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初仕事の開始

 ブロンズランクになった俺は、孤児院に帰り着き、スズの事を探している途中に院長先生に話しかけられた。


「おかえりなさい、アスラさん。ランクアップ試験は完了ですか?」

「ただいま戻りました、タイラスさん。おかげさまでブロンズランクになれました。ところでスズを見かけませんでしたか?」

「そのことでお話があります。詳しい事は中で話しましょう」


 促されて院長先生の部屋に入ると、クレアがソファに座って待っていた。院長先生がクレアの隣に座り、俺はその対面に座った。


「単刀直入に言いますと、スズが記憶を取り戻しました。そして、自ら望んで商都連合に向かいました」


 スズの不在を聞いた俺は一瞬、思考が停止してしまい、何も答えることが出来なかった。


「『今までありがとうございました。私の事は忘れて幸せになってください。』これがスズからの伝言です」

「ごめんなさいお兄さん、私、スズちゃんのこと止められなかった」


 結婚なんて所詮は子供の約束、スズが大人になったら無かったことになるだろうと思ってたけど、記憶が戻ったことで反故にされるとはなぁ……まぁしょうがないよな。俺みたいな地味でダサい男を好きでいてくれるわけがないんだよなぁ。


「そう……ですか。しょうがないですね。いつまでも俺みたいな男を好きでいてくれるわけないよな」

「お兄さんそれは違います! スズちゃんすごく辛そうにしてました……それでも別れなければならないって、きっと何か理由があったんですよ!」


 クレアが慰めてくれる、俺なんか子供にお菓子をあげて手懐ける変態とたいして変わらないというのに……だめだ思考がネガティブな方向に。


「俺なら大丈夫さ、慰めてくれてありがとなクレア」

「慰めなんかじゃない! スズちゃん泣いてた……一緒に寝たとき、寝言でお兄さんの名前呼びながら泣いてたんだよ。別れたいわけないじゃない!」

「落ち着きなさいクレア。スズの決意を無にしてはいけないよ」


 うーん、スズは何かの理由で俺と別れなければなかったってことなのか? 院長先生も否定はしてないっぽいし、理由も知ってそうな感じだ。俺の希望的観測でなければだけど。


「それなら俺がスズに会いに、商都連合に行くよ。クレアそれなら安心だろ?」

「アスラさんそれは……」

「院長先生、やはり何か知っているんですね?」


 やはり院長先生は理由を知っているのだろう、単にスズに嫌われたのなら素直に諦めもつくが、他に理由があるってのなら、なんとかしてあげたいと思う程度には、俺もスズのことを気に入っているらしい。院長先生の目をジッと見つめていると、諦めたように切り出した。


「はぁ……聞いたら後悔するかもしれませんよ」

「だとしても、教えてください」


 俺とクレアが真面目に聞く体勢で待っていると、院長先生が語ってくれた。


「スズは記憶が戻ったことしか打ち明けてくれませんでしたが、たぶん彼女は混血種です。自分でも思い出したのでしょう、だからこそ皆に知られる前に離れたのでしょう」


 クレアはショックを受けたように口を押えている。どうやら言葉も出ないほどショックなようだ。


「混血種だと、そんなにまずいのでしょうか?」

「この国ではひどく迫害されていますよ。他の国ではこの国よりマシですが、立場が悪いことは変わりませんからね」


 なるほど、俺たちを巻き込みたく無かったのか……良い娘だな。よし、決めた! スズみたいな良い娘を逃してなるものか。


「決めました! スズに会いに行きます。商都連合までの道を教えていただけませんか?」

「茨の道になりますよ。それでも行かれるのですか?」

「覚悟の上です!」


 正直言うと、どこまでの覚悟が出来ているのかは自分でもわからない、チートがあるから大丈夫だろうと高を括っているのかもしれない。それでも助けたいという気持ちには嘘は無いはずだ。


「分かりました、それではお教えします。商都連合への行き方は2通りあります。一つは街の北に向かい、王都を経由する道です。もう一つが東に向かい、街をいくつか経由してエスト教国に入り、その後に商都連合に向かう道です」

「2通りですか、ちなみにスズはどちらの道を進んでるのでしょう?」

「北の王都経由のほうですね。領主様が年に一度、商都連合に留学生を送っているんですが、それに便乗させてもらっています。護衛として騎士のレオン様が同行されてますので安心です。アスラさんの場合は、今は北西の獣国と交戦中で、下手をすると冒険者の強制依頼で巻き込まれる可能性がありますので、東側を通るほうが賢明でしょう」


 ふむ、領主が関わっているのか、途端に不安になってきたんだが。たしか以前、スズが嫌がっていたし、イケメン貴族とか裏で何やってるか分からないからな……これは完全に偏見だな、たしかあのイケメン貴族、ステータスのモラル値も低くなかったし、問題無いのかもな。でも何かが引っかかるんだよな?


「教えていただきありがとうございます。東側に向かうことにしますね。そういえば、ずいぶんと色々されているようですが、領主様ってどんなかたなんでしょう?」

「領主様ですか? 以前も話したように素晴らしいかたですよ。他にはそうですねぇ……人物鑑定Lv4をお持ちの貴重なかたですね。戦闘スキル以外の高Lvスキルを持つ人はかなり少ないんですよ。たしか人物鑑定Lv4になると、種族・レベルの他に、通常スキルもLvは見れませんが何を持っているかは見れたはずです。あと、モラルが犯罪者を判別できるだけじゃなく、直に値で見れるようになります。きっと領主様のモラル値はすごく高いのでしょうね」


 なるほど、魔物を倒すには戦闘スキルがあったほうがいいからな、高レベルになるには戦闘スキルが必要で、それ以外のスキルがあっても魔物を倒せず、レベルが上がらないからスキルレベルも上げられないと。それに、人物鑑定のレベルでどこまで見れるか変わるのか。スキルのLv見られないのは助かるな、高Lvスキルいっぱい持ってると怪しまれそうだからな。


 それにしても、領主様のモラル値かぁ、低くは無いけど、たいした事なかったけどな。むしろタイラスさんのほうが高いし……あっ、そういう事か! 俺の考えが間違っていて、今頃、商都連合に向かっているかもしれないが、正しい場合はスズが危険だ……忍び込むか? いや流石に今は無理だな。


「いろいろありがとうございました。とりあえず商都連合に向かってみることにします。院長先生、クレアも元気で、今まで楽しかったよ」

「お兄さん、こちらこそ今までありがとう。スズちゃんの事お願いね!」

「アスラさん、今までお世話になりました。無理だけはしないでください」


 この孤児院にもだいぶ世話になったな、今後の展開によっては迷惑かけちゃうかもしれないんだよなぁ……よし、金で解決ってのもあんま褒められたことじゃないが、無いよりはマシだろうし、いくらか寄付しておこう。


「院長先生、これ皆のために使ってください」


 俺は、金貨5枚(約500万円)を院長先生の手にギュッと握らせて立ち上がり、後ろから聞こえてくる、慌ててこちらを止める声を無視して、足早に孤児院を去った。

 

 孤児院を出た俺は、東側ギルドでマーサさんに、西側ギルドでギルドマスターとセシルさんにこの街を去ることを伝えた後、東側の門で、門番に冒険者カードを提示してから外に出る。


 外に出たら、東門から見えなくなるまで離れて、森の中に身を隠した。もう少しすれば日が沈む、そうなったら行動開始だ。今のうちに考えをまとめておくことにした。


 領主のモラル値は評判の割に低い。悪事と善行を足してプラスになっているだけで、悪事をしていないわけではないのだろう。あと気になるのは、孤児の護衛にレオンという騎士を付けているのも怪しい。本来ならあれほど強い騎士なら近くに置いておきたいものだろう、たしかレオンはモラル値がかなり高かったように思う。小うるさい騎士を遠くにやって、鬼の居ぬ間に……ってのもあり得るのではないか。

 俺の考えが外れているなら、後で商都連合で合流すればいいだけだ、もし当たっていた場合を考えると、この後、領主館に忍び込むべきだ。さすがに昼間に忍び込めるほど、隠密も万能とは思えないし、失敗は許されない。

 一旦、街の外に出たのは、夜中であれば、見つかったとしても顔は分からないだろうから、昼に外に出たというアリバイがあれば、追手を掛けられる可能性も低くなるだろうと思ったからだ。完全に犯罪者の思考だな……まぁ、これからやろうとしていることは犯罪以外の何物でもないから仕方がない。


 日没まで1時間ほどだったはずだが、気が逸って、恐ろしく時間が過ぎるのが遅く感じる。こんなことをしてる間にスズがどんな目に逢っているのかと思うと、苛立ちばかりが募る。


 焦るな、これからやる事は、侵入だ……絶対に見つかってはいけない。心が揺れれば、気配も揺らぐ。心を殺せ、俺は仕事人だ、闇に紛れて目的を達するのだ。


 逸る心を抑えて、食事と排泄を済ませ、心を落ち着かせる。さらに、身体の汚れを【洗浄】で洗い流し、できるだけ臭いを取り除き、荷物も最小限にして残りは収納に入れて置く。


 そうこうして日が沈むと、いつも通りに闇魔法・風魔法の隠密セットを使用し、マッケイブの街の東側に近づく。街の周囲の壁は約3メートルほどだ、見回りの衛兵のすきを見て、音も無く壁を越えて、街へと侵入する。高レベルの人にとって3メートルの壁は越えられないものではない。見つかりさえしなければ侵入は可能なのだ。


 無事街への侵入を果たした俺は、急ぎ外壁から離れて、街の中心にある領主館に向かった。


 なかなか立派な館である。周りを囲む壁は、やはり3メートルを越える程度で乗り越えることはできそうだ。防犯とコストを考えると、この程度の高さになってしまうのかもしれない。周囲に注意しながら領主館に近づいていくと、後ろから無感情な声が響いた。


「行くのですか? アスラさん」


 この声は……ヤヴァイ、下手すると俺、サクッと殺られちゃうんじゃね?


 ギルドの仕事人、セシルさん登場である。



お読みいただきありがとうございました。

肩こりがひどくて1日遅れてしまいました。

たまには運動しないとですね。

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