第陸話【昼と夜と】
主人公たちと対する者達が出てきます
高速道路を走る一台黒い車。車の後部座席には、嵯峨・天喰・射延・播草の順で座っていた。天喰は横にいる二人に挟まれるように座っていたのが、我慢ならなかったのか。
「狭い!!何で大の大人が座ってるんだよ!?」
「そんな怒んなや天喰、おとなしくしとき」
文句を言う天喰を隣に腕を組みながら座っている、射延が落ち着かせる。それでも天喰はふてくれていた。狭く感じるのは車が小さいからではなく、体格の良い男が二人も座っているためだった。嵯峨と播草は中年にして、背が高く兎に角デカい。仕事柄なのかは定かではないが、そして何よりも変人中の[変人]。
「なぁ、いつ着くんや?シノ」
身を乗り出して運転席にいる東雲に射延は質問した。因みに[シノ]と言うの鳥兜が命名した、東雲の愛称。鳥兜は何かと名前を捻って愛称を付けることが趣味の一つだ。バックミラー越しに東雲は後部座席を見た。
「そうですね……後、10分程で目的地に着く予定です」
東雲の答に、もう少しか…射延はと呟いた。
もう少しで目的地に着くのを聞いたため、嵯峨は播草に命令をした。
「播草、準備しとけよ」
「分かった」
穏やかに返事を返した。もう少しで依頼を始めるのか…内心天喰は呟いた。ふと、鳥兜が頼まれた依頼内容を思い出した。内容はこうだ、ある集団を殲滅すること。この国、日本にテロ予告をした理由で国の偉い者に頼まれたと言っていた。
正直の話、自分達には余りにも関係のない依頼。天喰だけはどうしてもやる気が起きなかったのだが、鳥兜からの依頼として了解した。天喰にとって鳥兜は育ての親だ、だから恩を返すためにしっかりという事を聞く。鳥兜自身は恩を返すことなど望んではない、天喰も家族同然なのだ。真鍮者達も例外ではない、嵯峨達も鳥兜には返しきれない恩がある。だからこの依頼は[鳥兜のために]成功させる、心に深く刻んでいる。
じっと天喰は窓の外の空の景色を見つけた。景色が段々と変わっていき、高速道路を降りたらしく都心に車を走らせていた。
♯䕃
人によって価値観は違う―――――――――――。
例えば、争いが起こったとしよう。どちらの国も自分が正しいと主張したとして、意見が食い違えば当然のように自分の答が正しいと、主張する。自分の考えを曲げようとはしない。人間は傲慢の塊。自分の欲に素直な生き物であり、故に哀れ―――。
フードで深く顔を覆っている長身の男は廃墟の建物にいた。ビルの10階の高さはある古びた鉄骨に腰を掛け、雄大な夕日に照らされて景色を眺めていた。風が衣服や肌を揺らし、舐めるよな感覚は心地が良い。自分が風の海に流される様な感覚、海とは違う。塩水には濡れない、脚や服に纏わりつき汚す砂もない、溺れる事もない。この心地良さは他では味わえない。気分が絶好な時、フードのポケットから音が鳴り出す、電子機器特有の音だ。気分が殺がれた、携帯電話を取り出し、開き画面に映し出されたのは芥
(あくた)という文字。通話ボタンを押し耳に当てた。
「…何だ」
声のトーンは自然に低くなっていた。相手は同様すらしない口調で返事を返した。
「そんな怒んな。話を二つ持ってきたぞリーダー」
電話相手はケラケラ笑って離した。フード男は鼻で嘲笑った。
「お前の話は、悪い方に行くと思うのは俺だけか?後、リーダー言うな。伐るぞ‥。」
「嘘だって、じょーだんも通じねぇのか。コレだから生真面目の英国紳士ハーフはとっつきにくいんだ」
愚痴を零すように芥は言った。一瞬フード男が呆れたが、本題に入った。
で、何の用だと告げると。
「じゃっ、悪い方から言うな。わんこが尻尾振りながら大好きな天に向かった」
フード男は眉間を指で押さえる。あのわんこは何時もフリーダム、獰猛で狂犬病にかかった犬と同じだ。そして、芥は必ずと言っていいほど悪い方から話す。それすら今となっては慣れたが。
「それで、良い方は?」
「もうすぐで、コドモ等が目的地に到着。夜の7時には着いてるんじゃないか?それ嗅ぎつけてわんこが言っちゃったんだよ」
困ったもんだと芥は付け足す。
そうか、中々早いもんだ。優秀だなアイツのコドモ等は。自然と笑みがこぼれてくる。
「俺もそろそろ、そっちに行く」
立ち上がり落ちるように鉄骨から降りた。蒲公英の綿が地面に降り立つように、軽やかに地に着地した。夕陽が落ち辺りは暗い。日は消え夜の時間だ。
「なるべく早くしてよ?台さん」
「インズィズワーズ・パーペチュアル=ウテナだ。覚えろ、それに当て字止めろ」
芥の間違いを訂正した。
「だってー 覚えにくいんだもーん」
僕っこ風に言う芥に嫌気が差し、言い終わる前に電話を切った。
携帯を閉じ、空を見上げた。
ok,black may dyed.(さぁ、真っ黒に染めてあげよう)
いやー 久々に更新しましたー 長かった。
近いうちに続き更新します。