表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あっちに行きな! こっちに来るな!  作者: 河海豚
第一章 不思議な少女
13/49

いつもの放課後

「岡ちゃん、和志のことマークしっ放しだったな」

「ユートの言うとおりだね。和志、何かしたの?」

「……何もしてないよ」

 六時限目が終わると、ユートと優実花が集まってきて、俺の周りの席に座った。普段ならば、この後担任の話や次の日の連絡をする時間があるわけであるが、今日の最後の授業担当が担任の岡部だったためない。岡部は自分の授業が最後にあると、次の日の連絡は朝にすることが多いからである。生徒を早く帰らせるためでもあるし、岡部自身仕事が少なくなるということもあるのだろう。確か、去年もそうだった。

 そのため、周りを見回すと帰る準備をしている人や、授業後の部活に行く準備をしている人が多いのだが、それでも少し話をしてから帰るのが俺達三人の習慣だった。

「ユートと優実花は早く行かねえの?」

「えっ、どこに?」

 優実花は首を傾げた。

「いや、どこに? って部活だよ、部活」

 俺の言葉に、ユートと優実花は互いに顔を見合わせた。

 ユートと優実花の二人は、部活に入っている。しかも、同じバスケ部である。ユートは一目見てわかるようにガタイの良さから攻撃・防御力の高さを、優実花は機動力の高さを生かし、それぞれ活躍している。それも二年に上がった今は、両者共にチームの中核的存在となっている。

 ちなみに、俺は部活には入っていない。

「……何か変なこと言ったか、俺」

 二人はしばらく顔を曇らせ、沈黙を保っていたが、ユートが口を開いた。

「そのことなんだけど……、和志、またバスケやるつもりはないか?」

えっ……?

驚く俺を見て、ユートは続けた。

「いや、今日は新入生向けの体験入部が最後の日だし。別に、二年生が見学しても大丈夫なんだからさ。顧問もお前のことを勧誘しろ、ってよく一年の時俺に言っていた。和志なら他の連中だって納得してくれるだろうし。なあ?」

 言葉を探しているように、何度も突っ掛かりながらにユートは言った。それに同意したように、優実花は頷く。

「ユート、前にも言ったじゃん。俺は戻るつもりはない、って。去年、入学した時に誘われた時も嬉しかったけどさ、これは、あの時俺が決めたことだから」

 俺は席を立ち、鞄を肩に担いだ。

「でも、それじゃあ、ふみ……」

「とにかく! ……もう行こうぜ。ユート達遅れちまうだろう? それを俺のせいにされるのも、その、ほかのバスケ部の奴らに悪いしさ」

 俺は無理やりユートと優実花を連れ立った。今、ユートが何を言いかけたかはわかる。俺の詩美とは違うもう一人の妹――文香ふみかのことを言おうとしたのだろう。普通なら今、小学六年生で俺と詩美がランドセルを背負って通っていた学校に行っているはずだった。本当に普通だったら。俺が、あんなことをしでかさなければ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ