ツンデレなのか否か、それが問題だ
たいへんお久しぶりです_(._.)_
少々短めかもしれませんがアップします。
更新ペースが戻るまではしばらく、更新優先で短めアップが続くかもしれませんがご勘弁を。
更新してない期間が続くと、それが常態化してしまって怖いですからね……。
↓前回最後に出てるアハトのステータスです。
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名前:アハト(エルマン・ド・ロードシルトの眷属)
種族:混血種(魔人/普人)
レベル:19
筋力:48 (116)
耐久:47 (113)
敏捷:66 (159)
器用:45 (108)
精神:19 ( 46)
魔力:43 (103)
通常スキル:小剣術Lv3 隠密Lv3 気配察知Lv1 水魔法Lv2 火魔法Lv2
固有スキル:空間転移Lv2
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俺達は今、合流した少女と宿屋の食堂で朝食を囲んでいた。
身の丈は140cmを僅かに超えるくらいとスズ達に比べても幾分か低めで、ぱっと見は子供にしか見えない。
しかし身長の割に豊かな胸部が、彼女が女性であることをこれでもかと主張していた。
かなりのデカさだ……そう思うのはきっと日夜洗脳を受けている俺だけのはずで、実際には成人女性の平均的サイズであろう。
とはいえ、混血種としてはかなり大きいほうなのは確かである。
精神値を見る限りでは、成人して数年(16、17歳)といったところか。
歳の割にはレベルが19と高いし、スキルも中々の物を持っている。伊達に1人でお使いに出されている訳では無さそうだ。
究め付きは固有スキル『空間転移Lv2』で、随分と使い勝手の良さそうなスキルをお持ちだ。
名前の横の眷属表示にさえ目を瞑れば、是非ともお仲間に迎え入れたい人材であった。
食事自体はしっかり取れているのだろう、顔色を見る限りでは栄養不足のせいで、背が低いわけでは無さそうだ。
眷属というのに引っ掛かりはあるものの、あの孤児院を黒と断定するのは早計だろうな。
外套のフードから覗くのは、血色が良いというには桃色がかり過ぎた素肌と、菫色の髪。
気が強そうに釣りあがった目の中では、挑戦的な紫紺の瞳だけがギラギラと鈍く輝いている。
俺が黙って観察しているのに痺れを切らしたのか、その濃いピンク色の唇が言葉を紡ぐ。
「いつまで人の顔ジーッと見てんのよ。何か喋りなさいよ」
紡がれた憎まれ口には似合わない、可愛らしい声であった。
「あ、ああ、すまんね。これから一緒に行動する仲間達を紹介していくよ、まず――」
俺は彼女に向かって身内を一人一人紹介していき、最後に自分の紹介をしてしめる。
「――そして俺がアスラだ。旅の道中はせいぜい仲良くしようや」
「アタシはアハト、別に仲良くなんてしてくれなくていいわ。それよりも、さっさと行きましょう」
「そういう訳にもいかないよ。孤児院の子達に、キミの事を助けてくれって頼まれちゃったからね」
「なっ……あの子達が? もう無茶な事して……その事、院長には言ってないでしょうね?」
「ああ、帰りに頼まれてから、そのまま宿に戻ったからな」
知られると子供達の立場が悪くなるって事だよなやっぱり。
アハトは「ならいいわ」と吐き捨てて後に続ける。
「とにかく、アタシの事は放っておいて! アンタには関係無いんだから、余計な事しないでよね!」
「う~ん、そう言われてもなあ。俺は子供達に頼まれたのであって、キミに頼まれたのではないからな」
孤児院の院長には、既に顔と名前を知られている以上、無かったことにして「はい、さよなら」というわけにもいかない。
何に巻き込まれたのかは知らないが、彼女から事情くらいは聞き出さなければならないだろう。
藪蛇な気もしなくは無いが、毒を食らわば皿までとも言うしな。
「ちっ、うざっ……もしかして、アタシらに恩を売ってどうにかしようとか思ってる? あの子達に手を出したら承知しないからね!」
「なっ!? 貴様、拙者らの主を愚弄する気か!」
「だね。もしかしなくてもあなた、私達に喧嘩売ってるでしょ?」
「まあまあ、落ち着「アスラは黙ってて!」イエス、マム!」
ひぃ、こりゃ俺には無理だ。
激昂するイリスと、静かに怒気を顕わにするスズ。
どちらも怖いが、後者が圧倒的だ。
いや怒ってくれるのは嬉しいよ、嬉しんんだけどさぁ。
3人の言い争いは俺をそっちのけでどんどんヒートアップしていく。
こういう時は、うちの知恵袋に出てもらうしか無い。
「悪いけどこれ、どうにか収められないかな?」
こっそりノルンに頼むと力強く頷き、任せてくださいとばかりに頷いて参戦する。
「イリスそれにスズも、こんな子供の戯言に目くじらを立てるものでは有りませんよ。アハトさんでしたか? あなたもご心配には及びませんよ、アスラさんの相手は私達で間に合ってますので」
「それにしては、さっきから胸の辺りに視線を感じるんだけど~。そいつ、おばさんらに満足してないんじゃないの~? まあ、その胸じゃあ仕方ないよね~、うぷぷぷ」
「うふふふ…………いい加減にしませんと、ぶち殺しますわよ?」
ニコニコと目だけは微笑みながら、ピキリと青筋を浮かべる彼女。
ノルンお前もか……。
そして胸の話で、俺のほうにも怒りの波動が向いて来た。
このままでは拙い、何とかしないと人死にが出かねない、俺とかさ。
「まてまて、その辺にしとこうな。皆も弱い者いじめは良くないぞ」
「む、これでもアタシ結構強いのよ。なんだったら試してみる?」
「試すまでも無いって、ここにいる皆は少なくともキミの倍以上のレベルだからな」
「全員って、そのちんちくりんはどうなのよ?」
アハトが指さして問うと、さされた当人がトテトテと近寄って抱き着いた。
「なになに、抱っこしてほしいの? て、痛い痛いって! 痛たただだだだぁ!!」
「ちょ!? そこまでだナオ、その子が死んじゃうから!」
「なまいき……ねえ、やっていい?」
「やっちゃダメ! 可愛くお願いしても駄目なものは駄目だからな!」
闘るならまだしも、殺るのほうだったら完全にアウトだ。
確認するのが怖すぎる。
「ふう……ヒドイ目に逢ったわ。もしかしてこの子、土人族との混血種か何か? それにしては細身だし……」
「種族については内緒だけど、ここだけの話、ナオは俺の眷属だよ」
「!? やっぱアンタって最低な奴だったのね…………仲良くなんてとてもできそうも無いし、もうアタシに話しかけないでくれる?」
劇的な反応を見せた彼女には、俺に対する――眷属の主に対する――憎悪が確かに見て取れた。
反応を見たくて自ら明かしてみたが、これは早まったかもしれないな。
でもこれで、少なくとも彼女が望んで眷属でいる訳では無いのは判明した。
孤児院かそれに関わる何者かはやはり黒だ。
これで行動方針は決まった。
最優先は俺達の身の安全で、努力目標として彼女の救助も目指す。
まあいつも通りっちゃいつも通りだな。
ともあれ、しばらく俺は関わらないほうが良いだろう。
彼女の事は他の子に任せて、俺は観察に徹するとしよう。
「分かったよ。それじゃあう~ん……マシロがいいか。この子の護衛を任せても良いかな?」
「ん、分かった」
怒りを顕わにしている他の子に任せるのも心配だしな。
いつも冷静なマシロが頼もしくも有り、寂しくも有った。
顔合わせも終わり、正午に街の南門で合流後に出発する約束をした俺達は、アハトと別れて宿の部屋へと戻っていた。
部屋に戻って開口一番にスズが切り出す。
「さあ、始めるわよ!」
「そうだな。作戦会議を始めようか」
「そうじゃないわよ。ノルンにマシロちゃん、3人で限界まで搾り取るわよ! ちょっとの間してなかっただけで、もう他の娘に目移りするだなんて、完全に油断していたわ」
「え、そっち!? いやあれは誤解だってば、コテツ達も気を利かせて出て行かなくてもいいからな!」
つうかスズの目がマジなんですけど、コテツ達に見捨てられたら今度こそ男の夢の一つが叶ってしまうかもしれない。腹上死待ったなしだ。
「何が誤解って言うの!? あの子の胸じっと見てるの、私だって気付いてたんだから!」
うぅ、胸を見てたことに関しては正直すまんかったが、これもしょうがない事なんだ!
「男には興味が無くても、目が行っちゃうってのが有るんだよ」
「本当に~? それ、嘘じゃないでしょうね?」
例え好みじゃない相手のパンチらでも、つい見てしまうとか有るじゃん?
目の前でひらひら動く布につい目が行っちゃって、見た後にうげぇってなるアレだ。
今回もそういう事にして、押し通そう。
「嘘では無さそうですね……本当にそれだけかは怪しい物ですが」
「ノルンが嘘じゃないって言うなら……まあ今だけは納得してあげるわ」
「分かってくれて幸いだよ。それで今後の話についてだけど、基本方針は彼女を助けられるなら助ける、で良いのかな?」
俺の問いに皆が押し黙ってしまう。
しばらくして口火を切ったのはやはりスズだ。
「私は反対。本人が何もするなって言うんだから、放って置けばいいのよ」
「拙者も反対でござる。あのような失礼な者、助ける必要など無いかと」
「私はまだ何とも言えませんね。心情的にはスズに賛成ですが、方針を決めるのは、もう少し情報を集めてからでも遅くは無いと思います」
スズ、イリスは反対で、ノルンは様子見か。
うーむ、これは一旦俺の意見もニュートラルに戻したほうが良いかもな。
その場だけ助けて放り出す、そんな無責任なことはしたくないし、最後まで面倒を看るにしても、今居る仲間の意見を無視することは出来ないからな。
俺だって自分の事を嫌っている相手を助けたいと思えるほど聖人君子では無い。
ああいうツンデレ? いやデレルか分からないから現状はツンツンか。
まあどっちにしろ、初対面の相手に喧嘩腰で応じるような子を内に抱え込むのは、リスク以外の何物でもない。
仲間にしたとして、力持つ者と対峙した時に同じような態度に出られたらと思うと、たまったものではない。
何か理由があって刺々しい態度をしてるだけで、デレレば言う事を聞いてくれるような子なら良いが、単に失礼なだけのツンツンさんならどうしようもない。
俺だって最終的にデレルと分かっているなら頑張れるが、そうじゃないのに罵られてまで頑張れないよ。ドMじゃないんだから。
やはりツンデレなのかただの失礼な奴なのか、それが一番の問題だな。
物語なら大概はツンデレだが、現実だとその逆のが多い気がする俺としては、これまでツンツンした子との交流を出来るだけ避けてきた。
しかし、今回ばかりは避けるわけにもいかない。
既に巻き込まれている訳だし、孤児院の可愛い子達――ロリコン的な目線でじゃないからね!――にも頼まれちゃったからな。
ともあれ、今回の旅の間に友好を深める努力はするが、それでも仲良くなれそうになければ、今回ばかりは諦めるしかないかもしれない。
「分かった、彼女の件に関しては保留にしよう。旅が終わっても今のままなら今回の件は忘れる。そう言う訳だから皆、短い旅の間だけなんだから彼女の発言については大目に見てやってくれよ」
俺の結論に皆、渋々ながら頷いてくれた。
取りあえず、こっちはこれで良しかな? 後は野となれ山となれだ。




