月曜病
月曜日。
恐らく日本の大多数がこの日を待ち望んではいないだろう。「月曜病」という名前もあるくらいだ。
だからだろうか。俺こと輿水和志の高校二年の生活が始まり三週間ほど経ったとある月曜日、その日は少し悪い目覚めだった。
「……頭痛か?」
少し憂鬱であったこと、それとは他に何か悪夢のようなものを見ていた気がしたが、ほとんど覚えていない。しかし、それが今日の不調の原因なような気がした。それに加え、何か今日は不吉なことが起こるような、悪い予感がする。
「そういえば、今日は小テストがあったな」
カーテンを開けた。俺の気分に反比例するがごとく、差し込む日の光は明るい。
とりあえず、マイナスなことは頭から取り払う努力をしよう。週初めからそんな気分ではやっていける気がしないし。
ひとまず自分を鼓舞して伸びをしていると、部屋のドアが開く音が聞こえた。ノックの音もなく、それでいて、少々乱暴に。
「おい、兄貴。……起きているみたいだな」
生意気な声に振り返る。部屋の入り口には黒のセーラー服姿の妹が立っていた。
妹は中学三年生であるはずなのだが、その、ものの見事に染め上げられた明るい茶色の髪は、中学の校則に違反しているのではないか? 確か、俺がまだ在籍していた時は校則違反だったような。
そのように妹に対して断言したいが、最近は何を言っても無視の一点張りであり、それを言うことはただの肉体浪費に成り下がってしまうだろう。ただでさえ、今日は調子が悪いのに。
「おはよう、詩美」
「……」
ほら、この通り。
妹――輿水詩美はなんの反応も見せなかった。
「お母さんに呼んで来い、って頼まれて読んだだけだから。……勘違いするなよ」
俗に言う「ツンデレ」というものの定型文的な発言だが、詩美に関して言えば、これは照れ隠しではなく、恥じらいもない、ただただ本心からの言葉だろう。何より最後はドスを利かしている。伊達に俺はこの十四年間、この生意気な妹の兄貴をやってきたわけではない。
「わかった、わかった。着替えてからすぐ行くから」
手をひらひらさせ若干投げやりな口調で言うと、詩美は無言で去っていった。トントンと階段を下りる音が聞こえる。
思わずため息が出た。詩美が露骨にあのような態度を取り始めたのは、ちょうど中学に上がって数か月か経った時、つまり俺が中学三年のときからである。その時のある出来事が原因であろうと俺は確信している。その前までは、普通に話もしていたわけで。
俺は掛けてあった学ランに手を伸ばした。ふと時計を見ると、時刻は七時になる十分前であった。