表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/113

とある錬金術師の1日

閑話っぽい話を一本投下です。

錬金術でお約束の下ネタになりますので、苦手な方はご注意を。

まあ下ネタ苦手な方はここまで読んでませんよね?

 学問都市での野盗討伐が無事に完了してから、2週間の時が過ぎた。


 この2週間、コテツとアンズはクルトの育成に精を出しており、他の俺以外のメンバーもギルドの討伐依頼をこなしつつ、レベル上げに勤しんでいる。

 俺はと言えば、図書塔に通ってこの世界の知識を蓄えながら、ニアちゃんおススメの錬金術本の写しを元に、錬金術に励んでいた。



 錬金術で作成できるアイテムは多々あれど、量産できそうなアイテムは大きく分けて3種類。


 まずは、『家庭の錬金術』に記述されていた調味料類だ。「家庭の」と銘打っているだけに、必要な材料は市場に行けば手に入るような物ばかりだし、必要とする錬金術レベルも高くて3とお手軽だ。

 俺は10日ほどかけて、様々な調味料を片っ端から作成して異次元収納に放り込んでいた。


 自分でも全ては覚えていないほど作ったが、みりんとマヨネーズ、マスタードにカレー粉あたりは、スズに渡してあるので、それらを使った料理が食卓に上る日もそう遠くは無いだろう。



 次に、『中級ポーション』や『上級解毒薬』、『魔除けの粉』、といった本来であれば錬金術スキルレベルが足りずに俺では作れないアイテムだ。


 『中級ポーション』は魔法で言えば『ハイヒール』相当で、欠損部位の再生は出来ないものの、だいたいの傷はこれ1本で修復可能という代物だ。材料は『下級ポーション』の材料である、蒸留水、薬草、魔力草の他に、陽光花という陽の当りの良い場所に咲く花が必要となる。


 『上級解毒薬』は、どんな毒でも治療可能な『解毒薬』の上位互換アイテムである。『解毒薬』の材料の蒸留水と解毒草に、魔力草に月光花を混ぜて作る物だ。月光花は月の出た夜に咲くといわれるそれなりにレアな花らしい。


 陽光花と月光花は比較的ありふれた素材ではあるが、ポーションの材料として使う場合は鮮度が重要らしく、市場には出回っている物ではあまりよろしくない。

 そのため、アウラさん達に直接依頼を出してリハビリがてら採取してもらったりした。ちなみに報酬は相場より高めの陽光花5本か月光花1本で銀貨1枚にした。月光花が30本ほど、陽光花が350本くらいでだいたい金貨1枚分くらい集めてくれた。


 正直集め過ぎだ……まあ、ナオの高レベルな異次元収納なら鮮度も維持できるから良いんだけどね。


 魔除けの粉は、身体に振りかけることで暫くの間、魔物が近づかなくなる効果があるもので、旅をする時の便利アイテムである。

 素材は、未だに俺が愛用している虫除け薬の素材である除虫草に、教会謹製の聖水と陽光花の3種類。この3種類を混ぜた液体が『錬成』すると粉末になるのだ、正にファンタジーである。

 ちなみに聖水はレシピを教会が秘匿しているらしく、購入する他なかった。1本100ccほどで銀貨2枚と中々のお値段だった。

 

 製法が不明なため何とも言えないけど、きっとボッタクリなんだろうなこれ……。


 ともあれ、これらの薬品は調剤スキルならレベル3か4、錬金術スキルならレベル5に相当するアイテムであり、本来は俺が作れるアイテムでは無かったのだが……。

 今の俺には『外道錬金のすすめ』がある。ニアちゃんに勧められたこの本には、出来上がりの品質は犠牲に1ランク下の素材で作り出す方法の他に、触媒となるものを混ぜて通常の倍の魔力を込める事で、1ランク上のアイテムを作り上げる方法も記載されていたのだ。

 幸い触媒となるものに、あり余るほど所持していた『亜竜の血』が含まれていたため、この3つのアイテムに関しては量産することが可能であった。


 それぞれ既に作成して、冒険者ギルドにて1個ずつ高値で買い取ってもらったのだが、値段を聞いてそれ以上の取引きは見送っていた。

 冒険者ギルドに併設されたギルドショップでの売り値が、中級ポーションが金貨1枚、上級解毒薬が金貨2枚、魔除けの粉は金貨1枚。

 この半値で買い取ってくれるというのだから、こんなのを大量に持ち込んだら絶対に悪目立ちするだろう。

 そのため量産した薬品類は、パーティメンバー各位に分配し、各自で使用してもらうことにした。


 まっ、錬金術でらくらくうまーな生活を送るのはもうちょっと先だ。地道に冒険者ランクを上げて、名が売れていくのは良いが、変に悪目立ちしておかしな奴等に目を付けられたら最悪だ。

 自由に動くのは、とにかくもっとレベルを上げて力を蓄えてから、今は我慢の時だ。



 おっと、ついつい脱線してしまったが、最後の3種類目というのは一般には流通していないアイテム類だ。


 ちなみに今日作ろうとしているのもその類のもので、レシピは『外道錬金のすすめ』に記載があった。これらのアイテムは違法というわけでは無いが、使用上注意が必要だったり、副作用があったりで一般的に販売するには向いていない物が多い。

 現代で例えるなら、医者で処方される薬がドラッグストアでは売っていない理由に近い。


 いくつか載っていたレシピで、俺がまず最初に試したのは『休眠薬』というアイテムだった。

 このアイテムは、どんな深い疲労でも一晩眠るだけで吹き飛んでしまうといった、金色の箱に入った高級栄養ドリンクも真っ青といった効果のアイテムなのだが……もちろん副作用のほうもかなりヤバい。

 このアイテムを使うと、生体機能のほとんどを、肉体の修復や疲労の回復に回してしまうために、下半身の一部機能が著しく制限されるのだ。具体的に言うと、1本飲むことで1ヶ月ほどED化するのだ。


 短期間での過酷な特訓と、急激な成長を可能とする代わりに、男性機能までが長期間の休眠に入ってしまうのだ。

 実に恐ろしい……おぞましい悪魔の秘薬である。素材については秘密だ、こんな物はもう二度と作る気はないしな……。


 ちなみにこの休眠薬を何故作ったのかと言えば、言うまでも無くクルトの為だ。コテツとアンズにしごかれて疲労困憊なクルトを見かねて、俺が人肌脱いだというわけだ。

 当然のことながら、クルトやブルーノ夫人に副作用については説明済みだ。ブルーノ夫人は喜んで受け入れてくれたので、クルトに毎晩1本飲むことを義務付けていた。

 クルト自身は少し嫌そうにしていたが、犯罪奴隷に発言権など無い。有ったとしてもあの変態が大人しくなるのだから、俺がしたことは善行と言えよう。


 まあ、俺が学問都市にいる20日間の我慢だ。その間の、休眠薬を併用したスパルタ指導さえ耐えきれば、クルトも一人前の戦士になる事だろう。

 休眠薬20本の副作用だと1年8ヶ月ってとこで、それさえ過ぎれば徐々に回復するらしいし、強くなることで少しでも生存率が上がるのだから、頑張って欲しものだ。




 さて、先にも述べたが、今日は新しいレシピに挑戦しようと思っている。


 そのレシピというのは精力剤である。……真面目な顔で突然何をと、思われるかもしれないがこちとら必死だ。

 男女間の力関係において、夜戦での勝敗もまた無視できないファクターとなる。ただでさえ尻に敷かれ気味な現状、男として決して負けられないのだ。

 学問都市到着直後の3対1の対決などは、特にヤバかった。

 あの時は、危うく全面降伏する所であったが、ギリギリのところで踏みとどまる事が出来のだが……昨日とうとう、その均衡を崩す出来事が起きたのである。


 スズとマシロのレベルが上がったのだ。レベルアップに伴い上昇するパラメータは、当然のことながら夜戦の出来にも関係してくる。

 ちなみにノルンも10日ほど前にレベル39に上がり、続いてイリスがレベル40、ナオがレベル41となり、昨日にスズとマシロがレベル42になった。

 それに比べて、俺はあの時と同じレベル44のまま。もしまた、こないだのような事態が発生した場合、今度こそ押し切られるのは火を見るよりも明らかだ。

 

 背に腹は代えられないと、この度、薬品に頼る事を決意したのであった。


 

 さて、本日作ろうとしている精力剤は、『増精薬』と『強精薬』の2種類だ。

 この2つも『外道錬金のすすめ』に記載されたレシピだ。こうなるともうこの本は、俺のバイブルと言っても過言ではない。


 『増精薬』は、中級ポーション、塩、オークの睾丸、亜竜の血の4種の素材から作成できるものであり、要は下半身の回復力を強化する精力剤である。男性の精子生成を助けるのはもちろん、女性の排卵を促したりと、不妊治療にも用いられる薬品であるらしい。

 『強精薬』も、中級ポーション、砂糖、リザード系魔物の血、亜竜の血の4種の素材から作成できるものであるが、こちらは完全に夜の営みに特化した効果を持つ。興奮剤に近い効果があり、主に下半身の持続力強化のために用いられるそうだ。

 

 早速作ってみたのだが、『増精薬』はどうしてこうなったと言いたくなるような白濁の液体となり、オークの素材を使ってる事もあって、正直飲みたい物ではない。

 オークの睾丸は現代人で言えば漢方薬やサプリメントに近い感覚で、こちらの世界では良く用いられているものである。素材として使った物も、市場で乾燥した物を購入したわけだが、やはり生理的に無理そうだ。


 俺はささっと容器に入れて蓋をし、自信の収納に突っ込んで次へと進む。


 『強精薬』には、狩猟都市でさんざん討伐したロックリザードの血を使用した。こちらは血のような赤い液体となり、見た目だけでなく匂いのほうも悪くない。

 甘い匂いのせいか、ぱっと見ではベリーのジュースのようにも見える。


 これならなんとか飲めそうだな。


 そう思いながら容器に詰めようとした俺だが、さっきの『増精薬』で使ったのが最後の容器であった事に気付く。

 どうせ今夜にでも試すつもりだったのだ。俺は『強精薬』を適当なコップに注ぎ、ベッド脇のサイドテーブルに置くと、容器を仕入れに冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドで薬品類の容器を大量に仕入れた後、試しに『増強薬』を買取窓口のおっちゃんに見せたところ、不用意にそんな物出すなとめっちゃ怒られた。

 なんでも、精力剤関係を作れる者は、権力者に狙われる可能性があるとのこと。権力者にとって後継者の有無は死活問題であり、その補助となる精力剤を作れる者はちょっとした強引な勧誘を受けるとのことだ。

 あと、精力剤の匂いには媚薬の効果も僅かにあるとのことで、鋭敏な嗅覚を持つ獣人族もいるギルド内で、不用意に容器のふたを開けて見せたのは、流石に迂闊であった。


 一応、増強薬は知り合いに貰った1本のみという態で見せたものだし、匂いに関しても直ぐに蓋をして収納に突っ込んだので大きな影響は無かったはずだ。

 近くにいた冒険者の奴隷らしき犬獣人が、息を荒げて自分の主人を見つめていたが、きっと気のせいに違いない。




 ともあれ、冒険者ギルドで容器を仕入れて、おっちゃんの有りがたい説教を聞いた俺が宿に帰り着く頃には、太陽は既に沈みきっていた。1月ともなるとやはり日が短い。


 夕食の前に一旦部屋へと戻った俺の目に入ったのは、信じたくない光景であった。


「あ…………アスラ、さん……たす、けて……」


「どうしたノルン! いったい誰にやられたんだ!?」


 ノルンが床に倒れ伏していたのだ。

 急ぎ駆け寄って、その脱力しきった身体を抱き起すと、手にはぬるりとした感触が……。


 くっ、俺が居ない間にこんな事になるなんて……もしや、俺がギルドで不用意に高級薬を取引した所為で、早くも権力者の手が回ったというのだろうか?

 いや、考えるのは後だ、まずはノルンの治療をしなければ。


 中級ポーションを取り出し、彼女の患部を見ようと服をめくり上げたところで、何処にも傷が無い事に気付く。どうやら俺は動転していたらしい。

 冷静になって良く見ると、傷が無いどころかその身を濡らしていたのが血では無く透明の液体であると気付く。


 というかこのぬるっとした液体、あれだよなきっと、てことはこれって……。


 急ぎ周囲を確認すると、サイドテーブルには空になった容器が転がっており、ベッドの上には乱れたシーツともぞもぞと蠢く盛り上がった毛布が……。

 うん、把握した。というか、毛布の下からスズとマシロの甘い声が聞こえてくるんだから、流石に気付く。


 どうする俺?

  戦う

 →逃げる

  

 ノルンを床に横たえて踵を返した俺は、コッソリ部屋を出ようとしたのだが、


「ふふふ…………一人で逃げようだなんて、絶対に許しません……」


「離すんだノルン。そうだ、一緒に逃げよう! 今ならまだ間に合うはず……」


 その提案に、俺の足に必死ですがっているノルンが、諦観を込めた表情で答える。


「無理ですよ……私の足腰はもう言うことを聞いてくれませんし……もう手遅れですから」


――― カチャリ


 部屋のカギを掛ける音が静かに響く。


「うふふふふ……これで邪魔は入らないわ。一緒に楽しみましょう?」


 いつの間にやらスズが回り込んでおり、退路は完全に塞がれていた。大魔王からは逃げられない!


 観念した俺は、おもむろに収納から『増強薬』を取り出すと、蓋を開けて一気に煽ろうと傾け、


「ごしゅじ~ん、早くするにゃ~」


 突然マシロが、背中に伸し掛かってきた衝撃で、容器を取り落としてしまった。そして……


「………………あは♪」


 妙に陽気な声に嫌な予感をしつつ足元を見ると、顔面に白濁した液体(増精薬)をべっとりと張り付けたノルンの姿が……。その瞳は暗く淀んでおり、瞳の奥に桃色のハートマークが幻視されるほどだ。


 考え得る限り、最悪の事態である。俺は今日、マジで死ぬかもしれない……。


「…………お手柔らかに頼むよ」


 どうにか一言だけ呟いた俺は、多勢に無勢でベッドへと沈んだ。




 後でわかったことだが、最初に嗅覚が鋭敏すぎるマシロの理性がとび、それを止めようとしたスズは口移しで『強精薬』を飲まされたらしい。その後は、当然のようにノルンが2人の餌食となり、そんな中、俺がのこのこ現れたという訳だ。


 あれから丸一日が過ぎたが、俺の息子はピクリとすら反応してくれない。


 クルトへの仕打ちの罰が当たったのかもしれない……やはり悪い事はするものではないな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ