇国に行くつもりだが、まずは教国に行って麻痺の治療をするのが先決だな。


「そうか、まずは教国にいって、そのあと迷宮都市か皇国に行こうと思うんだが、どう行ったらいいと思う」

「そうですねぇ、私見ですが……帝国は治安が悪いそうですので、教国に行ったあと、商国で充分な準備をした方がいいと思います。その後、帝国、迷宮都市、皇国の順に回るのが安全ですね」

「なるほどな、参考にさせてもらうよ」


 宗教国家とか良い印象ないし、教国には長居したくないから、取りあえず商国まで行くことを前提で準備しといたほうがいいかもしれないな。それに教国で想定外の事態にあっても大丈夫なように、スズとマシロのレベル上げは最優先だな。


「ギルドで手ごろな依頼と狩場を訊いてくるから、出かける準備をして部屋で待っていてくれ」


 そう言い渡して部屋に戻り、マシロ達にも同じことを言ってから、冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドに着くと、相変わらず空いているハゲの受付に向かい、手ごろな討伐依頼の獲物と狩場を訊く。この街の周囲で手ごろな狩場は3ヶ所あり、見習い向けが南の街道沿い、アイアンランク向けが西の森、ブロンズランク以上は北東の森とその先の山脈だそうだ。


 しばらくは西の森でスズ達のレベルを上げて、その後、北東の森に行くことにし、まずはアイアンランク向けの討伐依頼を確認しておく。


・コボルト討伐:1匹で小銀貨3枚

・ポイズンスネーク討伐:1匹で小銀貨5枚

・ホブゴブリン討伐:1匹で銀貨1枚

・オーク討伐:1匹で銀貨1枚


 ホブゴブリンとオークは、アイアンランク上位向けの相手らしく、ブロンズランクでも油断はできないとのことだったので、最初の数日だけは、南の街道沿いでゴブリン相手にレベルを上げることにした。


 宿屋に戻り、スズを背負いみんなを連れて一旦防具屋に向かい、スズとマシロの防具を受け取り装備させる。その後すぐに街から外に出ようとして、門番に冒険者カードを見せると、冒険者ギルドでペットの登録をしてくるように怒られてしまった。


 冒険者ギルドに全員で向かい、受付のハゲにペットの登録をしてもらい、ついでに同行者としてスズを登録してもらう。費用は銀貨4枚かかり、同行者や従者の罪は冒険者カードの持ち主の責任となるそうだ。登録には各自の血を使ったが、幸いスズの種族はバレなかったようでホッとする。各自が冒険者カードに触れると、同行者欄と、従者欄に触れた者の名前が表示されることを確認でき、登録完了であった。


 どうでもいいことだが、ペットはペット欄ってのがあるのかと思っていたので、従者欄が表示されたのには驚いた。冒険者カードはどの国でも使えるというのに、俺はこの国での扱いを基準として考えてしまっていたのだ。どうやら俺もこの国に毒されていたらしい、これ以上毒されて他種族を蔑ろにしないよう注意する必要があるだろう。


 南門に戻って、全員が俺の冒険者カードに触れ、各自の名前が表示されることを確認できると、あっさり街の外に出ることができた。


 街の外に出て、街道付近の草原地帯を歩いていると、コテツ達がソワソワしだす。どうやら久しぶりに外に出たことで走り周りたいようだ。登録に余計な時間を使ったため、今日のところは我慢してもらい、コテツのアンズにも敵を探してもらう。


 マシロはレベルが低いので、付いてくるだけにさせる。小走りで付いてきながら、興味深そうに周囲を観察しており、尻尾も首と一緒に左右に揺れている。掴んで止めたい誘惑にかられたがやめておいた。


 その間にもコテツとアンズはかなり離れたところからでもすぐに、ゴブリンを探し当ててくれたので、俺はスズを背負ったまま、片っ端から風魔法で倒していった。


 どうやら広範囲の敵を探す場合、嗅覚感知がとても有用なようだ。気配察知スキルは全周囲の気配を正確に察知できるが範囲が狭く、嗅覚感知は範囲は広いが大雑把だ。嗅覚感知で敵の方向を割り出し、ある程度近づいてから、聴覚感知と気配察知を使うことで、効率的に敵を探すことができているようだった。


 狩り続けて、3時間くらい経ったところで、スズのレベルが上がる。かなりの数を倒したはずだが、マシロのレベルは何故か上がらない。今更ながら経験値の分配について聞くことにする。最初から聞いとけよって話だよな俺。

 

「変なことを聞くようだけど、魔物を倒したときの経験値の分配ってどうなるんだ?」

「? ……倒した人に基本入りますが、無属性魔法にパーティを組んで、経験値を分配できるようになる魔法があると聞いたことがありますね」


 訝しげにしながらもアンズが答えてくれる。無属性魔法はいろいろ便利そうだと思うが、俺は向いていないのか、スキルポイントが多めにかかるため覚える気は無い。スズかマシロが覚えられるなら、覚えてもらおうとは思うが、今は、スズとマシロの違いのほうが問題だ。

 倒した人に経験値が入るなら、スズのレベルが上がったのがおかしいことになる。俺に背負われているスズと、付いてきているだけのマシロ……思いつくのは一つだけだな。

 

「マシロ、ちょっとこっちに来てくれ」

「うん?」


 油断してトコトコと近寄ってくるマシロを前からガバッと抱きしめた。


「にゃっ!?」


 ふふふ、「にゃっ」いただきましたっ! おっと早く説明しないとな、首筋がスズの視線でチリチリするよ。


 遠くにいるコテツとアンズから「やっぱり」とか「お外でなんて」とか聴こえてくるし、スズの機嫌を直すためにも、さっさと説明することにした。


「マシロ、お前のレベルを上げるためにも俺にくっついてもらう、しっかり抱きついて離れないように。何度も言うがこれはレベル上げのためだ!」

「ん? わかった」


 俺の説明もといゴリ押しに、不思議そうにしてはいるが、取り敢えず言うとおりにしてくれるようだ。俺の全面から両手と両足を回し、顔を俺の左肩の上に置き、ピッタリとくっついてくれた。革鎧のせいで身体の感触を味わうことはできないが、マシロの首筋から柑橘系の香りが漂ってきて、危うく相棒が反応しそうになる。


 前にマシロを、後ろにスズを貼り付けて、ゴブリンを狩ると1時間と経たずにマシロのレベルが上がる。三身一体のパワーレベリングだ、おっと四身一体だった、ナオちゃんを忘れていたよ。


 マシロのレベルが上がった時点で、コテツ達を呼び戻して街へ撤収する。コテツ達もマシロを抱っこして戦ったのを不思議そうにしていたが、説明するつもりもない。たぶんくっついている事で、俺の一部と判定されて経験値が入るのだろうが、詳しいことは分からないし、うまい説明も思いつかないしな。



 それにしても、このパワーレベリングは、けっこう物理的な力も必要だ。スズとマシロは小柄だが、それでもスズとマシロ、それにナオちゃんを合わせて80kg近い重量を背負って戦うのだ、せいぜいアイアンランクの獲物までだろうな。


 それまでは、せいぜいこの美少女サンドの具であることを享受しようではないか。



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