第三話 〜パラレルワールド〜
『パラレルワールド』
平行世界。簡単に言えば異世界。
一度は聞いたことがあるはずです。
第13地球。
混沌で構成されている世界。
戦争の絶えることのない世界。
木々は枯れ果て、水は干からび、太陽の光は届かない。
そしてここに人間はいない。魔族と呼ばれる者たちの世界。
人はこの地球のことを魔界と呼ぶ。
そしてこの魔界を治めるのが『魔王』
しかし先代魔王『スガイ・バルダゴグ・ラ・キュベリン・ガリバルディ4世』
一時は戦乱を鎮めたが、3865歳(人間界での21歳)の若さにして他界してしまう。
そして第890793魔界大戦が始まった。
シィは弱小貴族、ドゴール家の長女として生まれた。
そしてシィが1926歳(人間でいう10歳)の時に父、グラバル・ドゴールが野戦にて戦死。
ドゴール家にはシィのほかに子はなく、シィは頭首となる。
シィは全てにおいて他に大差をつけるほど秀でていた。
そして頭首になって3年で魔界を統一。
しかし最後の戦いで親友を殺してしまい、それから表に出ることはなくなった。
うわべだけの魔王となったのである。
シィが表に出ることがなくなると、好機と次々に戦争が始まった。
疲れた魔王、シィは13地球をはなれ、第6地球。
渡たちの地球へと来たのである。
シィのいなくなった魔界では、
シィをおそれ、戦をしなかった者たちも戦を始め、第890794魔界大戦が始まっているであろう。
「こんな感じだな。魔王と威張ってはいるが、うわべだけの魔王だ。笑いたければ笑うがいい」
「笑わないよ。小さいのにすごいと思った」
「すごくはない、魔界では我よりも小さいのもいる。それに我は1930歳だ」
「それでも。」
「我は何人も殺しているんだぞ。子供も。」
「まぁ、魔界だし」
「変わった奴だな。」
「よく言われる。」
「・・・・・・」
「そういえば、今日の晩御飯なんだろ。腹減った」
そう言って時計を見る。
7:24
「そろそろ帰ってくるはずだけどなぁ」
「ならばオマエが何か作れ」
「・・・・無理だよ。」
と言いながらも一応料理はうまい渡である。
いつも母がいるわけではないし、そういう時は自分で作っていた。
ただメンドクサイのである。
「いいから作れ。魔王を待たせるな」
「なんだよ。さっきまで、うわべだけの魔王とか言って落ち込んでたくせに」
「落ち込んでなどいないわぃ。それに、腐っても魔王だ。オマエ一人殺すくらい造作もないことだ。」
可愛くないな、ったく。
「・・・・しょうがないな。この年で死にたくないからな」
ぜってぇ美味いって言わせてやる。
それとも、めっちゃまずくしてやるかな?
んでもそんなことしたら、ホントに殺されかけないな・・・・・。
そんなことを考えながらキッチンに立つ。
「よし。まずは材料材料・・・・・。」
冷蔵庫を開ける。
空っぽ。
「な!なんもねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
いやいやいやいやいや、こんなことは初めてだ。
いっつも買い置きしたあんのに。
「買ってくるか・・・・」
こうなってはしょうがない。コンビニ弁当でも買って食べるか・・・・・・・。
「シィ、材料がない。コンビニで弁当買ってくるから、何がいい?」
「コンビニ弁当?なんだそれは。」
知らんのか。
「まぁだからコンビニの料理だよ。」
「・・・・却下する」
「な、なんでだよ。なんも食わない気かよ。」
「オマエの料理がいい。」
むぅ・・・・・。
「でもそれじゃぁ遅くなるし・・・・・」
「かまわない。」
「分かったよ。じゃぁ材料買ってくるから。」
そう言って部屋へ戻り、財布を持って玄関へ行くと・・・・
シィが仁王立ちしていた
「我も行く」
・・・・行くって、
「その格好で?」
鎧を着けて外を出歩くなんて
「別によかろう」
「よくない。ってか俺が恥ずかしいから、母さんの服でも借りていけ。」
「千紘のでは大きすぎる。」
「・・・・・はぁ、じゃぁ俺の着ろよ」
ぶっちゃけ嫌だったが、シィの私服姿ってのも見てみたいな。
そして2,3分後、
「うむ、では行くか。」
・・・・・・・・・
やべぇ、ものすごい可愛い。
でもそんなこと言えるはずもない。ってか言ったら負けのような気がする。
「よ、よし行くか。」
我ながら情けない。
でも改めて感じた。
こいつ普通に可愛い。
そして歩くこと5分、『スーパー芳野』に到着。
この店は従業員のほとんどが芳野という苗字だと言うことで有名なスーパーだ。
しかも、みんな優しい。かならずおまけをつけてくれる。
「さて、今日は何にする?」
何でも良かったため、そう聞くと。
「オマエの好きな奴でいい」
そういうのって一番困るんだよなぁ・・・・・・。
今なら、子持ちの主婦の気持ちがわかるような気がする。
じゃぁここはメジャーに、
「カレーにするか。」
「よく知らんが、いいだろう。」
む、なんか偉そうにしやがって。
「作ってもらうんだから、少しくらい偉そうな態度やめろよ。シィの作んないぞ。」
「ふん、そんなことしてみろ。オマエの命はなくなるぞ。」
・・・・まぁそりゃそうか。
そんないきなり態度を変えられても、こっちが拍子ぬけしちゃうしな。
「はいはい、分かりましたよ」
まずは野菜だな。
「おい、これはなんだ?」
シィは人参を片手に小首を傾げる。
う、だからそれはやめろ。可愛いから!
[おい!聞いているのか!!」
「大声出すな。それに俺はおいなんて名前じゃない。渡だ。」
「じゃぁ渡。これはなんだ。」
ありゃ?えらい素直だな。また殺すだの言われるのかと思っていたのに。
「人参だよ。それも使うから持ってきて。」
「うむ。任せろ。」
そしてちょこちょこ小走りしてきて、カゴに入れる。
や、やべぇ・・・・それ反則、ってか可愛い。
「あー、後そこの丸っこくて黄色いのと、そこの先とんがった茶色いのも。」
もう一回みたいと思ってついそんなこと言ってしまった。
我ながらきもちわりぃ。
「うむ。」
・・・・・・。
シィはその場で手を伸ばす。
するとジャガイモ、たまねぎがシィの手の上に、重力なんか無視して飛んできた。
「まったまった!外で魔法を使うな!!」
「うるさいぞ、渡。さっき大声出すなといったのはどこのどいつだ。」
周りの人たちは白い目で俺を見ている。
「・・・・・・・・」
はぁ・・・・・
「いいから外で魔法は使うな。」
「無駄に精神力を使うなってことか。そうだな。」
・・・・・ちょっと、いやかなり違うけどまぁいいか。
それから肉、カレールー、牛乳をカゴに入れてレジへ。
「あら、わたちゃんじゃないの。」
「こんばんわ。」
芳野のおばちゃん。本名は芳野信子。気さくでいい人だ。
「あら・・・・ははぁ、今日はカレーね。そっか、そっか。」
・・・・・なんか嫌な予感、いや悪寒が・・・・・・・・。
芳野のおばちゃんは俺に聞こえるくらいの小声で、
「いつのまに彼女なんてつくったの?しかも可愛いじゃない。応援してるわよ〜〜」
そう言っておばちゃんは、俺の手になにか握らせた。
手を開く。
キャンディー
・・・・いやいや、俺を何歳だと思っているんですか。嬉しいけど。
「ほら、彼女も。」
そう言ってシィにもキャンディーを握らせる。
「・・・・? 彼女ってなんだ???」
俺に聞くな。
「ふふふ、隠さなくてもいいのに♪」
「????」
まぁ、メンドクサイからスルー。
レジをすませ、袋に詰めて店を出る。
最後に「今度は子供もつれてきてね♪」なんて言ってたが。
まぁ気にしないことにしよう。
ってか勘違いも甚だしい。第一彼女じゃないし。
まぁもしもシィが彼女だったら、そりゃぁ嬉しいけど・・・・・・・って何言ってんだ俺。
そして家に帰還。