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第一話 「交差点での幽霊デビュー」

 人が死を怖がるのは、まだ誰も死んだことがないからだと私は思う。人は得体もしれないものには本能的に恐れを抱くようにできている。


 死後の世界がどうなっているかというのは長年、多くの人間が考えてきたが、今だ明確な答えは出ていない。





 その答えを知るのは簡単だ。死んでみればいい。




 だがそんな理由で死ぬ人はいないだろう。


 なぜなら他人に示せないから。新しい知識は他人に知らしめてはじめて知識となる。



 結局のところ、生きているうちは死後の世界なんて知る術はないのだ。

───そう、死なない限り。


 では、もし世の中に知らしめることができたら……? 多くの人が悩んできた死後の世界について、確固たる真実を伝えることができたら? 様々な哲学者や、神とまで呼ばれるようになった人たちが様々な死生観を主張してきた。それを、ついに科学が終止符を打つのだ。



 私のこの実験が成功すれば、それを証明できる! ……だがもしかしたら、人は私を、『間違っている』と言うかもしれない。……私自身、この行為が完全に正しいとは思っていない。


 だけど……だけど私は……!



「ついに、出来た……!」


 研究に打ち込んで約二年。これは間違いなく私の最高傑作に違いない。


 そう呟いて私は目の前にある「装置」を見上げた。




 これだ、これさえあれば……!




****






 夏が終わりを告げる時期になった9月25日、私は死んだ。




 目の前に私がいた。いや、正確には「私だったもの」というべきか。それは真っ赤に染まり、かすかに鉄のような血のにおいがする。四肢はありえない方向に曲がっており、糸のきれたマリオットを彷彿とさせる。なんとか私と識別できるその顔は、目も濁っており、人形よりも人形らしく見えた。



 ガヤガヤと人の声が騒がしく聞こえるがそれらの声は混じり合って私にはなんと言っているのか分からない。


 ここは交差点の真ん中に位置しており、事情を悟った自家用車が脇によけながらゆっくりと通り過ぎている。そして中央には、前方を真っ赤に染めたトラックが停まっていた。




 交通事故───。私の不注意だったのか、向こうのトラックの不注意だったのか、よく覚えていない……でも多分、双方の不注意だったのだろう。


 そして私が、ここで事故にあった私を見ているのだから私は間違いなく死んだのだろう。

それにしても……今ここにいる私は何だ?



 目も見えるし、耳も聞こえるし、それどころか、周りのにおいだって分かる。だが周りの人はそんな私が見えていないようだった。……やっぱり、本物の幽霊になったのかなあ、私。



 突然のことで現実味がわかなかったおかげで冷静でいられたが、少しだけ落ち着いて事態を確認すると、さすがに動揺してきた。


「これからどうすればいいの……」



 一人そうつぶやいて途方にくれた時だった。



「いやー、これはまた派手に死んじゃったねえ、お姉ちゃん」



 不意に隣から幼い子供の声が聞こえて驚いて右を向いたらそこには小学生、それも2、3年生くらいの可愛らしいツインテールをした女の子がこちらを見ていた。


「君、誰!? ……えっ、っていうか、私が見えるの!?」



 私がそう言うと少女は一瞬きょとんとして、それからくすくすと笑いはじめた。

「クスクス……やだなあ、私もお姉ちゃんと同じだよ」



 そう言って少女は私を見つめて、そこで私は異変に気づいた。さっきまでは私が見下ろすかたちになっていたはずだ。……それが今では目線が私と同じ位置になっている。



 恐る恐る彼女の足元に目をやると、地面に彼女の足は見えない。彼女はふわふわと宙を浮いていた。


「う、うわあああああ!」


 と私は驚いて尻もちをつこうとしたら、腕がスカッと宙をきる感じになって地面にぶつかったはずなのに衝撃が全くない。



 不思議に思って下に目をやると───埋まっていた。



 比喩表現などではない。私の腕の、手のひらと第一関節の中間位まで埋まっている。コンクリートがまるで底なし沼のように、いや、沼に沈んだ感覚すらない。



「き、きゃあああああああああ!!!」


 悲鳴、二度目。もう失神してしまいそうになる。



 本当にどうなっちゃったの、私……



最悪でも一週間更新にしようと思います。


構想は8割がた出来ているので楽しんで読んでくだされば幸いです。

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