表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/113

私の優しい死神様

更新遅れて済みません。

スズ視点です。女の子視点回は自信ありませんが、なんとか投稿です。

「スズちゃん、本当に行っちゃうの?」

「ええ、記憶も戻ったし、商都連合には伝手があるから大丈夫よ」


 クレアちゃんにはああ言ったけど、伝手があるなんてのは嘘だ。私はもうこの孤児院に来ることはないでしょうから、お世話になったクレアちゃんには心配を掛けたくないです。


「でも、アスラさんは「いいんです!」」

「……もう決めたことです。院長先生、アスラさんに伝言をお願いします。『今までありがとうございました。私の事は忘れて幸せになってください』そう伝えて頂けませんか?」


 クレアちゃんが言いたいことはわかります。アスラさんは私のことを知っても、きっと受け入れてくれるに違いありません。だからこそ今すぐに出ていかなければならないのです。アスラさんと会ってしまったら、きっと離れなくなってしまう、過酷な道に引きずり込んでしまうから。 


「伝言は預かるよ。でもねスズこれだけは覚えておいてほしい。例え何者であっても君は私達の家族だ、いつだって帰って来ていいんだよ」

「スズちゃん、院長先生の言う通りだよ、困ったことがあったらお姉ちゃんのところに来るんだからね!」

「院長先生、クレアちゃん……グスッ……ありがと……行ってきます!」


 拒絶されるのが怖くて自分の種族のことを打ち明けられませんでしたが、院長先生は気づいていて、それでも協力してくれたのかもしれません。私は泣き崩れそうになりながらも、深くお辞儀をして、孤児院の皆とお別れをしました。


 私は一旦、街の中央広場で心を落ち着かせてから、領主様の館に向かうとことにしました。広場に着くと、噴水の周りに設置されている木のベンチに座り、これからの事を考えます。


 移動中の食料や野営道具は、領主様の方で用意してくれているそうですので、今持っているのは着替えが1着と、マリーさんが持たせてくれた銀貨10枚です。服は長旅に耐えられるように、丈夫で清潔なものを選んでもらっています。

 これだけの事をしてもらって御礼が出来ないのは心苦しいところですが、今の私では逆に迷惑を掛けてしまいそうです。それでも、いつの日か恩返しできるように、受けた恩を心に刻んでおきましょう。


 暫くすると2の鐘(朝7時半)が鳴りましたので、領主様の館へ向かいます。入り口の衛兵さんに事情を話すと、強そうな兵士さんが来て、館の中に迎え入れてくれました。そのまま3階の部屋に案内されました。


「俺はファビオってんだ。あんたの事は領主様から聞いてる、とりあえずこの部屋で待っていてほしいとのことだ」

「はい、畏まりました。出発はいつ頃になりますか?」


 兵士さんは領主様の側近のようでファビオさんというらしい、案内された部屋は使用人の待機部屋のようで、端には仮眠用のベットがあり、中央にはテーブルがあって、その上にいくつかの冊子が置いてあった。


「それなんだが出発は明日に延期になってね。今日はこの部屋に泊まってもらうことになる」

「私などが領主様の館に泊まってしまってよいのでしょうか?」

「これは領主様の指示だよ。そこに冊子に商都連合までの事と、着いてからの事に関してまとめてあるから、読んでおくようにとのことだ。ちなみに食事はこちらで運ぶ、用を足したいならこの部屋を出てすぐ隣だ」

「畏まりました。ご丁寧にありがとうございます」


 私は領主様の慈悲にすがるしかない身ですから、指示に従うしかないでしょう。冊子を読み始めてから暫くすると、お昼になったのか、ファビオさんが食事を持ってきてくれました。さすがは領主様の館ですので、食事はそれなりに美味しいものでしたが、アスラさんのくれる食事に慣れた私には、量も味も物足りないものでした。やはり、食事に味噌と醤油は必須ですね。母の手作り味噌の味も恋しいです。


 私が幼い頃、父に基本的な文字は教わっていましたので、時間は掛かりますが文字を読むことはできます。冊子の内容は、商都連合までの行程についてと、各街での注意点でした。行程については大まかに言うと、まずは街の北門から出発して、馬車で1週間ほど掛けて王都に着き、それからまた1週間ほどで商都連合に着くとのことでした。

 

 商都連合では、私も商人や侍従の育成学校に通うことになるようです。商都連合では、実力さえあれば異種族でも冒険者にはなれるそうですので、私の場合は、いつ種族がばれてもいいように冒険者になっておくべきでしょう。冒険者として大成できたら、アスラさんに会いに行くのもいいかもしれませんね。虫の良い話ですが、そのときまで約束を覚えていてくれるでしょうか? 


 一通り冊子も読み終わり、用を足したり冊子を読み返したりして、日が傾いてきた頃にファビオさんがやってきました。領主様が私に話があるとのことで、3階の奥の部屋に案内してくれます。


「ラザール様、スズ殿をお連れしました」

「わかった。入れ」


 ファビオさんに続いて部屋に入り、領主様にお辞儀をしてから部屋の中央に進みます。ファビオさんは部屋の外に出ていき、扉が閉まりました。


「やぁ、よく来たねスズ。この館の居心地はどうだい?」

「領主様、この度はありがとうございました。とても素敵なお館ですね、美味しい食事もありがとうございます」


 さすがに食事が物足りないと本音を言うわけにもいかないので、お世辞を言うほかありませんね。


「そうだろう、そうだろう。なんだったらずっと住んでもいいんだよ?」

「そっ、それは畏れ多いことです」


 冗談……ですよね? 視線が少し気持ち悪かったんですけど。


「そうか、それは残念。まぁ本題と行きたいところだが。少し長くなるから、まずは座ってお茶でも飲もうじゃないか」


 領主様が窓側に座り、私は勧められた入り口側の席に座ります。目の前には紅茶が用意されていましたが、紅茶の飲み方なんてわかりませんので困ってしまいますね。

 

「作法などは気にしなくていいさ、好きに飲んでみたまえ、美味しいよ」

「はい、頂きます」


 言われるがままに紅茶を飲みましたが、やはり味なんて分かりませんね。半分ほど飲んだところで、領主様の目が怪しく光ったように見えたのは、気のせいでしょうか?


「さて、君に来てもらったのは他でもない。一つお願いしたいことが有るんだ」

「それは何でしょう? 私にできることでしょうか?」

「ああ、君にしかできない事だ。つい最近、僕のお人形が壊れてしまってね、まずはそれを見てくれないか?」


 お人形? 領主様の趣味ってことですよね。貴族は変な趣味の人が多いと聞きますが、やはりこの街の領主様も例外では無いということですね。


「お人形ですか? 私に直せるとは思いませんが、それでもよろしければ」

「勿論さ、こっちの部屋だよ、さあ入ってくれたまえ」


 領主様が隣の部屋に続く扉を開けて手招きしています。私が領主様の元に向かうと、先に部屋に入るように促され、薄暗い部屋の中に入りました。部屋の中は何かが腐ったような異様な臭いが微かにします。


「この子が僕のお人形さ、どうだい可愛いだろ?」

「---ッ!?」


 これは……人形? いやこれは人ですか!?


 部屋の中に入り明かりをつけた領主様が、部屋の一角にある椅子に座った人形を私に見せます。それは10歳くらいの少年の人形のようでした。いえ、これは人だったものです。その双眸に光は無く、既にこと切れているようで、微かに腐敗臭を発していました。


「こっ、こんな事が……許されるわけ……」

「許されるさ。その証拠に僕は街を出入り出来ているからね」


 街の出入り時のモラルチェックは貴族も例外ではありません。何故このような非道が許されるのでしょうか? あまりにも酷過ぎます。


「ふふ何故って顔だね、この子の耳をよく見てごらん」

「樹人族……ですか?」


 言われるまま遺体の耳を見ると、細長い形をしています。この耳の形は、樹人族、エルフとか、この国では木偶とも呼ばれる種族の特徴です。 


「正解ではあるが、樹人族とはまた古風な。こいつらは、見た目はいいんだがな、せっかく手に入れても、すぐ壊れてしまうんだよ。こんなの木偶で充分だろう」

「…………」

「普通は知らないだろうけどね、相手が人以外ならモラルの減少は5分の1程度になるんだよ。ここまで言えばわかるんじゃないかい?」


 異種族相手ならモラルの減りが少ないから、領主の評判の良さで、相殺されるってことですか……? 


「君にはこの子を直してほしいわけじゃない。僕のお人形になってほしいんだよ!」

「ヒィッ!!」


 これまでの話の流れで、私が壊れたお人形の代わりにされることは想定できることですが、私はそれを考えたくなかったのです。あまりのショックに腰が抜けてしまった私は、後退るので精一杯でした。力の無い私にはどうすることもできません。


「君が雑種なのは判っているよ。鬼の血が流れてるなら、さぞやしぶといんだろうねぇ、今から楽しみだよ。どうせこの国に君の居場所は無いんだ、ずっとここに居ればいいんだよ」


 必死で逃げようとする私ですが、身体が痺れて全く力が入りません。


「さっきの紅茶には特殊な毒が入っていてね、全身に回ると身体は麻痺して動かなくなる。でも、考えることも食べ物を消化することもできるから安心してほしい。やっぱり人形には心が無いと駄目なんだよ、目の輝きが全然違うからね」


 そんなことは聞いていません。聞きたくもありません! 身体が動かないのに、考えることができるなんてそれこそ地獄です!


「誰か……助けて……だれ……か」

「いくら声を上げても無駄さ、人払いは済んでいるし、残っている護衛の兵には言い含めてあるからね。それに、そろそろ薬が廻って、言葉もしゃべれないんじゃないかい?」


 麻痺のせいか私の足はピクリとも動きません。なんとか動かせるのは右腕くらいですので、必死に床に突いてできるだけ領主から離れようとします。声を出そうにも小さな唸り声にしかなりません。


「どこに逃げようって言うんだい? さっきも言っただろう、君のような雑種にはもとから行き場なんてないんだよ。僕の元に居るのが君にとって一番なのさ」


 それだけは嫌です! 私が一緒に居たいのは決してあなたでは無い。でも彼と一緒に居たいなんて思ってはいけない。私には彼に助けを求める資格はもうない。


「あぁ、楽しみだなぁ、どんなお洋服を作ってあげようか。ドレスがいいかな? それともメイド服がいいかな? 街娘の服ってのも捨てがたいよね」


 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……。院長先生、クレアちゃん、お母さん、誰でもいいから助けて!


「それにしても、まだ動けるとは驚嘆に値するよ。やはり君にして良かった、今日から君は僕だけのお人形だよ。着替えの世話も、食事の世話も、排泄の世話だって僕自らしてあげるからね」


 駄目ですね……もう指先すら動かせません。死神様、どうか私に安らかな死をください。


「いい加減諦めたまえよ。悪い子にはお仕置きをしないといけないね……」


 私は最後の力を振り絞って、今最も会いたい人の名前を呼びました。


「…………あ……す……ら……」


 その瞬間、領主の後ろに影が浮かび上がりました、どうやら死神様が来てくれたようです。死神様は右手に大鎌ではなく剣を振りかぶっていました。気配はおぼろげで、姿もはっきりとは分かりません。


「俺のスズに触れるな」


 冷徹な声と共に、死神様の剣が領主の首に振り降ろされると、私の頬に温かいものが飛んできます。領主の血ですか、バッチィですね。まぁ、私もすぐに死ぬのでしょうから、それどころではありませんか。 



 それにしても死神様の声は、聞き覚えのある声です。すごく安らぎます、きっとこうやって子供を寝かし付けるように、優しく殺してくれるのでしょう。おやすみなさい優しい死神様。



モラルの設定についての記載が少し出てきます。

相手が他種族の場合、減少量は5分の1になります。自分と異なるものを排除する、人の業を神が許容した設定としていますが、今回はそれが裏目に出ているって話です。


お読みいただきありがとうございました。

他の人の小説読んでて書くのが疎かに、他の人の小説が面白いのが悪いんです・・・、すんません私の怠慢ですよね。

次話は途中まで書いてあるので、そんなに掛からないはずです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ