ペットは仲間のうちに入りますか?
ペットショップを出た俺達は、匂いを頼りに良さそうな飯屋を探す。いくつか見つかった飯屋のうち、混んでもいなく、空きすぎてもいない、小奇麗な店を選んで中に入った。
「お姉さん、この店はペット連れでも大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ~、すぐにご案内しますね」
給仕の女性に声を掛けるとテーブル席に案内してくれる。テーブル席は仕切りで区切られており、奥側にテーブルと2脚の椅子があり、あとは手前側に低めのちゃぶ台のようなものが置いてあるだけだった。
「えーっと、この席で間違いないですか?」
「はい? 2人と3匹でしたらこの席ですが、もしかして後から人増えたりします?」
「あー、それならいいんです」
「? そうですか、ご注文決まりましたらお呼びください」
ふむ、ペットは床に座ってちゃぶ台で食えってことだよな。まぁ、郷に入っては郷に従えとも言うし、床に皿を置いて食わせないだけマシか。
椅子を引いてやりスズを座らせた後、俺も椅子に座る。ペットにも座るよう言うと、躊躇することなくちゃぶ台を囲むように3人が床に座った。やはり、ペットが床に座るのはこの国では常識なのかもしれない。
こういった待遇の違いに違和感を感じはするが、かと言ってペット達の分も椅子を用意するよう店に言うつもりはない。常識に反した行動をして、悪く思われるのは俺だけでは無いし、むしろ立場の弱いペット達が睨まれるんじゃないだろうか? くだらない自己満足のために、わざわざ顰蹙を買う必要も無いだろう。
周りを見回すと、テーブルの上にメニューが書いてある黒い板があった。所持金も金貨6枚半といったところで、乏しくなっていたため、あまり贅沢もできない。
「所持金も少ないから、俺がてきとうに頼むけどいいか?」
「はい、もちろんです」
スズが承諾し、ほかの3人も頷いていたので、給仕を呼んで、日替わり定食を5人前と、ラビットステーキを5人前頼んだ。合計で銀貨1枚を前払いし、飯が出来るまでの間、ペット達との交流を深めることにした。
「飯を待つ間に、自己紹介でもしておこうか。俺はアスラだ剣と魔法を使える、そしてこっちがスズネだ」
「スズと呼んでください。色々ご迷惑掛けると思いますが、よろしくお願いしますね」
「某はコテツと申す。槍なら誰にも負けない自信がある、存分にお使いくだされ」
「私はアンズと申します。剣と弓が使えますので、護衛と援護はお任せ下さい」
「ボクはマシロ、戦ったことはない……けど頑張るよ」
コテツに槍を、アンズには剣と弓を後で買ってやらないとな。あとは、マシロに剣と弓のスキルを覚えさせて、アンズに戦い方を教えてもらえば効率がいいかもしれないな。3人とも戦う気があるようなので、自分達の立場をはっきりさせておくことにした。
「俺とスズが今日からお前達の主人になる。俺が冒険者だから、戦ってもらうことが多くなる。最悪お前たちを盾として使う羽目になるかもしれない。だから、そうならないようもっと強くなってほしい。装備はこの後買いに行くし、飯もしっかり食わせるから頼むぞ」
「命懸けは覚悟の上」
「強くなるのは、望むところです」
「ご飯もらえるなら、なんでもやるよ」
コテツ、アンズ、マシロが怯まず答えた。金で売り買いされているのだ、命懸けなくらいは覚悟の上のようだ。まぁ、最初から肉盾にするつもりはないが、俺とスズが生きるために必要なら、使い捨てるくらいはするつもりだ。金で買った時点で、仲間だ家族だなどとお為ごかしを言うつもりはない。
「後はスズネの事なんだが、今日は動けているが、いつもは麻痺して身体を動かせないんだ。日常の世話をマシロに頼みたいんだが、いいかい?」
「よろしくお願いね、マシロちゃん」
「うん、わかった」
一通り話が終わったところで、給仕の女性が、定食を運んできてくれた。パンと肉野菜炒めと、シチューのセットだ。全員分運ばれてきたあと、一口食べ、全員に食っていいと許可を与えると、皆嬉しそうに食べ始める。暫くしてラビットステーキが運ばれてくると、スズとマシロは特に目を輝かせて喜んだ。
「あー、皆、食べながらでいいから聞いてくれ。もし今後、解放してやれると言ったら、解放を望むかい?」
俺も鬼ではないから、頑張って働いてくれるなら、今は無理だが、余裕が出来た後なら解放してあげてもいいと思っている。そして解放するなら、出来るだけ手の内を晒さないほうがいいだろうから、今のうちにはっきりさせておきたかったのだ。加護を与えたりできるのが漏れたら最悪だしな。
コテツとアンズは一瞬キョトンとした後、少し考えてから答える。
「某達を試しておられるのか?」
「そういう訳ではないよ、頑張って働いてくれるなら、5年くらいで解放してもいいと思っているんだ。だが解放するとなると、手の内を見せたくないから、今のうちに聞いたんだ」
「なるほど、それであれば某とアンズは解放を願おう」
コテツが答え、アンズも頷いている。マシロは一心不乱にラビットステーキを食べ続けており、どっちなのかわからない。
「あーっと、マシロはどっちがいい?」
「? ……ご飯食べられるならずっとついてくよ」
「そうですね、解放しないほうがマシロの為にはいいと思います。獣人族としても普人族としても生きていけないでしょうし」
首を傾げて返事をしたマシロを代弁するように、アンズが答えた。混血種はどこでも風当たりが強いみたいだ。生活できるあてがないなら、解放されない方がマシだろうから、ずっと面倒見よう。
「わかった、コテツとアンズは5年後に解放するから、それまでにマシロを鍛えてやって欲しい」
「わかったわ、お任せ下さい」
話すのをやめて食事を再開すると、スズとマシロが食べ終わったのか、こちらをじっと見ている。
このハラペコ魔神どもは、さっき干し肉も食ったのに、足らないのかよ……。
残っていた干し肉を全て出してスズに渡してやると、マシロとわけあって食べ始めた。何かが通じ合ったのか、仲良くしてくれているようで何よりだ。
食事が済んだら、給仕の女性に武器屋、防具屋の場所を聞いて、まずは武器屋に向かった。
武器屋の品揃えはマッケイブの街と大して変わらないもので、予算の都合上、スティールスピア(小金貨13枚)と、ロングボウ(小金貨3枚)を2張りと鉄の矢(銅貨5枚)を200本で、計金貨2枚(約200万円)で購入する。矢筒や鞘などはセットでつけてくれた。
スティールスピアをコテツに渡し、ロングボウと鉄の矢20本はアンズに渡す。マシロにも、ロングボウと鉄の矢20本を渡し、残りをこっそりナオちゃんに収納してもらって防具屋に向かった。アンズには後で、俺のお下がりのスティールソードも渡すつもりだ。
防具屋では、鎧下の服と硬革の防具セット(金貨1枚)を4セット、計金貨4枚(約400万円)で購入する。スズとマシロの分はサイズ調整が必要だったため、明日取りに来ることになった。
今日の出費で、残金が小金貨4枚(約40万円)になってしまった。ハラペコ魔神も増えたし、食費だけでも後数日で破産してしまうかもしれない、明日から頑張って稼がないとならない。
日も傾いてきたので、宿屋に戻る。昨日予約していた部屋も借り、二部屋に別れて泊まることになる。手の内を見せないためにも、遠慮するコテツとアンズを新しく借りた部屋に押し込み、スズとマシロを連れて昨日と同じ部屋に戻った。
装備類は問題無いから、あとは、マシロへの加護を付与しておく必要がある。加護の付与方法は確定していないので、これから試すことを考えると、いろいろと楽しみ……いや、マシロへの罪悪感で一杯になる。
いやー、申し訳ないなー、でもしょうがないんだよなー、それもこれもマシロのためなのよー。理由を話せばスズだって、きっと解ってくれるだろうし、役得役得。
想定より長くなりそうだったので、一旦切って投稿しました。
続きは明日、投稿予定です。
3/11) 武器値段の計算ミスを修正、アホです私。
7/22) 指摘頂いた箇所の誤字修正、ついでに句点と3点リーダーの修正




