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異なる世界の機械人形  作者: あまつやま
2章 異なる世界の従者人形
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番外 人形の独白

我が名はラジ子。マスターのしもべです。

今でこそこんな人形の姿ですが、以前はもっと違う姿でした。


産まれた直後の事はよく覚えていません。

ただ、目の前に眠る巨大な人物が、私の主人であるという事だけはよくわかりました。

ただ、あの時は私も単純な思考しか行えず、まるで動物のようでした。

私は、マスターへの奉仕しか考えていませんでした。

私に望まれた事はすなわち外敵を打ち払う事。

今にして思えば、残りの役割は食糧と水を確保する事でしょうか。


マスターのスキルがレベルアップした時も、

その役割に特化した体を無意識に望んだのでしょう。

私の体は巨大になり、それは私の核たる魔石の巨大化を伴った。

その副産物として、言葉を操るだけの知能を得ました。


大きくなってからの記憶は、かなり鮮明に残っています。

と言っても、結局は外敵を倒し、水と食料を確保するだけの日々でしたが。

それでも、マスターが何を望むか、私は何をすれば良いか。

私は副産物であったはずの知能を使い、色々と考え始めていました。

幸いあのころの体は眠る必要など無く、考える時間とマスターを眺める時間は無数にありました。


そしてついに、そんな日々にも変化が現れました。

マスターは、ついに人里へ辿り着いたのです。

初めて町に入った時、マスターは涙を流していました。

その光景は、感情の未熟な私にとっても大変な衝撃でした。

それほどまでにマスターは人恋しかったのかと。

そして理解しました。

マスターには、食糧と水だけでなく、人間が必要だったのだと。


その後、私はあの赤いスライムとの戦いで破損しました。

ダンジョンからの帰路では、

もはやマスターの役に立てないのでは、という思考も浮かびました。

ですがその思考はすぐに覆されました。

その晩、マスターは私に改良案と称して一枚の図を見せました。

そこに描かれていたのは、失った炎の力と人間としての姿を得るための図でした。

それを見た時、私は内心狂喜しました。

それは、より私が必要とされている証だったから。

外敵を打ち払い、食糧を確保し、人のぬくもりを与える。

それが、私の役割なのだと。


そして今日、私とマスターの奮戦でスライムを倒し、

ダンジョンにも新たな道が開かれました。

今、私のすぐ横で、マスターは眠りについている。

よほど疲れたのでしょう。

私も、この体になってから少しだけ眠りというものが必要になりました。

そういう意味でも、安全な寝床の確保は急務でした。


ダンジョンの先は、進めば進むほどマスターの環境を良くするでしょう。

その為にも、私も明日の英気を養わなければなりません。

マスターの外敵を打ち払い、糧を稼ぎ、そして人のぬくもりを与えなけなければなりません。

そうして、私の意識は途絶えた。




翌日。

マスターは目覚めると、大声で騒ぎだした。


「うぉわぁっ!?」

「どうしました、マスター」

「なんでこっちで寝てるんだ!そっちにもベッドあるだろ!」

「遠慮せずとも良いですよ」

「遠慮するわ!あとなんで裸なんだ!」

「服が皺になりますので」

「服よりもっと別の所を気にしてくれ!」


……怒られてしまいました。

役割の一つを果たす、良い方法だったのですが。

人間とは難しいものですね。




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