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異世界でもチョコは貰えませんでした

バレンタインということで、チョコ要素を含めましたが、

番外では無く、一応本編になります。

 肉男爵発覚から3ヶ月ほどが過ぎただろうか、短い冬が過ぎ去り、春が訪れようとしていた。俺が住むマッケイブの街は、大陸の南に存在している。そのせいか、冬といっていいほど寒いのは、せいぜい12月と1月くらいで、2月の今は寒さも和らぎ草花も芽吹き始めている。


 今日は2月14日、前世では一人身の人間にとって忌むべき日だったが、異世界では何の変哲もない1日である。とうぜん12月24日も普通に平日だったので、心やすらかに過ごすことができている。異世界転生して本当に良かったと思うよ。


 それはともかく、3ヶ月の成果を確認してもらおうか。 


----------------

名前:アスラ

種族:異世界人

モラル:254 ↑3up

レベル:14 ↑2up

筋力:34 (128) ↑2up

耐久:35 (132) ↑2up

敏捷:40 (151) ↑3up

器用:54 (204) ↑1up

精神:33 (124) ↑1up

魔力:21 ( 79) ↑3up

通常スキル:体術Lv3 小剣術Lv3 投擲術Lv2 射撃術Lv1 隠密Lv5(1up) 気配察知Lv3 異次元収納Lv2 生活魔法Lv2 錬金術Lv3(1up) 闇魔法Lv3 風魔法Lv3 詠唱省略Lv4 精神異常耐性Lv1(new)

固有スキル:エアマスター

ギフトスキル:異世界人セット(中) 加護付与 万物鑑定

スキルポイント:0pt

眷属:ナオ (1/1)

----------------


 レベルと基礎パラメータの伸びはだいぶ鈍化して来ている、ここからは長い時間を掛けて鍛えていく必要があるだろう。

 スキルに関しては、まず精神異常耐性Lv1を取得した。これは、混乱・恐怖・魅了・睡眠・呪詛への耐性が上がるもので、耐性系の上位スキルである。そのためLv1の取得スキルポイントが2ptであった。

 次に隠密をLv4にしたことで、固有スキルの補正でLv5となり、森での奇襲に失敗することは無くなっている。マリーさんとはあれからパーティを組まないし、既にパーティを組むのは諦め、奇襲特化にしたのだ。

 最後に錬金術をLv3に上げている。Lv3で蒸留水、薬草、魔力草を材料にし、瞬時に傷を治せる下級ポーションを作成できる。そしてLv3になったことで、錬金術の材料を混ぜ【錬成】可能な状態となると、何となくわかるようになった。


 精神異常耐性を覚えるときはヒドイ目にあった。担当のスキル神はトルテさんで、まずはお茶会をしようと誘われた俺は、何の疑いも無くお茶を飲んだ。その次の瞬間、一度に様々な精神異常が発生し、耐性を得るまでのたうち回った。

 あれはほんとトラウマである。まぁ、これで3ヶ月前のように、恐怖に負けてあっさり結婚の約束しちゃったりしなくなればいいんだが……効くのかねぇ?


 まぁ、約束しちゃったものはしょうがないし、スズはこの3ヶ月で更に可愛らしくなったから何の問題も無い。適度に肉が付いた今では、ほっそりとして将来が楽しみな和風美少女だ。光源氏計画を発動し、俺好みの美女に育てるのも悪くないだろう。でも所詮は子供の約束だから、過度の期待はしないようにしている。


 今日はこれから、錬金術用の制作道具と材料を購入しに行く予定だ。Lv3ともなると材料も増え、専用の道具を使ったほうが作りやすいからだ。いつものように孤児院で朝食を済ませ、街に繰り出そうとすると、スズに捕まった。


「どこ行くの?」

「道具屋と、素材屋かな? 何軒か回るつもり」

「私も行く……案内するよ」


 上着の袖を引っ張られるようにして、一緒に街の道具屋に向かう。最近のスズは積極的だ。以前はクレアの後ろに隠れて、おずおずと喋っていた印象だったが、この頃は俺が出かけるとき、クレア抜きでスズと出かけることが多い。


 最近、クレアの付き合いが悪いんだよなぁ。スズが普通に喋るようになったから基本困らないんだが、たまに突拍子もない事するから、クレアが居てくれると助かるんだけどね。


 今日は何事もなく道具屋に着くことができ、錬金術セットを購入することができた。値段は金貨1枚(約100万円)とお高かったが、これも先行投資であるし、残金は金貨8枚以上も残っているから問題無い。


 錬金術セットをスキルで収納し、素材屋をてきとうに回り、下級ポーションの素材を買い集めていると、見覚えのある植物の実を見つけてしまった。


 これってカカオ豆だよな、なんで素材屋にあるんだ? せっかくだから、久しぶりにチョコレートでも作るか。


 俺は料理が趣味というわけでは無い、実際ふつうの料理はできないが、変なものばかり作ることはできる。一人暮らしが何年も続くと、変なテンションになることがあるのだ。

 バレンタインデーもその内の一日で、「チョコを溶かして作っただけの手作りチョコなんていらねーぜ、俺がカカオから作ってやる!」って感じで、作ってみたことがある。何度か作ったが、結局は安物の市販チョコに味で勝てなかったため、それ以来作っていないが、作り方は覚えている。


 カカオ豆3kgを購入し、帰りに食材屋で粉砂糖と粉乳も購入する。小金貨1枚(約10万)ほどかかってしまった。普段使わない食材は高いな……。


 宿屋の自分の部屋に戻ると、当然のようにスズも付いてくる。


「これから、何するの? 一肌脱いだほうがいい?」

「脱がんでよろしい! ちょっと待ってなよ」


 チョコ作りを手伝ってもらうつもりだから、一肌脱いでほしいのは間違ってないけど、そう伝えるとほんとに服脱ぐからな……前科もあるし。俺は部屋の窓を開け、今日買ってきた錬金術セットと、チョコの素材各種を取り出す。


「これで、美味しいものを作ってみようと思う。手伝ってくれるかい?」


 スズは目を輝かせて、首を何度も縦に振り、俺の隣に座っておとなしくなった。問題無さそうなので、錬金術セットを使って、カカオ豆をローストし始める。


 カカオ豆のローストはこんなもんでよかったかな、次は皮を取り除いてから砕くんだったよな、たしか。


 カカオ豆が冷めて来たら、皮を取り除く。この作業はスズにも手伝ってもらった。次に錬金術セットについている、大きめのすり鉢で、カカオ豆を砕く。カカオバターが分離してきたら、粉砂糖と粉乳を混ぜる。


 たしかこの後がたいへんなんだよね、長時間混ぜないと美味しくならないから、延々と混ぜるんだよ。あれ? でもこれって【錬成】できそうな気がするぞ。


 錬金術Lv3で【錬成】可能かなんとなくわかるようになっていたので、少し混ぜた後に【錬成】を使うと、300グラムほどのチョコが完成した。錬金術でチョコも作れるのか、便利だな。ひとかけら砕いて食べると確かにチョコだ、なかなか美味しくできている。


「できたぞ、ちと試食してみるか?」

「うん、黒っぽいけど、いい匂いするね」


 チョコを受け取り、1口食べたスズはびっくりしたような顔を一瞬して、すぐに残りを食べ始める。これは、ほっとくと全部食われるな。


「あー、俺にも少し残しといてくれよ」

「わふぁった(んぐんぐ、ごっくん)。すっごく、美味しかったよ! アスラもお口開けて?」


 俺が口を開けると、残りのチョコを食べさせてくれた。よく考えると俺、何やってんだろうって感じだが、この3ヶ月でこんなやり取りにも慣れてしまっている。


「アスラ、もっとこれ作ろう? 皆にも食べさせたい」

「そうだね。じゃぁ作って、孤児院行こうか」


 残りの素材をすべて使って3kgほどのチョコを作りおえ、孤児院に向かうと、入り口に衛兵が立っていた。


「あれ、何かあったのかな?」

「今日は領主様が来る日。庭で待ってよう」

  

 衛兵に軽く会釈をしてから、スズと孤児院の庭で座って待つ。暫くすると、上質な服を着た貴族らしき人物と、金属の鎧を着た騎士らしき人物が、出てきたので鑑定してみる。


----------------

名前:ラザール・ド・フルール

種族:普人族

モラル:163

レベル:31

筋力:38 (164)

耐久:37 (160)

敏捷:39 (169)

器用:41 (177)

精神:34 (147)

魔力:32 (138)

通常スキル:小剣術Lv3 盾術Lv3 裁縫Lv3 異次元収納Lv2 生活魔法Lv3 光魔法Lv3 人物鑑定Lv4

固有スキル:カリスマ

ギフトスキル:なし

----------------

----------------

名前:レオン・バロール

種族:普人族

モラル:382

レベル:56

筋力:68 (995)

耐久:63 (922)

敏捷:46 (673)

器用:52 (761)

精神:53 (776)

魔力:24 (351)

通常スキル:体術Lv4 大剣術Lv5 槍術Lv4 小剣術Lv3 斧術Lv3 弓術Lv3 盾術Lv3 気配察知Lv3 異次元収納Lv3 生活魔法Lv2 土魔法Lv3 人物鑑定Lv3

固有スキル:なし

ギフトスキル:大剣の才

----------------


 イケメン貴族がラザールで、パラメータのバランスがいい。モラルも163と低くはなく、悪い人では無さそうだ。固有スキルに【カリスマ】なんてのがあり、人を指揮するのに補正がかかるようだ。

 おっさん騎士がレオンで、【大剣の才】が大剣術スキル+1の補正が付きLv5になっている。他のスキルも多彩で、依然見た冒険者ギルドのマスターよりも強いな。やはりおっさんは化け物だ……絶対に敵に回さないようにしよう。


 何故か、俺たちの前まで歩いてきたので、俺は急いで頭を下げる。


「やぁ、君たちも孤児院の関係者かな?」

「はっはい、私は冒険者でして、肉を狩ってくる代わりに食事を作ってもらってます」

「私はここでお世話になってる……です」


 俺は頭を下げたまま、焦りながらも何とか答えたが、スズは相変わらずマイペースに答える。一応、空気を読んで語尾に「です」を付けてるところには成長を感じた。


「ふむ、話は聞いている。これからも孤児院の子達をよろしく頼むよ。それではな」

「はっ! 仰せの通りに」


 イケメン貴族とおっさん騎士は、用事が済んだのかさっさと帰っていく。貴族とは関わりたくないから、何事も無くてよかった。貴族達が見えなくなった途端に、スズが俺の腕にしがみついてきた。


「あいつの視線、気持ちが悪かった……」

「えーっと、貴族のほう?」

「そう、怖いから今日は……一緒にいて?」


 うーん、悪い人では無さそうだったけどね? 一応、院長先生にどんな人なんだか訊いておくか。


 院長先生に訊いたところ、イケメン貴族は約10年前にこの街の領主になった子爵様らしい。とても優秀な子爵様らしく、10年前と比べて犯罪も減り、景気も良くなって、生活もずいぷん楽になったそうだ。

 また、孤児院に多額の寄付をしたり、孤児の中から優秀な子を召し抱えてくれたりとかもするそうで、孤児院からの評判もとても良い。今回のように定期的に孤児院を回って、問題が無いか聞いたり、子供達の様子を見に来たりもするそうで、「私などよりずっと立派なかただよ」と院長先生は語ってくれた。


 イケメン貴族に関しては問題無さそうだから保留にするが、今日はスズとできるだけ一緒に居てあげることにし、いつも通りに孤児院で夕食を食べる。

 夕食の後は、孤児院の皆にチョコを配り、喜んで食べている子供達をスズと一緒に眺める。マリーさんも喜んでくれたのは期待通りだが、院長先生が美味しそうに食べていたのは少し意外だった。

 その日、スズは寝るまでの間、ずっと腕にしがみついていて、危うくトイレにまで連れ込まれそうになった。さすがに引き剥がし、外で待たせてもらったよ。


 スズを寝かしつけるときも添い寝を要求されたが、やっとのことで寝かしつけて、宿屋に帰ることができた。俺はいつもより長い時間、ナオちゃんと戯れてから眠ることにした。スズは幼いとはいえ、かなりの美少女だ、俺は賢者になっておく必要があるのだ。



 こうして俺の2月14日は過ぎていった。チョコをあげる方になってしまったが、けっこう幸せです。それと、すまない元の世界の同志達よ、俺はもしかしたらノータッチの誓いを守れないかもしれない……。


 

お読みいただきありがとうございました。

後半だけだと短いかなと思い、前半にバレンタイン要素を突っ込んでみました。

展開に無理やり感があったら、申し訳ありません。

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