第十話 〜ガチ鬼ご〜
疲れた。
今の俺の気持ち。
朝から連行されそうになり、昼には俺対男子生徒の純粋な意味での鬼ごっこ。
捕まったら地獄行き。
俺はどうにか生き延び、今は放課後。
本日第2回目の鬼ごっこが開始された。
俺はホームルームが終わると同時に、荷物を入れたカバンを持ち、全力ダッシュ。
また追われるだろうと思っていたからだ。
案の定、血走った目をした奴らは俺から数秒送れて、教室から走り出てきた。
階段を2番飛ばしで駆け降り、玄関へ。
靴を取り、素早く履き替え外へダッシュ。
そこで待っていたのは、男子生徒。
そうか・・・・俺たちよりも早くホームルームが終わって待ち伏せしてたな・・・・・・。
「どいて・・・・くれないよね」
「「「「もちろん♪」」」」
恐いから満面の笑顔をやめてください。
「ちっ」
俺は正門はあきらめて、裏門へダッシュ。
「・・・ここもかよ」
裏門も男子生徒で埋め尽くされていた。
「さぁて、大人しく捕まってくれないかな?」
「そうそう。あぁ、大丈夫。痛みは感じさせないから、一瞬で殺ってやるから」
「せめてもの情けだ」
だから、満面の笑顔で言うな、恐い。
どうしたことかな・・・・・。
仕方がないな。
覚悟を決めるか・・・・。
大群に向かって全力ダッシュ。
俺の挙動に、少し隙ができる。
そこを見逃さず、サッカーで鍛えたフェイントを駆使し、なんとか大群を脱出。
しかし追っ手が数人。
どんどん追っ手は増えていき、数十人にも達した。
「なんで俺が・・・・」
東拍川市、鬼ごっこ開始。
すぐさま家へと向かったが、家の前には十数人の警備がいた。
「夜まで逃げるしかないか」
呼吸を整え、逃亡を開始した。
「・・・・は、はぁ、はぁ。なんと、か、逃げ延び、た、」
今の時刻、午後6時半。
家の前の警備はいなかった。
流石にあきらめたらしい。
「た、ただ、い、ま」
ゼェゼェと荒い呼吸をしながら、なんとか言葉を搾り出す。
台所へ向かい、水を一杯。
「ふぅ、はぁ、はぁ。こんな、生、活が、続く、のか?」
俺は生きていくことができるのだろうか。
「遅いぞ、渡。ほら、座れ」
「あ、あぁ。はぁ、ひぃ。ごめん、すぐメシ、つくる、から」
「飯ならできている。我が作ってみた。案外、おもしろいものだな」
「・・・え?・・・・ふぅ。家事しないんじゃなかったっけ?」
やっと落ち着いた。
「料理だけしてやろう。明日からは弁当もつくってやる」
「・・・・?」
「な、なんだその顔は!食わせんぞ!!」
「あ、いや、ごめん」
「ふん!」
・・・まぁいいか。俺、結構料理好きなんだけど・・・・・・。
「〜〜♪」
鼻歌交じりにキッチンから出てきた、エプロン着用のシィの手には・・・・・・。
黒いなにか。
「えーっと、これは?」
「卵焼きに決まっておろう」
「いや、もう卵の原型を留めてないとか辛そうな臭いがするとか、色々言いたいことがあるが・・・」
「おまえ、料理初めてだろ」
「うむ。だが、結構うまいぞ」
どんな味覚してんだおまえ。
「どう見ても、焦げてんだろ」
「ふん、これくらいが一番おいしいのだ」
「とりあえず食え」
覚悟を決めるか・・・。
「うまい・・・・・・」
「そうだろう。たくさん食べるがいい」
この卵焼き、コゲコゲで不味いはず・・・・・・。
嘘だろ・・・?
「なんで・・・だ・・・・・」
何回食べても、それは絶妙な焼き加減の時の味。
味付けも完璧で、言うことなしだ。
「ふん、我を誰だと思っているのだ」
胸を張って言い放つ、魔王(エプロン装備)。
「いや、・・・だが・・・・・・・」
俺だって料理は得意だし、卵焼きくらいうまく作れる。
が、この卵焼きは俺の作るのなんかとは比べ物にならない。
まさに天と地の差だ。
かなりの敗北感に苛まされる。
「「ごちそうさまでした」」
「んで、弁当作ってくれるんだっけ?」
「応。期待していろ」
そう言い、風呂に入る準備を始めるシィ。
しばらくして、
「渡、でたぞ」
「ん、分かった」
タオルを頭にのっけて、少し上気した顔のシィ。
いや、無防備にもほどがあるだろ・・・・・。
そちらから顔をそらし、風呂の準備。
「渡」
名前を呼ばれて、振り返ると・・・・。
目の前にシィの顔があった。
まさに目の前。10cmもないほどの距離。
「うわあああああ」
俺は反射的に飛びのく。
シィは不機嫌そうな顔になり、
「なんだその反応は」
「いや、そんなこと言われてもだな・・・」
「まぁいい。それよりも、だ」
真剣な顔になる。
「なんだ?」
「・・・牛乳買っとけと言ったであろうが!!!!!!!!!!!」
近距離で大声出すな、つばが飛ぶ。
「あぁ、忘れてた」
「今すぐ買ってこい!」
「分かったよ・・・・・・・・」
俺はわざわざ、牛乳を買うためだけにスーパーに行くことになり、
「ただい・・・ま・・・・・」
帰ってくると、当の本人はぐっすり。
「おまえなぁ・・・・・」
買ってきた牛乳を冷蔵庫に入れ、風呂に入る。
「まだ寝てるのか・・・・」
風呂から出ても、シィはまだ寝ていた。
どうするか。
ここで寝てたら風邪をひくだろう。魔王は風邪ひくか知らないが。
つまりベッドで寝かせなきゃいけないわけで。
起こそうとも思った。
しかし、寝顔をみるとどうにも起こすのをためらわれる。
ならば運ばなければいけない。
そして今この家にいるのは俺だけ。
つまり、俺が運ばなければいけない。
「しゃぁないか・・・・」
シィを持ち上げる。
その体に見合った、ほどよい軽さ。
柔らかい感触。
(や、やばい。なんとか保て、俺の理性!)
自分を叱咤し、なんとかベッドまで運ぶ。
それにしても、やっぱり女の子なんだな・・・・。
ってダメだダメだ!意識するな!!
しかし目はシィの方へ言ってしまう。
無邪気な寝顔。一緒に住んでる、俺しか見れない寝顔。
思わず見惚れてしまう。
しばらくして、思考が復活。
「あああああ、俺はなにしてんだ」
そういいながらも、目を離すことができない。
「・・・・寝るか」
流石に眠い。明日も朝から、俺を地獄からの使者が待ってるんだ。
なんとか抗うために、今日は寝ておこう・・・・。
そう自分に言い聞かせ、床の自分の布団にくるまる。
目を閉じる。
すると、心地よい眠気が襲ってきた。
そうとう疲れてるんだな、俺。
明日も、生きて帰れるといいな・・・・。
そして、数秒して渡は堕ちた。
リアル鬼ごっこより、リアルで恐い鬼ごっこでした
ホントに皆ガチです
ここは少ないですけど気にしないで下さい
『俺って神!?』と並行しているので大変です
次の更新は1週間後くらいなのでどうぞよろしくお願いします