第十二話〜酉島の性〜
「嘘・・・・だろ・・・・・?」
「あぁ、そうか。これを殺さねば、本当の魔王ではないな」
そう言って、校庭だった場所に降りてくる。
「や、めろ・・・やめろ・・・・やめろおおおおおおおおおお」
恐い。だけど、今から成されようとしていることの方が、もっと恐い。
自分の相手への、畏怖の感情を無理矢理に押し付け、走る。
すると少し困った風な顔になり、
「・・・民間人に手を出すのは、我は好きではない。すぐここから立ち去るがいい」
変わらぬ、心に直接話しかけるような喋り。
その喋り方は、よりいっそう恐怖を煽った。
しかし、足は止まらない。
奴は笑った、
「ふん・・・・忠告はした。それを無視するということは、死んでもなにも言えまいな?」
そして手を、前に掲げる。
その手には、黒い光の塊。
魔法が分からない、渡にも分かる。あれは、ヤバイ。
「くそが!」
足は止まってくれない。
なぜ?
分からない。理屈じゃない。
「人間風情が我に逆らうのは久しぶりだ」
そう言い、塊を飛ばす。
ヤバイ・・・直撃コース・・・・!!
「う、ぐぁ・・・!」
食らった。モロに、体に・・・・・ってあれ?
「痛く・・・・ない・・・・・・・?」
掠り傷も、煤さえもない。
「なんだと・・・・・?」
余裕の笑みから、驚愕の混じる顔に変わる。
食らわないと分かったら、やることは一つ!!!
「うおおおおおおおおお」
走る。
大事な人の場所へ。
「くっ・・・!」
呻くような声をだし、どんどん塊を飛ばしてくる。
しかし、直撃した感じはするものの痛みもなにも感じない。
「・・・それは、まさか・・・。そうか、そういうことか!!!」
再び笑い出した。
「はははははは。まさか、お前と接触していたとはなぁ!!」
すると、奴の姿が消えた。
と思った瞬間、俺の目の前に現れた。
拳が繰り出される。
俺は、避けられず顔にモロ食らう。
「な!?・・・・かはっ・・・・!!」
呼吸が・・・できない・・・・。
渡の目の前に、また瞬間移動。
そして、青年は耳を凝視する。
「やはりな。お前は、酉島の人間か」
「どういう・・・こと・・・・だ?なんで・・・・俺の苗字・・・を・・・・・?」
苦しかったが、なんとか声を絞り出す。
すると、青年は勝ち誇った笑みになり、
「ふん、知らぬで育ったか。まぁ無理も無いか。子供には、普通に生きて欲しかったらしい」
なんの・・・ことだ?
「冥土の土産だったか?最後に教えてやる」
「・・・・?」
「お前は、魔族だ」
理解できない。
俺は生まれも育ちも、ここ東拍川のはず。
「どういう・・・ことだ・・・?」
「やはり、知らなかったか。知っていたら、普通に暮らせるはずない」
一度言葉を切る。
「お前の父は、元魔王だ」
理解不能な言葉が、次々に流れ込んでくる。
「戦いに疲れ、人間界に逃げ込んだ哀れな魔王だ。そこの奴と同じようにな」
なんなんだ!どういうことだ!!
「そして、人間界で人に恋をする。魔王の座を捨て、人間界で生きていくことを決める」
父さんが・・・魔王・・・・?
「魔王返還の時のあの言葉は、爆笑ものだったな」
思い出し笑いでもしているのか、口元が緩んでいる。
「『私は酉島忠幸。人間だ。もう魔王などではない』。ふふふ、今でも笑えてくる」
「そして人間界で、コピーを使い普通に暮らし始める。そして、結婚して子供を作る」
「それがお前。酉島渡だ」
「ふざ・・・けんな・・・!信じられるか!!そんなこと!!!」
「信じようが、信じまいが関係ない。ここで死んでもらうのだからな」
笑みを崩さぬまま、
「それと、奴もついでに殺していくか。愛人の目の前で、無様に」
「な・・・!?」
「ふふふふふ、楽しみだ。では、まずは子供から死んでもらおうか!!」
瞬間移動。
「ぐぁ・・・くっ・・・・・・」
腹に拳がめり込む。
息が苦しくなる。
「これで最後・・・かな?」
最後まで笑みを崩さず、その手を横に突き出す。
そこに、次元の歪みができ手が吸い込まれる。
戻ってきた手には鋭い歯の剣。
剣を振りかぶる。
俺は、動けない。
「あぁ・・・・俺、死ぬのか・・・・」
「大丈夫だ、痛みは一瞬だからな」
そう言い、刀を振り下ろす。
目を閉じる。
ガキッ!!
鳴り響く金属音。
あれ・・・俺・・・・生きてる?
目を開けると、そこには目の前で止まる刃。
「・・・・回復が早い!?・・・・・・邪魔しないで欲しいのだが」
青年は一瞬驚愕に目を開くが、すぐに笑みを取り戻す。
「それは無理な相談だ。渡に手を出すことは許さん」
そこには最近見慣れた、少女の顔。
「負けたことを忘れたか?我には勝てぬ。貴様の鈍った力ではな」
「さぁな。だが、負けるわけにもいかぬのだ」
そういい、シィが切り払う。素手で。
「ふん・・・・今度は完全に殺してやる。そして魔王の座をもらう」
「お前のようなカスにやってたまるか」
笑みが消える。
「渡・・・帰れと行ったはずだが」
「無理だよ。俺は、シィと一緒に帰る」
「危ないから、下がっていろ」
「・・・・分かった。いても足手まといだもんな」
俺は離れる。
「さて、本気でいく。すぐに音を上げるなよ?つまらんからな」
「・・・・生意気なガキが」
シィの髪の色が変わる。
「これは・・・・。ふふふ・・・・・」
その色は、漆黒と真紅が入り混じる、奇妙な色。
「スタイルか・・・・古風な」
そう言い、青年の姿が崩れる。
右腕が4倍ほどに大きくなり、獣のような爪が生える。
美少年で腕が怪物。気持ち悪い。
「『死人の舞踏会』」
怪物が声を発する。すると、地面から武装した骸骨が湧き出てきた。
「さぁ!踊り狂え!!」
骸骨がいっせいに動き出す。
シィは、微動だにしない。
「あ、危ない・・・!」
渡が叫んだ。
骸骨が群がり、切りかかろうとした瞬間。
バラバラ・・・・。
骸骨が切り刻まれ、堕ちる。
「なん・・・だと・・・・・?」
「ふん、どうした?」
シィは顔に笑みを浮かべ、言う。
そして、飛び上がる。
「ちっ!『白騎士』」
怪物は幾重にも骸骨の層を張り、防御体制をとる。
シィは骸骨に突っ込む。触れる前に、骸骨は欠片となって崩れ落ちる。
「なんだ・・・これは・・・・・」
「我は魔王。シィ・ドゴール・ラ・ヴィシィー・キュベリン・ガリバルディ5世」
「さらばだ、自分の青さを嘆き散るがいい」
シィと怪物の体がすれ違う。
その瞬間に、怪物の体に亀裂が入る。
そして、崩れ落ちた。
「・・・・終わった・・・・のか・・・・・?」
「うむ、終わった。心配かけたな。それにしてもあっけない」
「それより・・・これは・・・・・」
焼け野原。校舎は半壊している。
「うむ、復元を使う。精神力が足りぬから、少し手抜きになるが・・・」
そう言って、シィの髪の色が青く変わる。
そして、シィの体から黒いオーラが放出。
視界が真っ黒に染まる。
オーラが霧散し、視界が開いて見てみれば。
校舎は元の姿。
校庭にはちゃんと茶土と木。
元に戻っていた。
「ふぅ・・・よかった・・・ってシィ!?」
シィの体が崩れ落ちる。
俺はなんとか抱きかかえる。
「疲れた・・・・少し寝る」
そう言い、シィの目が閉じられる。
「おやすみ。魔王様」
今回の話はどうでしたか?
今回は前回の続きです
それにしても渡のお父さんが魔王なんて驚きましたね
そう言えばまだ全然出てきてませんね
なんとこの後に…………
危なく言うところでした
実はこの作品はもう完成しています
そして、今はこの作品の第二部を執筆しています
投稿した時はよろしくお願いします
ではでは、もう少しで完結ですが、これからも『となまお』をよろしくお願いします