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2話

「三熊先生の呼び出しに嬉々としてやって来たなんとも教師思いの十六夜でぇーす。失礼しま~す」

なんとも失礼極まりない文句と共に足で職員室のドアを開ける(あぎと)。教師たちはなんとも不満そうな面持ちで咳き込む。そんななか申し訳なさそうにたち上がる一人の男性がいた。彼が三熊静州(みくませいしゅう)だ。

「不躾にも程があるのではないか十六夜」

「そんな急いで駆けつけたのに。私とはおふざけだったのですか!!オロロ」

「なんだその演技は。気持ち悪いぞ十六夜。お遊びはいいからついて来い」

三熊は返事も聞かずに歩きはじめる。顎も逆らわずそのあとを追う。

数分も歩いてないだろう。目的の場所についた。そこの名前は教育指導室。簡単に言えば説教部屋だ。

「で、今回呼ばれた原因はわかっているか?」

席に座ると三熊は開口一番にそんな台詞を投げる。

「わかっているつもりですが、納得はしていません」

顎は座ることなく、おどけた口調でそう言いのけた。

「とりあえず、座れ。立たれているとやり辛い」

「わかりました」

顎はゆっくりと席につく。教室の木製のものとは違い、革ともこもこの綿で出来たこの椅子は座るとスゴく沈む。何回体験してもこの感触にはなれない。

「とりあえずはだ。お前が気にくわない理由を聞こう」

「俺に非はないから」

これ以上ないってくらいきっぱりとした発言だ。思わず三熊も絶句してしまった。これほどまでにはっきりと言い切られると気持ちのいいものに感じられるほどだ。

「話はこれだけですか?なら教室に戻りますけど」

「まて。まだ、話の途中だ。そもそも話にならん」

誰が上手いことを言えと。

内心で、三熊の少し自慢気の顔に向かってあれやこれやと思いつく限りの罵倒をあびせたが、それで現状がかわるわけでない。諦めて顎はもう一度椅子に座り直す。

「はやくしてくださいよ?俺ははやくお昼にありつきたい」

「それはお前次第だ」

三熊は1枚の用紙を顎に差し出す。

「これはお前が前回のテストで出した答案用紙だ。すべて、計算はあっている。しかし、答えはすべて間違えている。おかしいとは思わないか?」

「ただの計算間違えですよ。よくあることではないですか。それが今回は偶々すべてそうだったというだけです」

「嘘を言え。この回答はすべて素数の塊だ。素数の順番に直せばすべての回答は正解になる。よくもこんなトンチをきかせるものだ」

顎は三熊のこの鋭さが苦手だ。数学教師を馬鹿にするための暗号を国語教師に解かれたのだ。少し苛立ちを覚えてしまう。

「しかし、それも偶々といえばすむ話ではないですか?」

「ああ、そうだな。だが、お前もそこまで屑ではないだろ」

「……」

「もう戻っていいぞ。午後の授業には出ろよ」

三熊の声に無言で返し、教室への帰路につく。無言で無表情であるく彼の背中からはその表情とは真逆に怒気が溢れだしていた。

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