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どんな制度にも抜け道は存在する

更新遅れまして_(._.)_

一応は後半に会話がありますが、またまた説明会になってしまた……ご容赦くださいませ。

 ニアちゃんは重犯罪者の行方の真相についてを語るにあたって、前提知識としてこの世界における、モラル値と経験値の関係について教えてくれた。


 モラル値が『-300』以下となるとステータスのモラル値表記が赤字となり、重犯罪者となるわけだが、そうなると国の制度だけではなく、この世界のシステム的にも一般の人とは異なる扱いとなるらしかった。


 俺はてっきり、どんな人を殺しても経験値が入ると思っていたのだが、実際は重犯罪者からのみ経験値を得ることが可能なそうだ。

 俺が経験値と呼んでいる魔素と呼ばれるファンタジー物質を吸収する制限として、同種の魔素は吸収できないというものがあるらしいのだが、重犯罪者となると濁った魔素が別種のものに変質し、吸収できるようになるのだそうな。

 これは重犯罪者からも言える事で、一般人が重犯罪者から経験値を得ることができるのに対して、重犯罪者も一般人から経験値を得ることが出来るため、力に酔った狂人が高レベルの人族を狙いうちにするという事例も、過去にあったらしい。

 ともあれ、重犯罪者を殺せば経験値を得ることが出来るわけだ。


 更に言うと、重犯罪者を殺した場合のメリットはこれだけではない。

 何度か俺も経験しているのだが、マイナスになっている重犯罪者のモラル値の約100分の1を獲得できる。例を挙げると、今回捕まえた野盗の頭目はモラル値「-12000」くらいだったから、それを殺すと120のモラル値上昇を見込める。


 つまり、重犯罪者のレベルが高ければ高いほど多量の経験値がもらえ、凶悪であればあるほど多くのモラル値を獲得できるわけだ。


 ここまで言われれば俺でも分かった。

 一部の外道な権力者達にとって重犯罪者というのは、ちょっと首を刎ねるだけでお手軽に経験値とモラル値を得ることが出来る、育成アイテムみたいなものなのだろう。



 重犯罪者のこの国での処遇は、街毎に細かな違いはあるもののだいたいは一緒らしい。


 彼らは最初に、契約魔法により自殺を制限される。

 抵抗しても無駄で、その場で自殺しようにも回復魔法の使い手はいるし、拷問やら薬物を使用し無理矢理にでも契約される。ちなみにこれらは重犯罪者に対してのみできる手法らしい、一般人に対してはモラル値低下の関係で行われることは無いというので、少しだけ安心した。

 で、自殺を制限された後は、『人物鑑定Lv4』保持者に詳細なレベルとモラル値をチェックしてもらった後に、裏の競売にかけられるらしい。


 レベル41でモラル値「-12000」くらいだった野盗の頭目の場合、金貨30枚スタートの金貨100枚で落札くらいが相場なんだとか。

 報奨金で金貨6枚も出たから怪しいとは思っていたが、そんなに金が動くのかとびっくりだ。


 金貨100枚、日本円で1億円くらい、いや富裕層の感覚では1000万円くらいかな? ともあれ結構な額だと思うのだが、それでも欲しい人は多いのだそうだ。


 例えば、どこぞ権力者のバカ息子が、たまたま訪れた村でムラッときて村娘を強姦してしまったとしよう。

 これでモラル値が「-100」以下になり軽犯罪者になってしまうと、モラルチェックにも引っかかるようになり街へと帰れなくなってしまう。

 これを解決するためにはモラル値を上げないとならないのだが、そうそう上がるわけも無い。かといって、そのまま街の外に出しておくわけにもいかない。

 そこで登場するのが、この育成アイテム(野盗の頭目)だ。さすがはバカ息子の親というべきか、息子のためにと競売で金貨100枚をポンと払って落札し、それを息子のもとへと送り届ける。

 人を人とも思わぬバカ息子は、その育成アイテムをスパッと使うことでモラル値は120上がり、レベルも上がって身体は軽い。

 その後バカ息子は、モラルチェックもすんなり通りぬけ、無事に親もとへと戻れて、めでたしめでたし……。


 とまあ、こんな感じなのだとか。自分が権力者達の、悪事の片棒を担いでいるようで、正直、いい気分はしなかった。


 そういう俺の気持ちが顔に出ていたのだろう。ニアちゃんがフォローとばかりに、競売での落札額の使い道を教えてくれた。

 競売の利益の半分以上は、街の運営や社会福祉、治安の維持に使われているらしい。冒険者ギルドへ出される野盗の討伐依頼の報酬や、野盗を引き渡した際の報奨金はその一部で、孤児院や治療院の運営資金の一部にも使われているとのこと。


 それに被害者を無くすことは出来ていないが、金貨100枚という額が多少は抑止にもなるし、外道な権力者の力を削る事にもつながる。

 確かに金さえかければ好き勝手できるという抜け道になってしまっているが、完全に抜け道を潰して、他の抜け道を探されるよりは、少しでも抑制できている現状のがマシだろう。

 そうニアちゃんは語ってくれた。


 よくよく考えれば、エスト教国で見たあの豚司教は、モラルチェックをスルーしていたはずだ。全てを禁止され追い詰められた権力者達が増えれば、衛兵に圧力を掛けるくらいするかもしれない。


 それが通ってしまえば、本当にやりたい放題になってしまう。それに比べれば現状は、まだマシだというのも頷けた。



 そこまで聞いて、一つの疑問が浮かんだ。

 重犯罪者は権力者に買われ、経験値とモラル値のために殺される。ではなぜあの時、頭目は俺に殺してくれと願ったのか。

 殺されるなら結果は一緒のはずだが、その疑問にも、ニアちゃんがすぐに答えてくれた。


 重犯罪者になら何をしてもモラル値が低下しない。これに尽きるらしい。

 この世界では、例え相手と契約魔法で奴隷契約を結んだとしても、理由の無い暴行や強姦は、モラル値低下の原因となるそうだ。

 そのため、何でもありの重犯罪者は貴重な存在であるらしい。

 見た目の優れた者なら性奴隷として、頑丈そうな者なら魔法の的や剣の試し切り、違法な薬の実験体にと大活躍だ。


 目的が目的のため、重犯罪者を購入するような者は、人を人とも思わぬ輩ばかり。

 最終的に経験値とモラル値に変わるところだけは一緒だが、それまでは屋敷に閉じ込められて、十中八九は生き地獄を味わうことになるわけだ。

 

 「重犯罪者には何をしても許される」そう取れるような、この国の隠れた制度に小さな引っ掛かりを覚えはした。

 だけど俺だって、「重犯罪者なら殺しても構わない」そう考えていたはずだ。そんな俺に、文句を言えるわけも無かった。


 まったく世の中、綺麗ごとだけでは上手く回らないものだな。




 とまあ、重犯罪者についての話で、かなり時間を食ってしまった為、その日のうちに他に聞いたのは、ニアちゃんのスキルに関してのみだ。

 スキルについての詳細や、使い勝手を聞いておき、今後のスキル取得の参考にしようというわけだ。


 まずは人物鑑定スキルについて聞いた。

 人物鑑定スキルはスキル毎に見える範囲が変わり、以下の通りになるそうだ。


・レベル1:軽犯罪者、重犯罪者を判別できる

・レベル2:レベル1に加え、相手のレベルが自分と比較してどの程度か

・レベル3:レベル2に加え、種族とレベルの実値

・レベル4:レベル3に加え、モラルの実値と通常スキル(スキルレベルを除く)

・レベル5:レベル4に加え、パラメータの基礎値

・レベル6:レベル5に加え、スキルレベル(ただし、固有とギフトは見れない)


 レベル6の場合はこれに加え、一度面識があり名前が判明していれば、名称も表示されるらしく、相手が変装してもすぐに分かって便利だと、ニアちゃんにお勧めされたわけだが……。

 初対面で名前から何から、全てが見れる俺の『万物鑑定』は、やはりチートスキルで、少し申し訳なく思ってしまった。



 次に詠唱省略スキルについて聞いたのだが、これはレベル4までは持っているので、レベル5,6についてだけ聞いた。

 どうやらレベル5で、任意の声をトリガーに魔法を発動できるらしい。「はっ!」とか「ふっ!」とかそんな感じでも発動するらしい。

 『ウィンドカッター』を『死呼ぶ禍津風まがつかぜ』とか中二病っぽくすることも可能かな?と思い、ニアちゃんに遠回しに聞くと気まずそうに頷き、何を思い出したのか手で顔を覆って恥ずかしそうにしていた。

 きっと、ニアちゃんにも黒歴史があるのであろう。俺に同志を虐める趣味は無いので、余計なツッコミはせずに、そっとしておいた。

 

 話を戻すが詠唱省略がレベル6になると、完全に無詠唱でも発動するそうだ。

 ただ、無詠唱での魔法発動に慣れるまで年単位の時間がかかるとのこと。その間は魔法暴発の危険性があるため、ニアちゃんは人里から離れて無詠唱の修行をしたらしい。

 まあ、修行が終わり人里に降りてからも10年くらいの間は、気が昂ると暴発して苦労したらしいけど……。



 最後に、どうやって遠くの本を浮かせて運べるのかを聞いたところ、魔法とスキルの合わせ技と判明した。


 ニアちゃんの固有スキル『千里眼』は一定の範囲内であれば知覚できるというもので、頑張れば工房都市くらいまでなら視認できるらしい。

 そのため、図書塔の内部くらいなら手に取るように分かるそうで、彼女の固有魔法『リモートコントロール』を併用することで、本程度の軽い物なら自由自在に操れるとのことだ。

 どうやら魔法スキルのレベル6で覚える魔法は、人によって異なるとのことで、固有魔法と呼ばれているそうだ。『リモートコントロール』は軽い物を操れる程度と、効果こそ低いものの、効果範囲と魔力効率に優れた、とても便利な魔法だとニアちゃんは自慢していた。


 これを聞いた俺は、俄然やる気が出てきた。早いところ魔法スキルを6にして、いい感じの固有魔法を使えるようになりたいものだ。




 気になっていた事を聞き終えた俺はニアちゃんと別れ、図書塔を後にし、陽が落ち切る前に宿へと帰りついた。

 丁度、夕食の時間だったためそのまま食堂へと向かい、既に食卓についていたスズ達と合流する。


「ただいま戻ったよスズ、こっちは無事に話を聞いてきたけど、そっちはどうかな?」


「こっちも問題無いよ。物資の調達はだいたい終わったから、後はコテツが暇を見て買い足してくってさ。荷物の整理のほうもだいたい済んでるよ。雑貨類は馬車に放り込んであるし、アウラさん達の装備類はそれっぽいのをクレアの部屋に出しといたわ。過不足があったら後で言ってちょうだいね、クレア」


「ありがと! 夕食が済んだらアウラさん達と確認しておくね」


 用事も無事済んだってことか、明日から20日くらい何してすごそか?

 俺は図書塔でいくらでも時間を潰せるが、他のメンツはどうすっかなぁ……。


「ご苦労様。これで、最低限必要な事は済んだって事かな……あれ? そう言えば、クルトの奴はどこにいるんだ?」


「あの人だったら、見張りがてら馬車で寝泊まりしてもらうことしたよ。一目で犯罪奴隷と分かる男を、食堂に入れるのも気が引けるしね」


 クルトの奴が見当たらなかったのは、そういう訳か。まあうちには、街の中では常にフードで顔を隠しているイリスがいるので、今更の話ではあるのだが、別にクルトを弁護する義理も無いので気にしないでおく。


「あっ、クルトと言えば、明日からあいつを鍛えてやろうと思うんだよ。そういう訳でブルーノ夫人、明日からしばらく同行してもらってもよろしいですか?」


「あ、ありがとうございます! ですが、こんなにも気に掛けて頂いて、なんだか申し訳ないです……」


「良いんですよ、というわけでコテツ、クルト達の事は頼むぞ!」


「む、某たちであったか。てっきり、主殿が面倒を見るつもりかと……」


「ああ、最初はそのつもりだったんだけどね……よく考えたら俺、この街でまだまだ調べたい事が有ってさ。てなわけで、コテツとアンズの2人で、オーク程度なら1対1で倒せるくらいに鍛えてやってくれるか? 多少の無茶は俺が許す」


「お任せください主様、私達で立派な戦士に育て上げて見せましょう!」


 よし、これで俺は図書塔に引きこもれるな、やはり面倒事はコテツ達に頼むに限る。

 あーでも、こうやって丸投げできるのも、もう少しの間だけか……コテツ達を解放しちゃったら、どうすっかなぁ。

 まーなるようになるか。


「それで、アスラが調べ物をしてる間、私達はどうすればいいかな? 食材の調達はもうちょっとするつもりだけど、時間的に余裕が有るわよ」


「うーんそうだなぁ……スズ達は、てきとうに討伐依頼をこなしつつ、この辺りの魔物の素材を集めてくれないか? 俺のほうは1人で十分だから、ノルンも一緒に行ってレベル上げといてくれ」


「承知しました。早く皆さんに追いつけるよう頑張ってきます」


 ギフトスキルの関係で、いつも一緒にレベル上げしちゃうと俺だけ上がり過ぎちゃうからな、たまにはこうやって調整しないとね。

 俺はこの時、そう軽く考えていた。



 この選択が間違いであったとは決して思わない。それでも結果だけ見てしまえば、甘かったとしか言いようがない。

 もっと自分を鍛えていたなら……そう思ってしまうような事態が迫ってきていたとは、この時の俺には知る由も無かった。




次回、物語内の時間が20日後に跳び、工房都市へ向かう予定です。

想定より話が進んでないので少々巻きで行きます。


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