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可憐なシスターマリー

 今日はパーティメンバーをマーサさんから紹介される約束の日だ。いつもより早く起きてしまった俺は、約束の時間までだいぶあるため、外で食事をとることにした。


 まずは、宿のロビーに行き、今後は食事無しにしてもらえるよう女将さんにお願いしておく。ついでにこの辺でおすすめの食事処が無いか尋ねると、少し嫌な顔をされたが数軒教えてくれた。


 配慮が足らなくてごめんなさいね女将さん、でもさ、やっぱり美味しい食事は重要だからね。


 最近は資金に余裕も出てきたし、宿の食事では質も量も物足りなくなってきたのだ。このごろは動くとすぐお腹が空くので尚更だ。おかげで転生した当初あったお腹の脂肪もすっかりなくなり、ほっそりした体型になっている。異世界式マズ飯ダイエットとか本書いたら売れるかな? 売れるわけないか……。


 女将さんに教えてもらった食事処の内、冒険者ギルドに近い一軒に入ると、朝の割りにはなかなか盛況であった、どうやら当たりのお店らしい。壁にかかっているメニューにはいくつかの肉料理が並んでいた。


・ウルフ肉の煮込み:銅貨5枚

・ラビットステーキ:小銀貨1枚

・ワイルドボアの香草焼き:小銀貨2枚

・ワイバーンシチュー:時価


 ワイバーンシチューは気になるけど、時価ってなんか怖いわ。うーん、また来るつもりだから、安い方からいってみようと思い。ウルフ肉の煮込みとラビットステーキを頼むことにした。


 しばらく待つと、料理が運ばれてくる。まずはウルフ肉の煮込みを食べてみたが、筋張っている上、獣臭さが目立つあまり美味しいとは言えない味だ。

 次にラビットステーキだがこちらはまずまずの味だった。これならワイルドボアの香草焼きは多少期待してもいいだろう。残りを服の中のナオちゃんにこっそりあげながら、夕食もここで採ろうと心に決め、ギルドに向かった。



 ギルドに着くと、マーサさんと一人の女性が近づいてきた。


「時間通りだねアスラ。こっちが昨日言ってた娘だよ」

「初めましてアスラさん、私はマリーと言います。今日はよろしくお願いしますね」

「アスラです。こちらこそよろしくお願いします」


 どうやらマリーさんというらしい。教会のシスターのような恰好をした、金髪碧眼の20歳くらいの女性で、容姿は整っていると思う。美人だなぁとは思うが、恋愛対象として考えるとなぜかピンとこない。俺はどうやら、東洋系の顔だちじゃないとダメなようで、以外と自分が保守的だったことに驚いた。

 そのせいもあってかスムーズに会話も進み、今日一日、銀貨1枚で試しに雇うことになった。もし相手が和風美人とかだったら、意識しちゃってまともに話せなかっただろう。


 マリーさんと連れ立って、雑談しながら東の森に向かう。


「マリーさんはポーターって聞いてますけど、冒険者ではないんですか?」

「はい、一応冒険者登録はしてますが、戦闘は苦手ですので異次元収納スキルを活かして、荷物持ちをしています。私の場合、副業のようなものですので、固定のパーティとか組めませんし、ギルドの仕事ができる日だけ、マーサさんに信用できる人を紹介してもらってるんですよ」


 俺って結構信用されてたのね、うれしいじゃないか。ちなみにマリーさんのステータスはこんな感じだ。


----------------

名前:マリー

種族:普人族

モラル:163

レベル:11

筋力:31 (50)

耐久:34 (55)

敏捷:36 (59)

器用:41 (67)

精神:21 (34)

魔力:24 (39)

通常スキル:杖術Lv2 光魔法Lv2 料理Lv2 異次元収納Lv3 生活魔法Lv2

固有スキル:なし

ギフトスキル:なし

----------------


 異次元収納Lv3だと300kgが上限みたいで、ワイルドボアなら2匹は入るし、他のスキル構成もバランスが取れてていい感じだ、料理ができるのもポイント高いよね。というか基礎パラメータが俺より高いんだけど……、俺ももっと頑張らねばなぁ。

 

「俺もマーサさんには感謝してますよ。パーティは一度組んでみたかったのですが、中々相手が見つからなかったもので」

「話は聞いてますよ。すごいペースで依頼をこなしてるのに何故か目立ってないって。普通なら強くて礼儀正しいから、直ぐパーティに誘われるのにって不思議がってましたよ」


 あぁ、こんなとこでも俺の固有スキルの目立たない効果が出たのか。そういや3ヶ月も経つのに、他の冒険者に話しかけられたことすらないな。スキルについて話すわけにもいかないから、すかさず話を逸らす。


「ははっ、なんでだろ? そういや副業ってことは、いつもは何してるんですか?」

「いつもは、孤児院で働いてるんですよ。子供たち可愛いですよー」


 孤児院の話になると、途端に嬉しそうに話すマリーさん。子供たちが可愛いと微笑むマリーさんを、可愛いなぁと思いながらも話を続ける。


「へぇ、孤児院で働いているんですか、素晴らしいですね」

「えへへ、私も孤児院出身でして、恩返しも兼ねてってとこですかね」

「それでも偉いと思いますよ。マリーさんのような人が育つならいい場所なんでしょうねぇ」

「私はともかく、いい孤児院ですよー。そうだ、よろしければ依頼が終わった後、来てみませんか?」


 孤児院か、子供ってちょっと苦手なんだよね、どう扱っていいのやらわからんし。


「うーん、そうですねぇ……」

「ここだけの話ですけどね、納品依頼の魔物は自分で解体して売った方がお得なんですよ。うちの孤児院に解体できる子がいますので、そこで解体しましょうよ!」

「えっと、そうですね。お邪魔することにしましょうか」


 マリーさんに腕を取られて説得される。急に積極的に迫ってくるマリーさんにタジタジである。俺は

左腕に当たる柔らかな感触に、よく考えることもできずに承諾してしまった。


 まぁいいか、ワイルドボアでもお土産にもってきゃいいか、そうと決まったら今日は狩るぞー。



 そんなふうに話をしている内に、東の森に到着した。マリーさんにはここで待っててもらう事にして、さくっと獲物を狩ってくることにした。


「ちょっと獲物を狩ってきますので、森の外で待っててもらいたいのですが大丈夫ですか?」

「はい、ゴブリン程度であれば何とでもなりますので、お待ちしてますね」


 マリーさんが快諾してくれたため、いつものように暗視と防臭の魔法を掛け、森に分け入っていく。今日の獲物はワイルドボアか、ホーンディアだ。どちらも魔獣と呼ばれる存在で、知能は低いが身体能力は総じて高いレベルにあるため油断はできない。


 おっ、丁度ワイルボアがいるな。まぁ、今の俺なら楽勝だ、マリーさんにいいところを見せたいし、サクッと殺っちまうか!


 気配を消して注意深く後ろから近づき、ショートソードで何度か切り付けると、あっさりとワイルドボアを倒すことができた。隠密あるとやっぱり楽だ、もしかしたら固有スキルの目立たない効果もうまく働いているかもしれないが。


 倒したワイルドボアを背負い森の外に向かうことにする。100kgほど重量はあるが、レベルとスキル補正のおかげでなんとか背負うことができた。途中コボルトに遭遇したが、サクッと討伐して進み、マリーさんとの合流地点に到着した。


「わーっ、すごいですアスラさん! こんなに早いだなんてびっくりです!」

「ははっ、それほどでもないですよ。また行ってきますので、収納お願いしますね」


 マリーさんが獲物を異次元収納にしまうのを確認し、再度、森に突入する。


 コボルトとポイズンスネークを討伐しつつ、しばらく探索すると今度は鹿のような魔獣のホーンディアを発見した。後ろから奇襲をかけると倒すことはできたが、気が逸っていたせいか気配を消し切れておらず、後ろ脚での思わぬ反撃を受けてしまい、左脚に傷を負ってしまった。


 ぐぅ、完全に油断した、久しぶりのダメージだからめっちゃ痛いわ。ナオちゃん回復お願いします。


 ナオちゃんが身体の中に溜めこんでいた、回復薬をぬりぬりしてくれる。少しづつ痛みが引いていき、暫くすると問題無く動けるようになったので、さっさとホーンディアを背負って森の外に出る。


「アスラさん、どうしたんですかその怪我!?」

「少し油断してしまいまして。たいした怪我じゃないですよ」


 ばつが悪そうに答えると、マリーさんが心配そうに近寄ってきて跪き、傷に手を当てる。


「じっとしててくださいね。清き光の精よ、我が魔力を糧に力を示せ、柔らかな光で怪我を癒せ、『ヒール』」


 おぉ、回復魔法だ! なんかじんわり効いてくるな、今幸せだわぁ。


「これで大丈夫だと思います。怪我したらちゃんと言ってくださいね、無理しちゃメっですからね!」


 子供をたしなめるように怒る彼女は、不謹慎ながら可愛いなと思ってしまった。うっかり惚れてしまうじゃないか。なんか子供扱いされてる気がするけど、孤児院でもこんな感じに怒るのかなと思うと、ほっこりしてしまう。


「えっと、ごめんなさい、気を付けます。あと回復ありがとうございます」

「わかればいいんです。それで今日はこれくらいにしましょうか?」

「いえ、もう1体狩ってきますので、少し待っててくださいね」


 そう言って、運んできたホーンディアを渡し、3度目の森への突入を敢行する。


 今度は念入りに気配を消して進み、発見したワイルドボアを充分注意して撃破して、背負って持ち帰る。やはり油断さえしなければ問題無い。まぁ油断せずにいるのが結構大変なのだが。


 その後、魔物に遭遇することなく森の外に出て、獲物をマリーさんに渡し、街に帰ることにした。街に帰る途中も他愛のない事を話しながら歩く。


「それにしても、アスラさんはすごいですね。一人であんなに早く魔獣を狩ってしまうんですから」

「いやぁ、たいしたことないですよ。森の中なら一方的に奇襲できますからね」

「奇襲ですか……なるほど、それでパーティを組まないんですね」


 納得したように頷いて呟くマリーさんは、暫く考えた後、こちらを見て上目遣いでこう頼んできた。


「それでしたら、また私をポーターとして雇ってもらえませんか?」

「もっ、勿論です。こちらこそよろしくお願いします」


 承諾の言葉を即答してしまったが、けっして色香に惑わされたわけではないのだ、いい加減装備も新しくしたいからお金が必要ってこともあるし、たまには他人と話してボッチから脱却したいというのもある。



 本音を言うと、上目遣いには勝てなかったよ……ってところか。どうやら俺はマリーさんに、だいぶ魅了されてしまっていたらしい。



お読みいただきありがとうございました。

主人公がちょろすぎてツライ。

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