こうして私は異世界逝きを決めました
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初投稿で小説書くのも初めてのため、拙い文章で申し訳ありませんが、これからよろしくお願いします。
「・・・さん、おーい、オッサン」
んぅ、あれ・・・どこだここ? 役所の窓口っぽいけど、なんで、こんなとこ座ってるんだろ?
たしか久しぶりの休日を満喫していたところで、役所への用事はなかったはずだし、何より、ここにくるまでの記憶がぷっつり途切れている。
「おい、オッサン! 早く反応しなよ、こっちも暇じゃないんだからさぁ」
「はっ、はい、なんでしょうか?」
目の前にいるいかにもチャラい青年に急かされ、どもりつつ敬語で返事をしてしまう俺、相変わらずの小心者である。チャラ男とかリア充とかなんか苦手だ。
「よーく聞けよぉ、ここは逝き先案内所の日本支店だ。オッサンは死んだから、これからの逝き先を決めんとならんのよ」
「えっ、私死んだんですか? えーっと、足ついてますよ……」
「説明すんのめんどいから、まずはここに手を置いてくれや」
俺が死んだとか意味わからんとか思いつつも、自分に足がついていることを確認してから聞き返したのだが、チャラ男はかったるそーに話しつつ、スマートフォンのような黒い機械を窓口の机にドンっと設置した。
手を置けとか怪しすぎるし、置くわけねーじゃねーか……ってあれ? 手が勝手に動いて黒い機械の上に置かれた、どうなってんの!?
「ふむふむ、まーそれなりに善良っぽいね、よかったなオッサン、天国逝けるぜ」
「あのぉ、今、手が勝手に動いたんですが……、もしかして死んだってマジです?」
「マジマジ、死んだ時の記憶が残ってると錯乱したりすっから消しちゃってるけど、直前までは残ってるはずだから思い出してみ?」
マジかー、しょーがないから真面目に思い出してみるかね。
えーっとたしか、久しぶりに取れた連休ってことで景気付けにパーッと一人焼肉としゃれこんでたんだよね、ハラミがめっちゃ旨かったわぁ、歳のせいかカルビは脂っこくてきついんだよね最近……ってこれはどうでもいいか。
「そこはロースだろオッサン」
「心も読めるんですね……。頑張って思い出すんで少々お待ちを」
余計なこと考える俺も悪いが、どうでもいい茶々入れやがってこいつウザ……いや何でもないです、ちゃんと思い出しますよ。
たしか飯食った後は、漫画でも買いに行こうかと本屋向かったんだけど、何買ったか思い出せないから、きっと本屋行く途中で何かあったんだなきっと。
そういや途中の交差点で、すごい可愛い女の子見たんだった、あれは可愛かったなぁ将来きっと美人さんになったはず! ってこれもどうでもいいか……いや待てよ交差点か、ここだなうん。思い出してきたぞ、交差点を渡ってる途中の話だ。
1台の乗用車が信号無視で突っ込んできたんだ、それで目の前の女の子が慌てて逃げようとしてすっこけたんだよ、あれは見事なずっこけだったなぁ、そして見事な純白だった!!
「うわぁそんなとこ見てるとか、マジ引くわ」
「ちょっ! 目が言っちゃうのはしょうがないじゃないですか!」
「まあ良いけどね、結果的にはその子助けてるわけだから」
せっかく頑張って思い出してんのに、ネタバレとか……ひでぇ。
どうやら俺らしくも無いことだが、車に轢かれそうな女の子を助けようとして死んだらしい、テンプレですね、ハイ。
言われてみれば思い出せるな、迫りくる車から助けるために、女の子を抱えたはいいけど、日頃の運動不足がたたってか重みで立ち上がれない俺は、とっさに勢いをつけて歩道側に突っ込んだんだ。
打ち所が悪かったのか、痛む背中に顔を歪まさせつつ「怪我は無かったかい?」って聞くと、真っ赤な顔で「……はい」とはにかむ女の子が可愛くて思わず抱きしめちゃったんだよね、プニプニだったなぁ。
「事案発生だよねそれ。このオッサンやっぱり地獄行きにしたほうがいいんじゃ……」
「すんませんしたぁっ‼ かんべんしてつかぁさいっ‼ ってあれ、死んだ瞬間の記憶って消えてるんですよね? 普通に助かってませんか、これ?」
「あぁうん、この時点ではな、オッサンが余計なことしてる間に、暴走した車から降りてきたラリった兄ちゃんに刺されてデッドエンドが正解だ。ププッ 恥ずかしっw」
まさかの超展開! そして俺の阿保さったらないね……。
「まぁでもその子は助けられたんですよね?」
「あぁ、オッサンは何度も刺されてるけど、オッサンが邪魔でその子のことは刺せなかったみたいよ」
「それなら良かったです。バカやった甲斐があります」
そっか、俺みたいなぱっとしないオッサンの命で子供を助けられたんだ、良しとしとこう。天国逝けるらしいしね! でも、天国って如何にも良さそうに聞こえるけど、一応確認しとくか。
「あの、先ほど天国逝けるって話でしたが、天国とか地獄とかってどんなとこなんですか?」
「あー、ちょいまちね、たしかこの辺にっと」
だいぶ基本的なことだと思うんだが、資料を探し出すチャラ男……。急に心配になってきたな、こいつに任せといて大丈夫か?
「あー、あったあった、それよりさっきからチャラ男、チャラ男とひでぇなオッサン。一応俺にも閻魔アポ……いや閻魔太陽って名前があるんだぜ」
途中良い淀んだのが少し気になるけど、太陽さんってことにしといてあげよう。
「すみません太陽さんでしたか、以後気をつけますが、心読まれ慣れてないので、少しはかんべんしてください」
「察してくれてサンキュな、んで天国と地獄だったか。えーっと天国は魂を洗浄して再利用するリユース工場で、地獄は魂を粉々にして作り直すリサイクル工場みたいなもんらしい。わかる?」
「なんとなくは」
「天国では夢見心地な感じで、徐々に記憶を消すから気持ちいいらしいよん」
逆に地獄逝きの人は洗ったくらいじゃ使えないから、粉々にして作り直すってことか……痛そうだな。真面目に生きてきてよかったわ。
「それでは、天国逝きの方向でお願いします」
「オッケー、天国は50年待ちだけどいいかい? それが嫌なら、地獄ならすぐに逝けるぜ」
「地獄は却下で、にしても天国50年待ちとかどうにかしないんですか?」
「日本は善人がけっこう多いから、天国満員でね拡張しようにも、どうせすぐ不用になるって予算が降りねーって親父が愚痴ってたわ」
不用になる……ね、知っても良いこと無さそうだし、突っ込まんどこ。にしても50年待ちかぁ行列って嫌いなんだよね。
「わかるわ~、行列に何時間も並んで飯食うとかでも耐えられんよね、んじゃ思い切って、記憶持ち越して異世界転生とかしちゃう?」
「そこんとこ詳しく‼」
「おぉう、ちっと待っててな。(急に元気になったな……)」
がさごそと、資料を探してくれてるみたいだ。にしても異世界転生か、来てるんじゃない?俺の時代が! もう俺TUEEEしてハーレムとか作っちゃうぜマジで!
やっぱり転生ってことはお約束の、実は死ぬ運命じゃなかったからとかいってお詫びにチートスキルとか貰えるんかな? 確認しとかねば!
「お詫びのチートスキルとかないから、運命なんて決まってねーしな。ひでぇ死に方するやつなんていくらでもいるんだ、それが運命とかだったらひでぇ話だろ」
「デスヨネー、おっしゃる通りでゴザイマス」
「まあ、記憶も引き継げるし、優遇くらいはあるからすぐに死ぬってことはねーと思うよ、魔物とかも居るけど、なんとかなるなる!」
聞く前に否定されちまったぜ、優遇だけかあ、俺けっこう迂闊だからな、あっさり死にそうな予感しかしないし、異世界転生はやめとこうかな。
運命については元から運命なんかあるわけねーって思ってたし、結局、運命の人なんか現れんかったしな。それにしても死ぬ運命じゃないなら女の子を助けた上で生き残る未来もあったのだろうか?
「えーっと、生き延びてたら7割くらいの確率で押し掛け幼妻ルートに突入するみたいよ」
「押し掛け幼妻ルートだとっ!!!!! どういうことだこのやろぉぅ!」
「どーどー、落ち着けオッサン、落ち着かないとうっかり地獄逝きにしちゃうかもよ」
くっ、この野郎、さっきからいちいち地獄逝きをちらつかせやがって。
まぁいい、落ち着け俺、クールに行こうか。クール、クール、クールだ。
「すみませんでした。少々、取り乱してしまったようです。そのルートってのは?」
「ルートな、運命ってのは決まってねーが、ある程度の予測はできるんよ。特に強制力が強い相手と関わった場合にルートに入るって言われてて、未来の方向性がある程度決まるんだわ」
なるほどゲームみたいだな、おっちゃんもギャルゲー大好きよ。
「オッサンの場合は、助けた相手が思い込みと押しが強い娘みたいで、16才になるまで清い交際を続けた後、16才になると同時に結婚って確率が高かったみたいよ。(まぁ、結婚する前もした後もデッドエンドルート満載の地雷女なんだけどね……)」
「くっ、失くした宝くじが、後から当たってたって聞かされた気分だ。いったい俺の何が悪かったんだ……」
「運動不足のせいだな、もっと鍛えてれば生き延びれてただろうさ」
バッサリ切られたぜ、まぁ自業自得ってことか、くぅでも惜しいなほんとに。
異世界行ってみるかなぁ、いやでもやっぱ安全に天国だろう……と悩む俺に、太陽さんがへらへら笑いながらとどめの一撃をはなってきやがった。
「はっはっ、異世界行っちゃいなよ、オッサンにもワンチャンあるかもよー。詳しくは言えんけど、異世界でもあるかもよ押し掛け幼妻ルート」
「ッシャァ、逝くぜ異世界!」
こうして俺の異世界逝きは決まったのである。まぁ転生したらしっかり鍛えようか、またルート直前に死にたくねーしな。
登場キャラ紹介
・オッサン:主人公、名前は付けません。次話で転生先で使用する名前が付きます。
・太陽さん:キラキラネームのチャラ男、本名は閻魔太陽(と書いてアポ〇ン)
7/24) 字下げ、句点、3点リーダーの修正を実施(20話まで完了)