帝国への旅立ち(装備品紹介)
めっちゃ間が空いちゃってすみませんでした。
キリが良いとこまで書けてるから~って甘えが出てしまってました……。
また週1くらいで再開予定ですので、お付き合い頂ければ幸いです。
「はい、あーんしてね」
「あーん」
「どう、おいしい?」
「うーん、やっぱりスズが作ってくれる料理が一番だからなぁ……」
「うふふ、そっか。でも今日はここの料理で我慢してね」
そう言ってスズが再度、食事を口元に運んでくれる。
あーんてバカップルかよ、とか思われるかもしれない(実際、周りからの視線も痛い)が、これは仕方のない事だ。
未だに俺の右手は切断されたままであり、魔法での治療にはもうしばらく掛かりそうなのだから。
俺達8人は、帝国と商都連合の国境付近、商都連合側の宿場町にいた。
今は宿屋に併設された食堂で、食事を摂っているところだった。
工房都市で朝早くにクレア達と別れた俺達はまず、頼んでいた装備を受け取るために革公房マリアンヌへと訪れた。
そこで依頼した装備として、亜竜の素材を用いた防具類と、竜の牙のアクセサリーを受け取って直ぐに工房都市を出発したのだった。
受け取った防具は次の通り。
・飛竜の強化防具セットx4:飛竜ベースで、要所を地竜の鱗で補強した軽鎧
・飛竜の防具セットx2:飛竜革の全身鎧
・飛竜の軽防具セット:飛竜革の部分鎧と、裏地に飛竜革を張り付けたローブ
・地竜の防具セット:地竜の革と鱗を使った全身鎧
・竜牙のアミュレット:首に下げるペンダントタイプのアクセサリ
なお、防具には全て【状態保持】のスキルが付与されており、竜牙のアミュレットには【抗魔】のスキルが付与されている。
【状態保持】は各部の消耗を抑えたり、汚れや臭いを抑える効果があり、亜竜の血を媒介に付与した効果は半年ほど持続する。
それに対して【抗魔】は、敵性魔法に対する耐性を高めてくれるものなのだが、魔法を受けるたびに効果が弱まっていくらしい。
そのため戦力が充実している今のところは、竜牙のアミュレットは俺の収納に纏めて隠して温存してあった。
他の装備に関しては、各自に渡して装備済みだ。
今まで黒虎の革で出来た防具を着ていたため、見た目の違和感が凄い。
以前は黒系で統一されていたのが、全員が茶系の装備になってしまったこともあり、ぱっと見ダサく感じてしまう。
まあ、防具としての性能はアップしてるはずなので、背に腹は代えられないよな。
ともかく、これでやっとシルバーランクに見合った装備となった事だろう。
各自の装備について整理すると、だいたいこんな感じだ。
俺
・主武器:ダマスクソード(1本はレオンとの戦闘で破損、予備を使用中)
・副武器:黒鋼の太刀(対大型魔物用)
・投擲:鋼の投剣
・防具:飛竜の強化防具セット
スズ
・主武器:ダマスクソード二刀流(予備1本を含め3本所持)
・投擲:鋼の投剣
・防具:飛竜の強化防具セット
・装飾品:耐毒の指輪(【猛毒耐性】、【麻痺耐性】)
マシロ
・主武器:コンポジットボウ(黒鋼の矢)
・副武器:ダマスクソード(予備を含め、計2本)
・防具:飛竜の防具セット
ノルン
・杖:シルバーワンド
・防具:飛竜の軽防具セット
イリス
・主武器:黒鋼の槍
・副武器:黒鋼の大盾
・防具:地竜の防具セット
ナオ
・主武器:黒鋼の大剣
・副武器:星破巨剣(【不壊】、現在は倉庫の肥やし)
・防具:飛竜の強化防具セット
コテツ
・主武器:黒鋼の槍(予備を含め、計2本)
・防具:飛竜の強化防具セット
アンズ
・主武器:コンポジットボウ(黒鋼の矢)
・副武器:黒鋼の剣(予備を含め、計2本)
・防具:飛竜の防具セット
こうして整理してみると判るが、やっぱり武器が今一だ。
一般の冒険者が購入できるのがこのラインなんだけど、これ以上を望むなら、腕のいい鍛冶師を探して特注で作ってもらうか、ダンジョンや遺跡を探索して遺物を探すなりしないと手に入らない。
一応、ミスリルを素材にした装備もたまに見かけるが、たかが冒険者に買える値段ではなかった。それこそ桁が違う。
ちなみに、魔法と相性のいいミスリルでコーティングと装飾を施した剣がミスリル貨6枚(金貨で60枚)、総ミスリル製の剣がミスリル貨300枚だ。
今の所持金(俺が管理してる分)は金貨400枚とちょっとだから、ミスリルコーティングの剣が買えなくも無い。
しかし、ミスリルコーティングの剣は、ダマスクソードよりも魔法親和性が1ランク上がる程度との為、購入を見送ったという経緯があった。
また、例え腕のいい鍛冶師がいたとしても、国や大貴族のお抱えの場合がほとんどだし、それが嫌で隠遁しているような者なんてのを探し出すのは至難の技だろう。
万が一探し出せたとして、そんな特異な人物にホイホイ気に入ってもらえるとは到底思えないし、作れる装備も今の装備の1ランク上程度のもので、探す苦労に見合うとも思えない。
図書塔で調べた限りでは、この世界の鍛冶師の鍛冶スキルは一流どころでレベル3、レベル4ともなれば国で数名ほどだ。
レベル4で加工できるのは、金属で言えば加工しやすいミスリルまでで、魔物の素材なら普通の竜素材まで。
アダマンタイトやオリハルコンといった金属や、年を経た竜の素材なんかは、加工することはおろか手に入れる事すら困難なのだという。
レオンが持っていたアダマンタイト製の星破巨剣なんてのは、現代では再現できない伝説級の武器なのだ。
それらを考えると、先々を見据えて装備を作れる人材を自前で育成するしかないのかなぁ、などと思い始めていたが、それをするのは今じゃない。
とにもかくにも、身の回りを固める事が先決である。
今の状態で鍛冶要員を確保したとしても、設備が無ければ鍛冶は出来ないし、育成する時間も必要だからだ。
やはり、早いとこ帝国を抜けて迷宮都市へと行き、そこで拠点を構えるのが良さそうだ。
たしか帝国に入ってからは……。
なんて考え込んでいると、食器を置いたスズが呆れ顔で見ているのに気づく。
「まーたアスラが上の空で、何か考えてるわ」
「そうですねぇ、悩みがあるなら私達にも相談してほしいのですけど……」
「ん? ああ、悩みとかじゃないんだ。帝国に入ってからの事を考えててさ」
「たしかこのまま進んで帝国入りしましたら、帝国第四の都市”リヒテンブルク”へと向かうのでしたよね?」
ノルンの言う通り、俺達はまず帝国の中で南寄りの都市へと向かっていた。
”リヒテンブルク”は帝国が擁する10万人規模の5都市の中で4番目に大きく、帝都の南西に位置する都市だ。
今居る場所からだと、北西に向かって帝国へと入り、そのまま西に馬車で1週間くらい行くとあるらしい。俺達の場合はたぶん2日と掛からないだろう。
「ああそうだ。そこが獣国に一番近い都市だから、まずはそこへと向かうことになる」
「”リヒテンブルク”かぁ……。そこってどんな都市なの?」
「帝都の南西に位置する、帝国で4番目に大きな都市です。帝国八将軍の1人で猛将と名高い『鮮血のハロルド』が治めており、毎年この時期に闘技大会が開かれる事でも有名ですね」
「闘技大会でござるか!? それは是非出てみたいでござるな!」
鮮血とか、随分と物騒な二つ名の領主様だこと……。
ともあれ闘技大会かぁ、転生者としては出場するのが正解なんだろうけど…………うん、スルーだスルー!
「闘技大会なんて出ないからな!」
「うぅ、たまには拙者も、主殿に良い処を見せたいのでござるが……」
「気持ちは分からなくはないけどな……俺達の力って俺達本来の力ってわけじゃないだろ? だからこそ、大会とかいった場で活躍しちゃダメなんだと思うんだよ。勝利も栄光もまっとうな努力をした者達が掴むべきだ」
「…………そうでござるな。戦いと聞くとついつい熱くなってしまう、悪い癖でござるな」
パラメータ2倍とか1.5倍ってほんとチートだからな、そんなんで勝っても嬉しくないどころか、相手に対して申し訳ない。負けたりしようものなら恥ずかしいまである。
実際問題、レベル的には俺達以上の奴等も相当数いると思うし、負ける可能性は結構高いのだ。
闘技大会への参加は、変に目立つ上に自分達の手の内はバレるし、下手すれば死ぬ可能性だってある。対人経験を得ること事以外は、良い事なんてまるで無さそうだ。
幸いうちのメンツで好戦的なのはイリスくらいで、説得する手間が少なくて助かったよ。
「わかれば良いんだ。まあでも、観戦するくらいは良いかもな、いろいろ参考にもなるだろうしさ」
「それなら賛成よ。この子が産まれるまでは無理出来ないけど、観るだけなら問題無いしね」
「なら決まりでござるな! ふふふ、どんな強者が出場するのか楽しみでござる」
スズも観戦に乗り気なのを知り、イリスも機嫌を直してくれたようだ。
「それにしてもこんな時期に闘技大会か……人なんて集まるのか?」
「はい、闘技大会に出場する人は寒さなど物ともしませんし、それほど大きな大会ではありませんので、観客は多く無いそうです。興行目的というよりは、人材発掘を目的とした大会ですね。実際に毎年、大会の上位者は身分に関わらず、騎士として取り立てて貰えてるらしいです」
「なるほどな、富国強兵の一環ってことか」
たしかに、なかなか言い手ではあるな。
平民の手が空く冬場に実施することで、広く人材を募集しているのだろう。
興行兼、人材確保の一石二鳥の策である。
ただそうなると、出場選手は精々が下級騎士レベルってことか。
正直、あまり参考にならなそうだな……まあ、皆の期待に水は差すまい。
「さて、明日も早い。今日のところは部屋に戻ってさっさと寝ようか」
そう皆に促して、そのまま床に就いた。
ちなみに、スズが妊娠中ということでエロいことはお預けだ。
しばらくはこの状態が続きそうだが、まだ見ぬ我が子の為だ、我慢しようじゃないか。
翌朝早くに宿場町を発ち、帝国との国境へと向かった。
国境に着くと、商都連合側と帝国側にそれぞれ関所が設けられているのが見えた。
どうやら商都連合側では、出国者の身分証とモラル値のチェックを行っており、犯罪者が国をまたいで逃亡しないようにしているようだった。
関所の前に並ぶと、間もなく俺達の番になる。
俺達8人のチェックが完了すると壮年の兵士が、親し気に話しかけて来た。
「よし、モラルも問題無しっと。帝国を通るときはくれぐれも気を付けなよ、あっちは良い噂聞かねーからな」
「はい、野盗とかには十分に注意するつもりです」
「ふっ、やっぱな、それじゃ足りねーから言ってんのさ。気を付けなきゃいけないのは街中でもだ! 特にあんたは、厄介そうなのを何人もつれてんだ、濡れ衣でも下手すりゃこーだぜ」
若い兵士が手で首を掻っ切る仕草と共に、そう忠告してくれる。
俺の仲間を厄介者扱いしていることに不満はあれど、彼の忠告には悪意は無いように聞こえるため、素直に聞いておくことにする。
「そこまで治安が悪いのですか……この国のようにモラルチェックとかはしないのですか?」
「そうなんだよ! あの国の奴等は、モラル値だけじゃ無実の証拠にならねぇっつって、モラルチェック自体しねーらしいんだよ。窃盗の1回程度じゃモラルチェックに引っかからねーとは言え、殺人とかならたいがいひっかるってのによ……」
うへぇ、ちょっと甘く見てたかも。
何人か殺っちゃってる俺のモラル値がプラスなわけだから、モラル値だけで無実と証明できないのは確かだ。
かといってモラルチェック自体をしないってのは違うよな……権力者達の都合でそうなった可能性もあれば、もしかしたら、そうせざるを得ない理由もあるのかもしれない。
治安が悪すぎて、モラルチェックなんてしたら国民が居なくなっちゃうとかさ…………まさかね。
ともあれ、情報をくれたこのおっちゃんには感謝しか無いな。
「ご忠告痛み入ります、ほんとうに感謝です。ぜひ御礼をしたいのですが私達は旅立たなければなりません。こんな物では失礼かもしれませんが、どうかこれで美味しいものでも食べてください」
「へへ、こりゃ有りがてぇや。おかげで今日は良い酒が飲めそうだぜ。あんたらが無事に帝国を抜けられるよう祈ってるぜ!」
情報には対価をだ。俺は周りに見えないようにして、彼に銀貨3枚を握らせて渡したのだった。
こうして商都連合側の関所を無事通り抜けられた俺達は、とうとう帝国の入り口へと差し掛かった。
まずは関所の突破だが、何事も無く進めれば良いんだけどね……。




